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九郎田一馬のブログ一覧

2011年10月07日 イイね!

〔試乗記〕マツダRX-8 TYPE-G(6AT)

〔試乗記〕マツダRX-8 TYPE-G(6AT)


ありがとう、そして、さようなら…





03年の久々のNAロータリー復活。
以来4シータースポーツカーとして、そして世界唯一のロータリースポーツカーとして、孤高の存在だったマツダのRX-8の生産が来年6月で終了。足かけ9年…年々厳しくなる燃費基準と排ガス規制、そんな中マツダは本当によく頑張ってくれたと思います。

文句なんて、言えません。ちゃんと実際にエイトを購入したユーザーなら、その権利はあるでしょう。僕はRX-8のオーナーではないので、マツダのロータリースポーツに1円もお金を払っていません。なのになくなるのが決まってから色々言う…それは許されないでしょう。だったら買えよ、というわけですから。無くなった大きな原因の1つは、やっぱり売れなかったから。これは疑いようのない事実の1つであります。RX-8ユーザー以外で、マツダにロータリーを応援する気持ちだけでお金は払って貢献していない、車好き1人1人の責任でもあります。



ただ、この喪失感…本当に大切なものは、失った時に初めてその価値に気付く。この言葉が本当に痛切に実感できます。最後を飾るスピリットR……高嶺の花過ぎて無理だと分かっていますが、喉から手が出るほど欲しい。今率直な気持ちです。


そこで今回は、RX-8の試乗記をお届けします。もちろん時期は今ではなく、去年の2010年の夏頃に試乗したインプレッション記事です。今回は修正を加えて、こちらのみんカラの方にアップしたいと思います。まだ当時は「嫌な予感」しかしていなかったので、今現在よりもより率直な気持ちでエイトに接する事ができていると思います。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



さて、今回試乗レポートをお届けするのは、唯一のロータリースポーツである「RX-8」。テスト車両は販売から5年経過した際に行われたビックMCを経た現行型、そのベースモデルである「TYPE-G」の6速ATモデルです。

まずスタイリングは、今年ではや7年を経過したとはまだ思えない、斬新なプロポーションは健在。思えば登場した直後、一部メーカーで明らかにこのエイトのデザインを意識したコンセプトカーが次々と登場した事が思い出されます。ただ、先述した08年でのマイナーチェンジによって、やや「厚化粧」気味になったエクステリアは、初期からのデザインに慣れ親しんでいる人にとってはやや抵抗のあるものかもしれません。もっとも、初期段階で仕上がっているデザインのクルマが、マイナーチェンジをすると崩れてしまうというのはよくあるパターンではありますが…。



インテリアもそのマイナーチェンジによって大幅に変更が加えられています。DIN方式のインパネに、ロードスターと共通のステアリング。タコメーターには水温に合わせてレッドゾーンが変化する可変タイプを採用。そして見た目に表れない、エンジン、足回りの変更も多々……ここで改めて振り返ってみると、フルチェンジに近いと言ってもいいほど、実に様々な改良が2年前のマイナーチェンジで行われた事が伺えます。ロードスターのMCも含め、マツダの堅実なクルマ作りの姿勢が表れている部分と言えます。



さて前置きが長くなりましたが、さっそく運転席に乗り込んでエンジンスタート。その際に感じるのは、ドアの閉まり方やその時の音、そしてインテリアやエンジンスタートの時に感じる、質感の向上っぷり。ここでまた余談ですが、RX-8が出た当初はまだ自分は高校生であり、当時通学で使用していた最寄り駅近くのマツダで、制服姿のまま、登場直後の白いTYPE―Sの6速MTをまじまじと見つめていると、営業マンの方がキーを持ってあらわれて、運転席に座りエンジンまでかけさせてくれた思い出があるのですが、その時よりも確実に各部のフィニッシュであり、1つ1つの動作の質感の向上が感じられます。もっとも、初期モノと、マイナーチェンジ後の現在のモデルの間に長い長い年月が経っていれば当然の事かもしれませんが…。

ロータリー独自の「ポロポロポロ…」というアイドリング時の振動をステアリングから感じつつ、Dレンジに入れてゆっくりと動き出します。よく言われる「ロータリーは低速時のトルクの細さが…」という点については、トルコンATによるスリップ感の助長もあり、あまり顕著には感じられません。これも、後期から全エンジン6ポート化され、メタリングポンプ数の増加や機械式→電磁式への変更などの細かい改良を重ね、涙ぐましいエンジニアの努力の賜物なのでしょう。なお後期のAT仕様はリミット7500rpmの215ps、MTはリミット9000rpmの235psとなっています。



発進直後はスムーズなものの、そこから2~4000回転付近のアクセルに対する反応の鈍さは、やはりレシプロには敵いません。しかし4000を超えたあたり…そこからレッドの7500回転まで、全くよどみなくスムーズに、パルスが弾けるようなフィーリング、そしてその時に奏でるNAロータリーの実に気持ちいいサウンド。ロータリーの燃費が悪いというのは、エンジンの特性上の問題はもちろんあるでしょうが、この高回転まで回した時の気持ち良さにドライバーがガマンできずにスロットルをあけてしまう…そんな要因も絡んでいるのでしょう。そういう自分も、見通しのいい道路で前が空けば、ついつい1速でレッド7500まで……この呪縛にすっかりハマってしまいました。



それを手助けしてくれるのが、クロスした6速AT。全開加速時には上手くトルクの痩せた部分までドロップせずに、またトルコン式とは思えないレスポンスでシフトアップしてくれます。ここであえて「シフトアップ」と記したのは、やはりダウン時にはワンテンポ遅れてショックと共にシフトダウンする、トルコンATのネガが見えた為。加速時には全くハンディは見せませんが、ダウン時にはやはり最近流行りのブリッピング機能が欲しいところ。もっとも、ベストなのは2ペダルのDCTでしょうが…。しかし乗っていると、さぞかし初期の4速ATモデルに乗るユーザーは、フラストレーションが溜まっていた事でしょう。

しかし、乗りながらフト気づいてしまいます。アクセルを踏み込んだ際の気持ち良さは、ATでありつつもやはり最高に気持ちいい。…しかし、うん、やはり…。そう、気持ち良くはあっても、思ったより速くない……ここをどう感じるかで、このクルマの評価は大きく分かれてしまう。RX-8が果たして、スポーツカーか否か。



以前ここでコペンやCR-Zの比較対象にロードスターを引っ張り出してきましたが、その時に乗ったMTモデルはもちろんのこと、ひょっとしたら力感はATにも少し劣っているくらいかも…車重の差を考慮したとしても、今回乗った215ps仕様のNAロータリーに乗った偽らざる感想です。

もちろん、235ps仕様の6速MTなら少し印象が違ったかも…とも思えますが、こちらも少し以前のベストモータリングで取りあげられた際に、筑波サーキットでS2000はもちろんのこと、レガシィB4やクラウンにまで遅れをとるという(結果がクラウンアスリートの勝利という大番狂わせでしたが)、これが「数値上」でのRX-8のポテンシャルの現実ということになります。



おそらくこれが、「ロータリースポーツ」であるRX-8の運命を決めてしまったのかもしれません。「想像よりも速くない…」否、「スポーツカーとして見ればはっきり遅い」という事実。個人的にはそれが決定的に悪いとは思いませんが、「スポーツカーは速いだけじゃないんダヨ」という事を示すロードスターよりも、遅い、現行マツダのフラッグシップスポーツという現実は、やはりいささか物悲しいものがあります。

しかしこの気持ちいいフィーリングだけどパワー感がないエンジンとは違い、シャシーの懐の深さは圧倒的。まず動き出しから感じるのがその乗り心地の良さ。テスト者は225/50R17サイズのダンロップを装着していましたが、タイヤの当たりの硬さは全くと言っていいほど感じず、また速度を上げていくほどフラット感が向上していくこの足の良さは、高速グランドツアラーとして使っても全く不満がでないでしょう。乗り味だけでいえば、それこそアテンザよりも快適な分類に入るかもしれません。



