早いもので、前回ムルティプラのタイミングベルト交換作業をしたのは
10年前。その後6万キロ走行している。
もっとも、前回の初交換時にタイミングベルト自体は全く傷んでおらず、
交換するのはちょっと勿体無いと感じた。(=6年で6万キロ走行)
しかし、ムルティプラは、イタリア車。
今回、走行距離は6万キロと少ないが、10年という年数が気になるので、
重たい腰を上げてタイミングベルト交換作業をすることにした。
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前回の作業から10年の間に、オルタネータの故障による交換を2回行い、
す
ぐ壊れる原因を追求し、ダクト付きのものを他車流用で加工して設置したり、色々合った10年間を物語るエンジンルーム。
早速作業に入ろう。
今回は、ムルティプラでは2回めのタイミングベルト交換なので、
これまで自宅でタイミングベルト交換をしたことが無い人でも
気楽にチャレンジしてもらえるように、あくまで「ど素人」が
挑戦してみての感想をもとに、作業のポイントを纏めておこうと思う。
プロの方からしてみれば、「そんなの、当たり前じゃん?」みたい
なことが多々有ると思いますが、素人の戯言だと思って流してください!
10年前のこちらの記事も参考にしてください。
ムルティプラ・ベルト交換1
https://minkara.carview.co.jp/userid/398935/blog/18920753/
ムルティプラ・ベルト交換2
https://minkara.carview.co.jp/userid/398935/blog/18948180/
ムルティプラ・ベルト交換3
https://minkara.carview.co.jp/userid/398935/blog/18975177/
1 補機類のベルトやプーリを外す
フェンダを外す。
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ムルティプラ整備の第一難関。
テンショナ・レスのエアコン・ベルト交換。
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ホースリムーバで引っ張りながらクランクを回転させると外せる。
純正はストレッチ・ベルトだが、非常に高価。
全くその必要はなく、三ツ星製の非ストレッチ・ベルトを使っている。
パワステポンプ自体を移動させてベルトのテンションを緩め
楽々交換。こちらは常識的なレイアウトで安心。
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その他、オルタベルトやパワステベルトも日本製の三ツ星ベルトで、
全くと言っていいほど傷みが見られない。
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最も、これらの補機類ベルトは、4~5年前に、
ボロボロに朽ち果てたイタリア製ベルトから交換している。
ちなみに、テンショナベアリング(日本製)もガタツキは見られなかった。
2 タイミングベルトの取り外し
タイミングベルトの取り外し前にTDCを正確に求め、
現在のバルブタイミングが既定値からどれだけズレているかを知る。
カム押さえツールを使用して、正確なバルブタイミングを求める。
作業中に、クランクを回したり、ダイヤルゲージを
プラグホールに挿入したりするので、
スパークプラグを外しておく。
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ダイヤルゲージは1番シリンダーで使うので、
1番シリンダーはブラグを完全撤去、その他は
緩めておくだけで良い(圧縮を抜き、クランクを回しやすくする)。
で、ムルティプラの整備解説書によると、
タイミングベルトカバーの印と、クランクプーリ(補機類ベルト用)のマークを合わせると大まかにTDC付近となることが記されている。
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あれこれ、回りくどく書いてあるが、
お猿的に、簡単解釈すると・・・
大まかなTDC(仮のTDC)にクランクシャフトの位置を合わせたら、
タイミングベルトカバーを外し、エンジン・ブロック側のネジ穴に
専用指示針(=針金で代用)を取り付け、クランクの補機類ベルト用プーリに
分度器の0°をその針金に合わせて貼り付ける。
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分度器上で10°クランクを正回転させた時のピストンの沈下量を読む。
今回の沈下量は0.55mmだった。
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次に クランクを逆回転させ仮のTDCを超えてピストンの
沈下量が0.55mmとなるところで逆回転を止める。
今回は-8°だった。
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つまり、真のTDCは、仮のTDCから1°進んだところだったのである。
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この作業の確実性を増すために、
真のTDCからクランクを10°回転させた時と、-10°回転させた時の
ピストンの沈下量が同一であることを確認する。
今回は共に0.57mmであったので、真のTDCは正しく求められたということになる。
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この状態で、バルブタイミングが狂っていなければ、
カム押さえツールがピタッと収まる筈である。
カム押さえツールの装着とカムスプロケットを緩める作業は
エキゾースト側を済ませてからインテーク側を行う(重要)
イグニションコイルをサクッと外して・・・
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エキゾースト側のカムシャフト遠心のメクラ蓋を外す。
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この状態で、カム押さえツールが入らない・・・
つまりバルブタイミングがずれている!
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カム押さえツールの凸部とカムシャフトの切り欠きが
ぴたっと合うように、クランクシャフトをわずかに回転させる。
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4°くらいずれていた。
つまり、設計値よりもちょっと早く排気バルブが作動していたことになる。
カムシャフト押さえツールで固定したら、
排気カムスプロケットのボルト(120N)を少々緩め、グラグラにしておく。
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カムスプロケットと、カムシャフトの間は、ボルトを緩めた状態だと、
10°くらい調整代があり、カタカタと動く!
同様にして、クランクシャフトを僅かに回転させて、
吸気カムシャフト押さえツールをセットする。
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吸気カムスプロケットのボルトも緩めてカタカタと動くようにしておく。
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ムルティプラ整備の第二の難関。
ムルティプラのタイミングベルトを外すには、
補機類ベルト用のプーリを外さなければならない。
しかし、大まかなTDCを出したり、正確なTDCを求めるには
再び補機類プーリを装着しなければならない。
つまり、あの面倒くさい正確なTDCを求める作業を
もう一度やらなければならないのだ!
