
さて、試乗するのは、いつもお世話になっている正岡局長のプログレ。年式にして14年、走行距離も9万km台と、普通ならそろそろお疲れモードであってもおかしくない。しかし、局長は一念発起して、今回あらゆる部分にメスを入れて、フルリフレッシュを行ったという。
どこをどのようにリフレッシュしたかの詳細は聞きそびれてしまったが、その美しく凛と輝くボディと、足元には黒々とした真新しいBSレグノGR-XTが装着されている事を見ても、その程度の良さは“折り紙付”である事が伺える。
ちなみにプログレのタイヤサイズは、195/65R15。自転車みたいな扁平率のタイヤが増えている昨今、たっぷりとエアボリュームのあるサイドウォール…おかげで、どこのタイヤを履いているのが、チラ見しただけですぐに分かってしまうのである。
では、あえてあまり先入観に捕らわれずに、乗ってみよう。
ドアを開けシートに座る。ドライビングポジションはアップライトで見晴らし、見切りはとてもいい。思えばトヨタのセダン群は、90年初頭にそれはそれはボディサイズの無駄遣い(?)のような酷いものから一転、プリウスからパッケージング革命がスタートし、その頂点は特にビスタあたり(スタイリングはお世辞にも良いとは言えなかったが)まで、こと居住性に関してはとても意欲的な試みが成されていた。
しかし20世紀末期から始まったこのパッケージング革命においてアップライトなポジションが全体的に広まった後、今では逆に着座位置を低くしたり、あえて意図的にドライバー周りの空間をタイトにまとめるような流にもなってきている。カリーナEDに端を発して、セレスやマリノ、プレセア、エメロード、ペルソナ…と各メーカこぞって狭さを競い合う!?ようなぺったんこ低車高の4ドアクーペブームの風が瞬間的に吹いた…のは、もう約25年以上(!)も昔。(初代カリーナEDが登場して、今年でもう29年目なのです)
そして今やこの風は欧州に吹き荒れ、メルセデス、BMW、アウディ…など名立たる強豪たちが、こぞってこの“居住者無視のボディサイズ無駄遣い争い”に参戦して熾烈な争いを繰り広げている…と、当時誰が予測できただろうか。
さらに言えば、当時ではカローラ5ドア、豪州仕様ブルーバードや欧州プリメーラ、アスコットイノーバ、カペラ&テルスター、ギャランスポーツ…等々で各メーカから5ドアボディの車が登場し、ぺったんこ4ドアハードトップなんかよりも遥かに実用性に富んでどれもいい車だったのに、見事にどれも売れず消え去って…その後、初代アテンザスポーツで光が差し、2代目プリウスがまさかの5ドア化で一躍脚光を浴び、もともと本流だった欧州の5ドアは陰りを見せ、これまた先述したぺったんこブームと半分合わさったような4シリーズグランクーペやアウディA5スポーツバックなんかに変貌し生き残る…
時代、時流の変化とは、実に興味深く、振り返ると面白い…。
閑話休題。完全に大幅に脱線してしまった。本題のプログレの話へ軸を戻します。
局長のプログレは、NC300のiRバージョン。3.0Lを搭載する上級グレードながら、当時人気のウォルナットパッケージや本革シートは装着されていない、という珍しい組み合わせ。確か3.0Lは本革シートが標準だった記憶もあるが…勘違いかな。しかし、それが実によかったりする。

(局長のプログレの内装はブラック。しかし写真がない。もっと撮っておくべきだった…)
まず“非”ウォルナットパッケージで良い点は、ステアリング。完全にこれは個人的主観を持ち出してしまうが、ウッドとのコンビステアリングでない点が、非常にポイントが高い。見た目の質感は確かにウッドコンビの方が良いが、やはりドライビングを基準にした時に、特にやや10時10分付近で脇を締めたドライビングポジションを好む自分にとって、手のひらに革と木が両方触れて、感触が異なるのは、大いに違和感が残るのだ。
その点、この局長のプログレは問題ない。しかも嬉しい事に、ステアリングの革巻きは通常の4分割ではなく、2分割。このつなぎ目は、普段まず触らない8時20分の位置。つまり常に手のひらへの感触が途切れず、1枚の革と接してステアリングとの対話が楽しめる。これは◎。個人的に猛烈なステアリングフェチであるので申し訳ないが、これ、凄くこだわる部分なのである。(その点で言うと、現在の愛車シビックタイプRの小径1枚革巻きのMOMOステアリングは、ことパーフェクトに近い)
