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2013年06月06日 イイね!

上総・天津小湊をめぐる房総紀行 その2 南無妙法蓮華経の里編

上総・天津小湊をめぐる房総紀行 その2 南無妙法蓮華経の里編
承前

上総・天津小湊をめぐる房総紀行 その1 小湊鉄道乗車編

半島という特殊な立地条件ゆえなのか、或いは風土として時の流れが極めて緩やかに流れているのか、その原因はともかく、上総の内陸部はほぼ全域に渡り、緩慢な時が空間を支配しているように思える。小湊鉄道や周辺の雰囲気からでもこうした独特の匂いを嗅ぎとっていただけたかと思う。

ここはまたゴルフ場が乱立していることでも有名だが、不思議なことにコースは丘や林に隠されているのか、一般道路から見えることはほとんどない。
両者が実にうまく共存している。
ゴルフ場自体は風致としては、里山が残るイメージとしての日本の原風景と相克の関係にあるようだが、上総ではそういう軋轢がほとんどないと言って良いだろう。

言うまでもなく、房総半島は周囲をぐるりと海に取り囲まれている。
東京湾沿いの内房地区は上総でも袖ケ浦市辺りまでは海岸沿いが一大工業地帯になっていて、その点では「小湊鉄道的風景」とは装いを大いに殊にする。
とはいえ、木更津より南側は山が海際まで張り出し、民家も物持ちのよさげな装いのものが多くなる印象があり、色彩で表すと古錆びて赤茶けているような感を抱く。
幹線道路も海と山に挟まれて決して広いとはいえないが、館山道という高速道路の開通により、こうした環境に浸ることもなく、半島の舳先まで行くことができるようになった。

一方で、私たちが目指した外房地区は太平洋に面しており、特に九十九里浜は壮大で延々と続く砂浜である。陽射しの強い晴れた日に海際をドライブしていると、対岸のアメリカ西海岸もさもありなんというほどに開放的な道路が続き、非常に爽快である。
しかし、同じ上総でも針路を南にとり、半島の舳先のほうに行くと、広大な砂浜は徐々にリアス式海岸に変貌し、安房に入ると無数の小さな湾が入り組んでいるという有り様で、同じ外房(内房地区を安房鴨川まで含めるとする考えもあるけれど、太平洋に面している地域は外房とみなしたい)でも対照的な風景を醸し出している。





国道のバイパスが整備されているので、海沿いの往来は容易であるが、かつては上画像のような狭い道路が幹線道路だったという。
なお、バイパスはトンネルも多く、リアス式ならではの峻厳な地形の有り様を象徴しているようである。因みに、高速道路は外房の海沿いには無く、この点でも内房と対照を成す。
房総半島自体が東京からの日帰り圏内であるが、距離という点からしても、交通の便からみても、一番遠方にあるなと感じるのは、上総の勝浦であり、安房の鴨川付近だと思う。
歴史の軸を大きく過去にずらしてみれば、勝浦や鴨川はよほどの僻地であっただろう。関東地方自体が中央となったのも江戸時代になってからだ。
もっとも、鎌倉時代に幕府が置かれたが、幕府が日本全体を完全に統治するくらいに権威や権力を日本全国に広めていたとは言い難いだろう。西日本では朝廷や諸豪族の力も強かった。むろん、当時では日本で一番権力のある政権であったことには違いないが。

天津小湊という鯛の浦という湾に面した小さな集落がある。
そこに宿を取ることにした。





「南無妙法蓮華経」という言葉を聞いたことがあるだろう。
これはお題目と呼ばれ、鎌倉時代に生きた日蓮が開祖である日蓮宗(法華宗)では、このお題目を唱えることこそが至上のことであり、仏となる道なのだと信じられている。
因みに、「南無阿弥陀仏」とは浄土真宗の信徒が唱えるもので、これを唱えれば阿弥陀如来の導きにより、極楽浄土(極楽とは阿弥陀如来が住む浄土のことである)に行くことができるとした教えで、お題目とは異なる点に注意したい。
仏教の経典には「妙法蓮華経」というお経があり、日蓮宗ではこれを最高にして唯一の経典とした。「南無妙法蓮華経」とは「妙法蓮華経」に帰依しますという意味の言葉と言って良いだろう。
ちなみに、比叡山延暦寺を建立した最澄から始まった教えは「天台法華宗」といい、
最澄が活躍した平安時代初頭には既に仏教経典として重要視されていた。

日蓮は安房小湊の地で生誕し、始めは比叡山で修行したが飽き足らず、上記のような教えを説いたのだが、当時の鎌倉幕府に自宗以外を排斥せよと強く要求するなど、実にエネルギッシュな人物だったようで、当時の視点から見ても現在の視点から見てもアクの強い日本人離れした人物だったと推察される。

