2008年02月07日
前回「吸気効率と燃費」をまとめている段階で、ふと、省燃費なエンジンの回し方を調べるにはどうしたらいいのか、考えこんでしまった。ある負荷に対して、ギア比・回転数の組み合わせをどう選ぶのが最適か。経験とか勘とかいうものに頼らず、なんとか調べる方法はないものだろうか?
平地だと負荷が軽すぎて、一定の速度を複数のギアと回転数の組で維持するのはなかなか難しい。そこで、適当な上り坂を使い、ギアと回転数をアクセルワークで調整しながら一定速度を保ちつつ、そのときの瞬間燃費をモニタする、という方法を考えてみた。厳密な測定にはならないが、坂の傾斜と速度を選べば、2~4速の3つの組み合わせをセットできる。このとき、もっともリッター燃費が良いものがもっとも効率の良いギアと回転数の組、ということになるだろう。
速度計、回転計、燃費計を瞬時に見比べながら操作するのは、ちょっと際どい運転である。ちょっとやってみたのだが、やはり、測定専門の人をナビシートに乗せておくか、ビデオで撮影しながらやるか、そんなことでもしないと厳しい。
ただ、自分にとって意外だったのは、3速と4速のそれぞれの場合の燃費計が、ほとんど同じ数値を示したことだ。完全に同じところを同じ速度で走れてはいないから誤差はもちろん大きいのだが、原理的には、同じ負荷に対して必要な燃料はギアが変わっても同じ筈だから、同じ数値でもなんら不思議ではない。しかし、例えば2~4速では
2速:回転数大、軸負荷小
3速:回転数中、軸負荷中
4速:回転数小、軸負荷大
という関係になる筈で、さらにはATでの回転ロスとトルクコンバータによるトルクアップ効果との関係が絡み、もっと差がつくものと予想していた。さすがに2速だと、軸負荷がかなり小さくなるのに回転数だけがグッと上がってしまうせいか、瞬間燃費はかなり落ちていったが・・。もちろん、負荷の大きさによってもまた、いろいろと異なる結果が得られるのであろう。平地のような低負荷のところではどうなのか、実用燃費という観点からすれば、そちらの方がむしろ興味深いところである。
もう少し厳密に測定して比較するには、やはりECUから出ている各種のモニタ信号をロギングし、解析することが必要であろう。いずれまた、いろいろチャレンジしてみようと思っている。
Posted at 2008/02/07 23:58:42 | |
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燃費 | クルマ
2008年02月07日
エンジンの歴史は長いもので、その工学的な解析はかなり十分に行われている。こういったサイクル機関はまず熱力学的な解析が基本であり、その仕事がどれくらいになるのかを推定するには、通常、圧力-体積図(p-V線図)というものが使われる。
その中で、4サイクルエンジンの「排気」から「吸気」→「圧縮行程の途中」までの過程が左回りの閉じた回路を示し、その面積がマイナスの仕事、すなわち「ロス」であるということから、この吸気過程におけるロスのことを「ポンピングロス」と呼ぶ。これが、エンジン工学における定義である。
前の投稿ではそのあたりのことをきちんと書かないままに用語を曖昧に使ってしまったが、前回までに問題にしていたのは「吸気バルブ周辺でのコンダクタンス」としての「ポンピングロス=吸気抵抗」であり、あるいは、ピストンで負圧を吸引するが故の(イメージとしての)巷の誤解に基づいた「ポンピングロス」であった。(そこだけ読まれると間違った印象を与えそうなので、修正させていただいた。)
エンジン工学では、「吸気」中のロスだから「ポンピングロス」と言うのだろうが、これは本来の意味での「吸気」の損失ではない。吸気側と排気側(大気圧とは限らないところに注意)の圧力差から来る熱力学的、原理的なロスであり、"吸気側で必要とするガス流量"を少々煽ったくらいで改善するようなシロモノではないのである。
