2008年04月14日
おそらく初心者MT運転手にとって最も難しいこと
初心者MT運転手にとって最も難しいこと
それはおそらく「いつ変速するか」なのだと思います。
タイトルが連番でないのは、初心者の技術としてこれまで書いたことと連続性が無いからです。
半クラは、できないと車が動かないので、MTを運転できるのであれば、だれでもできるようになります。だから、最初の壁ではありますが、最も難しいことではありません。
いつ変速するかがちゃんとわかっていなくても、MTの運転ができるつもりになっている人はたくさんいます。間違っていても車は走ります。
いつ変速するかがちゃんとわかったら、上級者かもしれません。何年ぶりかに自転車に乗ったときに転ばずに走らせられるように、何年かぶりにMT車の運転をしても、しかもそれが初めて乗る車であっても、全くエンストせずに走らせられるはずです。
さて、いつ変速するのが正しいのでしょうか。
前提を整理します。
まず、変速の目的は、車の速度と回転数とトルク(タイヤを回す力)のバランスを最適に近くなるように減速比を変えることであるとしましょう。
トルクは、減速比が大きければ大きくなりますし、減速比が小さければ小さくなります。一定速度で走っている場合は、エンジンは空気抵抗や摩擦で失われる力を補うだけですし、加速する際にはより多くの力が必要となります。
エンジンには、トルク特性とパワー特性という2つの特性曲線があります。コペンのカタログには書いてありますが、最近の車のカタログにはほとんど載っていないようです。トルクカーブは、エンジンがどんな回転数でどれだけのトルクを発揮できるか、パワーカーブはどんな回転数で何馬力発生できるかを示したグラフです。これを見ると、トルクは、一般的には回転数が上昇すると増え、ある回転数を過ぎると減少します。パワーは、トルク×角速度(つまりは回転数)なので、回転数が上がると、トルクが下がっても増えます。トルクは、軸を回す力です。
トルクが少なくても良く回るエンジンならば最大パワーは増えます。
回転数が高いときのトルクの落ち込みが少なければ最大パワーは増えます。
一方、クラッチが完全につながって、ギアがニュートラルでなければエンジンの回転数は車の速度と減速比によって決まります。車の慣性でタイヤは回されて、タイヤが回されるとその力はギアを介してエンジンを回す力になります。普通の車のエンジンはピストンの上下運動をクランクで回転運動に換える仕組みをもっていて、クランクの回転力でバルブスプリングを押しつぶしてバルブを開けるので、ただ回るのにも力が必要です。エンジンがタイヤで回されるときに、このエンジンが回るときに発生する抵抗がエンジンブレーキになります。
ギアが行う「減速」とは、滑車と輪軸の原理で回転数をトルクに変換することです。エンジンの出力軸が100回転したときにタイヤが100回転すると減速比は1でありタイヤを回すトルクはエンジンの軸トルクと同じ、エンジンの出力軸が100回転したときにタイヤが50回転すると減速比は2になり、タイヤを回すトルクはエンジンの軸トルクの2倍になります。
ある速度でクラッチがつながって走っている車で、エンジンの回転数はギアが決まれば自動的に決まってしまいます。エンジンは、必要なトルクが発生できない回転数でアクセルを踏み込むのと過度の負担がかかりますし、負荷が軽い状態で高回転で回すのもよくありません。発生するトルクはエンジンの回転数で決まるので、速度に対して適切な回転数になるようにギアを選ぶわけです。
では、さまざまな道路条件でどんなギアを選ぶのがよいか、これが問題です。
感覚的に知るには、変速のある自転車に乗ってみるのがよいです。。
発進時や加速時や坂では軽いギアが楽ですが、速度が増すと足が余るので重いギアに変速しないと乗りにくくなります。一定速度で流すには重いギアでも平気ですが、加速するときには一番重いギアだと力が要ります。
車も同様で、状況に合わせて自転車と同じようにギアを選べばよいのですが、自転車と違って難しいのは、自転車だと自分の脚なので様子がわかるけれども、車のエンジンの様子は体ではないのでわかりにくいことです。いつ変速するかがわかるには、車のエンジンの出している力を感覚的に知る能力が求められます。
車のエンジンの様子を知るには、最初はタコメータがヒントになりますが、タコメータ見ながら運転すると危ないです。現実には、アクセルを踏んだときのエンジンの反応や加速感や音で判断します。
速度が遅いとか、ゆっくり走りたいなど、エンジンの回転数を上げられない場合は、半クラを使って速度との差を埋めたりもしますし、シフトダウンすることになるかもしれません。シフトダウンすると、その速度に合った回転数は上がりますが、シフトダウンのために一旦アクセルを緩めているはずなので、エンジンの回転数は下がっています。この差を埋めるために、アクセルを踏んで回転数を合わせたり、繋ぐときに半クラをちょっと入れたりしてショックを和らげたりします。
もう一つ難しいのは、「いつ」変速するかです。
変速するには、手をシフトレバーに移して、クラッチを踏んでギアをニュートラルにして目的のギアに入れて、クラッチを繋ぐという操作がありますから、普通でたぶん1秒くらいかかります。
そして、変速が必要になるタイミングは、自分の意思で決める場合もありますが、実際には、道路の状況に変えさせられることのほうが多いと思います。たとえば坂道にさしかかったとか、前の車に合わせて発進から加速とか。こういうときに、エンジンにかかる負荷を予測できると運転に余裕ができます。
現実には、4速で加速しようとして速度が上がらないことを感じてから3速に落としたりとか、坂道でシフトダウンしたらエンジンが余ってあわてて元に戻したりとかすることはあると思います。でも、4速で加速しようとして力が足りないのをアクセル踏み込んで何とかしようとするよりははるかにマシなんです。
この、「いつ変速するか」という問題は、刻々と変化する車や道路の状態に合わせて適切なタイミングで適切なギアを選ぶという話ですから、
1.道路の状況の変化を感じ取る能力
2.道路と車の状況に今のギアが合っているかを感じ取る能力
3.道路と車の状況に合ったギアを選ぶ能力
4.道路の状況の変化を予測する能力
が必要で、これらの能力を磨く練習方法は、いまのところ実際に道路を走ってみることくらいしか考えつきません。
運転なんて、走っていればそのうち慣れるということを言う人もいますが、何かを得ようとして意識して車の運転をして慣れていくのと、何も考えずに慣れていくのでは質も所要時間も大きく違うだろうと思っています。
この、いつ変速するかは、はじめから完璧にはできるはずも無い話しですが、これを読んでくれた人は、間違った変速でもいろんな状況でどんどん変速して、そのときの車の挙動の変化を感じ取るよう意識することで、当たりとはずれの変速が感じ取れるようになると思いますし、そういう経験を積み重ねることによって最終的に正しい変速ができるようになれるのではないかと思います。
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初心者にMTの運転を教える | 日記
Posted at
2008/04/15 22:21:07
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