彼の生誕地には誕生寺というお寺が設けられたが、度重なる地震や津波により、現在は海中に埋もれてしまった。
しかしながら、そのすぐ近くに再建され、今でも日蓮宗の「南無妙法蓮華経」のお題目が刻まれた白い法被(?)を着ている人や僧侶の姿が目立っていた。
われわれは海のみならず、誕生寺をも眼下に見下ろす好立地にて宿を取ることにしたのであった。




温泉が湧き出ているのは日本ならではの僥倖とも言うべきで、露天・内風呂問わずに海原をじっくり眺めて入浴し、温泉のエネルギーを吸収することができた。
なお、浴場の裏側の廊下からは誕生寺の山門を眺めることができる。
夜の入浴後にはホテルのバーで日本酒を飲んだ。これがまた格別にうまかった。
五臓六腑に染み渡るという言葉が共振する。つまみもそこそこであったが、気持ちよく睡眠を取ることができた。
日蓮は般若湯と称して酒食を楽しむことは無かったことだろう。
素晴らしいホテルであった。

翌朝も風呂に入り、朝食を済ませてチェックアウトしたのち、鯛の浦を船で遊覧することにしたのだが、これは後ほど記そう。
鯛の浦は日蓮宗の人々にとっては聖地に等しい(地元の人々にとっても)。そこにはとある伝説が原因となっているのだが、これも別稿で述べよう。

雨の予報の割には恵まれていたのだが、鯛の浦遊覧後の誕生寺散策の時だけ、雨が強く降っていた。紫陽花の花でもあれば風情が出て非常に良いのだが、温暖な安房らしく、ソテツ(?)が仁王門と同じくらいの威圧感でそびえているのが、可笑しかった。存外、雨景色とにあっている。
また、仁王門を色彩付ける茶の色がより色濃く見えるようで美しかった。





特に晴れた日の外房は空も海も底抜けに明るく、なぜこのような環境で育った日蓮が真の仏道を求道するようになり、日本的基準からいえば極めて激しい教義を編み出すに至ったのかが不思議でならず、いまもってその疑問は解消されていない。
そんなこともごくごく稀に思い浮かべながら、天津小湊での一泊を楽しんだ次第である。

Posted at 2013/06/06 11:03:41 | コメント(1) | トラックバック(0) | 定例の宿泊旅 | 旅行/地域
2013年06月03日 イイね!

上総・天津小湊をめぐる房総紀行 その1 小湊鉄道乗車編

上総・天津小湊をめぐる房総紀行 その1 小湊鉄道乗車編
千葉県、殊に房総半島の中部(上総)と南部(安房)は地政的に分が悪い。
半島の形をしているがために、陸上道路交通が主流となった今では、距離的に近くてもえらく時間がかかる。
かつては半島経済と呼ばれ、問題とされた時期もあった。

しかしながら、物事は必ずしも一面的に捉えるものでもない。
却って、この地政的な不利が昔ながらの雰囲気を保持するのに役立った。
首都圏にも関わらず驚く程に佇まいがのんびりとしていて、内陸部ではまるで夢物語の世界に迷いこんだかのような感を抱くことがある。
海にしても特に太平洋側に面する外房地方は海も実にきれいで透明である。
こんな場所に気軽に行けるわけだから、都民は非常に恵まれているといわねばなるまい。

とはいえ、鉄道の場合はそれでも二時間は見ておくべきだろう。
JR区間でも単線路線があり、特急列車はあるものの本数は都心に比べれば圧倒的に少ない。
そうなると方々をめぐりながら、房総の種々の魅力を満喫するにはやはり自動車がいいということになる。
ということがいえるようになったのも、アクアラインが開業し、価格がだんだんと手頃になったからだろう。
今ではETCを利用すれば、800円で川崎の浮島から30分ほどで、対岸の千葉県木更津市に行くことができる。
当初はそれでも海ほたるで引き返してくる東京・神奈川方面のクルマが多かったが、最近はアウトレットができたりして、木更津も往年の賑わいを取り戻しつつあるのではないかという気さえする。
木更津はデパートが閉店したり、商店街がシャッター街状態になり、アクアライン開通で地元の人々が横浜に買い物をするなどして、ますます空洞化したという経験がある。現在ではアクアライン入口付近は休日ともなると渋滞しているくらいで、それだけでも活気があって良いのではと思う。





殊に館山道や圏央道などの高速道路網の充実も地政的不利を克服する要因となりつつあるが、まだまだのんびりとした半島独自の風情はそう簡単に失われるものではない。
圏央道のICを降りて、20分ほども運転していれば、ただでさえ田地やこんもりとした林が広がる大地がますます深くなる。道路も中央線のない道路が増え、トンネルは手彫りではないかと思うような箇所が多くなる。この点は、幕張を要する政令指定都市の千葉市を始めとする地域や、銚子や佐倉・成田などの下総地区とも大いに異なる上総・安房地区特有の形態である。
トンネルに関しては手彫りではないにせよ、街灯が無いものも多い。





