
先週ブラックホールの撮影に初めて成功したというニュースがありました。ブラックホールというものの存在が予測されてから100年、平成の終わりについにその姿が明らかになりました。ブラックホールが位置するのは地球から5500万光年離れた乙女座銀河のM87銀河の中心だそうです。M87という名前もいいですね。本当ならばM87星雲というのはウルトラの星の名称になるはずでしたが、脚本の印刷ミスによりM78星雲になってしまったという裏話があります。もっとも今となってはブラックホールと同じ名前にならずに済んだという意味ではM78星雲で正解だったのではないかと思いますが。
今日はブラックホールM87のニュースにあわせて、M78星雲である光の国(ウルトラの星)がピックアップされた回を紹介します。それが1973年9月14日放送ウルトラマンタロウ第24話「これがウルトラの国だ!」とその翌週9月21日に放送された第25話「燃えろ!ウルトラ6兄弟」です。それまでも光の国の存在が語られたり、一部光の国の映像が使われたりする場面はありましたが、この回ではウルトラタワーやウルトラ小学校などの施設が細かく説明され、宇宙情報センターからゾフィーのウルトラサインが発進される場面なども初めて登場しました。また、光の国の歴史や、ウルトラの父とウルトラの母のなれそめが語られたのもこの回でした。それではストーリー紹介に移ります。
その日、ヨーロッパのある国が開発した人類終末兵器と言われるトロン爆弾の実験がおこなわれた。実験の場所に選ばれたのは地球から2億㎞のムルロア星だった。その後、トロン爆弾の実験に反対していたフランスの宇宙船が宇宙で何者かによって爆破される事件が発生、そのことはZATにも知らされた。爆破される直前、宇宙船の船員が「スペースモス」という言葉を通信で残していたこともわかった。
一方、買い物をして帰る途中だったさおりに追いかけっこをしていた小学生6人が激突、さおりは買った野菜をばらまいてしまい、小学生とそこに偶然通りかかった光太郎と健一が野菜を拾ってあげていた。光太郎は6人の小学生を見て登校班だと勘違いするが、6人は岩森家の兄弟で、その人数からウルトラ六兄弟と呼ばれていた。その日は岩森家では父と母が旅行に出かけることになっていたため、六兄弟は野菜を拾うとさおりに謝り急いで家へと帰っていった。
六兄弟の父喜晴と母ヨウコは六兄弟と晩ご飯を済ませると空港へと出掛けていった。
しかし六兄弟の父と母が乗った飛行機は宇宙蛾スペースモスの大群に襲われ、さらには宇宙大怪獣ムルロアによって墜落させられてしまう。六兄弟の父と母はその事故で犠牲になってしまった。
森山隊員から犠牲者の名簿を見せられた光太郎はその名簿で岩森家の父と母の死を知る。
残された六兄弟の家には取材をしようとするマスコミが押しかけていたが、六兄弟は居留守を使い部屋にこもっていた。そして六兄弟は旅行前に母が残していった録音メッセージを泣きながら聞き返していた。
そんな中5番目の弟四郎が家を出て行ってしまう。兄弟と光太郎、健一でいなくなってしまった四郎を探すこととなった。
光太郎と健一が四郎を探していると目の前にスペースモスの群れが現れる。
それとともにムルロアも出現、口から溶解液を吐きながら周囲のものを溶かしいく。
その直後、四郎が見つかり、光太郎は六兄弟と健一を安全な場所へ逃げるように指示する。しかしその後、太陽が昇りはじめるとムルロアが苦しみはじめる。そこにZATのホエールとコンドルが到着しムルロアを攻撃するが、溶解液を浴びせられ撃墜されてしまう。光太郎はウルトラマンタロウに変身、ムルロアに立ち向かう。
ウルトラマンタロウはZATの援護を受けながらムルロアと戦うが、ムルロアは体から真っ黒な黒煙アトミックフォグを噴出し周囲を闇で覆ってしまう。
ウルトラマンタロウが黒煙にひるんだ隙にムルロアは溶解液を吐き、ウルトラマンタロウはそれを左腕に浴びてしまう。
左腕に傷を負い、カラータイマーが点滅したウルトラマンタロウは倒れ込みそのまま姿を消してしまった。
ウルトラマンタロウを倒したムルロアはアトミックフォグをまき散らし、地球全体を覆い隠した。それにより、地球は太陽光が遮断され1日中暗闇の世界になってしまった。ムルロアの作り出した闇と溶解液によって敗れ、元の姿に戻った光太郎は意識を失い倒れていたが、ウルトラの母の声によって目を覚ます。ウルトラの母は地球を闇から救うためにはウルトラの国に戻る必要があると光太郎に告げた。
光太郎はウルトラの母の声を受け、再びウルトラマンタロウに変身し地球から300万光年離れたウルトラの国へと飛び立って行った。
そして翌週の「燃えろ!ウルトラ6兄弟」へと続く。
