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2008年02月10日

アクティブトルクスプリットAWD

雪が降ってきたのを機会に「アクティブトルクスプリットAWD」というメカニズムがどのようなものなのか自分なりに理解してみようと思っていろいろ調べていた。

そもそもこのメカニズムは、1980年代にわき起こったフルタイム4WD化のムーブメントの中で、簡単な機構で前後の回転差を吸収させるメカニズムとしてスバルが発明したマルチプレート・トランスファー(MP-T)に端を発するものである。ATの油圧を流用し、多板クラッチの結合度合いをトルクセンサーの検出値に応じて制御することで、後輪への動力伝達率と回転数を変化させるという極めてシンプルな構造で、これによりセンターデフが不要のコンパクト(でかつ安価な)4WDトランスファーを実現した。これを電子制御化したものが、現在のアクティブトルクスプリットAWDだと思えばよい。

このメカニズムがセンターデフを持つタイプのAWDと異なるのは、

1)MP-Tクラッチを通じたトランスファーであるため、前後輪のトルク分割と回転吸収動作が一体的になっている。(センターデフ方式の場合はトルク分割自体はほぼ固定であり、単に前後輪の回転差を吸収するのが主な目的になっている。)
2)後輪が空転した場合はMP-Tクラッチを緩めることでトルクを前輪に移していく。その結果、雪道で後輪が滑り出すとアンダーステアになる。(センターデフ方式の場合は設定されたトルク配分に応じてアンダー・オーバーの傾向が変わり、後輪重視の配分の場合はテールが流れオーバーステア傾向となる)。
3)MP-Tクラッチが緩んだ状態ではFF車と似た挙動になる。実際、エンジンルーム内のヒューズケースをセットすることにより完全なFF状態にすることが可能である。

といったことになるようだ。3の状態があることをもって、よく“なんちゃって4WD”と揶揄されるスタンバイ型の4WDと類似のメカニズムだと勘違いされるが、スタンバイ型の場合の多くは、ビスカスカップリングと呼ばれるメカニカルな機構(あるいは電磁クラッチ等)で前後輪の回転差(前輪の空転)が発生した時のみ後輪にトルクが配分される仕組みであり、“滑り始めないと4WDにならない”ので、通常状態で4割ものトルクを配分しているアクティブトルクスプリットAWDとは本質的に異なる仕組みである。

そういえば、日産のウイングロードの4WDバージョンはe4WDというユニークな機構を持っていて、エンジンが発電した電力を後輪に結合されたモーターへ送ることで4WD状態を実現するという面白い発想のメカニズムである。メカニカルなトランスファーが省略できる分軽量化・伝達ロスの軽減がなされ(その代わりにモーターの重量が増えるが)、重量配分も自由度が増すだろうから、なかなか考えたなと思う。これにハイブリッドメカニズム(回生ブレーキ等の機構と大容量バッテリー)を加えれば、トヨタのエスティマ・ハイブリッドなどが採用するFF+後輪モーター式のハイブリッドと基本構造は同じであるが、4WD動作専用と割り切ればモーターも小型化できるし、斬新な発想だと思う。

話を元に戻すと、アクティブトルクスプリットAWDは、ある意味でFF車に近い挙動を持つと考えればいいのだろう。発進時やフロントが滑り出した時などは後輪が直結に近い状態となりその威力を発揮してくれるが、タイトなコーナーや後輪が滑り出した時の挙動はほとんどFFと同じであろう。しかもトルク配分自体が大幅に前寄りになるので、後輪空転時の走破性はセンターデフ方式の場合より高いかもしれない。逆に言えば、前輪空転時でも後輪へのトルク配分は最大で5割(直結状態に相当)だから、リアにしかトラクションが掛からないようなシーンでは若干不利になる。

