
“高性能でミドシップの市販車”という定義によって整理された、沢村氏渾身の一冊である。偶然その存在を知って急いで手に入れたのだが、版元の
文踊社さんでは、発売後わずか数ヶ月にして「好評につき品切れ」だそうである。
なにしろ、800ページにも及ぶ超大作で、しかもネタがネタだけに「みんなで損しようか」(ある新聞記事より)という粋な出版社の計らいでようやく世に出たというから、貴重な一冊といえるだろう。グラビアページはおろかカラー写真の一枚すら無い、純然たる縦書きの本で、延々と文字を読んでいかねばならないのが辛い方には全くお勧めでない代物だが、最初に書いた3つのキーワードが結実していく過程を独自の取材も交えながら丹念に追った、近年まれに見るクルマ系の良書だと思う。
個人的には、ミドシップのパワートレインには昔からかなり興味があって、もし経済的事情が許すならば、2台目はミドシップ車が欲しいと思っていたくらいである(実際には、2台目という選択そのものがありえない状況だけど・・・)。なので、この本はぐいぐいと引き込まれるように読んでしまった。
スーパーカーといえば、私の世代にとっては子供の頃に大流行した一つのキーワードであり、“ガチャガチャ”に20円だか50円だかを入れるとその形をした消しゴム(といっても実際に消しゴムとして使えるような代物ではなかったが)を手に入れることができて、それをバネ式ボールペンの頭を使ってビュンビュンと飛ばすのが日課だったものである(古っ・・・)。遠くに飛ばすために、摩擦を減らす工夫を様々に凝らし、学校では“スーパーカー消しゴム飛ばしレース”に興じた。
当時、この流行を受けて日本でも「童夢-零」という試作車が造られたが型式認定を受けられず(童夢社に対してはいまも製造メーカーとしての認可が下りないのだそうだが)、市販車とはならなかったせいでもあろうが、沢村氏はまったく取り上げていない。その辺りの“こだわり具合”も含め、ミドシップ“市販車”の技術史・発展史として読むと、クルマを「市販する」ということがどういうことなのかも見えてきて面白いと思う。
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雑談 | クルマ
Posted at
2008/12/20 14:49:37