もちろん、スロットルを絞っているが故にその「抵抗」によってイン・マニへ空気の流入量が減り、その結果としてイン・マニが負圧になるのだから、これを「吸気抵抗」と考えたくなるのも無理はない。だが、エンジン工学でいうところの「ポンピングロス」は「スロットルでの吸気抵抗」がロスとして勘定されているのではない(流体の動作によるロスではない)、というところが重要なところだ。これはあくまでもピストンの排気と吸気の動作における仕事の差分のロスであって、エンジンの動作のなかでは相対的・動作原理的なものと考えるべきなのだ。だから、吸気バルブ開度可変機構など、動作原理を変更することによってのみそのロスを軽減させることができるのだ(同等のエンジンで同一回転・同一負荷の場合を比較したとして)。
もう少し具体的な話にしてみよう。エンジンの回転数を同一に保ちながら負荷を増大させると、それに応じたトルクが必要になるから、その分混合気を沢山供給する必要がでてくる。混合気を沢山供給するためにはスロットルを大きく開くことになる。すると、吸い込まれるガス圧が大気圧に近づき、上記の「排気」行程の圧力(ほぼ大気圧)に近づくため、この「ポンピングロス」が減少する。よって、エンジンがした仕事(図示仕事)に対するロスが相対的に減るから、これはエンジンの効率が良くなった、ということになる。
では、エンジンの効率が上がったから、燃費がよくなるのか?というと、全くそんなことはない。たとえ話にすれば、こんなことだ。エンジン回転数2000rpm、時速40kmで平地を走っていたが、同じ回転数・時速で上り坂を登るためには、アクセルをより踏み込まなければならない。アクセルを踏んでスロットルは開いたから「ポンピングロス」は減少したが、負荷が増えた分たくさん燃料を消費する。明らかに、燃費は悪化する。
あるいは、エンジンブレーキを考えてみるとよい。エン・ブレというものは、スロットルをほとんど閉じ、燃料も供給しないことで、この「ポンピングロス」を回転軸負荷の一つとして減速する方法である。このとき、たとえ吸気側に全くガス供給がない“真空”の状態でも、排気側動作でシリンダ内を大気圧近傍に開放する限りこの負荷はなくならない。逆に、排気側も閉じてしまいシリンダ内を密閉空間にすれば、ピストン動作の行きと帰りの仕事が等価になるのでロスはゼロとなる。この状態では、エン・ブレはほとんど効かないだろう。「スロットルによる吸気抵抗」が「ポンピングロス」ではないということが、ここからも理解できると思う。
では、加速の場合はどうか?加速とは、車のその速度での走行に必要なエネルギー(走行抵抗とほぼ同じ)より大きいエネルギーを追加投入することで実現されるから、加速度はその追加投入した単位時間あたりのエネルギーにだいたい比例する。よって原理的には、アクセルを開いて「ポンピングロス」を低減し、効率の良いところで一気に加速した方が省燃費になる筈である。しかし、前回も書いたように、中~高回転にすれば燃調や混合気直抜けの問題等があり、必ずしも「ポンピングロス」の低減による高効率化がそれらのロスを上回らない。
さらに問題なのは、回転数が上がってガスの流量が増えるために排気側の圧力が増大し、「ポンピングロス」があまり低減しなくなることである。よって、排気側の排気効率アップ、極端に言えば触媒やマフラーを全撤去すれば、「ポンピングロス」低減が“ロス”する問題は解決することにはなるが、そんな状態ではもちろん走れたものではない。工学あるいは技術というものは、何事もバランス、悪く言えば「妥協」の産物なのである。
ということで、延々と「吸気効率と燃費」というテーマで考察を展開してきたが、まとめとしては以下のようになるだろうか。
1)真の「吸気抵抗」は吸気抵抗部の上流と下流のコンダクタンス(の逆数)として表現され、その圧力差が大きいほど、また要求流量が大きいほど大きくなる。
2)「吸気抵抗」による損失はp-V線図(図示仕事)には直接現れず、一種の「フリクション・ロス」としてエンジン性能に影響するので、p-V線図(図示仕事)の形を理想的な変化から歪め、結果として図示仕事面積の変化(縮小)として現れる。排気も同様である。その影響は、要求流量が大きいときほど大きいので、低負荷・低回転の時にはさほど問題にはならず、その場合は、むしろスロットルを閉じている方が影響は小さい。
