
さて、Zであったりボクスターであったりリーフであったり…と、色々キワモノ!?な最近のネタでしたが、今回は久々の新車試乗記となります。
最近話題沸騰、個人的にも大注目な、マツダのスカイアクティブデミオの試乗レポートをお届けします。ちなみに、街中で軽く15分程度走っただけの簡易的なレポート。いずれ、ロングランを…したいところですが、レンタカーで配車してくれるかなぁ…(笑
スカイアクティブ技術について色々と詳しく書いていくと、とても1回では収まりきらないので、そこはあくまで走りの印象に絞って。むしろマイナーチェンジしたデミオがどう変わったか、その1グレードであるスカイアクティブがどうだったか、という観点でレポートしていきます。
ちなみに、今回のデミオに搭載されたスカイ技術はあくまでエンジンのみ。しかも当初から計画されていたわけではなく、この競争激しいクラスで強力な起爆剤となるべく、クルマの内容を見ていくと技術者の方々の苦労がにじみ出る「数字ありき」のスカイアクティブ第1弾がこのデミオ、と言えます。加えて言うと、CVT専用のこのデミオスカイアクティブは、日本市場専用モデル。いかにマツダが、今回このスカイアクティブで日本市場に勝負をかけているかが分かります。ある意味で、マツダの運命を左右する試金石でもあるのです。
さて、ハードルを上げ過ぎないところで、まずはマイナーチェンジでの変化を兼ねてのスタイリングチェック。一番目につくのはフロントフェイス。マツダのファミリーフェイス採用で、大きく口をあけニッコリとした豊かな表情になりました。ちなみに今回のマイナーチェンジで、以前は差別化されていたスポルトも同じバンパー形状になったのもポイント。サイド、リアからの変更点はなし。しかしもともと造形性の高いデミオのデザインは、今でも色褪せる事なく十分通用する、カッコいいスタイルですね。
さて、ベース車とスカイアクティブの見た目上の違いは、ヘッドライトにブルーのラインが入り、専用のアルミホイールとルーフスポイラー、そしてリアにエンブレムが装着される程度。ブレーキを踏むとテールライトがLED化されている事に気付きますが、見た目は同じデザインとなっています。またヘッドライトの装飾はアクセントになってていいですが、これを目立たせるためか、はたまたエンジン内のスペースの問題なのか、他グレードで選択できるHIDがなぜかオプションでも未設定なのが残念。スカイアクティブ専用の軽量14インチアルミは見た目もなかなかよくて○。スポークが細いので、リアのドラムブレーキが目立ってちょっと貧弱に見えるのが玉に傷かも。
見えないところで言うと、床下を覗きこむとベース車とは全く異なり、各部にアンダーパネルが装着されて相当に空力に関して工夫がなされている事が伺えます。ちなみにこの影響で、最低地上高はベース車比-15mm。Cd値は0.29とこのクラスではかなり優秀な方。
さて、ドアを開けて室内へ。インテリアの質感も現デミオの課題でしたが、モールやパネルの追加などで、色々とそのあたり手が加えられています。また。ハザードスイッチが赤色となって目立ちやすくなっているのは、細かいところながら気の効いている改良点。加えて、スカイアクティブ専用のブルーのメーターのおかげもあって、安っぽい印象はかなり抑えられています。
ただ、スカイアクティブの売りの1つ、アクセル&ブレーキだけでなく、ステアワークも含めてエコ運転を支援する、インテリジェントドライブマスター「i-DM」の表示がメーター左側にあるのですが、いかんせん表示が小さ過ぎて、これを気にしながら運転するのは正直危険。大人しく燃費計表示をさせておいたほうがよさそうです。繰り返しになりますが、メーター自体の質感は○。マイナーチェンジでできる範囲で最大限頑張って工夫しようとした努力は伺えます。
メーターを見ていると気付く事がまた1つ。タコメーターのレッドラインは、なんと5500回転とかなり低め。これは、マツダ技術陣が燃費目標達成をするため、最後の最後で犠牲にした部分だそうです。CVTとの組み合わせだからこそ割り切れた部分かもしれません。実際にこの1.3Lはタコ足4-2-1排気でなかったりと、制約上本来のスカイアクティブの技術を全て搭載できているわけではありません。
