2014年02月26日
井上は時計を見た。
19時開始のライブを見に行くために、今日は午後有給を取得するつもりだった。しかし、年度末が近付くこの時期の職場は、例年以上に忙しい。今日も結局、明日の報告資料の確認の為に部下に打ち合わせを入れられてしまった。まだ経験の浅いこの部下には、役員会議に資料はまかせ切れない。
大学に入ると同時に軽音楽部に入り、音楽漬けの4年間を過ごした。学内では少しは知れたバンドと言われるほどに練習した。愛用のブラックのストラトは、好きなアーティストへの憧れの表れ、金はなかったから、表面のクリア塗装を剥ぐと音が良くなるとか、昔のギタリストがライブ中に煙草をギターに挟み、付いた焦げ痕をまねてライターであぶったり、今から思い返すとどうでも良いようなことにこだわり、それでもそんなことをしながらサークル仲間と過ごしたもんだった。
「これでいいだろ」と、資料は切り上げた。いつもは考えさせる時間を作るが、今日はいささか強引に自分がガイドした。時間は18時。高速で名古屋まで行くにはギリギリか。説明をしながら後半は半分腰が浮きかけている自分に気づき、昔の頃の純粋な気持ちが蘇ってきた。いつから音楽CDなんて聞いてないだろう。いつから音楽に感動してないだろう。通勤の車中は日々の疲れからぼんやり過ごすことが多く、ラジオを流しっぱなしにしているだけだった。
愛知県体育館に着いたのはちょうど19時5分。もう始まっているだろう。昨日ネットで武道館でのセットリストを確認したが、武道館でのオープニングは「Pretending」。自分が一番好きな曲の一つだ。まぁ仕方ない、まだ始まったばかりだろうし…
幾何か肩を落としながら会場に入ると、幸運なことにまだ始まっていなかった。アリーナの席をかき分け、前から2列目の席を目指す、と同時に照明が落ち、リフが始まり、スポットライトに彼が登場した。ステージの彼は、全盛期とはまた違う熟した声と、変わらないスローハンドを披露する。席に着き、背広を脱ぎ、15年前のバンドマンの自分に戻った_
…
と、書いたが、自分は遅れることなく、年休とって人生初のライブ参加してきた!
初めてのライブが、クラプトンなんて贅沢すぎる、と一緒に行ったやつに言われながら、言葉通り堪能してきた。素晴らしすぎて、脱力して、次の日の仕事のやる気なさたるや。。
来てる人は、年齢層高く、仕事帰りに見に来たような、疲れ気味の、それでもちょいお洒落なおじさん方も多く、それもスゲーいい雰囲気やった…
Posted at 2014/02/26 23:57:24 | |
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