そんなしなやかなサスセッティングを持ち合わせつつ、ワインディングに持ち込めば、とにかく俊敏かつ軽快な印象を抱かせてくれます。これぞロータリーの真骨頂か?軽量かつコンパクトなおかげで持ちあわせた前後重量配分の良さとフロント慣性の少なさ。ブレーキは構造だけ見れば決してスポーツカーらしいとは思えない一般的なシングルポッドながら、ブレーキング時の4輪がヒタッとと沈み込み、抜群の制動力を披露してくれるので、どんどんブレーキで詰めていける楽しさはまさにスポーツカーの真髄。FRらしい鼻先の軽さと路面変化を的確に伝えてくれるステアフィール、少しオーバースピードで侵入しテールが流れ始めても、もともとのロングホイールベースのディメンジョンのおかげで、自分のような素人でもスッと立ち直らせられる懐の深さ…

先ほどのパワー感の欠如と相まって、完全にシャシー性能がエンジンパワーを超えた領域にあるこの感覚は、逆に言えば今の現行NCロードスターで少し失われつつある「ほどほどの扱える性能」「人馬一体」を、RX-8でより具現化しているのかも…そう思えば、先ほどの物悲しさも個人の杞憂の範囲で済みそうです。

さて、高速でのGT性能やワインディングで気持ちよく走り回った分の代償は…ということで、気になる燃費チェック。今回約200km走行し、33L弱のハイオク消費。満タン法で燃費を計算すると、6km/Lをなんとか超える数値でした。後半は元気よくアクセルを踏んで楽しんだ事を考えると、ロータリーならば望外に良い数値…なのかもしれませんが、昨今HVでない純粋なレシプロエンジン車の劇的な燃費改善を考えれば、少し厳しいものが感じられるのは事実。「スポーツカーに燃費なんて!」「性能を考えれば他車種と比較してそれほど悪くない!」かもしれませんが、やはりロータリーが今後生き残るためには、さらなる抜本的改良が必要である事を切に感じさせられます。



と、ここまでいろいろ書きつつ、燃費に関しても、それがこのロータリーのフィーリングを味わうための代償で我慢…というところまでは納得。しかし、最後にもう1つだけ。今年の猛暑は近年にない強烈なものでしたが、この夏にRX-8の室内でドライビングを楽しむ事は「酷」の一言…実は今回一番厳しく感じられたのが、夏場の車内温度の上昇に関して。

できるだけ良好な重量配分を実現するためにギリギリまでフロントミッドに近づけられたエンジン、ミッション、それらの熱が全て遮断し切れずにセンターコンソールを通じて車内へ伝わってくるのは、35度を超える猛暑の中ではさすがに厳しいものがありました。もちろんエアコン自体は大変良く効くわけですが、体に直接触れる部分が常に熱い「カイロ状態」ではそれも無意味。少しでも走りを楽しむべくエアコンを切ったのなら…それこそまさに車内サウナ我慢大会となります。もちろん、スポーツカーにそんな事邪道だ!と言われれば元も子もありませんが、ふと振り返るとそこには大人がもう3人移動できるスペースと、快適な乗り心地があるのです。なにも走りだけで我慢を強いるならば、4人乗りもフリースタイルドアも必要ない。ここが、RX-8の抱える矛盾点を一番確実にあらわしているのではないでしょうか。

テスト後、このRX-8の良い点悪い点について自分自身冷静に振り返ってみました。ロータリーでしか味わえないフィーリング、とくに下りのワインディングを7~8割で流すように走っている時の気持ちよさと言ったら、自分も22にして様々なクルマを試す機会を与えてもらっていますが、間違いなくその時の記憶はこれからもトップランクとして自分の中に刻まれると言ってもいい爽快さでした。そしてなおかつ大人4人と荷物を積んで、快適にロングドライブを楽しめる。これほど素晴らしい性能を持ち合わせているクルマは他に例を見ません。

しかしながら、欠点を見ていくと……。燃費、パワー感の欠如、車内温度の遮断性の悪さ、維持費……RX-8の最大のアピールポイントはロータリーエンジン搭載車であるということ、それが最も優れた長所であるのと同時に、唯一かつ最大と言っていい欠点である……これが今回RX-8をテストした正直な感想です。得るものがあれば失うものがある、のは当然ですが、やはり「ロータリー」と「4人乗りスポーツカー」というコンセプトの両立は、登場7年たっても以前両者に大きなズレが残ったままとなっています。誰もが夢見たコンセプトかもしれませんが、エコカー減税旋風吹き荒れる中での8月の販売台数は、わずが40台程度…50台以下、1日全国で2台売れればいいほうというこのセールスが、それをさらに裏付けているのかもしれません。このクルマがナビ付でも楽々300万円以下で買えるというコストパフォーマンスの高さは、ロードスターの比ではありません。



やはり、FDでこそREは輝き受け入れられ、エイトのコンセプトがもしレシプロエンジンで実現できていたら…、この大きく時代が移り変わろうとしている今、この孤高のロータリースポーツを試して、べらぼうに楽しいのになぜか素直に喜べない自己矛盾に苛まれて仕方がありません。

そこで期待したいのは、13Bに取って変わる後継機と目される「16X」の存在。今徐々に「衝撃」が広がりつつあるSKY-G、SKY-Dのように、革新的技術で内燃機関の可能性をさらに感じさせてくれる、16Xならぬ「SKY-R」の存在はあるのでしょうか。マツダの社運を掛けたロータリー47士、オイルショックを乗り越えSAの登場、そして787Bのルマン制覇…世界に誇れる日本の自動車産業の中でも、これほどストーリー性にあふれたユニットはそう存在しません。今このエイトのユーザーも、色々な不満点がありつつも、唯一無二の存在かつ、これらの過去のストーリーに心酔してロータリーを応援している気持ちの方もいるはずです。今クルマの走りに一番真面目に取り組んでいるマツダ。次世代ロータリーユニットを搭載した魅力的なスポーツカーが登場すれば、きっと自分もオーナーへの憧れを現実にしようと動き出そうと思ってエールを送りつつ、今回のレポートとさせてもらいます。

きっと、その時は、やってくる。そう信じています。


Posted at 2011/10/07 23:35:32 | コメント(2) | トラックバック(0) | マツダ | 日記
2011年09月19日 イイね!

【試乗記】日産ジューク15RX

【試乗記】日産ジューク15RXさて、今回試乗レビューをお届けするのは、日産のジューク。デビューして1年以上が経過していますが、改めて今回たっぷり乗る機会を設ける事ができたので、レポートしたいと思います。




まずこのクルマを語るには、とにかくそのデザインから始めなければいけないでしょう。とにかく変な?奇抜な?強烈な?そのルックス。好き嫌いは別として、明らかに最近の国産車では有り得ないほどのその見た目の個性の強さ。けども、それが故に印象に残るのかもしれませんが、街中でやたらよく見かけるような気がする…?それもあながち間違いではなく、登場後順調にセールスを重ねているようです。反面、そういえば、同時期に登場し、性能も上、車格も上なのに価格はほとんど同じ…な三菱のRVRは、ほとんど見かけません。

良くも悪くも好き嫌いがはっきり分かれるジュークですが、その個性の強さが想像以上に受け入れられた印象。特によく思うのが、意外と年齢層が高いユーザーを多く見かけること。派手な色のジュークを、おじさんおばさんが運転という…実際購入者の年齢層も、20代から60代付近まで、見事に幅広い分布なのだとか。最近流行りの絞り込みマーケティングで、開発ターゲットユーザーを”30歳独身のイギリス人男性 ウィリアム。”という超ピンポイントに絞り込んで開発が進められたジュークが日本でこういう結果に…つくづくクルマの個性とマーケティングの奥深さを感じます。