3)スロットル上流のサクションについては、スロットル全開時の吸気効率には影響しエンジンのパフォーマンスを良い方にも悪い方にも変化させる可能性はある(回転域と負荷による)が、スロットルがあまり開いていない時にはレスポンスの向上に若干影響する程度である。
4)エンジン工学上のいわゆる「ポンピングロス」は「吸気抵抗」とは異なり、排気・吸気のメカニズムに起因する原理的(熱力学的)なもので、スロットル制御式エンジンの構造上、避けがたいものである。
5)「ポンピングロス」を避けようとしてスロットル開度をやたらと大きくしても、他の様々な燃費悪化要因が増大し、結局は省燃費にはならない。特にガス流量が大きい中回転以上の領域では、排気圧の上昇にともない「ポンピングロス」の低減効果が薄れ、効率の改善にならないどころかより悪化する場合もある。
以上のことをふまえ、省燃費運転をするためには、
A)エンジンは低負荷・低回転の時がもっとも燃料を消費しないので、加速を必要最小限にするのがもっとも省燃費である。
B)その車がもつ最適な省燃費エンジン回転数を探し当て(概ね1500~2000rpm弱あたりと思われる)、その前後をなるべく使うようにすると、省燃費になる。
C)ただし、目標速度とギア比の選択によりエンジン回転数が高くなってしまうような場合(クロスレシオのMT車や、AT車のロックアップ機構作動直前など)は、速やかに加速後シフトアップする方が結果として省燃費になる場合もある。
といったことを心がけ、むやみにスロットルを開けたりすることのないよう走るのが一番であろう。「ポンピングロス」あるいは「吸気抵抗」との関係が一番効いてくるのはBの項目であり、このポイントを識って運転することが肝心である。
Posted at 2008/02/07 00:02:23 | |
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燃費 | クルマ
2008年02月05日
昨晩投稿したあと、「パッと加速」した方がいいかもしれないシーンをふと思いついた。といっても、今までの解釈に問題があった訳ではない。
エンジンの「美味しい」領域を使うのが良い、という意味で、最適なギアがオーバーラップするような速度域の場合は、目標速度より気持ち大きめに加速したのち一段上のギアに入れて低回転・低負荷運行を続行すれば、下のギアで高回転のまま「低速」で走るより燃費は確実に向上するだろう。ここでダラダラと加速しているといつまでも上のギアに上げられないし、十分な速度に達する前にギアを上げて無理矢理加速しようとしてもエンジンが高負荷を感じて燃調がリッチな方に振れてしまうから、走行の状況によっては大きなロスになる。
もちろん、「パッと加速」といっても、トルクがもつ範囲でできるだけ低回転の領域で滑らかに加速を済ませた方が燃費はいい筈だが、そのあたりの微妙な“踏み分け”が出来るかどうかで、より高い次元の省燃費運転に行けるか行けないかの差が出てくるのかもしれない。目標としては、CVTのような「加速時もエンジンは一定回転でギア比だけが変わっていく」といったような制御に近づけることなのだろう。CVT車でも加速時の回転数はだいたい2000回転弱(通常モード時)だそうだから、ある程度の加速力を保ちつつ省燃費が実現できる妥協点として、そのあたりの回転数を“上限”と心得るのがいいと思う。レガシィの4ATのInfo-ECOモードでは、踏み込み方や負荷(坂道など)にもよるが、2500rpmあたりまで上がってしまうので、最近は2000rpmあたりでギアが上がらない時は手動でアップする癖を付けている。これをすると、通勤時の燃費がわずかながら改善(2~3%)するようである。
さて、吸気系チューニングには、主として
1)エアフィルターの変更
2)フロー系の変更(チューブ・パイプ・インテーク類の交換など)
3)スロットルの変更(大口径化など)
4)スロットルの開度(ワイヤー調整、電制スロットルマップ調整など)
