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2008年02月04日 イイね!

続・吸気効率と燃費

先に示したように、大気圧とイン・マニ負圧との圧力差によって、ピストンがガスを吸引しにくいことが「ポンピングロス」になる訳ではない。では、「ポンピングロス」とは何なのか?

まず、ガスを吸気するときの抵抗というものを定性的にでも理解するためには、流体力学や気体力学、配管技術などの知識がどうしても必要になってくるようである。つまり「吸気抵抗」とは、流体の流れに際して生じる抵抗のことであり、その大きさは基本的には3つの要素で決まってくる。3つの要素とは、

1)流れを妨げているものの大きさ、材質:
  配管、バルブ、オリフィスなどの直径や長さ、表面の状態など
2)上流側と下流側の圧力差、または比
3)流れているものの絶対圧

である。流体の流れやすさの指標は「コンダクタンス」と呼ばれ、これら3つの要素がその大きさを決める。

ここではごく単純に、流れは丸い穴状の板(オリフィス)で妨げられていて、板の上流と下流は同じ径の管が付いているとしよう。オリフィスの場合、そのコンダクタンスCは上流の圧力P1と下流の圧力P2の比r=P2/P1 に指数関数的に依存し、またオリフィスの面積に比例する。rが小さくなる=圧力差が大きくなるほど、急激にコンダクタンスは小さくなる(たとえば20℃の空気では、r=0.9とr=0.8では3倍以上違うが、r=0.8とr=0.7では2倍程度、r=0.7とr=0.6でも2倍程度の違いになる)。

一方流体の流量Qは、コンダクタンスCに上流と下流の圧力差(P1-P2)を掛けたもの(Q=C(P1-P2))である。上流の圧力P1が一定に保たれているとすると、P1-P2=P1(1-r)となり、(1-r)の項はCのrによる変化と一部打ち消しあうが、やはり指数関数的な変化の方が勝り、結局、rが小さいほどより流量は小さくなる。ただし、流量の絶対値そのものはP1に比例するので、同圧力・同体積のガスを流すのなら、上流圧をなるべく高くし、差圧が拡がらないように流すのがベターだ。

これはあくまでも定常流の場合で、しかもバルブに相当する吸入抵抗が単純なオリフィス1枚の場合である。エンジンのバルブ周辺を流れる混合気は乱流的になっていると思われるのでこの関係をそのまま当てはめるわけにはいかないが、いずれにせよ意外なことに、バルブをオリフィスとみると、その前後での「圧力差」が大きいほど流量は小さくなるのである。これは流体が粘性を持っているが故の特性であり、そのような場合はこの「圧力差」をなるべくつくらないように流した方が、多くの流体を流せるのである。ということは・・・・?

可変バルブリフト/開放時間のような特別な機構を持つエンジンではない、従来型スロットル制御によるエンジンでは、低負荷時における混合気が少ししかエンジン・シリンダーに入らないような条件においては、イン・マニ負圧と吸気バルブ開時のシリンダー内圧の差が小さい方がいい、という意味において、スロットル開度は小さくし、回転数も低い方が吸気抵抗も小さい、ということになる。当たり前の話だが、やはり、必要のないガス(混合気)をむやみに送り込むのは意味がないということなのだ。

可変バルブリフト等によるバルブ開度を変えられるエンジンの場合は、ガスを吸い込んだり押し出したりする際、バルブを開けられるだけ開けた上で、開放時間によって吸気量を制御することができるので、イン・マニ圧とシリンダー内圧の差を小さくし、また実効的なバルブ開放径も大きくとることができる。すなわち、バルブ開放量が常に固定されている従来エンジンより、エンジン負荷に応じた最適なバルブ開放量・時間を得やすい、という点でロスが軽減されると考えるべきであろう。スロットル開度を上げることによって負圧を減らし「吸気抵抗」を減らしたのではなく、むしろ、バルブ開放量に応じて必要となった流量を「稼ぐ」ためにスロットルを開けている、と言った方がよいかもしれない。

このような「吸気抵抗」と、エンジン工学でいう「ポンピングロス」とは、実は全く別のものである。「ポンピングロス」は、こういったガスの流れに起因するものではなく、もっと原理的な熱力学の問題、サイクル機関としての構造上の問題である。これについては、後日また考察したい。

いずれにせよ、「パッと加速」することで燃費が改善するとしたら、それは「吸気抵抗」が減って効率が上がるからではないと思われる。かといって、「ポンピングロス」が減って改善するのかというとそうでもないように思われる。一つの可能性として、低回転でトルクを出すより中回転でのトルクバンドを使った方が効率が良い、ということを反映しているのかもしれないが、どう加速するのがもっとも省燃費かは、個々の車の実装によっても異なるのであろう。