ただ、滑り出しても後輪のトルクが完全にゼロになる訳ではないし、いざ滑り始めてアンダーが出た時後でリアが流れるような状況では、回転数の差を検知して前後輪に最適なトルクを配分してくれる筈だ。よって高等テクニックがなくても、FF車より速やかにグリップを復帰させることができるのでは?と期待される。FF車よりは滑りにくく、いざ滑り始めてもFF車よりコントロール性が高い。そんなメカニズムと言えるかもしれない。グリップ状態でもいざ滑り出してもあまりおもしろみはないが、コントロールはイージーで扱いやすい(しかも安い)のがウリ、と考えればよさそうである。

一方、上位グレードのAT車に使われるVTD-AWDはセンターデフを持ち、基本的なトルク配分はそこで決まっている。よってMT車に用いられる通常のセンターデフ方式と類似の挙動を示すものと考えて良いであろう。VTD-AWDはセンターデフでありながらトルク配分のある程度の可変が可能という機構でSVXに採用されたのが最初だが、勉強不足のため何故MT車とAT車とでわざわざ違う機構を使っているのかよくわからない。MT車を選ぶ人はドラ・テクもあるだろうから、メカニズムの余計な介入はない方がいい、ということを見越しているのだろうか?もちろんただ単に、VTD-AWDには多板クラッチ機構がありそのための油圧が必要だから、ATと組み合わせる以外にやりようがない、ということなのかもしれないが・・・。

という訳で結局、トルク配分が常時変わらない「本物のセンターデフ方式」フルタイム4WDに乗りたい人はMT車を選びなさい、ということらしい。ただしメカニズム的には、VTD-AWDはかなり進んだシステムだし、フルタイム4WDとして現在最も優れた方式の一つといえるかもしれない。そして、アクティブトルクスプリットAWDはイージードライブ向けだが、バランスの取れたフルタイム4WDシステムであると言えそうである。
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Posted at 2008/02/10 01:32:40

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この記事へのコメント

2008年2月10日 6:38
日頃から自分の中にも同じ疑問があり解決の糸口となる話題をありがとうございますww
インプレッサには
1.5~2.0NA・AT=アクティブAWD
WRX・AT=VTD-AWD
MT車 全般=ビスカスAWD
WRXSTI=DCCD(又は機械式)デフ
と何故かグレードにより4種類もの4WDシステムが存在し、基本的には選択出来ない仕組みになっています。
自車はVTDで、今まで親しんだ日産アテーサE-TSによく似たフィーリングで不安は無いのですが、
「SUBARUは何故こんなに色々な4WDの仕組みを用意してるのだろう?」と。

よく言う「差別化」の為だとすれば本末転倒でしょうしコストも掛かるので試験的な意味合いも無さそうです。今回のエントリを読んで感心したのはATの油圧を利用(共用)出来るトランスファーを選択していると言う事。その上でミッションケースのスペースに限られるのか、負荷トルクの機能的上限によりアクティブ<>VTDを選択させられるのではないでしょうか?

もうひとつ考えられるのは変速機の工場が持つパテントの関係で差別化が起きている可能性です。最近までジャトコとの合弁で興した「富士AT」で生産していた為、様々なシバリが課されていたのかも知れませんww

この関係は昨年解消されたみたいですので今後はSUBARU内製のAWD用CVTや2ペダルデュアルクラッチシステムなど独自技術で実現してくる可能性ありです。
コメントへの返答
2008年2月10日 8:49
アテーサは基本がFRで、必要に応じて多板クラッチ機構により前輪にもトルク配分をするという、F・Rが逆の“なんちゃって4WD”に近い機構ですが、電子制御によりアクティブにトルク配分を決めているところがパッシブメカ式と決定的に異なりますね。VTD-AWDの基本トルク配分はF:R=45:55ですから、アテーサをもっと4WD側へ振ったFR寄りのフィーリングが得られるだろうというのは容易に想像が付きます。

次期レガシィにはCVTが載るという噂も出ていますね。ただ、大パワーに耐えるCVTは設計開発が大変でしょうから、NAの中~下位グレードからの搭載になるのでは?と勝手な予想をしております。その場合、新たに下位グレードにもVTDーAWDが採用されるのか、引き続きアクティブトルクスプリットAWDが用いられるのかは、車のキャラクターをどう設定するかによる気がします。

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