加えて、例えば上を見れば、ムラーノであったり、エクストレイルであったり、デュアリスであったり、根強い人気を集めているSUVの兄貴分もあり、それらのコンパクト版…というデザインスタンスで登場させれば、ある程度は確実に…なのですが、その人気にあやかる事なく、さらにチャレンジをしてくるあたり、今の日産のデザイン部門の勢いを感じさせてくれると言えるでしょう。



フロントフェイスは、まるで「顔」。眉毛部分がポジションとウィンカー、グリル内蔵の目玉部分がヘッドライト。あまり目につかない下回りの樹脂部分もしっかりデザインされており、スキを見せません。左ドアミラー下部分に装着されている2面ミラーのおかげで、補助ミラーが装着されないのも○。リアビューはZ風のテールランプをボディラインに上手く溶け込ませているあたり、その造形とプレス、生産技術に関しては見事。ただ、実際にブレーキとウィンカーが点灯するのは下部分だけで、Zのように光らずダミー部分が多いのは価格を考えれば仕方ないところか…LEDでも埋め込めば、夜での後続車へのアピールもアップしそうです。



さて、奥歯に物が挟まったような物言いになりましたが、はっきり言って出た当初からこのジューク、僕自身は受け入れられない側の人間でした(苦笑)。しかしながら今回乗ってみて…印象は一変。そのあたりを、順に追ってレポートしていきます。



ドアを開けてシートに座ります。車高は1565mmと立体駐車場アウト(アーバンセレクションは-15mmで適応可能)な微妙の高さではありますが、乗り降りのし易さで言うとこれが絶妙の値。このあたりもシニアユーザーの受けがいいポイントかもしれません。

シートはたっぷりとしたサイズで、ホールド性もなかなかのもの。目の前には視認性と質感に優れる大径メーターと、これまたZを思わせるグリップの太いスポーティなステアリング。テレスコ調整が欲しいところですが、比較的満足できるポジションを取る事ができました。先ほどのフロントフェイスの「眉毛」部分がドラポジ状態から見える事もあり、見切りは良好。これは意外な事だったのですが、これだけデザインコンシャスなクルマなのに、全方位視界に関して大きな犠牲になっている部分がないのはお見事なポイントです。

また、シートリフターの調整量がかなり大きめで、少しアップライト気味にすれば視界もさらに良くなり運転し易いポジション、逆に思いっきり下げると足を投げ出し周りに包み込まれるような、そんなスポーティな印象を抱かる…といったように、シート調整ドラポジ次第でかなり違った雰囲気を味わわせてくれる、これは新型エルグランドにも共通したポイント。アイポイント自体は高いのに、その印象を極端に抱かせないドラポジが取れる…というのは、高速移動時などに強い味方になってくれました。



さて、インテリア上でジューク最大の見せ場となるのが、バイクを思わせる派手なセンターコンソール…なのですが、テスト車は地味なシルバー塗装で、あまり大きなインパクトはなし。もちろんこちらの方が落ち着いてて良いという人もいるでしょうが、目立ちたい人ならやはり赤をチョイスする事をお勧めします。カップホルダーに加えて、前方には横長の平べったい滑り止めゴムが配された収納スペース…これは最近流行りのスマートフォン置きにバッチリの位置。さすが、よく考えられています。





もう1つの大きな見せ場が、インパネ上に配置された「インテリジェントコントロールディスプレイ」。普段はこのようにエアコンモードにしておきボタンを操作。で、ちょっと走りのモードを切り替えたいなぁー…と思ったなら、右側のドライブモードもポチっ。そうすると…




なんと、先ほどのボタン配置はそのまま、ボタンの操作内容自体がそのまま瞬時に入れ替わってしまうというカラクリ。そのボタンの操作や見た目の質感を含めて、いやーお見事。これは本当によく出来ています。キレイな液晶ディスプレイは単体では見やすく、エアコンやアクセル操作に伴って色々と変化してくれるのも実に楽しい。

…が、最大の欠点。それはこの装着位置自体。特等席はナビに占領されてしまっており、この低い位置では完全に視野を移動させる必要があって、運転中全く視界に入らないというのが実にもったいない。発想自体は大変いいのですが…これでは完全に宝の持ち腐れ。その事を気にさえしなければ、ドラポジ状態からハザードスイッチを含め、シートから肩を外さずに全てのボタンが手が届く範囲で操作できるというこのあたりの空間設計は非常によく出来ています。それだけに…ナビの位置を含めて、もうワンプッシュ挑戦してほしかった。

もう1つ、派手な内装の雰囲気の中で、唯一シフトノブ周辺だけがデザインに置いてけぼりを喰らった印象。1.5Lで価格を考えるとまぁ贅沢なお話かもしれませんが…1.6ターボ仕様だとマニュアルモード仕様となるので、少し華やかさは出るでしょうか。



アルファ風のピラー内蔵型ドアノブを操作してリアシートへ。さすがに開口部は狭く、乗員性はちょっと犠牲になっている部分。しかしいったん乗りこんでしまえば、見た目の印象よりも全然狭くない…むしろ十二分なスペースがそこには広がっています。グラスエリアの関係で閉鎖感は少しあるものの、頭上空間は適度に取られており、ひざ前スペース自体は結構厳しいのですが、足元付近の余裕と前席下への足入れ性が非常に良いので、座っていると不思議と狭さを感じさせません。前席を含め、しっかりパッケージングを煮詰めたなという印象がとても伝わってきます。



ラゲッジスペースはフラットなのですが、開口部自体が高く荷物の出し入れは大変。また奥行き自体はかなりあるのですが、いかんせんDピラーは思いっきり寝かされているので、ここはハッキリと犠牲になっている部分。これに不満のある人はもう1サイズ大きいデュアリス買ってください、という割り切りでしょう。ノートのラゲッジを見て全然狭くない、と思う方なら不満はないかと思います。

テスト車両は15RX。1.5Lの上級モデル。ターボモデルと共通デザインとなる17インチタイアとアルミはオプションで、ベースは写真の16インチ。銘柄は完全サマータイアのヨコハマのdbなのは16・17インチとも同一。走りのバランスは別として、迫力満点のフェンダーに合わせるには、19インチくらいを履かせてやりたいところ(笑)ですが、開発者の方からすると、この205/60R16サイズがジュークのベストマッチングなのだとか。



では早速走りだしてみましょう。エンジンスタートともにキューブなどと同じメーターアクションを確認して、ちょっと普通過ぎて面白みのないシフトを握りDレンジをチョイス。エンジンはこのクラスの日産車ではお馴染み1.5LのHR15DE。ただ内部には大幅に改良が加えられており、ツインプラグならぬデュアルインジェクター、1シリンダーに2本のインジェクターを用意するという贅沢な(ちなみに世界初)仕様、しかも吸気側に加え排気側にも可変バルタイが組み込まれ、114ps/15.3kgmへパワーアップと燃費改善の両立を実現。これに組み合わされるのは、すっかりお馴染みとなったジャトコ製の副変速機CVT。



この組み合わせは本当に良く煮詰められており、日産の1.5L級パワートレーンはこれで完全完成形になった、と言いきってもいいくらい、そのくらいバッチリの完成度の高さを見せてくれました。ジュークは車重が1170kgとノートやキューブなどと比べ少し重めながら、それらを全く気にさせない必要十分なパワフルさ。街中で走る際の低~中回転域のトルクもたっぷりとしていてかったるい印象は全くなく、上まで回してもパワーの伸びが感じられます。またサウンド的にもすっきりしており、フィーリングも好印象。120km/h付近を超え始めるとさすがに1.5Lの排気量を感じさせられますが、日常域では4名乗車でもほとんど不満はないはず。街乗り+高速+ワインディング、元気良く走って14km/L台に乗ったのも立派。