例えば私の車のエンジンように、可変バルブタイミング機構(AVCS)を備え、中回転域では恐らくかなりのオーバーラップ・バルブタイミングにセットされるような場合では、「パッと開けて加速」してしまうと吸気→排気への直抜けがある分燃料を無駄にしてしまう可能性が高く、「ポンピングロス」の軽減分を大幅に上回った燃料のロスになりかねない。さらには、AT車の場合、トルクコンバータが入ることによってアクセル開度に合わせ容易にエンジン回転数が上がり、それがロスにつながる可能性も高い。

事実、試しにInfo-ECOモードを切って「パッと」加速するような乗り方(~3000rpmあたりまでを積極的に使う)をしてリッター燃費を比べたところ、同じ区間を走行したInfo-ECOモードでの平均値に比べて8%も悪化してしまった(もちろん、加速区間以外では、空走距離をなるべく長くとり、ブレーキをなるべく使わないで済むような"エコ・ラン"を心がけたことは言うまでもない)。少なくとも、私の車(あるいは私自身)に関しては、この走り方は省燃費にはならないようだ。

吸気系チューニングの「功罪」については、また改めて。
Posted at 2008/02/04 03:41:32 | コメント(1) | トラックバック(0) | 燃費 | クルマ
2008年02月04日 イイね!

吸気効率と燃費

昔、省燃費の運転技術として「パッとアクセルを開けて加速し、スッと定速走行に入るのが良い」とする話を聞いたことがあった。“ジワッ”と加速した方が省燃費だと思っていた私は、えっ?と思ったのだが、その説明として「スロットル開度を大きくすればそれだけ吸気効率が上がり、ロスが少なくなる」ということであったので、これはいわゆる“ポンピング・ロス”のことだろうと解釈していた。

最近、エンジンシリンダーの吸気・排気バルブのリフト量や開弁時間を可変し、吸気効率を運転状況にマッチしたものとすることで“ポンピング・ロス”を減らした、とするエンジンが出てきた。こういったことを謳うエンジンの場合は、インテーク・マニホールド内の空気がスロットルで制限されることにより(大気圧に対して)負圧となっているところからエンジンシリンダー内に混合気を吸い込むより、スロットルは全開かそれに近い状態にしておき、バルブの開度によって取り込む混合気(直噴の場合はエアそのもの)の量を制御することで、トータルでの吸気効率を上げたということになるようだ。誤解を恐れずにごく単純な言い方をすれば「おなじ量のガスを引き込むなら、長い時間掛けて細く引き込むより短い時間で太く引き込む方が効率が良い」ということである。

実際に効率を向上させているポイントはそのエンジンが採用しているメカニズムごとに異なるし、単独の要素だけに限られる訳でもないので、“ここがロスだった!”と明確に表現できないことが理解を困難にしている面はある。そこにどうやらいろいろな「解釈」が生じる余地があって、“ポンピング・ロスは実在しない”と主張するものから“空気過剰率の上昇が効いて熱効率が向上しているだけだ”などという「解釈」まで様々な説がネット上に蔓延している。ただし、“イン・マニ内が負圧になっているとそれだけエンジンシリンダーに混合気をとりこみにくいから、それがポンピング・ロスになっている”という単純(?)な解釈は明らかに誤りで、そういった意味での“ロス”は、バルブの開度が同じであれば、むしろより多くの混合気が流れるイン・マニ圧の高い状態の方が大きい筈である。

このことが分かりにくい方は、インマニ~排気側までが完全に閉じられた空間である時のことを想像していただきたい。むろん、実際にはそういうことは無い訳だが、出入りするガスが全くなければ“ポンピング・ロス”などどこにも存在しない。ピストン背後の大気圧と内部との圧力差による仕事は往復運動の前後で打ち消されるから、ただ単に往復運動の際の機械的な摩擦だけが“ロス”として残るのである。

そんなムズカシイことを考えなくても、最近の電子制御スロットルを備えた車であれば、運転者のアクセルワークを最大限に尊重しながらも「省燃費」な運行になるように調整してくれるから、普通に加速し普通に走ればそれで十分であろう。でも、冒頭に述べた「パッとアクセルを開いて・・・」的な運転を旧来的な機械式スロットルの車でするとしたら、本当に省燃費になるのか?なるとしたら何故か?という点は依然疑問として残る。既に述べたように、パッとアクセルを開けても決して“ポンピングロスの軽減”にはならないから、省燃費になるとしたら別の理由であろう。

そのあたりを改めて考察した上で、“吸気系ロス(あるいはポンピングロス)の低減”ということについて再検討してみたい。(続く)
Posted at 2008/02/04 02:56:37 | コメント(0) | トラックバック(0) | 燃費 | クルマ

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