
同業者の多くが似たような状況じゃないかと推測しますが、26日発売の雑誌の原稿執筆が昨夜終わったので、前から気になっていたことを書いてみようと思います。
それは、昨今のGM破産&再生問題にからんでGMが手放したブランド、ポンティアックについて。
近年、GMアメリカが持っていた乗用車ブランドは、いわゆる高級なものから順に並べて、キャデラック、ビュイック、オールズモビル、ポンティアック、シヴォレーの5つでした。
つまりポンティアックって、下から2番目だったわけですね、高級な度合いでいうと。
でもその代わりポンティアック、縮めて “ポンティ” はGM内でシヴォレーと並ぶスポーティイメージの強いブランドと位置づけられていて、コルヴェットのように象徴的なスポーツカーこそ持っていなかったものの、スポーティなモデルがけっこうあったのであります。
しかも60年代のポンティアックには、「ルマン」だとか「GTO」だとか、ヨーロッパのモーターレーシングの香りのする車名を与えられたモデルがあったのも特徴的なことのひとつで、なにやら内部に好き者がいるに違いない雰囲気が、ぷんぷんしていたのでした。
そのポンティアックが1960年秋に世に出した「テンペスト」というクルマ、皆さんご存知でしょうか?
写真の4ドアセダンの他に、ステーションワゴン、2ドアハードトップ、それにコンバーチブルからなる合計4種類のボディを持ったこのクルマ、ポンティアック独特の2分割グリルを別にすれば、見た目はわりと普通の60年代前半のアメ車なんですが、実はその内側のメカニズムが猛烈凝っていたのであります。
これはサブコンパクトという、当時のアメ車としては小さい部類のクルマだったんですが、エンジンがV8の他に直4も選べて、ガソリンを食わない、なんて謳っていたのが、アメリカ人の誰も燃費のことなんか気にしていなかった60年代当時としては、まずユニークでした。
でも、もっと凄いのがそのサスペンションと駆動系で、ほとんどのアメ車の後輪がリーフスプリングのリジッドアクスルだった時代に、コイルを使った独立リアサスペンションを奢っていたのに加えて、MTとATの両方あったギアボックスがリアに搭載されて、逸早く “トランスアクスル” を採用していたのだから驚きます。
つまり、当時はまだヨーロッパでもごく一部の独創的な高価格車しか使っていなかった高度なメカニズムを、惜しげもなく搭載していたのでありますよ、このテンペスト!
おそらくGMにはほとんど利益をもたらさなかったんじゃないかと想像できるこの凝ったメカニズム、いったい誰が採用したのかと思ったら、そこには実に驚きの人物がいたのでした。
当時、GMポンティアック・ディビィジョンのチーフデザイナー=主任設計者だった人物の名は、ジョン・デローリアン。
そう、後に独り立ちしてデローリアン・スポーツカーを生み出すかの有名な “カーガイ” が、テンペストの生みの親だったんですね。
ま、このテンペスの存在もあって、僕は数あるGMのブランドのなかでもポンティアックに特別の感情を抱いていたのですが、なんと早々に系列から外されるとは・・・。
自動車の世界、もちろんその未来も大いに興味深いですが、過去を振り返ってみるのもけっこう面白い、という話でした。
Posted at 2009/08/17 19:37:36 | |
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