といったところが考えられる。1~3までは物理的な「モノ」の変更だが、4はいわば「人と機械とを結ぶ関係性」の変更である。いずれにしても、「チューニング」というからにはなにがしかの目的をもってそれに合わせることがゴールである。その目的とは多くの場合「レスポンスの向上」や「ハイパフォーマンス化」であろう。
「レスポンスの向上」が目的なら、一番効くのはおそらく4であろう。自分のフィーリングに合ったアクセル踏み込み量とスロットル開度(エア・フローマッピング)の関係をセッティングすれば、そうとう気持ちいいドライビングが出来るのではないだろうか。機械式スロットルだと「モノ」の変更に近くなり、また自由にマップを決めることは難しいが、電制スロットルならソフトウエア的な変更(あるいはそれを実現するハードウエアの付加)だけで対応できる。電制スロットルにはいろいろと批判もあるが、好きなように味付けができる素材と考えればむしろチューニング志向者向けのデバイスではないだろうか。
1~3の場合は、その効果がスロットル開度によって異なる。開度が小さい領域では、スロットル前段までのコンダクタンスの変化によるエア・フローの微妙な変化がアクセルのフィーリングに影響を与えるかもしれない。しかしこれはあくまでも、4のような「アクセルに対するエアフロー・マッピングの変化」に相当するものであり、エンジンの回転と負荷が同一なら、その時のパフォーマンスには何の影響も与えないだろう。
1~3のチューニングがその真価を発揮するのは、スロットルが全開になった時「だけ」と言ってもいいかもしれない。最大限の吸気をしたいときに、エンジンの吸気バルブまでエアフローをスムーズにし、文字通りの「ポンピングロス」を低減することで、全開時のパフォーマンスを“エアダクトが無い”レベルでの限界パフォーマンスまで近づけることは可能だろう。しかし、そのレベルでのパフォーマンスを感じ分けられるシーンといえば、せいぜい、サーキット走行でのタイム・アタックくらいではないだろうか?
そして、省燃費運転にとってなによりの問題は、これら「吸気系チューニング」を行うと、確実に燃費は悪い方向へ行くだろう、ということである。レスポンスが向上するということは、ドライバーが思っているよりエンジンが“回っている”ということであり、つまりはそれだけ燃料を消費しているということである。スロットル前段までのエアフローの向上は、同一のスロットル開度に対してよりエアーをインテークへ流し込むことになるから、エアーセンサーはそれを感知してその分燃料を沢山噴射する。なんのことはない、アクセルをちょっと余計に踏み込んだのと同じなのである。
ということで、全開時のパフォーマンスを改善したい、あるいは、そういうパフォーマンスをもった車に仕立てたい、という方はせっせとチューニングに励んでいただきたいが、レスポンス向上派の方なら、予算と手間暇とリスクの加減により1~4の「どれか」を選ぶことで満足行くチューニングができるだろう。ただし、低回転域を積極的に利用する省燃費運転は確実にしにくくなるし、結果的に、燃費はいくばくか悪化すると思われる。
逆に言えば、4のマップ調整により省燃費運転向けのチューニングも可能な筈である。おそらくは、Info-ECOモードではそういった制御になっているだろう。ただ、メーカーのセッティングは「万人向け」であるが故に、個々人のフィーリングとは合わないかもしれない。そのあたりを自由にいじれたら、結構楽しいかも・・・ということで、最近はOpenECUのサイトなどを覗いてみているのだが、NAの人ってなかなかいませんねぇ・・・。
Posted at 2008/02/05 22:57:49 | |
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燃費 | クルマ
2008年02月04日
先に示したように、大気圧とイン・マニ負圧との圧力差によって、ピストンがガスを吸引しにくいことが「ポンピングロス」になる訳ではない。では、「ポンピングロス」とは何なのか?
