
購入から、約10か月。
夏が終わり秋の訪れを感じ始めた今日この頃、ようやく春夏秋冬1シーズンをひと通り過ごす事ができました。スタッドレスを履いて大雪の越後湯沢から、40度に迫るこの夏の猛暑まで。
購入以来刻んだ走行距離は、現時点で2.2万km。4月から都内在住で通勤に使用しない週末専用車としては、驚異的と言うか、まぁバカみたいに走り回っています(笑)
ここで1度、この愛機を、振り返ってみる事にします。
まず初めに、この車を買った経緯から。
当初の購入用件は、まず絶対にMTである事。
オール4の優等生でなく、どこかにキラリと魅力ある車。
FRで屋根が開けば文句なし。という訳で候補は、
・NC3ロードスターRS
数多くのスポーツカーの前に立ちはだかる歩行者規制強化の問題。モデル末期であり、販売台数的に考えても、次のNDまで一時的に中止…という可能性だってあったというのに、「ロードスターの火を絶やしてはいけない」と半ば企業としてのプライドをかけて存続、なおかつそれを機にマイナーチェンジを断行し、スロットル特性にスカイアクティブの思想を取り入れたり、仕様変更まで行う気合の入れよう。とりわけ、電動ルーフのRHTが人気を集める中、ホイールやヘッドライトやメーターなどがブラックアウト化された「タイト&スポーツ」がテーマの幌仕様の格好良さにぞっこん。いくらRHTが便利でも何でもこれにタン色のレザーシートを追加してうむうむ…なんて妄想をしておりました。が、基本は8年前の車、それにRSでレザーシートで…なんてしてると、コミコミ300オーバー。ダウンサイジングが噂される、次期ND型の足音も近づく今…やはり、新車はキツい。もちろん、NC2なら可能性大アリ。けど…6年後、2019年、ロードスター生誕30周年の時に、オーナーになれていればいいかなぁ…なんて逃げ道を作ってしまいました。
・スバルBRZ
このエコ蔓延る現代に、スバルとトヨタのコラボから生まれた、奇跡の2ドア4人乗りFRクーペ。もうその存在があるだけで尊い。最初だけどーん!ではなく、新車効果落ち着いた今でも、そこそこのペースでちゃんと売れ続けている事実が、何よりも欲されていた証拠。でもこの車の本当の価値は、今新車で買ってるおじさん達が飽きた頃に売り始めて、100万円前後で若い世代に流通され始めた頃…と言いつつ、ちょうど1年前の今の時期は、BRZの納車は半年待ちはザラ!年内は絶望、年度内も厳しいと言われたらちょっと…。86なら、もう少し早いし、中身もほとんど一緒!と頭では理解しつつ、欲しいのはあくまでもBRZ。このあたりのニュアンスの違い、車好きなら分かっていただけるはず。
さて、とんでもなく脱線してしまいましたが、そんな感じで中古のロードスターでも探そうと思っていた矢先、出張帰りでクタクタになっているところ、たまたまカーセンサーで見つけたこの個体…修復歴アリの条件と考えても、程度・距離的に相場より50万円は確実に安い。新人サラリーマンとしても、ローンを組まずに何とか貯金内で買えそう……本音はシビックタイプRユーロも本命だったのですが、何故かそんな巡り合わせもあり、気が付くと購入してしまっていました。。。いやー、分からんもんですね。中古車との出会いは、まさに運命でもあり、時の運です。
最初はFR狙いだったのに…!この気持ちの揺れようは如何ほどに(笑) 当初は田舎で青空駐車・毎日通勤で使うので、実用性に心打たれた部分もあります…もっとも、まさか半年で東京へ転勤+電車通勤+屋根付車庫で平日休眠…となるとは思いもせず…だったら、ロードスターでもよかった。笑
そんなこんなで手元にやってきた、このシビック。まずはスタイリング。スポーツ→ミラクルときたシビックの中でも、この代はちょっと不名誉な?ほど不人気でした。原因はいろいろとあるでしょう。ミニアヴァンシア的な5ドアのスタイリングにシビックらしい軽快感や若々しさが感じられなかった事。セダンのフェリオも中途半端なスポーツグレードしかなく存在が地味だった事。価格的にほとんど変わらず内容を考えればコストパフォーマンスが際立ったストリームの存在。そして何よりも弟分のフィットの記録的バカ売れ…といった上下に挟まれる形で、シビックは日本ではこの代から致命的なくらいに存在感がなくなっていきました。。。