さらに言えば、CVTの出来もいい意味でそれに拍車をかけます。以前スイフトでお伝えしたようなローからハイへと移行する際のトルク抜けはやはりジュークでも若干確認できますが、1.5Lの余裕さもあり個人的には無視できるレベル。速度が上がっていってからのアクセルに対する反応のリニアリティは他のCVT搭載車と比べても現時点ではベストな出来。右足の操作次第で加速時のエンジン回転を任意でコントロールできる感覚は、回転の上がりと速度が一致しない…なんて古臭いCVT車からは一線を課す仕上がりとなっています。

ちなみに、先ほどの「インテリジェントコントロールディスプレイ」で「エコモード」と「パワーモード」を選択する事が可能ですが、エコモードはかったるすぎて危険なモード燃費追求仕様、パワーモードは少しだけ反応はよくなるものの大きな違いは起きず、95%は終始ノーマルモードで走る事となりました。これで十分、これが一番、です。



もちろん、モアパワー!というのであれば自慢の1.6L直噴ターボモデルもありますし、4WDが選べるのもターボだけ。しかも4駆はトルクベクトル式4WDでリアサスはマルチリンクになるという贅沢っぷり。ただ、6速マニュアルモードが付くメリットはあるものの、ターボモデルのCVTは副変速機「なし」である事に要注意。まだ未試乗なのでなんとも言えませんが、決して小さくない価格差を考えても、このジュークのベストバイはFFの1.5Lモデルのようが気がします。


それをさらに強めたのが、フットワークの良さ。実は今回ジュークに乗って一番びっくりしたのがここ。クロスオーバーSUVかな?っと思っていましたが、なるほどこれなら、姿形が少し変わった、イマドキのホットハッチなのかもしれない…と言われても納得してしまいそうな、そんなハンドリングの良さを見せてくれました。やたらライバルとしてMINIやシトロエンの名前が出てくるわけです。

具体的に言うと、まず驚くのがロール剛性の高さ。この目線この車高の高さなのに、コーナーにかなりいいスピードで侵入していっても、とにかくロールしない。決してステア操作に対するクルマの動きは、MINIのように分かりやすいクイックさがあるわけでもなく、むしろ比較的落ち着いた挙動なのですが、まぁロールしない。Bプラでもやればここまで出来るのか!と、驚嘆に近いものを感じました。足をガチガチに固めているわけでも、サスストロークを狭めているわけでもないのに、とにかくハンドリングが軽快。アンダーも少なく、むしろリアを上手く滑らせながら曲がっていくFFホットハッチのようなセッティング。ステアリングフィールに関しても、電動パワステの出来はこのクラスの国産車で考えるとトップレベルのナチュラルさを持っており、重くも軽くもないちょうどいい操舵力で終始違和感を抱かせないチューニングになっています。

もちろん、ある程度まで攻め込んでいくと、最後の最後の部分でタイアのグリップに頼り切ってしまうような突っ張った動きに終始してしまいますが、そこはまぁちょっと非日常域でありますし致し方ないところ。これだけよく動くのにVDCがオプションでも装着できないというのは少し難アリですが、リアの動き出しは比較的早めにくるものの、そこからのコントロール性と収まり方、クルマ全体の挙動のまとめ方は、このボディサイズでこのサス形式でこの車高の高さで考えると、そして最後に価格を考えると、かつての走りの日産のプライドを久々に感じさせてくれる実用車、と思えます。



この答えとして、エンジンと同じく実際かなりの部分で改良は加えられており、トーションビームサスのリア周辺も、実はセレナ用のパーツなどを多く用いており、剛性の確保などにはかなりの部分でキチンと対応されているそうです。しかしやはり16インチがベストマッチングというのもあながち嘘ではなさそう。と言うのも、乗り心地自体これほどロール剛性が高いにも関わらず決して悪くなく、ハーシュネスの遮断も見事なのですが、全域…動き出しから高速域にかけて、どの速度域でも、大きな入力時はいいものの、小さい路面の荒れた部分やアンジュレーションに対してクルマの落ち着き不足、乗り心地は悪くないんだけども、常にスィートスポットにハマらないドタバタ感が終始していた点が少しウィークポイント。バネレート自体はさほどでもないので、これはおそらく小さな入力での動きが渋いダンパーの減衰による問題か。

エクストレイルやディアリスのようにザックス製でも使えば劇的に良くなる…のでしょうが、これも価格を考えれば贅沢な文句かもしれません。55扁平17インチではどうなるのか、ちょっと気になる部分です。加えて、鉄っちんなら見えませんが、見た目がリアがドラムでアルミホイールだとダサい…という問題も含めて、ブレーキにはもう少しストッピングパワーの余裕とカチッとしたフィーリングが欲しいところ。

それと少し関連してますが、VDCに関しての問題ですが、登場時にオプションでも未設定ということで、クルマ好きやメディア関連からはかなり口酸っぱく野次られたのが記憶に新しいところですが、日産としては価格をできるだけ抑えたかった事、加えて同価格帯になるキューブのVDC装着率が1%に留まる事、を考慮した結果なのかもしれません。実際この上級モデルの15RXで180万円切り、15RSタイプVなら約162万円と、この見た目でこの質感でこの走り、ユーザーの心をくすぐる実に上手い商品設定と言えるでしょう。もちろんそれと同時に、開発の人たちがここまで走りに関してはしっかり頑張ってくれているんだから、VDC含めての価格設定で戦略立てろよ!とも言えますが。これはいずれ1.5LモデルでもVDCが標準装着され、その際にリアブレーキもグレードアップ…することを期待しておきましょう。

個人的にはもちろん、トルクベクトル4駆+1.6L直噴ターボの16GTFOURが気になるところですが、こちらの価格は245万円超と一気に60万円近い値上げ。また、これくらいの価格帯になると、ライバルたちも違ってきますし、また200万円切りなら満足!なインテリアの質感なども、250万円クラスと考えるとちょっと…と、思えてくる部分もあったり。加えて、純正17インチアルミをオプションで装着してしまえば、そのホイールデザインを含めて外見に全く違いがない、というもの難アリ。事実、売り上げ比率を見ると、ターボモデルはFF・4WD合わせてもごくわずか。ほとんどが1.5L。しかも、お買い得な特別仕様車のタイプVや、15mmローダウン(なんとスプリングカットで実現!)で立体駐車場対応としたアーバンセレクションなど、日産も売り上げに見合った売り方をしてきているのが分かります。実際に乗ってみて、おすすめも当然こちらのほう。



いやーしかし、最初は見た目だけのクルマ、しかもその見た目自体が全然好きじゃない(笑)ということで期待していなかったのですが、いやいや予想に反してヒットしてる理由は見た目だけにあらず!ということを痛感。やっぱ、クルマは見て触れてそして乗って、最後に評価を下さなければいけませんね。このジュークの出来を見ていると、マーチで大きく裏切られた部分は、次期ノートの完成度でかなり埋め合わされるかも…ちょっと今から楽しみになってきました。


それはそうと、日産さん、ターボ売れてないんでしょ?次は1.5LモデルにVDC付けるのと同時に、FFでもいいのでリアがマルチリンクじゃなくてもいいので、1.6L直噴ターボ+6速MT、そんなジューク16GTSR、価格210万円、なんての、出しませんか?スイフトスポーツくらいやっつけられますよ?個人的に、本当に欲しくなっちゃいますよ?笑
Posted at 2011/09/19 16:36:41 | コメント(5) | トラックバック(0) | 日産 | 日記
2011年09月03日 イイね!

