
一昨日は上原作品最大の名作でもある「怪獣使いと少年」を紹介しましたが、今日紹介するのもかなりの衝撃作です。
ヒロイン役であるアキとその兄がナックル星人によって轢き殺されてしまうという展開です。もっともこの展開には大人の裏事情があり、アキを演じていた榊原るみが別のドラマに主演することが決まり、帰ってきたウルトラマンの撮影に参加することが困難になったためなのです。ウルトラシリーズでレギュラー陣が殺害されるというのはこれが初めてで、かなり衝撃の展開となりました。しかもルックスなら昭和シリーズのレギュラー出演陣のなかでも随一でしたからね。昭和シリーズの女性隊員というとウルトラセブンのアンヌ隊員が人気知名度ともにナンバーワンですが、個人的には榊原るみ演じる坂田アキも好きでした。当時、大人気だった榊原るみがのちに映画「ひとりね」でまさかのシーンを演じることになるとは誰も予想もしていなかったでしょう・・・。それでは1971年12月17日に放送された帰ってきたウルトラマン第37話「ウルトラマン夕陽に死す」とその翌週12月24日に放送された「ウルトラの星光る時」のストーリーを紹介します。
宇宙電波研究所で地球人に扮した暗殺宇宙人ナックル星人がウルトラマンジャック暗殺計画を着々と進めていた。
ナックル星人は部下にウルトラマンジャックの武器を研究するのに最も相応しい怪獣を調べるよう指示をした。そして竜巻怪獣シーゴラスと宇宙大怪獣ベムスターがその役割に選ばれた。その頃、郷は坂田のところに預けていたマットビハイクルをチェックしに訪れていた。坂田が考案したスタビライザーを装着したマットビハイクルはこれまでよりも高速域で安定した走行が可能ということだった。郷は早速テスト走行に出ようとする。すると横にいたアキが一緒に連れて行ってほしいと郷にお願いする。しかし郷のテスト走行は任務の一環であって公私混同はダメだと坂田に止められてしまう。肩を落とすアキだったが、それを見た郷は正月休みに蔵王へスキーに連れて行ってあげるとアキに約束した。
アキは郷の手をとって大喜びするが、その時、郷がしていた腕時計のベルトが切れ落ちてしまう。アキは郷に謝り、自分がベルトを交換してくると言って郷の腕時計を預かった。そこに基地の丘隊員から郷へ帰還の指示連絡が入った。その日はMATが新たに開発した特殊火薬サターンZの輸送計画についての会議がおこなわれる日だった。サターンZはニトログリセリンの6000倍の威力をもち、タバコの箱ほどの量で富士山をも吹き飛ばせるほどの能力を持っていた。サターンZは非常に危険な物質であるため、武器としてではなく、ダム建設に用いられることが決まっていた。会議でサターンZの威力について説明が進んでいるところに郷が帰還するが、その直後、怪獣により東京湾一帯が異常潮位に見舞われているとの通報が飛び込んでくる。それはかつて倒したはずのシーゴラスによるものだった。ウルトラマンジャックの能力を研究するために、ナックル星人はシーゴラスを再生させ東京に出現させたたのだった。
上野隊員と丘隊員は現場で周辺住民の避難指示に追われていた。郷もそこに駆けつけるが、目の前に巨大津波が迫っていた。郷はウルトラマンジャックへと変身、ウルトラバリヤーで巨大津波を押し戻すと、スペシウム光線でシーゴラスを粉砕した。
そこに今度はベムスターも出現する。ベムスターもウルトラマンジャックのテスト用にナックル星人が送り込んだものだったが、ベムスターも以前同様にウルトラスパークで切断され倒された。
しかしその戦いは全てナックル星人によって分析されていた。データを収集したナックル星人は予想以上のウルトラマンの能力に驚き、ウルトラマンジャック暗殺のために用意していた用心棒怪獣ブラックキングでも勝てる保証はないと考えた。そしてウルトラマンジャックの弱点を探そうと次の計画へと移った。ウルトラマンジャックから戻った郷も立て続けに過去の怪獣が出現したことで、自分が何者かに試されているのではないかと疑念を抱いていた。そんな中、MATによるサターンZの輸送がはじまった。