そんな中、当時のホンダ吉野社長の「3ドアのシビック?そりゃ日本に入れるべきだろう」という鶴の一声によって(?)はるばるイギリスから…しかもエンジンは日本で作られていたので、ほぼ地球1周して再び日本に戻ってくるという(笑)、さらに言えば欧州で売られていた当時のタイプRとは、レッドゾーンも違えばエンジン制御も違う、足回りのスペックも違う、エンジンマウントまで違う…!というスペシャル仕様。しかしながら日本では、DC5…いわゆる2代目インテRの方が軽く、速く、パワーもあり、ブレンボ等がつくのにシビックより安いという、当初から敗戦濃厚…!とさえ思える状況でデビューを飾り、案の定、前期方で3500台、後期型にいたっては1000台を少し越えるくらいしか売れず、4年弱で5000台も売れない結果で、堂々のマイナー車軍団入りと相成ったのでありました…。
個人的には、愛嬌のある…逆に言えば、スポーティ感はほとんど感じられない顔付きは確かにうぬぬ…という印象ですが、リアデザインに限ってはなかなかシンプルで素敵、と思っています。今や貴重な5ナンバーサイズながら、リアからの眺めはドシッとしていて安定感たっぷり。
インテリアの特徴と言えば、やはり目につくのはこのインパネシフト。なんじゃこの変な生え方!!と最初の見た目は違和感ありまくりですが…これが使ってみると、もう逆にこれ以外は考えられないんじゃないかと思うほど、操作性は抜群。ステアリングとシフトノブの位置関係は、意図的なのかはたまた偶然なのか、あのNSXとほぼ同じ。本当によく考えられています。
ただ、チタンほどではないにしろ、アルミのシフトノブは夏はアツアツ、冬はキンキンに冷える代物。しかしながらこの適度に重みのあるしっとりとした操作フィールは変えたくなかったので、色々と考えた末に、AP2型S2000の純正革+アルミのコンビシフトノブに交換してあります。
加えて、それ以上に褒めたいのが、ステアリング。MOMO社製エアバッグ内臓の3本スポークステアリングは、その形状・大きさ、グリップの太さ、全周1枚革の質感、どれをとっても素晴らしい仕上がり。これもエンジンの経緯と同じく、わざわざイタリアまで渡って丁寧に1本1本仕上げられて送られていたとか…??社外のステアリングにおいそれと交換なんてできません。できれば新品状態の純正品と交換したいくらい。ナルディやモモのステアリング純正採用が減る昨今、現存国産車でこれを超えるステアリングは…ちょっとないかもしれません。やたらと分割線だらけで、しかも一部フラットボトムのD型異形ステアリングが、いかに愚の骨頂かと痛感できます。
ステアリングに加えて、シートも触れておかなければいけないでしょう。この車でRECARO社製シートと長い付き合いを初めてする事になりましたが、腰痛持ちの自分が長距離ドライブで身体の疲労を感じる事が、まぁ見事に「皆無」となりました。決して乗り心地が優れている車ではないので、これは間違いなくシートのおかげ。尿意と睡魔と空腹以外で、ロングドライブで休憩を取る事はなくなりました。DC5と比較して比較的ホールドはゆったり目(アコードユーロR、先代オデッセイアブソルートにOP装着されていたAM19シリーズ)のため、サーキット等ではやや物足りないかもしれませんが、逆にシティユースなら乗り降り含め不便さは全くなく、ワインディング+αなら不満はありません。この車でRECAROの良さを身体中で覚えてしまったので、今後クルマを買い換えた時に難儀しそうです(苦笑)
さて、正直言えば、それ以外はとても新車当時コミコミ300万円クラスのクルマとは思えないようなクオリティ、というのが正直なところ(苦笑)。メーターにも個性なく、インパネの質感類も…ま、Rなんでそんな事関係ないと言えばそうですし、逆に必ず触れるステアリング・シート・シフトにキチンとお金がかかっているという事で、必然的に距離がどんどん伸びてしまう要因となっているのかもしれません。これだけを見れば、相当にクオリティの高い満足度を提供してくれますから。が、せめてタコメーターはスピードメーターと同径、もしくはセンターがよかった…!