地球ではあちこちでスペースモスの襲撃による事故が多発していた。そして村石岬の灯台にもスペースモスの大群が襲来、連絡を受けたZATは灯台に駆けつける。
ZATは灯台の職員に灯りを消すように指示するが、灯台の職員は船の安全を守るためそう簡単には灯りは消せないとZATを指示を無視する。するとそこに宇宙大怪獣ムルロアが出現、ZATは攻撃をしようとするが、スペースモスの大群に襲われ思うように攻撃できなかった。
ムルロアは溶解液を灯台に浴びせ灯台を破壊すると消えていった。
基地へと戻ったZATは今までのデータを集め、ムルロアとスペースモスの分析をしていた。それにより、ムルロアは光を嫌う性質があり、光に集まるスペースモスを利用し、スペースモスの群がる場所を襲っているのではないかと導き出した。
上野隊員は水爆の3倍の威力があるAZ1974でムルロアを倒すことを提案するが、荒垣副隊長はまだAZ1974を使う時ではないと上野隊員の軽率な発言を咎めた。
一方かつてのペットだった宇宙犬ラビドッグに迎えられながらウルトラマンタロウはウルトラの国へと到着した。
そしてウルトラマンタロウはゾフィーのウルトラサインを受け、ウルトラ兄弟の集まるウルトラタワーへと向かった。ウルトラマンタロウがウルトラタワーに辿り着くと、そこにはウルトラ兄弟たちが待っていた。
闇に覆われた地球を救うにはウルトラタワーの中に納められているウルトラベルが必要だった。ウルトラベルを手に入れるためにはウルトラタワー内部の灼熱の炎を通過しなければならず、そのためにはウルトラ6兄弟が力を合わせる必要があった。ウルトラ兄弟たちはウルトラベルを手に入れるためウルトラ6重合体でウルトラマンタロウと一体化、ウルトラタワーの内部へと入りウルトラタワーを取り出し地球へ急ぐ。
そして宇宙空間でウルトラ兄弟はウルトラマンタロウと分離、ウルトラ6兄弟はウルトラベルを持って地球へと急いだ。岩森家ではスペースモスの航空機襲撃事件で父と母を無くした六兄弟がみんなで力を合わせて生活していた。しかし闇の影響で水道が止まってしまう。そのため、長男の一郎が井戸のあった健一の家に水をもらいに行くことになった。一郎は健一の家で水をもらい、健一と一緒に水を運ぶ。その途中、水道の止まった家に水を売り儲けようとする卑怯なトラックを見かける。その直後トラックは走り出すが、ヘッドライトにスペースモスが集まり、前が見えなくなったトラックは一郎をはねてしまう。一郎は意識不明なってしまい病院に救急搬送されることになってしまう。
その後、ZATは灯りをつけて稼働しているコンビナートを発見、南原隊員がコンビナート職員に灯りを消すように言うが、コンビナート職員は南原隊員の警告を無視、近くに群がっていたスペースモスを箒で叩き落とそうとするが、逆に襲撃されてしまう。そしてコンビナートにムルロアが出現する。上野隊員は荒垣副隊長に再びAZ1974の使用許可を求めると、ついに荒垣副隊長はAZ1974の使用を許可した。
ZATはホエールで出撃、ムルロアに接近すると、上野隊員が飛び降りムルロアの頭の上に着地、ムルロアにAZ1974を仕掛ける。その頃ウルトラ6兄弟がウルトラベルを持って地球近くまで辿り着く。そしてウルトラベルを鳴らし始める。それによりムルロアの吐き出した黒煙アトミックフォグが全て消滅した。
アトミックフォグを除去されたことで光を嫌うムルロアは暴れ始める。上野隊員はパラシュートを使いムルロアの頭上から飛び降りるが、ムルロアが暴れパラシュートがムルロアの体に引っ掛かってしまう。
AZ1974の爆発まであと30秒と迫り上野隊員は絶体絶命の危機に陥るが、そこに宇宙からウルトラマンタロウが駆けつけ、上野隊員をムルロアから引き離す。ムルロアはウルトラマンタロウによって空高々と投げ飛ばされると、AZ1974によって粉々に爆破された。
その後、一郎も無事回復し、光太郎も無事ZATに復帰した。
この24話・25話に登場した宇宙大怪獣ムルロアはかつてフランスが核実験場として使っていたムルロア環礁が由来となっています。ムルロアはヨーロッパの某国によるトロン爆弾実験により生み出された怪獣で、劇中ではフランスはトロン爆弾の実験に反対だったという台詞が登場します。この某国というのは本当はフランスだという意味が込められているそうで、皮肉の意味で劇中ではフランスは実験に反対という立場に設定したそうです。ウルトラセブンのギエロン星獣も似たような境遇で誕生した怪獣でしたが、ウルトラマンの物語は戦争や核兵器、環境破壊や差別・いじめなどの社会問題などに対するメッセージが込められているものが多く存在します。ウルトラマン誕生から50年以上経ちますがそれらの問題は残念ながらどれもまだまだ未解決です。