その情報はナックル星人の耳にもすぐに伝わった。MAT総出で警戒しながら輸送がはじまったが、輸送車両の前に突如ブラックキングが出現する。
隊員たちは輸送車から降りブラックキングに攻撃を仕掛けるが、その隙にサターンZを載せた車両がナックル星人に奪われてしまう。上空から警護にあたっていた伊吹隊長が奪われた輸送車両を追跡するがナックル星人はトンネル内で輸送車を乗り捨てるとサターンZを持って行方をくらませた。
宇宙電波研究所へと戻ったナックル星人は次の作戦段階へと入った。それは郷の恋人アキを殺害して郷を心理的に追い詰めることだった。その頃アキは郷の腕時計を直しに時計店を訪れていた。そして新しいベルトに交換してもらったアキは上機嫌で歩きながら家の近くまで着くが、そこにナックル星人の部下たちが乗った車が現れアキは拉致されてしまう。
アキの叫び声を聞いた坂田は急いで外に出ると、ナックル星人の部下たちの車の前に立ちふさがるが、車はそのまま加速し坂田はひき殺されてしまう。そしてその後アキも車両から放り出され、車に引きずられて重体となってしまった。
そのことを聞きつけた郷は病院に駆けつけた。アキは駆けつけた郷に宇宙人の仕業だと告げると息を引き取った。
悲しみと怒りで郷の精神は撹乱されていた。そしてナックル星人は郷を精神的に追い詰めたのを見計らい東京にブラックキングを出現させた。丘隊員からブラックキング出現の連絡を受けた郷は心乱されたままウルトラマンジャックへと変身、ブラックキングのもとへと急行した。ウルトラマンジャックはスペシウム光線を放つが、ナックル星人の研究によって強化されたブラックキングには全く効果がなかった。そしてブラックキングはウルトラマンジャック最大の武器ウルトラブレスレットをもはね返してしまう。さらに宇宙電波研究所にいたナックル星人も巨大化してウルトラマンジャックの前に出現、ウルトラマンジャックは一方的にやられピンチに陥ってしまう。
そこに太陽が沈みかけ、太陽エネルギーが弱まりウルトラマンジャックに追い打ちをかける。そしてナックル星人に投げ飛ばされたウルトラマンジャックはついにエネルギーが切れ死んでしまう。
倒されたウルトラマンジャックはナックル星人の宇宙船に拘束され宇宙へと運ばれ処刑されようとしていた。
ここで37話は終了、翌週の38話へと続きます。
卑怯なナックル星人の手に落ちたウルトラマンジャックは宇宙へと運ばれていた。一方宇宙に浮かぶ宇宙ステーションV1がナックル星人の宇宙船団に攻撃を受け、MATにSOSが送られてきた。伊吹隊長は南隊員と上野隊員を迎撃に向かわせようとするが、MATの基地全体が強力な電磁波に覆われマットアローが発進できない状態になってしまっていた。何もできなくなってしまった隊員たちは焦っていると、突然モニターにナックル星人が映る。ナックル星人は奪ったサターンZを武器として使用すると脅迫し、MATに12時間以内に無条件降伏するよう告げた。伊吹隊長はその手には乗らないと降伏を拒否すると、ナックル星人は宇宙ステーションV1を爆破する様子を見せつけ通信を切った。
取り乱す南隊員と上野隊員を落ち着かせた伊吹隊長は、2人に電磁波を逆探知しナックル星人の居場所を突き止めるよう指示した。電磁波を逆探知した南隊員と上野隊員は電磁波が宇宙電波研究所から出ていることを突き止め研究所内へと突入した。
研究所のメインコンピュータ室へと入った南隊員と上野隊員だったがそこにはナックル星人の姿はなかった。その隙に2人は時限爆弾を仕掛け、外へと出ようとするが、突然扉が閉まり、閉じ込められてしまう。
慌てて時限装置を切ろうとする2人だったが天窓からナックル星人が顔を出し2人をあざ笑うと室内に噴煙が立ちこめ2人は動けなくなってしまう。その後、南隊員と上野隊員は基地へと帰るが、その様子はいつもと少し違っていた。2人はナックル星人を見つけることが出来ず骨折り損だったと隊長に軽口を叩く。それを聞いた伊吹隊長が激怒すると、南隊員が突然伊吹隊長に殴りかかった。
