
左の写真にあるように、今回のアウディTTS試乗会でももちろん走りましたが、僕がドイツのアウトバーンを初めて走ったのは、今から33年前の1975年のことでした。某『CG』誌から送り出された4週間にわたるイギリス&ヨーロッパ大陸取材の旅で、パリで借りたルノー30TSの広報車を駆って走ったのです。
とはいっても、イギリスのモーターウェイ、フランスのオートルート、スイスのオートルート&アウトバーンときてドイツのアウトバーンに乗り移ったわけなので、アウトバーンでヨーロッパの自動車専用道の素晴らしさを初体験したわけではありません。そういう意味では後発のフランスのオートルートの方が道が新しくて綺麗だったため、むしろ印象はよかったと記憶しています。
だからアウトバーンに限らずヨーロッパの高速道路は・・・、という意味で印象的だったことが幾つかありました。
その1は、当時の日本の高速道路と比べると、特に追い越し車線のクルマの流れのスピードが圧倒的に速いこと。
その2は、日本と違って低速車線や走行車線から追い越し車線のクルマを抜いていくといった行為を一度も見なかったこと。
その3は、走行車線から追い越し車線に出て追い越しを完了したクルマが走行車線に戻る際、多くの場合はウインカーを点けないこと。
その4は、ずっと高速を保ちたいクルマは走行車線に戻らず追い越し車線を走り続けるのですが、前に遅いクルマがいてもパッシングライトを点滅させて威嚇するというのは稀で、大抵はせいぜい追い越し車線側のウインカーを点けたまま走り続けるといった示威行為で済ませていたこと。
その5は、フランスのオートルートとイタリアのアウトストラーダが有料であるのを除けば、当時、西ヨーロッパの他の国の高速道路は基本的に無料だったこと。しかも有料のオートルートも日本の東名あたりと比べると、距離当たりの料金は1/3程度にすぎなかったこと。
その1については説明するまでもないでしょう。速度制限ナシを標榜するアウトバーンはもちろんのこと、一応130km/hの制限速度があるフランスのオートルートでも、2.7リッターV6+3段ATで前輪を駆動しながら追い越し車線を走るルノー30TSのメーターは、苦もなく160km/h以上を指していました。それでまったく危険な印象を持たなかったのは、ヨーロッパの高速道路も今よりクルマの台数が少なかったことも、かなり効いていたと思います。
もちろんドイツのアウトバーンは乗用車で走る場合、今でも原則「速度制限ナシ」ですが、それはあくまで原則であって、大都市周辺のクルマが込みやすい場所やカーブが多くて危険な場所、あるいは森林が枯れるの防ぐべき場所などでは130、110、100といった標識が立っていて、速度制限があることを示しています。10年ほど前に速度無制限区間はすでに30%程度しかないと聞いたことがあるので、今ではもっと少なくなっているに違いありません。
その2については、例えばアウトバーンでは遅い車線から速い車線のクルマを追い越したのが発覚するとかなりの減点と罰金が科せられるほどで、あちらでは絶対にやってはいけない行為と認知されています。なぜなら、速い車線からの追い越しだけが認められている道では、ドライバーはそちら側から追い越してくるクルマのことだけを気にして走ればいいため、両側からの追い越しが可能な道路とは比べものにならないほど安全性が高まるからです。
とはいえ近年、アウトバーンでもクルマが増えたため、大都市の周辺などでは走行車線の流れの方が追い越し車線のそれより速くなってしまうといったことが発生しているのに時たま遭遇しますが、それはあくまで流れの仕業であって、走行車線側から故意に追い越しをするのは今でも御法度なのはいうまでもありません。
その3は、例えばアウトバーンの速度無制限区間を200km/hでクルージングするといった状況を別にして、ちょっと遅いクルマを追い越してまた走行車線に戻り、推奨速度の130km/hでクルージングに移るといった場合の話ですが、そういう追い越しでは走行車線に戻るのが「当たり前」なので、戻り側には敢えてウインカーを出さないわけです。
ただし、後ろから凄く速いクルマが迫ってきたので急に走行車線に戻りますよ、といった場合には、自分が追い越したクルマに「急に入ってスミマセン!」の意思表示のために、ウインカーを点けているのを目撃することもあります。いずれにせよ、走行車線から追い越し車線に出るときには左側のウインカーを100%点けて、明確にその意思表示をしているのはいうまでもありません。日本の高速道路ではしばしば目にするような、ウインカーもろくに点けずに右に左に車線変更するヤカラがいたら、ドイツでは即刻警察に通報されてしまうようです。
その4は文字どおり書いたとおりですが、日本の高速道路と違って、スローペースで追い越し車線に居座り続けるクルマがほとんど皆無なことも、さほどパッシングを必要としない大きな理由になっていると思います。
その5に関しては、ドイツのアウトバーンも近年、乗用車は無料だけれど大型トラックは有料という風に、状況が少しずつ変わりつつあるようです。どこの国も財政は苦しい、ということなんでしょうね。それとフランスとイタリア以外にスペインにも有料の高速道路があるのは、ヨーロッパをクルマで旅しようという人は記憶しておいた方がいいでしょう。
最後に話をアウディTTSに戻すと、オープンにしたTTSロードスターのウインドストッパーを立てて、南ドイツの初夏の陽光を浴びながら速度無制限区間のアウトバーンを180~200km/hでクルージングするのは、ドイツを走る悦びを存分に味わえたひとときだったといっていいでしょう。
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2008/05/11 21:11:24