質感はイマイチ…なものの、こと使い勝手に関しては、この車は非常に優れています。質感は高くないものの、エアコンやスイッチ類の操作系はシンプルで分かりやすくすこぶる操作しやすく、インパネシフト採用もあってか、小物入れも充実し放題。乗降性に難アリ、ヘッドレストレスなのが大いに不満でもありますが、乗り込んでしまえばリアシートも成人男性が乗っても全く問題なし。フラットフロアのおかげで足元も広々。ラゲッジスペースも十分で、リアシートを片方倒すだけでタイア1セットは楽勝。4人で荷物満載でスノボにも海に遊びにも関西への帰省往復にもラクラク使えたくらいですから、1人暮らしの20代にとっては贅沢過ぎるくらいの実用性です。
もう1つ。忘れてはならない魅力なのが、エンジン。(洗車前でエンジンルームが大変に汚い…orz)
これぞNA!!と叫ばずにはいられないK20A RスペックのVTECエンジンの素晴らしさは、いわばこの車の長所の半分以上を占めるもの。ハイカムに入った時のパンチ、レッド8500を超えて9000rpmまでブン回る伸び、それに伴う抜群のサウンドの良さ、レスポンス……本当に、凄いのひと言。加えてB型よりも排気量アップされた影響もあり、街乗りでのトルクも十二分にあり、1500rpm付近から全く問題なく実用的に使えるフレキシビリティさ、そして街乗りオンリーでも10㎞/L以上、高速でのんびりクルージングすれば15㎞/Lも狙える燃費の良さ…今流行りのダウンサイジングターボなんて全く興味なくなるほど、素晴らしい名機と言えます。
またそれをキチンと生かす、クロスレシオの6速MTのギアリングも見事。上までしっかりと回せば、2-3-4-5と常にハイカム領域を維持。100㎞/hで3400rpmも回ってしまうところからみるに、クルージングなど全く考えずに、戦闘意欲プンプンのギアレシオ。それなのに、先述した燃費をたたき出してしまうんですから、恐るべしのひと言につきます。
噂される次期シビックRは、2.0Lターボ。性能的には間違いなく今を凌駕するでしょうが、7000rpmで頭打ちのターボでは絶対にこの気持ち良さは真似できない…この年齢にして、有難い事に色々なクルマに乗ってきましたが、このエンジンよりも気持ちいいフィーリングを提供してくれるのはそれこそ1000万円超級…4気筒に限って言えば皆無……強いてあげるとするならば、タイプRユーロに搭載される同じK20Aのバランサーシャフト付ユニット…パワーやパンチはやや劣るものの…はこれを超える凄まじい滑らかさを持ち合わせていますが、これはいわば同門対決。この高回転NAの集大成であるVTECを味わえただけでも、この車を手に入れてよかった…そう思えます。
もちろん、褒めちぎりばかりではなく、不満も挙げればキリがありません(笑)
ボディサイズ自体はコンパクトながら最小回転半径は5.7mで小回り効かず、基本的に操舵が重めでアシスト介入自体が少ないのが救いながら、初期登場時の電動パワステのステアフィールにはやはり満足できていません。アイポイントが高いのは長距離ドライビングでは快適なものの、スポーティな雰囲気はゼロ。シートは素晴らしいがシートポジションについてはローポジをいれようと散々悩んだ末に、結局シフトとの位置関係も考え、現状のまま。
フロントサスの特徴的な構造(いわゆるタラバ蟹)によるサスペンションの実質的な「いじり禁止」状態、リアはダブルウィッシュボーンながらフロント側をジャッキアップすると先にリアタイアが浮く(!)という脚のストローク不足により、荷重を抜いた時に唐突にリバース気味になる味付け、、、もっともこれは、今どき珍しいくらいにタックインが効くので、面白いと言えば面白い、、、(笑) ホンダらしいといえば、操舵時のABS制御ロジックに迷いが生じ、時として途端にステアが効かなくなったり、効いたと思えば旋回ブレーキで想像以上に液圧が抜けて距離が延び気味になってしまったり…な点も、少々気になる部分。
Rとしては当然ですが、そんな事興味のない人にとって見れば、乗り心地は硬く、走ればひたすらにうるさいだけ。個人的にタイプRにそれほど思い入れがある方ではなかったので、これでもRとしてみれば、軟で中途半端な存在…EP3の世間評価はそんなところでしょう。
しかしながら、素晴らしいエンジンとミッション、ステアリングとシート、そしてこれも忘れてはいけない、街中でほっとんど見かける事のない希少性。人と同じ物嫌い、へそ曲がりで天邪鬼な自分としてはこれは大事な要素なわけで…w
出会いは衝動買い。しかしながら最初の頃よりも確実に、この車が好きになっていっている自分がいる。人間との出会いもそうですが、クルマとの縁って本当に不思議ですね。
以前にも書きましたが、都内23区内で1人暮らしの20代新人サラリーマン。毎日満員電車で通勤している身として、下手すれば平日は触れもしないクルマを維持していく事は、決して楽な事ではありません。それに加えて、タイプRだからこその任意保険の高さ、ハイオク指定、こまめなオイル交換を含むメンテナンス代…おそらく手放せば、もっと毎月楽な生活ができて将来に向けての貯金額も増やせるのでしょうが、それとは引き換えにならないくらい、自分の愛車を所有し維持していく事で得られる歓び…つらい仕事の中で、このシビックが自分に与えてくれるモチベーションと歓び。クルマエンゲル係数が高すぎるかもしれませんが、これも男のプライドの1つだとして、これを励みに日々頑張れている自分もいます。
こうやって納車からの日々を振り返ると・・・改めて、しばらくはまだまだこの海を2度渡った英国産まれ日本育ちのNAホットハッチと、仲良くやっていく日々が続きそうです。