上野隊員も横にいた岸田隊員に襲いかかるが、岸田隊員と丘隊員によって2人は取り押さえられると突然我に返った。そして自分たちが何をしたのか覚えていないと話した。南隊員は宇宙電波研究所に入ったところまでは覚えていたが、その後の記憶が無くなっていた。話しを聞いた伊吹隊長は丘隊員を基地に残し、岸田隊員を連れ宇宙電波研究所へと急行した。そして伊吹隊長と岸田隊員も研究所内へと突入するが南隊員と上野隊員同様ナックル星人に捕らわれ催眠状態にかけられてしまう。
さらにナックル星人は再び南隊員と上野隊員を遠隔操作で催眠にかけると、2人と一緒にいた丘隊員を襲わせる。近くにいた職員が南隊員と上野隊員に掴みかかるとその隙に丘隊員は逃げ出すが、職員は逆に2人の反撃に遭い気絶させられてしまう。
南隊員と上野隊員は逃げた丘隊員を探すが、丘隊員は橋の下に隠れ難を逃れた。その頃、ナックル星ではウルトラマンジャックの処刑がはじまろうとしていた。
ウルトラマンジャック最期の時が迫る中、ナックル星にウルトラマンとウルトラセブンが駆けつけた。ウルトラマンとウルトラセブンはウルトラマンジャックを救出すべくウルトラの星作戦を開始した。
ウルトラマンとウルトラセブンはウルトラマンジャックを宇宙船から切り離すとスペシウム光線とエメリウム光線で宇宙船を破壊した。それによってウルトラマンジャックは無事復活を遂げた。
そしてウルトラマンジャックは地球に向かっていたナックル星人の宇宙船団をスペシウム光線で破壊し地球へと戻った。ウルトラマンジャックから元の姿へと戻った郷は基地へと帰るが、そこにいた隊員たちはみな黙り込んだままで様子がおかしかった。そして突然口を開いた伊吹隊長は郷に対しわざと脱走していたなと吐き捨て、南隊員に郷を銃殺刑にするよう命令した。郷は目隠しをされ、隊員たちに処刑場へと連行されていったが、その途中、丘隊員が現れ、隊員たちはナックル星人に操られていると声をかける。それを聞いた郷は隊員たちに反撃、丘隊員も加わり隊員たちを気絶させた。
そして郷は隊員たちの耳の後ろに受信機のピンが刺さっていることに気付いた。ナックル星人はそのピンに電波を送り隊員たちを遠隔操作していた。郷は丘隊員に隊員たちのピンを抜くように言って電波研究所へと急行した。マットビハイクルで宇宙電波研究所へと向かう郷の前にブラックキングが出現する。郷はウルトラマンジャックに変身するが、そこにナックル星人が現れ再び1対2の状況になってしまう。正気を取り戻した隊員たちはモニターでウルトラマンジャックの復活を目にすると急いで援護へと向かった。
ウルトラマンジャックはまたしてもナックル星人とブラックキングに追い込まれカラータイマーが点滅をはじめる。
それでもウルトラマンとウルトラセブンの友情を心の支えとしたウルトラマンジャックはそこから反撃に出る。ウルトラマンジャックはブラックキングをスライスハンドで、ナックル星人もウルトラ投げでついに撃破した。
その後、サターンZも郷の手によって宇宙電波研究所から取り戻された。事件が解決しクリスマスイブとうこともあり、隊員たちはみんなでパーティーをしようと盛り上がっていたが、坂田とアキを失った郷はパーティーを断った。そして兄と姉を失ってしまった次郎の元へケーキを持って帰宅した。しかしそこには次郎の姿はなかった。郷は隣の部屋からクリスマスソングが聞こえてきたため、隣の村野ルミ子の玄関チャイムを鳴らす。すると次郎はルミ子の部屋にいた。次郎はルミ子の部屋で明るくクリスマスを過ごしていた。
というわけで、残念ながらここでアキは降板となってしまいました。坂田とアキの死、そしてウルトラマンジャックも倒され、初代ウルトラマンとウルトラセブンが助太刀で登場するという内容がてんこ盛りの前後編となったためか、これが実質の最終回だなどと揶揄されることもありました。ちなみにこの38話からアキの代わりに村野ルミ子が新たなヒロイン役として登場することとなりましたが、榊原るみが作り出したアキというヒロイン像の壁は高く、さすがにそれを越えることはできなかったかなという印象でした。次回は帰ってきたウルトラマンの最終回「ウルトラ5つの誓い」を紹介します。