
年が明けたばかりの今月2日、ウルトラシリーズの礎を築いた脚本家の1人、上原正三氏が亡くなっていたことが公表されました。
上原氏は1937年沖縄生まれで、太平洋戦争の影響を受け、子どもの頃は台湾や熊本県などで疎開生活を送るという幼少期を過ごしました。そのため、同じ沖縄出身の金城哲夫同様、戦争や差別に対するメッセージや怒りを色濃く打出した脚本を書くことで有名な脚本家でした。その中でも帰ってきたウルトラマンで手掛けた「怪獣使いと少年」はそれを色濃く反映し、TBS関係者から放送を中止されそうになったり、視聴者からも賛否両論物議を醸す作品となりました。しかし、その強いメッセージは同時に「怪獣使いと少年」の評価も高め、未だに記憶に残る作品としてファンの間から語り継がれる作品にまで成長しました。上原氏の作品というとその「怪獣使いと少年」が取り上げられることが多いのですが、ウルトラQを除き初代ウルトラマンから平成のウルトラマンマックスまででトータル46話もの脚本を担当しています。さすがに全ては紹介しきれませんが、今回は追悼と敬意を表し、個人的に評価の高いものを中心に少しでも多くの作品を紹介していければと思っています。まずその第1弾として今日はウルトラシリーズ(ウルトラQを除く)で初めて上原氏が手掛けた作品、1966年9月4日放送のウルトラマン第8話「怪獣無法地帯」を紹介します。この「怪獣無法地帯」は金城哲夫と2人で脚本を書き上げていて、有名な人気怪獣レッドキングと、マスコット的怪獣で人間に友好的なピグモンという偉大な怪獣たちを輩出した回です。そしてこの回はレッドキングとピグモン以外にも吸血植物スフランを含めるとチャンドラー、マグラーと5体もの怪獣が登場した豪華な回でした。これは上原氏が担当した脚本で実際に制作放送されたものの中では一番多くの怪獣が登場した回となりました。それではそのストーリーを見ていきましょう。
火山噴火の影響で無人島と化していた多々良島に2年半ぶりに定点観測所を再開することになった。松井を中心とする4人の観測所員先発隊は多々良島へと向かった。しかしその後松井たちは消息不明になってしまう。気象庁から要請を受けた科学特捜隊はジェットビートルで観測所員の捜索へと向かった。
その頃、多々良島ではどくろ怪獣レッドキングと有翼怪獣チャンドラーが激闘を繰り広げていた。チャンドラーはレッドキングの右腕に噛みつくが、逆に右の翼をもぎ取られ姿を消してしまう。その直後、地面から地底怪獣マグラーが顔を出すがマグラーはレッドキングを目にするとすぐに地中へと戻ってしまった。
そこに科学特捜隊のジェットビートルが到着する。アラシ隊員はレッドキングを攻撃しようとするが、ムラマツ隊長は観測所員の捜索が先決だと攻撃を許可しなかった。
隊員たちは測候所の近くに着陸し観測所員の捜索を開始した。しかし観測所員を見つけることはできなかった。ムラマツ隊長はハヤタとともに島の東にある溶岩地帯に向かい、残りのアラシ隊員、イデ隊員、フジ隊員の3人には島の西にあるジャングル地帯で捜索するよう指示した。
ジャングル地帯で捜査を開始したアラシ隊員たちは観測所員の所有物を次々と発見、アラシ隊員やイデ隊員はムラマツ隊長にそのことを連絡しようとするが、地底の変動で地磁気が乱れ通信ができなかった。
その直後、アラシ隊員とフジ隊員が吸血植物スフランに襲われてしまうが、アラシ隊員がスパイダーでスフランを焼き払い事なきを得た。アラシ隊員たちは観測所員たちもスフランにやられたのではないかと考えた。