さて、色々確認したところで、試乗といきましょう。試乗車はラディアントエボニ―レッドマイカ。またパッケージオプションが2つ装備された豪華仕様。なぜかスカイアクティブ仕様のみ、運転席シートリフターがオプションとなっており、このあたりの装備の加減マジックは上手く騙されずに判断しなければいけません。
さぁエンジン始動。外からはエンジン音はいたって普通、マフラー付近の排気音は少し硬質感のある音ですが、安っぽい印象はありません。試乗当日の天候は晴れ、気温は34度。当然エアコンは全開状態でのスタートです。
ゆっくりと動き出して、歩道の段差を乗り越えて合流…この瞬間でもまず感じる事ができるのは、足回りの改良とボディ補強がとても良く効いているという事。現行デミオが大幅なシェイプアップをして登場した当初、その軽快で機敏な動きに驚いたと同時に、先代デミオがもっていた乗り心地の良さやスタビリティをある程度犠牲にしている感じは否めませんでした。端的に言えば、コンパクトカーらしい軽快感を手にいれたと同時に、このクラスらしい安っぽさも同時に露呈したというか…機敏だけど華奢、そんなイメージが個人的には強かったように思えます。そのあたりのバランスのまとめ方はスイフトの方がはるかに上手だった…
しかし、今回のマイナーチェンジで、リアサスブッシュの特性変更やダンパーのリファイン、鉄板肉厚化などによる念入りなボディ補強などの改良が行われたおかげで、この華奢で安っぽい乗り味はかなりの部分で改善されたように思えます。たとえば、段差を乗り越えた時であったり、ハーシュネスの遮断やダンピング性能の向上など、あくまでタウンユースでの試乗に限った印象ですが、この速度域でもその進化度合をはっきりと感じられただけに、これはワインディングや高速などでもきっと実感できるはず。シャシーの改良はスカイアクティブに限らず全グレード共通して行われているので、まずはこの素の基本性能の部分の進化を歓迎したいところです。
次に感じたのは、静粛性の良さ。デミオってこんなに静かだっけ!?っとちょっと驚いてしまったほど。これはスカイアクティブ専用の遮音性を高めたフロントガラスや吸音材などの新素材を取り入れた専用シートなども影響しているでしょう。個人的には、スイフトといい勝負。ダウンサイジングユーザーにとっては嬉しいポイントです。専用スペックのヨコハマアスペックの印象も、飛ばさない領域では上々のマッチング。
さて走り始めてもしばらくはエアコンON状態が続きますが、なんとこの灼熱の悪条件の中で、10分ほど走るとエンジンがストップ。以前アクセラに乗った時は、マツダのi-stopの作動条件はかなり限定されている印象があったのですが、アクセラやビアンテよりもはるかに積極的にアイドルストップをさせる制御へと変わったのは○。高価な専用タイプとはいえ、バッテリーが1個搭載に減ったのも歓迎したいところです。
さて、話は動力性能の方へ。まずはスペックをおさらいしておくと、スカイアクティブ1.3Lは84ps・11.4kgmと、出力の面では高回転分を犠牲にした分少し下がり、またトルクも少しダウンし最大発生回転数も上がっている…など、スペック上見る限り少し寂しい印象。しかしながら実際走ってみるとこれがゼロ発進から十分に活発でトルクフル。エコを意識し過ぎてドライバビリティが下がり、アクセルを逆に踏み気味になって本末転倒…なんて事はほとんど感じませんでした。むしろ従来の13C-Vよりも活発に感じるほど。
もちろん、幹線道路への合流など、少し瞬発力が問われるところでの加速はそれなり。CVTのセッティングもアクセル開度が少ない場面ではナチュラルでとってもいいのですが、踏み気味になると回転が先に上がってその後で速度が追い付いてくる…というような、ちょっとCVTの嫌な部分が目につく場面もありました。このあたり、街乗りでは反応が鈍くて少しかったるいけど、速度域が上がってくると俄然印象がよくなってくる…というスイフトの副変速機付CVTとちょうど印象が逆という感じです。1.2Lのスイフトとの動力性能で比較すると、街乗りではデミオSKY断然勝ち、速度域が上がってくると良い勝負…といったところでしょうか。