【試乗記】デミオスカイアクティブ、徹底ロングランテスト!後編

【試乗記】デミオスカイアクティブ、徹底ロングランテスト!後編さて、前回に引き続き、今回はデミオスカイアクティブの高速やワインディングといった、速度や入力が高めとなるステージでの印象をお伝えしていきたいと思います。





高速巡航ペースだと想像以上に良好な燃費を叩き出す事を確認して、さてここからは高速域での走りの印象について。関西以外の方には少しイメージが付きづらいのが申し訳ありませんが、ステージは名阪国道~東名阪道~伊勢湾岸、折り返して伊勢湾岸~東名阪道~新名神~名神~阪神高速、といったルート。悪評名高い?名阪国道は知る人なら分かるかなりのアップダウンや路面の荒れ方、そして国道とは名ばかりの相当に速い道路のペースなど、このクラスのクルマにとってはかなり過酷な場所です。

MC前の旧デミオでも何度も同じ場所を走った事がありましたが、ちょうどここが一番苦手とするステージでした。一般道やワインディング領域では楽しい味付けも、こういった路面が荒れ気味の高速ステージでは、どうしてもシャシーの頼りなさや足回りの華奢さが浮き彫りとなり、少し調子に乗って飛ばすとおっかなびっくり…直進性も低下しリアのスタビリティもおぼつかなく、冷や汗をかかせるような挙動に終始する結果に。ハイスピード域での安定性と快適性が旧デミオ最大のウィークポイントでした。



さて新型は。これが本当に見事、本当に「激変」と言っていいレベルで改善されていた事に、素直に驚かされました。街中でも足やボディの変化は実感できましたが、その効果は速度域が上がるにしたがってさらに大きく感じる事ができます。

具体的に言うと、まずはリアの落ち着きと踏ん張り感の向上。エコタイア専用スペシャルのアスペックを履くのでグリップの限界値は知れていますが、そこに至るまでのクルマ全体の挙動の穏やかさは、高速域で間違いなくドライビングする安心感へとつながっています。リアがしっかりとした事でフロントが逃げる…ということはなく、その分はっきりとロールは以前よりも大きくなってはいますが、むしろしっかりと舵を効かせて自信を持って高速コーナーをクリアする事ができるようになっています。もちろんそんな気合いを入れる領域だけでなく、ボディ補強やサスのリセッティングとダンパー減衰見直しなどにより直進性自体も大幅に改善されており、それこそ巡航速度で車線変更をする…そんな何気ない動きだけでも、しっかり感としなやかさを高次元にバランスした今回のデミオの足の良さを実感できるでしょう。



そしてもう1つは静粛性。進化著しいこのクラスにあって、デミオはこの速度域での静かさレベルは「並」。いや、むしろ弱点だったかもしれません。しかしこれも一般道インプレッションで書いた通り劇的改善。軽量化との兼ね合いの中でよくぞここまで頑張った!といった印象。ライバルと比べると、フィットハイブリッドやスイフトには少し劣るくらいのレベルで静かになったといえるでしょう。また、空力性能向上のため装着された床下のアンダーカバーのおかげで、特にリア付近からのロードノイズがグッと減ったのも副産物的効果。恐らくは雨の日などで水しぶきの巻き上げ音なども減少していることかと思います。ただ砂利道などでは、反面石がパチパチと当たる音が逆に目立ったりする事も。

こうなってくると残念に思えるのは、電動パワステの嫌な部分を払拭しきれていないステアリングフィール。ステアレシオ自体はクイックですが、こういった高速域ではもう少し操舵が重めで、また中立付近や微舵をいれた時のリニアさが欲しいところ。また、リアのどっしり感が増した事は記しましたが、あくまでも限界域に達するまでの挙動が穏やかになったというだけで、例えばリア荷重が抜け気味になる急制動時に直進性が失われるくらいにリアがフワッとしてしまうところまでは改善しきれていませんでした。もっとも、このグレードなら今はDSCが装着されているので安心ではありますが。



さて動力性能の方ですが、街中では十二分の性能を披露してくれた1.3Lスカイアクティブエンジン。しかし徐々に速度が上がってくると、1298ccという少なめの排気量などの影響もあってか、低~中速域でのトルクの薄さとレスポンスの悪さを感じる事がしばしば。これは、アクセル開度が少なくなると即ギア比を燃費最優先の巡航モードに切り替えて低回転を維持しようとするCVTのセッティングも影響しているかもしれません。シフトノブにはSSモードを選択するスイッチがあり(エコカーと言えども、マツダらしいですね)これを押すとアクセルに対する反応がさらにスピーディになりますが、これだと回転だけ先に上がってその後に速度が追いつく…というようなちょっと古臭いCVTのようなフィーリングが助長されます。むしろアクセルに対する反応をよりリニアで穏やかにするエコモードがあってもいいのでは、とも思ったり。また自論になりますが、アクセラ1.5LのCVTがとてもいい出来だったので、贅沢ながらCVTにマニュアルモードがあればなぁ…と考えてしまいます。

しかしそれらをあまり気にせず、アクセル全開でちょうど5300回転あたりをキープしながら加速していくと、絶対的パワーでは大した事ないものの、それにも関わらずゆっくりでありながら、かなりの速度域になっても確実にじわじわと速度が伸び、メーター上で確認できた最高速は結構なもの。これだけ出れば十分実用的。このあたり、特に100km/h以上では確実に空力性能向上パーツによる効果が実感できます。強烈な横風吹き荒れる伊勢湾岸道で、周りのクルマについていきかなりのハイスピードクルージングができた事がその実力を物語っています。またそういった速度域でも、ソフト気味の足は接地性を失わず、乗り心地もあくまで快適に保てているのはお見事。

1つ気になったのがノイズ。これはスカイアクティブエンジンによるものかどうかは分からないのですが、静粛性がかなりレベルが高い中、ちょうど2000~3000回転付近の巡航状態での常用回転域で、ちょうど蝉の鳴き声のような「ジィー」といったような音が耳で確認できました。路面状態に関わらず発生し、またアクセルを少し開け気味にして3000回転を超えると消えたので、ちょっとこれは気になったポイント。今のところ他の試乗記などでは指摘されてはいませんが、一応報告としてここに記しておきます。



さて、続いてはワインディングロード。表六甲・裏六甲を始めとして、六甲山周辺のドライブウェイ・ワインディングスポットを徹底的に走り込み。エコカーであっても、あくまで「カー」とついているならば、走りの性能もおろそかにしてはいけません。

ここでも、足回りの改良による懐の深さを実感。まるでサスストロークの容量が大幅にアップしたかのように感じるその挙動変化の分かりやすさと落ち着いた挙動は、本当に旧デミオと全くキャラクターが変わっています。じわっじわっとロールは進行し、できるだけ大きな挙動変化を起こさずに、次のコーナーへと上手くヨー変化をつなげていく…そうするとi-DMでブルーレベルを維持しながらワインディングを駆け抜けていく事ができます。ただペースを上げていくと、純正14インチサイズのアスペックの、特に横方向に関してグリップレベルが物足りなくなってきます。その軽快なフットワークに対して、入力が大きくなると結構いとも簡単にズルッとテールアウト気味になるので注意。もっとも、そういった際に介入するDSCの制御はとても自然で、走りを極端に邪魔しない設定となっています。是非、これならベースモデルにも拡大設定を。

こういった場面でもう少し…というなら、もう少しグリップ志向の違うタイア銘柄か、もしくはエコ銘柄のまま1サイズインチアップしてみるというセットアップもアリかもしれません。もっとも、このタイアを最大限生かしながらスリップアングルをつけずに上手く走っていく…というのも、これはこれで頭を使いながらドライビングを楽しむ事ができるというのが、このスカイアクティブ本来の狙いなのかも。



…と少し奥歯に物が挟まったような言い方になってしまいましたが、はっきり言って、こういったワインディングのようなステージでは、圧倒的に楽しめるのは旧デミオのほう。固められた足はロールが少なく、そこからステアリングの反応は実にシャープで、コーナーをパキンパキンと駆け抜けていけるこの爽快さと軽快感は、まさにFFのロードスターとも言いたくなる本当に楽しい出来。総合的には新型の方が自動車としての完成度は高い…のですが、それらは旧デミオの良さを全て受け継いで…というわけではなく、交差点を1つ曲がっただけである程度こういったクルマ好きにビビビっと(笑)響く部分は少し薄まってはいます。もっとも、こんな事まで気にする人間は、ごくごく一部でしょうが…。