まず、ガスを吸気するときの抵抗というものを定性的にでも理解するためには、流体力学や気体力学、配管技術などの知識がどうしても必要になってくるようである。つまり「吸気抵抗」とは、流体の流れに際して生じる抵抗のことであり、その大きさは基本的には3つの要素で決まってくる。3つの要素とは、
1)流れを妨げているものの大きさ、材質:
配管、バルブ、オリフィスなどの直径や長さ、表面の状態など
2)上流側と下流側の圧力差、または比
3)流れているものの絶対圧
である。流体の流れやすさの指標は「コンダクタンス」と呼ばれ、これら3つの要素がその大きさを決める。
ここではごく単純に、流れは丸い穴状の板(オリフィス)で妨げられていて、板の上流と下流は同じ径の管が付いているとしよう。オリフィスの場合、そのコンダクタンスCは上流の圧力P1と下流の圧力P2の比r=P2/P1 に指数関数的に依存し、またオリフィスの面積に比例する。rが小さくなる=圧力差が大きくなるほど、急激にコンダクタンスは小さくなる(たとえば20℃の空気では、r=0.9とr=0.8では3倍以上違うが、r=0.8とr=0.7では2倍程度、r=0.7とr=0.6でも2倍程度の違いになる)。
一方流体の流量Qは、コンダクタンスCに上流と下流の圧力差(P1-P2)を掛けたもの(Q=C(P1-P2))である。上流の圧力P1が一定に保たれているとすると、P1-P2=P1(1-r)となり、(1-r)の項はCのrによる変化と一部打ち消しあうが、やはり指数関数的な変化の方が勝り、結局、rが小さいほどより流量は小さくなる。ただし、流量の絶対値そのものはP1に比例するので、同圧力・同体積のガスを流すのなら、上流圧をなるべく高くし、差圧が拡がらないように流すのがベターだ。
これはあくまでも定常流の場合で、しかもバルブに相当する吸入抵抗が単純なオリフィス1枚の場合である。エンジンのバルブ周辺を流れる混合気は乱流的になっていると思われるのでこの関係をそのまま当てはめるわけにはいかないが、いずれにせよ意外なことに、バルブをオリフィスとみると、その前後での「圧力差」が大きいほど流量は小さくなるのである。これは流体が粘性を持っているが故の特性であり、そのような場合はこの「圧力差」をなるべくつくらないように流した方が、多くの流体を流せるのである。ということは・・・・?
可変バルブリフト/開放時間のような特別な機構を持つエンジンではない、従来型スロットル制御によるエンジンでは、低負荷時における混合気が少ししかエンジン・シリンダーに入らないような条件においては、イン・マニ負圧と吸気バルブ開時のシリンダー内圧の差が小さい方がいい、という意味において、スロットル開度は小さくし、回転数も低い方が吸気抵抗も小さい、ということになる。当たり前の話だが、やはり、必要のないガス(混合気)をむやみに送り込むのは意味がないということなのだ。
可変バルブリフト等によるバルブ開度を変えられるエンジンの場合は、ガスを吸い込んだり押し出したりする際、バルブを開けられるだけ開けた上で、開放時間によって吸気量を制御することができるので、イン・マニ圧とシリンダー内圧の差を小さくし、また実効的なバルブ開放径も大きくとることができる。すなわち、バルブ開放量が常に固定されている従来エンジンより、エンジン負荷に応じた最適なバルブ開放量・時間を得やすい、という点でロスが軽減されると考えるべきであろう。スロットル開度を上げることによって負圧を減らし「吸気抵抗」を減らしたのではなく、むしろ、バルブ開放量に応じて必要となった流量を「稼ぐ」ためにスロットルを開けている、と言った方がよいかもしれない。
このような「吸気抵抗」と、エンジン工学でいう「ポンピングロス」とは、実は全く別のものである。「ポンピングロス」は、こういったガスの流れに起因するものではなく、もっと原理的な熱力学の問題、サイクル機関としての構造上の問題である。これについては、後日また考察したい。
いずれにせよ、「パッと加速」することで燃費が改善するとしたら、それは「吸気抵抗」が減って効率が上がるからではないと思われる。かといって、「ポンピングロス」が減って改善するのかというとそうでもないように思われる。一つの可能性として、低回転でトルクを出すより中回転でのトルクバンドを使った方が効率が良い、ということを反映しているのかもしれないが、どう加速するのがもっとも省燃費かは、個々の車の実装によっても異なるのであろう。