さらに面倒なのが・・・
ムルティプラの場合、補機類プーリは36mm(190N)の大きなナットで
固定されているので、これを緩めるには、予めフライホイールの
固定をしなければならない。
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供回り防止のための、フライホイール・ロックツールを
リフトアップしてから取り付けをする。
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外した補機類プーリ。
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今回の作業でわかったことのまとめ
バルブタイミングはズレていた。
タイミングベルトやプーリー、
テンショナープーリ、ウオーターポンプは
すべて全く傷んでおらず・・・新品同様?
正直もったいない!
ベアリングは動きがなめらかで、
聴診器でも雑音なし。
カタツキなし。
補機類のベルト群やテンショナプーリも
全く問題ない!!
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タイミングベルトのアイドラープーリは、
新しいほうはブラジル製だし・・・
交換する気がしない
ということで、正確な作業を心がけて組み直し・・・w
さらに2万キロくらい走ってから考えよう(笑)
3 タイミングベルトの組付け
組み付け時のカムスプロケットやカムシャフト押さえツールの扱い、
テンショナーの締め上げの手順に注意。
双方のカムシャフト押さえツールが装着され、
カムスプロケットが緩んだ状態で、
タイミングベルトをかける。
クランク→アイドラ→インテーク→エキゾースト→テンショナー
の順でベルトを合わせていく。
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このあと、補機類プーリをとりつけ、
再び、先の方法で真のTDCを求める。
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このあと、ベルトのテンションをできるだけ強く張る。
(まずは、「ギチギチテンションMAXにしろ・・・
このように整備解説書には書いてある)
テンショナーの固定をしたら、
カムスプロケットのボルトを締めてから、
カム押さえツールを外す。
またベルトテンショナーを引っ張るためには、
このようなSSTが必要(10年前に自作したもの)
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こちらが、改良版(剛性アップ)のSST
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上の画像のように、近隣のネジ穴を支点とし、テンショナーの台座に開けられている穴を作用点とした梃子でテンショナーを台座ごと右側に移動させてベルトに張力を付与します。
勘所は、下の動画で御覧ください
テンショナの固定ボルト(12mm)の規定トルクは25Nだが、
仮固定時は20Nで十分。
カムスプロケットのボルトの規定トルク(120N)
カム押さえツールを両方とも外し、クランクシャフトを2回転ほど
回してみて、異常がないかをチェック。
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このあと、強すぎるベルト張力を弱める調整をする。
4 タイミングベルトのテンションの目安
強くかけすぎてはいけない。
若干弱いかな?くらいで十分。
テンショナーの下側にテンションメーターの「針」が
出ている。
クランクプーリを手回しすると、「針」がぴょこぴょこ
動くのがわかる。
テンションの目安は、「針」が切り欠きのところにくる
ということのようだが、実際はそこまで強めたら、
ベアリングが持たない。
ベアリングから「ジリジリジリジリ」というベルのような音が出たら
強く張りすぎである。
何度か試行錯誤してベルトのテンションを決める。
テンショナの固定ボルトを規定トルクで締める(25N)
ちなみに、冷間時はベルトのテンションメーター「針」がほとんど
振れていない状態でも、エンジンが暖まると上昇してくる(左の切り欠きのほうに寄ってくる)。
★エンジンが十分に温まっても、目安を超えてはならない!
★エンジンが冷えているときに、ぶん回すとコマ飛びする可能性がある。
★不用意にベルトのテンションを緩めると、ベルトがカムスプロケットから
外れることがあるので、注意すること。
大まかなTDCで行うと良いかもしれない。
正確にやるなら、真のTDCを求め、カムシャフト押さえツールを装着して、
スプロケットを緩めてから、テンショナーを弄ったほうが良さそうだ。
(つまり完全やり直しw これで半日遅れた・・・戒め)
慣れれば、一度でテンション決まる。(ギチギチテンションMAXしなくてOK)
坂道で強めにサイドブレーキを引く時くらいの力・・・わかんねぇか?
作動をチェックしたら、補機類ベルトを組み直し、完成。
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今回は、おまけに、スロットルを外して清掃。
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ブローバイ汚い・・・
寒い日の冷間時、アクセルを少し煽ると
異常にアイドリング回転数が上昇する原因はココ?かもしれない。
ISCVの部分に溜まった「タール」のようなブローバイを洗浄する。
ムルティプラでは、ISCVがスロットルボディと一体型になっているので、
ISCV制御モータ側を上にして、モータ側に洗浄剤が行かないように
気をつけながら、エアーの通り道の洗浄、バルブの洗浄をする。
終わりに、
自動車の整備解説書は、アマチュア向けには書かれていない。
例えば、真のTDCを2度求めなければならないことは、記載されていないし、
タイミングベルトの項目に、補機類ベルトのプーリの取り外しは言及されていない。またそのプーリの取り外し・取り付けにフライホイールのストッパーが必要であることも、別の項目を見ていたら偶然発見した。
プロからすれば、当たり前のことでも、アマチュアはわからないことだらけ。
DIYは好きだけど、タイミングベルトの交換はやったこと無い・・・
当ブログが、そういった方の手助けとなれば幸いです。
イタリア車のタイミングベルトは鬼門である。
誰が何時言い出したのか?
確かに、30年くらい前はタイミングベルト自体がヤワで切れたり、
15~20年位前だと、テンショナーの材質が悪くて、それが原因で
タイミングベルトが切れる事故があったようだ。
しかし、ここ十数年はベルト自体の耐久性が上がり、ベルト周りの
ベアリングも日本製を採用するなど、あまり神経質になる必要は無いと
考えられる。
もちろん高いお金を払ってもらう人は、工賃が同じであれば、
新品交換のほうが良いであろう。
DIYならではの知見が得られたのでブログにしてみた。