そんなこだわりなんてどうでもいい?…いやいや、例えば姉妹車ブレビスなんかもステアリングは気合の1枚革巻きだったし、スピンドルグリルになる以前のレクサスLSや先代レクサスGSの“非”ウッドステアリングなんかも、2枚革巻きで握った時の質感が素晴らしかった。もっとも、LSやGSで非ウッドステアは超少数派だったが…その証拠に、現行LSは標準グレードからバンブー・革コンビが基本、GSも一般的な4分割革になってしまった(汗)。
アルテッツァのLエディションやS2000なんかはマイナーチェンジなどの改良後1枚革になった稀な例であるが、それはともにオーナーでもあった自動車ジャーナリストの伏木さんの影響も大きいだろう。そう、彼も異常なくらいの、ステアリングフェチなのである(笑)。
最近はマツダのアテンザ・アクセラ、そしてスバルのレヴォーグ(GT-Sグレード)なんかのステアリング革質感へのこだわりはなかなか素晴らしいものがある。しかし、それよりもう少し踏み込んで、革の巻き方、分割の仕方、ステッチの編み方…運転すれば必ず触るもの、もっとコストを惜しんでも良いのではないかステアリングには!最近、メーカ純正でMOMOやナルディを装着する車、すっかり無くなってしまいましたからね。スポーツグレードだからと言って、安易に高級感を出したいからといって、変にディンプルつけたりコブつけたり分割線入れまくったりウッドやら竹やらゴテゴテ巻くものではない!っとこの場を借りて大いに主張させて頂きたい。
…如何、また話が脱線してしまった。
いわゆる素の状態ではあるが、正岡局長プログレの質感は非常に高い。勿論先ほどのステアリングの話を横にすれば、ウォルナットパッケージの本木目仕様はさらに上級。しかしここまでは、当時セルシオやアリストなんかにも設定があった。しかしプログレはそれに加えてさらに、オプションでサペリマボガニーの本木目パネルまでオプションで装着できたのだった。家具や楽器にも使用され、年月が経つにつれより赤朱色が深みを増す、アフリカ産の高級木である。これも、当時のプログレの“本気度”がより伝わる、1つのエピソードではなかろうか。
そして、本革シートではない点も良い。見た目はそれこそ、親戚の家の応接間にあるようなソファのようだが、このファブリックシート、意外にコシがありフィット感もよく、作りこみの良さを感じる一品。何故か日本人は特に高級=本革シートとなりがちだが、正直言って変にツルツルでパンパンに張りを持たされた国産車の本革シートよりも全然高級感アリ。これは嬉しい発見だった。
まぁ思えば、メルセデスでもBMWでも、ファブリックの出来はとても良く、本革シートは、それこそ見た目とシートヒーターが欲しいだけのもの…?さすがに、ジャガーのコノリー社製本革シートを味わった時は、座っただけで感銘を受けたものだが…
ちなみに、価格は当然本革シートの方が高いが、この当時のセルシオやプログレのファブリックシート、こちらには手間暇とコストがたっぷりかけられており、実質的な儲けは同じ価格でも実はトントン…オプション装着率が増えれば増えるほどトヨタ的には…ゴニョゴニュ、なんてお話を、当時の関係者の方から伺った記憶がある。お前はその時、いくつやねん!というツッコミは、甘んじてお受けいたします。笑
インテリアは質感が異常とも言えるくらい高く作りこみが凄いが、見た目はとてもシンプルである。メーターも奇を狙わず、しかしこれがとても見やすく、1番良い。室内時計はアナログ式。その後インフィニティが追随し、いまやレクサスでも定番だ。97年デビューにも関わらず、ポップアップ式のカーナビゲーションが特等位置に鎮座しているのも◎だ。唯一、ストレートゲートでマニュアルモードもない、T型の大きいシフトノブが、時代を感じさせるくらいだろうか。さぁ、では、エンジンをかけてみよう…
…と、脱線話もあったせいで、なんとエンジンをかけるまでで、もう3500文字(笑)
。次回、走りのインプレッション本編は、その3へと続く…。
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2014/07/07 23:17:04