では、スカイアクティブのワインディング路での注目は…?それは燃費。今回のロングランで、いわゆる専門的知識を持たずに、普通の人がこのスカイアクティブに接したところで得られる分かりやすいメリットは?という事を探っていましたが、その1つとして「アクセル開度が大きい場面でも燃費の悪化率が低い」という事が挙げられます。

他のエコカー、いわゆるハイブリッド系は、あるスポットにハマると本当に驚くほど燃費が伸びますが、逆に言えばそのスポットから外れてしまうと期待通りの燃費数値は望めません。また、順調に数値を伸ばしていても、例えば登りのワインディングでエンジンを回し気味にすると途端に…といったように。



しかしながらスカイアクティブデミオは、そういったワインディングでも悪化の幅が最小限で済んでいる印象でした。画像は中間地点、高速ハイペース走行からワインディング全開走りを終えて400kmを超えた時点での燃費。状況下からして真夏でありながらこの数値をキープしているのは、立派という一言に他なりません。

現状で「スカイアクティブが思ってた以上に燃費が伸びない…」という評判を聞くのは、おそらく街中オンリーでの使用の場合でしょう。確かにこういった条件では、以前と比べればはるかにi-stopの時間は長くなりましたが、薄めの低速トルクと、それを補うべくしてアクセルに対して反応のいいCVTのセッティングが災いし、12~13km/L台という数値も見られます。しかしながら、販売時期が夏場である事も考慮して、おそらくはこれが今回スカイアクティブの実用燃費の底値でしょう。

ざっと計算したところで、街中では~15km/L、少しペースが上がってくると20km/L台にすぐ突入し、流れのいい郊外の道路や高速域では23~24km/Lに迫る事だって比較的容易。一度エアコンOFF&真剣80km/hキープエコランを行い、燃費計で29.2km/Lまで確認もできましたが、少し非現実的すぎるので割愛。しかしながら真夏でこの結果ですから、やろうと思えば相当に伸びる…HVに慣れた基準ではその分衝撃は緩和されるのかもしれませんが、やはり純粋なレシプロエンジン搭載車としての燃費はかつて体験した事のないほどズバ抜けていい、そう評価していいと思います。もちろん、一番使われるパターンが多いであろう街中のストップ&ゴーが続く状態での一般燃費の向上も課題。そこは、スカイアクティブドライブの6速ATが出れば、もう少し改善できそう…?

それよりもやはり気になったのが、航続距離の問題。アンダーカバーを装着するために新規で起こしたガソリンタンクの容量は、ベース車-7Lの35L。イマドキ軽自動車レベルのこのタンク容量。しかもデジタル表示のガソリン計表示は8分割表示。実際20km/L近い数値をキープしていたものの、560kmを過ぎたあたりで残り1目盛りで警告灯が点灯。やはり7L分の減少は惜しいと言わざるを得ません。精神的にも落ち着きがなくなるので、この時点で給油。給油量は29Lだったので、燃費計数値は少し甘めでしたが、まぁ誤差で許容できる範囲と言えるでしょう。

例えば同条件で比較して、満タン状態から残り7Lを余らす状態まで走ったとしましょう。スカイアクティブは消費28L、20km/Lで計算すると巡航距離560km、同条件でノーマルモデルの13C-Vの燃費を15km/Lだったとすると、消費は35Lと考えると巡航距離525km。5km/L違いというのは大雑把な目安ではありますが、日常域で互いの燃費の差がさらに近付くとなれば、おそらく実際にオーナーになってみても、給油頻度は大きく変わらないのでは。もちろん1回あたりの支払額は給油量が少ない分安く済みますが、ガソリンスタンドに寄る頻度があまり変わらない…というのは、燃費のいいクルマに乗っているという感覚があまりなくなるような気がします。

ここが今回事前にも気になっていて、いざ実際乗ってみてもやっぱり引っかかった部分。燃費を叩き出すために空力性能を重視、そのために減らされた燃料タンク、でも1トンを超えてしまった車重、しかしながら残されたスペアタイア……社長の鶴の一声で、マイナーチェンジでスカイアクティブを搭載するというその判断の、綻びが見える部分です。もちろん、開発者の方々の努力の跡は運転していると隅々で実感。しかしながら、もともとの土台に無理があったのも事実でしょう。



しかしながら、そういった部分から目を逸らして、このセグメントのデミオとしての価値を考えると、実に有用なマイナーチェンジだったと言えます。圧倒的に変わってよくなったボディ、足回り、それを含めた走りのセッティング、高速域での安定性…クルマ自体が1ランク車格アップしたような仕上がりは、本当に見事。スカイアクティブは当然目玉商品ではありますが、あくまでもマイナーチェンジで追加された1グレード…くらいの心持が、ちょうどいいのかもしれません。

ということで、機会ありましたら、また「非」スカイアクティブの素4AT仕様やスポルトなど試して、この新世代デミオの可能性を見ていけたら……そしてもちろん、スカイ搭載の新型アクセラや、フルスカイ仕様となるCX-5なども、登場したら是非またテストしてみたいと思っています。



最後に、最終燃費報告。給油後はさらに燃費を気にせず積極的に走り、i-DM判定で2点台という低評価(笑)を出しつつ、最終的に855km走行した後の燃費がご覧の表示。実測は18.58km/Lでした。総合的にはフィットHVに若干追い付かず、しかしながらそれを除けば断トツにいい、というところでしょう。


Posted at 2011/09/03 23:11:09 | コメント(4) | トラックバック(0) | 日記
2011年08月27日 イイね!

【試乗記】デミオスカイアクティブ、徹底ロングランテスト!前編

【試乗記】デミオスカイアクティブ、徹底ロングランテスト!前編さて、前回スカイアクティブデミオの試乗速報をお届けしましたが、数十分の試乗ではその真意まではなかなか判断することはできません。注目の1台なだけに、もっと走り込みたい…そんな希望が想像以上に早く叶い、早速1台借り出して、高速・一般道・ワインディングとあらゆるステージを試すロングランテストを実行することができました。


今回は燃費計測を含めて、約850km走行したデミオ13-SKYACTIVのレポートをお届けします。









テスト車両はシルバーの13-SKYACTIV。走行わずか130kmのド新車。この地味な色だと営業車っぽさ全開ですが、彫刻的で抑揚の効いたボディラインは、こういった色の方が際立つかもしれません。事実、デミオはブルーやグリーンなどの目立つボディカラーもありますが、シルバーも色合いの違う3色をそれぞれ用意していたりします。



マイナーチェンジで変更されたのはバンパー・グリルだけですが、空力の事も考えつつ実に洗練されたデザイン。表情が豊かになって、とてもデミオにマッチングしています。フェイスリフトで顔が崩れず完成度が上がる珍しい好例ですね。

スカイアクティブの専用パーツは、ヘッドライトのブルーのアクセントと、LEDテールランプ。LEDは写真のように2列になって光ります。ただテールデザインはベースモデルと全く同じにする必要もなかったのでは…?