例えば私の車のエンジンように、可変バルブタイミング機構(AVCS)を備え、中回転域では恐らくかなりのオーバーラップ・バルブタイミングにセットされるような場合では、「パッと開けて加速」してしまうと吸気→排気への直抜けがある分燃料を無駄にしてしまう可能性が高く、「ポンピングロス」の軽減分を大幅に上回った燃料のロスになりかねない。さらには、AT車の場合、トルクコンバータが入ることによってアクセル開度に合わせ容易にエンジン回転数が上がり、それがロスにつながる可能性も高い。
事実、試しにInfo-ECOモードを切って「パッと」加速するような乗り方(~3000rpmあたりまでを積極的に使う)をしてリッター燃費を比べたところ、同じ区間を走行したInfo-ECOモードでの平均値に比べて8%も悪化してしまった(もちろん、加速区間以外では、空走距離をなるべく長くとり、ブレーキをなるべく使わないで済むような"エコ・ラン"を心がけたことは言うまでもない)。少なくとも、私の車(あるいは私自身)に関しては、この走り方は省燃費にはならないようだ。
吸気系チューニングの「功罪」については、また改めて。
Posted at 2008/02/04 03:41:32 | |
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燃費 | クルマ
2008年02月04日
昔、省燃費の運転技術として「パッとアクセルを開けて加速し、スッと定速走行に入るのが良い」とする話を聞いたことがあった。“ジワッ”と加速した方が省燃費だと思っていた私は、えっ?と思ったのだが、その説明として「スロットル開度を大きくすればそれだけ吸気効率が上がり、ロスが少なくなる」ということであったので、これはいわゆる“ポンピング・ロス”のことだろうと解釈していた。
最近、エンジンシリンダーの吸気・排気バルブのリフト量や開弁時間を可変し、吸気効率を運転状況にマッチしたものとすることで“ポンピング・ロス”を減らした、とするエンジンが出てきた。こういったことを謳うエンジンの場合は、インテーク・マニホールド内の空気がスロットルで制限されることにより(大気圧に対して)負圧となっているところからエンジンシリンダー内に混合気を吸い込むより、スロットルは全開かそれに近い状態にしておき、バルブの開度によって取り込む混合気(直噴の場合はエアそのもの)の量を制御することで、トータルでの吸気効率を上げたということになるようだ。誤解を恐れずにごく単純な言い方をすれば「おなじ量のガスを引き込むなら、長い時間掛けて細く引き込むより短い時間で太く引き込む方が効率が良い」ということである。
実際に効率を向上させているポイントはそのエンジンが採用しているメカニズムごとに異なるし、単独の要素だけに限られる訳でもないので、“ここがロスだった!”と明確に表現できないことが理解を困難にしている面はある。そこにどうやらいろいろな「解釈」が生じる余地があって、“ポンピング・ロスは実在しない”と主張するものから“空気過剰率の上昇が効いて熱効率が向上しているだけだ”などという「解釈」まで様々な説がネット上に蔓延している。ただし、“イン・マニ内が負圧になっているとそれだけエンジンシリンダーに混合気をとりこみにくいから、それがポンピング・ロスになっている”という単純(?)な解釈は明らかに誤りで、そういった意味での“ロス”は、バルブの開度が同じであれば、むしろより多くの混合気が流れるイン・マニ圧の高い状態の方が大きい筈である。
このことが分かりにくい方は、インマニ~排気側までが完全に閉じられた空間である時のことを想像していただきたい。むろん、実際にはそういうことは無い訳だが、出入りするガスが全くなければ“ポンピング・ロス”などどこにも存在しない。ピストン背後の大気圧と内部との圧力差による仕事は往復運動の前後で打ち消されるから、ただ単に往復運動の際の機械的な摩擦だけが“ロス”として残るのである。
そんなムズカシイことを考えなくても、最近の電子制御スロットルを備えた車であれば、運転者のアクセルワークを最大限に尊重しながらも「省燃費」な運行になるように調整してくれるから、普通に加速し普通に走ればそれで十分であろう。でも、冒頭に述べた「パッとアクセルを開いて・・・」的な運転を旧来的な機械式スロットルの車でするとしたら、本当に省燃費になるのか?なるとしたら何故か?という点は依然疑問として残る。既に述べたように、パッとアクセルを開けても決して“ポンピングロスの軽減”にはならないから、省燃費になるとしたら別の理由であろう。
そのあたりを改めて考察した上で、“吸気系ロス(あるいはポンピングロス)の低減”ということについて再検討してみたい。(続く)
Posted at 2008/02/04 02:56:37 | |
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燃費 | クルマ