かつてモータリゼーションの普及と地方部の鉄道利用の低下及び国鉄の赤字債務増加の影響で各地の路線が廃止されたことがあった。
地方の私鉄もその例に漏れなかったが、千葉を代表する私鉄はいずれも元気いっぱいである。
ローカル私鉄でいえば、小湊鉄道・いすみ鉄道(元国鉄木原線)・銚子電鉄などが代表格だろう。いずれも、変哲もないのどかな路線なのだが、逆にそれをアピールすることで、注目を集めた。また、それに関連し、様々なグッズ販売をするなど、ローカル私鉄ならではの経営努力が実り、いずれも順調に営業を続けている。
殊に、上総を横断する小湊鉄道・いすみ鉄道は単線ディーゼルという首都圏では絶滅した形態で運行されており、沿線も緑に囲まれてのどかそのものである。
小湊鉄道の月崎という駅がある。
夜になると駅舎の左上にきれいな月が出てくるのだが、そこでしばし都市空間からの解放を満喫した。





月崎駅の構内(無人駅である)に入った瞬間に、シャーという気持ちの良い音をした霧雨が降ってきた。すると、やおら蛙の大群がげこげこと鳴り始めた。雨はすぐに止むと、蛙も合唱に疲れたのか鳴き止み、駅は再び静寂に包まれるようになった。

ここで、ふと閃いて試しに小湊鉄道に乗ってみることにした。
ディーゼル音が聴こえてくるのを注意深く待ちながら、乗車する。



列車はそのまま進行する。
やがて、若い女性の車掌さん(小湊鉄道ではほとんどが女性の車掌なのも特徴である)が行き先を尋ねる。月崎の駅にクルマを停めたままなので、終点の上総中野駅までの往復切符を買う。この辺りの車掌さんは非常に手際が良く、次の駅に到着するまでには車掌室に戻っていった。



乗客は四人。
うち、一人は白人の方のようであった。
ちょうど前の展望が開けた箇所に座っておられたが、ご厚意(好意)で少し場所を譲ってもらった。



上総中野駅で運転手さんも含め、全員降車。
運転手さんはタバコを口に加えながら、折り返しの運行に備える。
くだんの白人の方はイングランドから来られたそうで、館山にクルマを停めて小湊鉄道に乗ったそうだ。我々は再び引き返さなくてはならないが、彼は接続するいすみ鉄道に乗り、外房線経由で館山に行くこととなる。
ところで、日本では14時とか16時という言い方があるが、これは英語圏では一般的ではない。軍隊では使うかもしれないが。
14時はあくまで午後2時であり、16時はあくまで午後4時に過ぎない。
だから時刻表を見ても見当が付かないようなので、先発・次発の時間を教えてあげたところ、間に合いそうもないということで駅から立ち去っていった。次発に乗るのだろう。
上総中野に食べるお店があるかと聞かれたが、確か無かったと思うし、パンを売っているような小さなお店も隣の養老渓谷駅にあったくらいだったかなと思ったので、よくわからないが無いと思う。ただ、自販だけはたくさんあるということを伝えておいた。
目に見える範囲で既に二箇所もある。
本当に日本は飲み物に不自由しない。




われわれは赤とクリーム色の列車に乗るが、彼は黄色い列車(いすみ鉄道)に乗る。
ほんの少しの時間だったが、袖すりあうも他生の縁であろう。話し相手ができて良かった。
日本のローカル線が大好きだという。たぶん、イングランドと風景が似ているのではないかなとも思ったのだがどうだろう。
放牧こそされていないが、小湊鉄道のこの辺りは草っぱらが多いような気がする。
イングランドの田舎というのはこういうものではないかなと思っているのだが。




月崎駅に戻る。
駅前の小さなお店で飲み物と冊子タイプの小湊鉄道の写真集を購入。
店主ともしばしお話をする。雪の小湊鉄道の写真があったから、ここらはかなり雪が降るのですかと訪ねたが、年に二度ほど降るかどうかだそうで、やはり内陸部とはいえ、温暖な房総半島なのである。



引き続きのどかな田園風景、草っぱら、林を見ながらゆるゆるとクルマを進める。
途中の県道で無人の信号(工事用のために設置されるもの)があったのだが、赤のままで変化がない。直に軽自動車が後ろから来て、より狭い道に入っていったので、ままよとばかり入っていくことにした。ここはまさに5ナンバーがギリギリの道路で、完全に地元道であったが、集落に出てからは素晴らしい花々を眺めることができたし、先導役となった軽自動車には感謝したい。






本当にのどかな風景だ。
思考や感情の波が平板になり、精神が浮遊してくるような感覚すらする。
これが東京から100キロも離れていない房総のとある地域における私の紛れもない実感であった。

Posted at 2013/06/03 05:37:43 | コメント(1) | トラックバック(0) | 定例の宿泊旅 | 旅行/地域

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