中学時代からの友人がいまして、かれこれ30年、年に数回ほど会ってる昔馴染みなのですが、お盆前に会った時にそいつが言うんですよ。「人生がつまらなくなってきた」と。
酔った私は漱石口調で「なんだって?そいつは君、いけないな。よし、ドライブに行こふ」と提案し、先日有給とって茨城(一部栃木)をグルっと回ってきました。
まずは料理人である友人の希望により那珂湊の魚市場へ。
休日は観光客でごった返す市場も平日朝はガッラガラ。曇り空と相まって廃墟一歩手前に見えますが、市場は元気に生きてました。
人混みが苦手な我々はこれ幸いと、安くて新鮮な魚を買い込みます。生牡蠣を店員さんこじ開けてもらってその場でチュルリと栄養補給し次の目的地へ。
茨城の海沿いを北へ走り、原子力で有名な東海村を通過。原子の力で町のインフラが整えられており、道が広くて気持ちいい。原子力科学館なる建物が見えたので行きたくなりましたが、アカデミックな話にアレルギーを持っている友人に配慮し今回はスルー。
辿り着いたのは日立市の銭湯「湯楽の里」。施設は綺麗で立派。特筆すべきは海を臨む露天風呂。
手前が風呂で奥が海。海と風呂の境目が溶け込むよう設計されており、こんな風呂に浸かればそりゃ雄大な気分にならざるを得ません。
眼下の砂浜には高校生くらいの男女約15人が波打ち際でキャッキャウフフ。そんな夏の終わりの青春群像劇を全裸で眺める四十路の2人。雄大な空と水平線。色んな意味で遠い目になり、デスクワークで疲れた眼がいい感じにほぐれて次の目的地へ。
車中で色んな雑談をしました。話の断片を繋ぎ合わせて推察するに、人生つまらないなどと抜かした要因は、
・子供の手がかからなくなり気が抜けた
・仕事がマンネリ化してきた
・長年続けた運動系の趣味を体力的理由で辞めた
といったところのようです。
今からこの調子じゃ定年退職したら自殺しそうだなコイツと思いながらも、やる気漲る熱い言葉一つ語れない自分は、ただ黙ってカーオーディオで彼の愛する吉田拓郎メドレーを流すのが精一杯でした。
「今はまだ人生を語らず」「明日からもこうして生きていく」などの言葉が若干二十代で出てきた拓郎氏に比べて我が生き様の浅さを恥じるとともに、縁もゆかりも無い賢人の哲学をこうして手軽に、しかもメロディに乗せる相乗効果で心に染み込ませてくる、歌という概念の恩恵に改めて気付くころに着いたのは、日本三大瀑布、袋田の滝。
滝までは長いトンネルを歩いて向かいます。
入口と出口、此岸と彼岸を隔てるトンネルと言うのは小説雪国しかり、千と千尋しかり、ダンバインしかり、異なる世界への渡航メタファーとして度々用いられますが、なるほど否が応でも未知の光景への期待が膨らみます。
ですがトンネルの向こう側で目にしたのは、瀑布と呼ぶには些か憚られる水勢乏しい大きな崖でした。
いやまぁ凄いんだけども、トンネル効果で無駄にハードルが上がってしまった末路の拍子抜け。水量が豊かな季節にはさぞかし感嘆する光景に出会えたのだろうに残念。
雄大な滝を目の当たりにして友人の生物的な深層に働きかけ心を奮い立たせる作戦は空振りに終わり、目から無駄に流れた無念の塩分を鮎の塩焼きで補給して次の目的地へ。
ところで今回の旅路の足は、愛車MX-30をディーラーに預けているため代車のCX-3で。
前所有車もCX-3なので思い入れがあり、操作も慣れてて使いやすいのですが、せっかくなら乗ったことのない車をお借りしたかった。Mazda3とか。
酔いやすい友人ですが、道中には山道もあるロングドライブで全く酔わなかったのは日々の運転練習の成果でしょうか。
一度だけ急のつく操作をしてしまいi-DM白ランプをくらった時は、那珂湊で仕入れた伊勢海老がビックリして暴れ回ってました。すまん。
休憩に立ち寄った人気の無い道の駅でメイちゃんの顔ハメ看板を見つけ記念撮影。
普段この手のノリはしませんが、楽しい旅を演出するため道化を演じます。平日で誰もいなくて良かった。ちなみにトトロとは縁もゆかりも無い土地です。
次の目的地は、料理人の癖に自宅の皿揃えが貧弱な友人のために焼き物の町、益子へ。
辿り着いたのが4時半ごろで、通りのお店は7割がた閉まってましたが、何とか数店舗駆けまわり、私はウイスキー用のぐい呑みとチェイサー用タンブラーをGET。涼やかな色合いが珍しく即買い。
ついでに陶器の亀も。
趣味で集めてる亀グッズたち。
夕暮れの益子町を慌ただしく去り、一路地元へ南下。車内にユニコーンの「すばらしい日々」が流れてきました。
僕らは離ればなれ たまに会っても話題がない
人がいないとこに行こう 休みがとれたら
いつの間にか僕らも 若いつもりが年をとった
それぞれ二人忙しく 汗かいて
君は僕を忘れるから その頃にはすぐに君に会いにいける
今の二人を代弁するような歌詞に耳を傾けしんみりし、友人は同じ思いでいるだろうかと隣を見ると全然そんなことはなく、市場で買った魚の調理に思いを馳せてる様子。これはこれで良い結果。
帰路の途中で、先日も行った創作ラーメンのお店を再訪。
今回は定番メニューの松茸ラーメンをいただきました。あっさりの中にもしっかりコクがあり、麺を啜るたびにマツタケの香りが突き抜けます。
なんでも松茸と赤松というのは共生関係にあり、お互いに利益を受け取り補いあってるのだとか。
気晴らしが必要な友人と、とにかくドライブがしたい自分という共生関係な旅路の締めにふさわしい一杯でした。
Posted at 2022/09/08 18:30:11 | |
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