140万円のベースモデルなので、見た目ではドアミラーウィンカーやプライバシーガラスはなし。リアのヘッドレストはシート一体型。またまた安っぽい…(苦笑)  残念ながらベースモデルなのでシートリフターもなし。前回のレポートや、カービューでの岡崎さんのレポートでもありましたが、これらの装備たちがわずか+5万円で装着されるセットオプションのパッケージ1は絶対に付けるべき。

次にシートですが、こちらはスカイアクティブ専用のシート。新素材のネットなどが採用されているのですが、ちょっと張りが強くて身体とのフィット感やサポート性はイマイチ。また、ベースモデルとは違い、相当背もたれを起き気味にしてもどことなく遠いヘッドレストも気になりました。黒一色というのも、オシャレなカームホワイトの内装からすれば相当地味。

しかし最初の印象はあまりよくなかったものの、重量分散はよく出来ており、ロングドライブでの腰の疲労感は最小限で、その点ではなかなかの実力派でした。完全に新車状態だったので、ある程度クッションが馴染んでくるとちょうど良くなるのかもしれません。

ドライビングポジションは極端にアップライトな印象を抱かせず、比較的低めの着座位置で雰囲気はスポーティ。しかしながら窮屈な印象を抱かせず視界良好なのは、前席付近でグッと下がるウエストラインと大きめのドアミラーのおかげ。このあたりの空間設計の上手さはデミオの美点の1つ。ただ、唯一ステアリングにテレスコ調整が未装着なのが惜しいところ。



インテリアは質感の低さを解消するべく、ピアノブラックのパネルやメッキのリングやモールを追加して頑張っている…のではありますが、元々のチープさを払拭するまでには至らず。ぜひともスカイアクティブにも、単調な黒ではなく、もう少し明るい内装色がほしいところです。

ハザードランプを目立つ色に変更するなど、地道な改良は○。あとそれに加えて、サイドブレーキ周辺の収納性や利便性の高さは、目立たないもののかなり褒めたいポイント。財布、携帯がすっきりサッと置け、紙パックのドリンクもしっかり固定できるなど、よく考えられています。本棚ラック風のグローブボックスもアイデア賞モノ。


リアシートは正直言って割り切り感が顕著。中央席ヘッドレスト&3点ベルト装着可能になったのは歓迎ですが同クラスで一番後席3人掛けをしたくない1台と言えるでしょう。ただ改めて気づいたのは、デミオの積載能力の高さ。シートを倒しても大きめの段差が残りますが、ラゲッジスペースの広さはなかなかのもの。新型が出た当初は、先代モデルがこの項目でかなり優秀だったため狭さが目に付きましたが、新型スイフトの使い物にならない狭さから比べれば、格段に広い(笑)

意外な事に、懸命に軽量化に力が注がれたデミオながら、テンパータイヤはこのスカイアクティブも標準。これをレスにすれば1トンジャストも達成できたかもしれませんが…。


さて、ボンネットを開けてみましょう。



まず目に飛び込んでくるのは鮮やかなブルーのエンジンカバー。このあたり普段目に見えない部分のコストカットはヴィッツやマーチ、はたまたポロあたりも凄い割り切り用ですが目玉が「エンジン」なだけに、見た目のアピールには事欠かしません。

そして気づかされるのが、エンジン自体のデカさ。ベースモデルに比べて明らかにぎゅうぎゅう詰めな印象。スカイアクティブにHIDが装着できない理由がよくわかります。このデミオのエンジンスペースにスカイアクティブをぶち込むには、開発陣の方々には相当な苦労があったことでしょう。

そしてもう1つ。これまた相当にでっかいバッテリー。2個→1個になったのはi-stopの劇的進歩ではありますし、アイドリングストップ車のバッテリーは皆このくらいの大きさはあります。

ただ、装着位置が比較的上部になることもあり、見た目からも明らかにフロントの重心位置を上げていそうで重量バランス的にもちょっとこれは…

エコカーとはいえ、そこはズームズームのマツダ。ロードスターみたいにトランク移設すれば…なんてクルマ馬鹿の戯言で無茶なリクエストを言いたくなる…と思いきや、なんと1度は実際に検討した結果、コストアップの兼ね合いから泣く泣く諦めたんだとか。さすがマツダ、といったエピソードでしょうか(笑)


さて、早速走り出してみましょう。一般道での印象は以前書いた通り。ドアを閉めた瞬間の音から分かるボディのしっかり感の向上。歩道の段差を越えるだけでも乗り味の質感が大いに向上していることが分かります。走り出せば、スカイアクティブ専用の遮音フロントガラスの効果も手伝って、静粛性は先代モデルと比較にならないほど。ダウンサイジングユーザーにもすんなり受け入れられそうな、この走り出しからの数分でも分かる進化。軽快、だけど華奢…なイメージはかなり払拭されています。


さて、ここからは高速道路へ。とは言っても、土曜日の阪神高速、流れ自体はさほど良くなく、渋滞もところどころ発生しています。



まずは流れに沿って、左側で大人しく。一般道での印象の良さそのままに、奈良方向に向けて100kmほど走った時のメーター内の燃費表示がこちら。i-DMは5点満点で走りを評価してくれるのですが、この時は4.5。気温からも分かる通りエアコンはもちろんONで、のんびり程度に走っていきなりこの燃費。これから期待がもてます。




さてこの後は、アップダウン激しい名阪国道、伊勢湾岸での高速ハイペース巡航、表・裏六甲のワインディング全開走行などなど、エコカー的には厳しい場面が続きますが、楽しい走りを両立させるスカイアクティブをテストするフィールドには最適でしょう。様々な場面でのロングランテストの模様は、次回後編へ続きます。
Posted at 2011/08/27 20:52:24 | コメント(3) | トラックバック(0) | マツダ | 日記
2011年08月13日 イイね!

【試乗記】新型スイフト1000kmロングランレポート&次回予告

【試乗記】新型スイフト1000kmロングランレポート&次回予告いやー、毎日本当に暑いですね。
お盆は1000円高速が終わったものの、連日大渋滞。帰省される方は是非お気をつけて安全安心な楽しいドライブを。








さて、前回はデミオスカイアクティブの試乗ショートレポートをお届けしましたが、なんと早速先週末にに2日間に渡って1台抑えテストする事ができ、燃費計測を含めて、あらゆる様々なステージを、徹底的に走り込んでロングランを敢行してきました。現在、レポート作成中…






その前に、この車のインプレッションをしておかなければ…ということで、最大のライバルと目される、スズキの新型スイフトの1000kmロングラン試乗のインプレッションを今回はお届けします。スイフトに関しては、登場直後に簡易レポートを書きましたが(その1その2)、投稿期間の関係もありますが、この2本が歴代PV数でもトップ。しかもかなりの断トツっぷり。それだけスイフトの注目度が高い、ということもあるのかもしれません。


というわけでテスト車両の紹介。前回は16インチを履くXLでしたが、今回はベースモデルの15インチを履くXG。124万円という価格ながら、プッシュスタートにオートエアコンなど、ベースモデルですでにフル装備状態。スターティングプライスだけを見ると少し高めな印象ですが、コストパフォーマンスは非常に高いと言えるでしょう。逆に言えば、もう少し装備内容を精査して、取っ付き易い価格帯のモデルを設定する必要があるかもしれません。



前回の試乗レポートと同じ内容になりますが、軽くクルマの紹介を。3代目となったスイフトは、先代からガッチガチのキープコンセプトのデザインで登場。ただプラットフォームまで変えたところから見て、わざわざ先代モデルに似せるようにデザインするほうが難しかったに違いありません。それだけスズキの自信っぷりが伺えるスタイリングです。

インテリアのほうは質感劇的アップ。このセグメントの国産では明らかにナンバー1でしょう。フィットよりもキレイにまとまっており、デミオには確実に勝ち、露骨にコストダウンに走ったマーチやヴィッツと比べると、その差は歴然。ただ実際には上手に「高級そうに」見せるその素材の生かし方が上手い、と表現したほうがいいでしょうか。このあたりの技は、少し前まではトヨタが断トツに上手だったのですが、ヴィッツを見ても分かる通り、今となっては…。



気になると言えば、そのメーターパネルの表記も、エアコンモニターも、スイッチも、全体的にちょっと小振りで、操作する際に少し目線移動が必要なのが玉に傷。シフトレバー付近の処理も高級感たっぷり…実際のシフトの操作感は案外にカチャカチャと節度感が薄めなのですが、ブーツカバーで巧みに演出しているところがまた上手いところです。