そういった点で少し不満がありつつも、実際エンジンの吹けはスムーズで、エンジンサウンドも軽やか…なのは、マツダのズームズーム魂の意地でしょうか。劇的な気持ち良さというものはありませんが、燃焼効率を追求した最新レシプロエンジン…という前置き云々はさておいて、普通のユーザーがなんら不満なく違和感なくサッと乗れてしまうという、いい意味での自然な仕上がりは、完成度の高さを感じさせます。「走りを犠牲にしながらこの目標をクリアするのであれば簡単だった。」という開発陣営の言葉に、走りとエコを両立すべく真っ正面から勝負をした、その意気込みを感じます。
というのも、実際SKYデミオに乗ってみて一番感じるのは、新しいエンジンの性能や燃費…云々ではなく、やはりその走りのフットワークの良さなのです。前述したように足やボディの改良の効果は走るほど実感でき、乗り味面での質感の向上っぷりは見事。少し挙動としてはマイルドに、落ち着いたような印象もありますが、だからといって退屈になったというわけではありません。ステアに対してフロントはリニアに反応し、直進性やリアのスタビリティは明確に向上。ちょうどプレマシーのモデルチェンジで走りの目指すテイストが大きく変わったように、今回のNewデミオも、スパンスパンとした分かりやすいスポーツテイストから、旋回Gの繋がりの良さを強調したような、そんなシャシーの懐の深さを感じる、オトナのズームズームへとステップアップしたような印象を持ちました。このあたり、また今後スカイアクティブ「ではない」普通の新型デミオで確認したいところです。
今回はあくまで限定的な条件の中での短い試乗だったので、印象としてお伝えできるのはこのあたり。試乗車は500kmほどしか走ってないド新車でしたが、この時の車載燃費は14.3km/L。状況としては一番悪い場面だと思えるので、このあたりが燃費の最低ラインだとすれば、フィットHVに追いつかないとしても、なかなか優秀なポテンシャルが期待できそうです。
さて、今回のスカイアクティブ第1弾のデミオ、「エコカー」という基準ではなく、マツダというスポーティな印象を背負いながらこの形でまとめあげた点については、拍手!久々にストーリー性のあるこれからのスカイアクティブの展開、フル搭載となるCX-5が実に楽しみ。競争激しいこのクラスですが、スカイアクティブという絶対的なイメージリーダーの登場はデミオのアピール度としては◎。それに加えて、スカイアクティブばかりが注目されがちなものの、「素」のデミオとしてのシャシー性能の向上っぷりが、個人的には地味ながらもとても嬉しいポイント。
…と、かなり絶賛気味になりましたが、最後に苦言も言っておきましょう。スカイアクティブ搭載によって1トンを若干オーバーしてしまったのは残念ですし、また排気系の取り回しの影響で、燃料タンクがなんと6Lも減っている事も忘れてはいけません。燃費は良くなっていても、その分航続距離は相殺されてしまうのがこのSkyデミオなのです。
加えて、140万円という価格を意識し過ぎてか、ところどころ装備のケチりが見えるのも事実。是非ともセットオプションのパッケージ1は装着しておきましょう。僅か5万円アップで、シートリフターに撥水ガラスにドアミラーウインカーに後席中央ヘッドレスト&3点ベルトにオートライトにレインセンサーワイパーにプライバシーガラスに…と、明らかにお買い得で盛りだくさんな内容なので。
また、DSC&TRCの標準化はエライ。…しかし、スカイアクティブ以外には、なんといまだオプション設定さえされず。これは大減点。とくに今回の改良で、普通の素のMTモデルや、スポルトなんかも商品力を大いに増しています。このあたりの商品企画での問題は色々難あり。初代デミオ後期型ですでにDSCを設定していたその先駆者ぶりはどこへ。是非、早急に改善を。自分が欲しいのも、スカイアクティブじゃなくて、スポルトの5速MTなんですから(笑)
という事で、激励と期待を込めて、試乗記を終わりにしたいと思います。
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マツダ | 日記
Posted at
2011/07/24 22:14:23