
それではこの回からはイオンについて書いていきます。
最近は
イオンというと、マイナスイオンだとかイオン消臭だとか、さらには企業グループ名としてもよく耳にしますが、化学での
イオンとは、
帯電した原子、簡単に言うと電気を帯びた原子のことです。
そしてイオンは
正(+)に帯電した陽イオンと
負(-)に帯電した陰イオンの大きく二つに分類することができます。さらに一つの原子からなるイオンと複数の原子からなるものとで分けることができるのですが、それは次回にまわして、今回は
陽イオンと
陰イオンの生成について考えていきます。
そもそも、
イオンになるとはどういうことなのか、あまりピンとこないですよね。前回電子配置について書きましたが、あれと結構リンクしているんです。なぜかというと、イオンについて考えるには
電子の出入りを考えることになるので、逆に言えば電子のところが理解できていれば理屈がすぐにわかるというわけです。その辺のことをふまえて、電子と周期表を思い出しながら以下の説明をご覧下さい。
まずは
陽イオンの生成(できる仕組み)についてみていきます。写真左上にナトリウムイオンの例があるのでそれから説明していきます。まずナトリウムが周期表のどの辺にあるか、一番左側の1族の部分(周期表は左側から縦の列で1族、2族、3族・・・18族と呼びます)ですよね。
周期表の左側(金属元素)は陽イオンになりやすいというのがまず基本になります。例を挙げるとカリウム(1族)とかアルミニウム(3族)などです。ナトリウムは1族、ということは、前回やりましたが、価電子(最も外側の電子殻にある電子)は1個ですよね。さて、ここでこの1個の価電子をどうるすかがポイントです。
イオンになるということは、そのイオンになろうとしている原子から最も近い距離(周期表で見て最も近い距離)にある希ガス元素(18族)と同じ電子配置になるということなのです。ナトリウム(原子番号11)の場合、M殻に1個だけある価電子を放出してしまえば、その直前の希ガスであるネオン(原子番号10)と同じ電子配置になりますよね。希ガスと同じ電子配置になる、これがイオンになる仕組みなんです。そして最後に説明を添えるとすると、
電子はマイナスの電荷を持った粒ですよね。これを1つ放出するからナトリウム(Na)がナトリウムイオン(Na+)となるわけです。
写真右上のカルシウムについてもナトリウムと考え方は同じです。周期表を見た時、
カルシウム(原子番号20)に最も近いところにある希ガス元素(18族)はアルゴン(原子番号18)ですよね。イオンになるにはこれと同じタイプになるということだから、電子を2個放出すればいいということですよね。
カルシウムの方がアルゴンよりも電子が2個多いわけですからね。
2個多い理由は何度も書きますが“原子番号=電子の数”だからです。カルシウムが
2個の電子を放出するということはマイナスの粒が2個なくなるということですよね。
プラスマイナスの偏りがない状態からマイナスを2個放出するのですから、全体としてはプラスの粒が2個多くなる、だからカルシウム(Ca)からカルシウムイオン(Ca2+)になる、ということです。
それでは次は
陰イオンについてですが、
陰イオンも
陽イオンとほとんど考え方は同じです。しかし、
陰イオンになりやすいのは今度は周期表の右側にある非金属元素であるという点が違います。左と右とでは何が違うかというと、価電子の数が違いますよね。
右になるほど価電子は多くなります。陽イオンの場合は価電子が少なかったので、価電子を放出した方が希ガス元素と同じ電子配置になるのに手っ取り早かったのですが、今度は逆です。
電子をもらって外側の電子殻を満タンにした方が効率的ですよね。写真左下の塩素の例でみてみると、
塩素(原子番号17)は価電子が7個です。
あと1個電子をもらえば8個となり満タンになりますよね。
“満タンになる=希ガス元素と同じ電子配置”なので
1個もらうことで、塩素に最も近い距離(隣)にある希ガス元素のアルゴン(原子番号18)と同じ電子配置になります。つまり1個の電子をもらうことで陰イオンになれるというわけです。
1個の電子をもらうということは、マイナスの電気を1粒もらうということだから塩素(Cl)から塩化物イオン(Cl-)になるわけです。
陰イオンの場合は○○化物イオンという呼び方をするので、塩素イオンではなく塩化物イオンという名前になります。この名前の付け方は決まりですので覚えておきましょう。他にもフッ化物イオン(F
-)や酸化物イオン(O
2-)などがあります。
最後に
イオン式についてですが、もうすでに上に何個か書いてしまいましたが、写真の一番右側にもあるように、
原子を表す記号の右上にそのイオンの電荷の状態を小さめに記載します。この右上の数字は価数といい、1の時は記載しません。この価数が1のものを1価の陽イオン(陰イオン)、2のものを2価の陽イオン(陰イオン)・・・と呼びます。
今回も長くなりましたが、この回のポイントになることは↓↓↓
・周期表左側の元素は電子を放出して外側の電子殻を満タン状態にする→“電子=マイナス”だから放出すると全体がプラスになる→陽イオンになる
・周期表右側の元素は電子を受け取って外側の電子殻を満タン状態にする→“電子=マイナス”だから受け取ると全体がマイナスになる→陰イオンになる
ということです。ちなみに今回の説明がわからない場合は周期表と電子配置の関係を復習することで理解しやすくなることと思われます。
イオンというと難しそうに思われる場合がありますが、単に横文字の用語というだけで、原子や分子と同程度のレベルです。先入観をなくすことが大事なのかもしれません。
ある程度理解できた方は一番下にある問題にもチャレンジしてみてください。
次回は単原子イオンと多原子イオンについて記載する予定です。
※ブログ用としてできるだけわかりやすく説明しているため、噛み砕いた表現で説明している部分があります。また、携帯電話から閲覧された場合は価数の上付き文字がうまく表示されない可能性があります
☆問題Ⅰ
☆
①イオンになるにはその原子から最も近いある元素と同じ電子配置になるのだが、ある元素とは次のどれか。
・金属元素 ・非金属元素 ・ハロゲン元素 ・希ガス元素
②上の①で選んだ元素は周期表のどの部分に該当するか次の中から選べ。
・1族 ・2族 17族 ・18族
☆問題Ⅱ
☆
①電子を2個受け取ることによってイオンになったものを何と呼ぶか次の中から選べ。
・1価の陽イオン ・2価の陽イオン ・1価の陰イオン ・2価の陰イオン
②次の元素のうちイオンになる時に2個の電子を放出するものはどれか選べ。
・リチウム ・ベリリウム ・フッ素 ・マグネシウム
☆問題Ⅲ
☆
①カリウムがカリウムイオンになる時、どの元素を同じ電子配置になるか次の中から選べ。
・ヘリウム ・ネオン ・アルゴン ・クリプトン
答え
問題Ⅰ ①希ガス元素
②18族
問題Ⅱ ①2価の陰イオン
②ベリリウム、マグネシウム
問題Ⅲ ①アルゴン
Posted at 2009/11/26 19:17:06 | |
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