京都のJK久しぶりに見たわww(写真とは関係ありません)
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京都に「懐かしい」という言葉はあまり似合わない。確かに寺社仏閣など古い建物はしっかり前見たままに保存されているが、それ以外の部分はいつ見ても違った表情を見せる。正確には大学に入ってからも何度か京都を訪れているが、京都の高校に通い、京都の予備校に通っていたころとは、微妙に景色が変わっているように感じられる。こんな移りゆく、そして見る人によって多様な表情を見せる京都の街の「景観保護」という考え方はTには理解できない。「景観保護」の基準といえる「景観」なんてそもそもないのに。
似合わない、と言ったが、それでも実際そこで生活していた感覚からすると、やはり懐かしい風景がある。一号線が突き当たる先はまず東寺。ここの境内にある高校でTは三年間学んだ。良い意味でも悪い意味でも印象的だった(そしてその大部分は暗い印象だが)高校生活。そして道は堀川通に移り、京都駅を通過、二条城を過ぎて、何度か模試を受けに行った駿台京都校も見える。
Tは窓を開ける。パワーウインドウだが、前から調子が悪く、今日も一回では降りない。外からは雨上がり特有の空気が流れ込む。もう昼間でも寒い日が続いていたが、湿気のおかげでどこか寒さも和らいでいて、車内に入る風もやわらかい。意外だったのは、市内といえど、動かないほどの渋滞はほとんどなかったということだ。電車やバス(乱暴な運転の市バスは大嫌いだった)でしか行ったことが無かったが、車を停める場所を考えなければ、市内をドライブというのもなかなか良いかもしれない、とTは思った。
時間に余裕ができたので、ちょっと寄り道をするため丸太町通を東に進み、御所を見ながら、東大路通で北に方向転換する。だが寄り道の先は空振りに終わる。そこには誰もいなくて、ただTの車のような、傷んだ(中にはタイヤもないような)車が並ぶだけであった。おそらくもう役目を終えたであろう車たちを見て、これまで京都のドライブ間意識の外にあった「あの思い」が、Tの頭の中にぶり返してくる…。
特に何をするでもなくすぐに出発し、一気に北山の方へ。サッカーの試合で行ったことのある洛北高校の横を過ぎ、40号線に入ると道は一気にせまくなる。ここまで来るともう市内という感覚はない。Sからは簡単な住所しか教えてもらってないので、前日「google map」で調べたあたりまで行って、あとはSに電話で聞くしかないのだ。地図の通りに進み、とりあえず目に入ったローソンに車を停める。約束の時間まではまだ時間があったので、持ってきた文庫本を取り出した。
「本当にいいのか…」
小説を読みながらも、その内容はなかなか頭に入ってこない。目的の場所に近づくにつれ、さまざまな迷いが再び渦巻く。まだこの車でやれるんじゃないか?こいつは俺しか乗ってやれないようなもんじゃないか!?いや、自分のステップアップの為、スキルアップの為、大会で勝つため、割りきればそれで済むんじゃないか?この苦悩はどのようにして伝えればいいのか…。そんな意識を振りはらうように(おそらくあまり考えたくなかったからかもしれない)、Tは携帯のダイヤルボタンを押す。まだ時間よりも早かったが、もうそうするしかなかった。
ダイヤルがやけに長く感じる。そうじゃなくても初対面の人への電話だから、当然緊張する。
「もしもし…」
SはTが勝手に思い描いていたようなまさにその声で電話に出た。
(別に続けるつもりでは無かったのに…)
Posted at 2009/12/06 11:18:35 | |
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