一方、溶岩地帯に行ったムラマツ隊長とハヤタは何も手がかりを掴めないでいた。そのためハヤタがイデ隊員に連絡を取ろうとするが、やはりここでも地磁気の乱れで通信ができなくなっていた。その時ムラマツ隊長とハヤタの前にマグラーが現れる。ムラマツ隊長はハヤタにナパーム弾を使うように指示、ハヤタはナパーム弾をマグラーに投げつけるが、マグラーの反撃に遭いハヤタは崖から転落してしまう。
ムラマツ隊長のナパーム弾も直撃したマグラーは撃退されるが、ハヤタは崖下で意識を失ってしまう。
スフランから命からがら逃げてきたアラシ隊員とイデ隊員とフジ隊員はジャングルの中の水辺で休憩をとることにした。すると目の前に小さな怪獣が顔を出した。それは友好珍獣ピグモンだった。
ピグモンの近くで松井のハンカチを見つけたアラシ隊員はピグモンが松井の居場所を知っているかもしれないと考え、ピグモンのあとを追うことにした。イデ隊員とフジ隊員はそれに懐疑的だったが、松井を探すのが任務だとアラシ隊員に言われてしまい、しぶしぶアラシ隊員を追いかけた。しかしピグモンのスピードが早く、見失いそうになってしまうと、イデ隊員は目印になると言ってピグモンの背中に風船爆弾を撃ち込み、背中に風船をつけ、その風船を頼りにあとを追った。
するとその途中で倒れていた松井を発見する。しかし残りの3人は消息不明のままだった。そして松井は多々良島に上陸した時のことを隊員たちに話した。松井は地震と火山の影響で怪獣たちが次々と目覚めてしまい、上陸して1時間もしないうちに測候所が襲われてしまったと説明した。そしてピグモンが食料などを運んできてくれたおかげでここまで生き延びることができたとピグモンが善良な怪獣であることを隊員たちに伝えた。
そこに再びレッドキングが現れてしまう。松井をフジ隊員に任せ、アラシ隊員とイデ隊員はスーパーガンでレッドキングに立ち向かう。
ピグモンも自ら囮になろうとレッドキングの前に立ちふさがるが、レッドキングが投げた岩石が直撃、命を落としてしまう。
レッドキングを相手に全く歯が立たないアラシ隊員とイデ隊員は上空にスーパーガンを撃ちムラマツ隊長にSOSを知らせた。その頃、ムラマツ隊長は崖下に下り意識を取り戻したハヤタの救助をしていたが、SOS信号に気付くとハヤタはムラマツ隊長に救援に行って下さいとお願いした。ムラマツ隊長がいなくなるとハヤタは転落した際に岩の隙間に落としてしまったベータカプセルをなんとか拾い上げるとすぐさまウルトラマンに変身、レッドキングの元へと急行した。レッドキングはウルトラマン目がけ巨大な岩石を投げつけようとするが、持ち上げた岩石をスペシウム光線で爆破され、岩石を足の上に落としてしまう。その隙を見たウルトラマンはレッドキングをの首を掴み持ち上げると振り回して岩場に叩きつける。そして弱ったレッドキングは再びウルトラマンに投げ飛ばされ地面に叩きつけられると絶命した。
科学特捜隊とウルトラマンの活躍により怪獣たちの脅威が無くなったが、松井以外の3人の観測所員は発見されることはなかった。夕焼け空の海岸で隊員たちと松井は3人の観測所員を弔いた。ムラマツ隊長は「これでこの島も南海の楽園にかえるだろう。だが、自然はこの夕焼けのようにいつも美しいとは限らないってことを忘れてはならないね。」とハヤタに語り、ハヤタもうなづいていた。
上原氏はウルトラマンではこの8話の他に最終回の1つ前の38話「宇宙船救助命令」も脚本を担当しました。最終回に登場したゼットンのインパクトが強烈過ぎて38話に登場したキーラはあまり目立ちませんが、強烈な閃光でウルトラマンを苦しめ、八つ裂き後輪とスペシウム光線をもはね返すかなりの強敵でした。次回はそのウルトラマンの「宇宙船救助命令」を紹介します。
Posted at 2020/01/17 21:11:39 | |
トラックバック(0) |
芸能 | 音楽/映画/テレビ