さて、ドアを開けシートに座ってみましょう。前回のレポートでもお届けした通り、この時点で他の国産同セグメントよりもスイフトが頭ひとつ飛び抜けています。ドアのバシッと閉まる音の良さ、座面・背面ともにたっぷりとしたシートサイズ、チルト&テレスコでばっちりと決まるシートポジション。目線自体が高めなのはお約束ですが、立ち気味のAピラーとも相まって、視界は全方位に良好。しっかりと作り込んである事がこの段階で伺えます。



さて、全車標準のプッシュボタンを押してエンジン始動。新型の1.2L4気筒ユニットは振動が少なく、また車全体の静粛性が優れている事もあって、このあたりの静かさは本当に2Lクラスのクルマとも全く遜色のない出来と言っても過言ではありません。昨今コストダウンばかりが目立つ同クラスから比べれば、本当に120万円台のクルマとは思えません。

ESPが付き7速CVTとなるXSは試せていないので、前回レポートしたXLとの走りの差は主にタイア。前回は185/55R16のBSトゥランザ、そして今回のテスト車両のXGは175/65R15のヨコハマDNAdb。一応両方とも転がり抵抗を考慮されたOEMチューンタイアですが、その他のグリップバランスやロードノイズ性も優秀な、「金のかかっている」タイアです。

両車乗り比べてみての感想として、今回推したいのはベースモデルの65扁平15インチ仕様。見た目は当然16インチの方がスポーティ。乗り心地は16インチがアルミ、15インチがスチールホイールという事で意外に差はほとんど感じられなかったのですが、スイフトらしい軽快感を重視したセットアップとしては15インチのほうがマッチしているかな?という印象でした。操舵フィールを比べると、16インチはどっしり、15インチはスッキリ、といったところ。日常域で一番大きな差は最小回転半径の違い。16インチは5.2m、15インチは4.8m。この差は結構大きく感じられ、以前の16インチ仕様で感じられた取り回し性の悪さは、15インチ仕様ではほとんど気になりませんでした。



ワインディングで飛ばす領域になると、確かに15インチモデルの方がフロントのアンダー傾向が早めに現れますが、16インチモデルでは完全に足が勝ち過ぎてパワー不足っぷりがさらに目立ってしまいます。乗り心地にあまり大きな差が感じられなかったのはおそらくバネ下重量の違い?それでも、16インチでもさして足のバタつきを感じさせないセッティングは見事。けど個人的には15インチサイズ+アルミホイール装着で、乗り味とフットワークの良さをさらに高次元にバランスしてセットアップしていきたいところです。そもそもこのクラスのアシグルマに16インチサイズはいくらなんでもやり過ぎ…まぁこの傾向は、スイフトだけに見られるわけではありませんが。

フットワークだけではなく、コンフォート性もスイフトはかなりのハイレベル。風切り音やロードノイズの侵入も少なく、静粛性の高さは間違いなくクラストップレベル。直進性もよく路面が荒れていても接地性変化が少なく、ビタっと安定。とても1トンを切っている軽量な車だとは、こういったステージでネガティブ方向に感じる事はありません。乗り心地も15、16インチともに満足できますし、そのおかげで長距離のロングドライブもまったく苦になりません。ワインディングでの軽快感と高速道路での重厚感のバランス、この落とし所は見事という他ありません。まさにこのあたりの感覚は、欧州セグメントに本気で戦っていってやろうという気合いを感じさせてくれる仕上がりです。

その反面、やはりちょっと影が薄くなってしまうのは、パワートレーンに関して。4気筒エンジン+副変速機付CVTの動力性能は、1トンを切る車重に対しては必要十分以上。ですが、ここまで足とボディが良いとなると、やはりモアパワー!と叫びたくなってしまいます。それはスポーツを待って…なのかもしれませんが、それだとちょっとやり過ぎ、というユーザーもいるでしょう。個人的には先代モデルのように、1.5Lクラスのエンジンを搭載した「普通のスイフト」の上級モデルがあれば…と思ってしまいます。



その原因として、このエンジンとCVTのマッチングにも少し問題があるように思えます。4気筒エンジンならではの上質なフィーリングと吹け上がり、3000~5000回転付近の中回転域のトルクもなかなかのもの。しかしながら、どうしても発進直後~2000回転付近のトルクが薄めで、街中での発進時や巡航状態からスロットルを少し開けて加速…といった場面で、少しばかりモタモタしてしまいます。また副変速機付CVTも、ちょうど50~60km/h付近でハイギアに移行する際に、巡航モードながら若干アクセルを踏んでいる状態…そういった時に、加速Gがアクセルを踏んでいるのに「フッ」っと抜けてしまうような違和感、これは1000km乗ってテスト終了まで、どうしても拭う事ができませんでした。

リニアな加速フィール+燃費も優先したい、それを狙ったセッティングとしては、フィーリングはがさつなものの、低速のパンチ力に優れる同排気量のマーチの3気筒エンジンとスイフトと同じCVTは、より自然なマッチングだったという感想です。マーチはタコメーターがなかったのでより違和感なく受け入れられたのかもしれませんが、このあたりの街乗り領域での加速の機敏さで言えばマーチの方が長けている…逆に言えば、マーチが勝っている部分はここしかないのですが…苦笑  


反面、高速域になってくると、印象は大きく変わってきます。回転域が上がりトルクが太い部分で変速が行えるようになったおかげで、アクセル操作に対するレスポンスは大幅に向上。とくに追い越し加速時に、アクセルの踏み方次第で、まるで普通のトルコンATがキックダウンするように回転を右足で自由に操る事のできるフィーリングには驚き。ここまでCVTでエンジンとの意思疎通が図れるとは。速度域が高いステージでここまでのナチュラルな仕上がりを見せてくれるCVT車はこれまでありませんでした。ここはもう手放しで褒めたい部分です。CVT嫌いな人も気持ちを改めてしまうかも。もちろん街乗り領域のかったるさについては、MT車やXSの7速パドルシフト仕様ならば、幾分印象としては改善されるかもしれません。

こういった点からも分かる通り、スイフトはある意味で街乗りベスト…といった従来、もしくは今でも最優先事項として当然されるこのセグメントのセッティングから、確実により高い速度域のマーケットを重視しているという事が伺えます。これスイフトが国際戦略車として狙っていくマーケットのボリュームゾーンとしては当然。しかし同クラスの一部国産車がだらしないクオリティで新車を出している結果、この日本でもスイフトは間違いなくキラリと輝く魅力を持つ、端的に言えば所有する事にプライドを持てる、そんな素敵な仕上がりを見せてくれ、それが評判・評価の高さにつながっています。

ちなみに燃費計測もしたのですが、高速巡航モードでは20弱、1000km走行で一般道4割、高速6割という条件で17km/L台を記録。アイドルストップ仕様が追加され街乗り領域の燃費がさらにアップすれば、鬼に金棒でしょう。

パッソやヴィッツやマーチを見ていると、この先の日本国産車が、頭角を現す韓国・中国車にやられてしまう…という危機感が大きくなるばかりですが、このスイフトを見ていると、よしよしまだ大丈夫だ、という気持ちを大きくします。



…しかし、ここはいつもの通り、絶賛モードで終わる事なくしっかりと難癖もつけておきましょう(笑)

スイフト最大の欠点、それはラゲッジスペース。後席の居住空間はある程度確保されていますが、それから後ろ…積載能力が、いくらこのコンパクトクラスとは言え、あまりにも低すぎます。剛性と修理性を優先したバックドア開口部の小ささはまだ良いとして、上下分割式ながら、アルト程度の奥域しかないのはちょっと最低限レベルを下回っています。その割り切りがあったからこそこの走りのクオリティが実現できた…と開発陣は言い訳するかもしれませんが、何もスイフトはスポーツカーではないのですから。

出た当初も問題視していましたが、先日乗ったスカイアクティブのデミオの試乗で、あぁデミオのトランクってこんなに広いんだ…と再認識し、改めてスイフトのほぼ唯一かつ致命的弱点がさらに露呈した印象です。何もフィットほど広くしろ、とは言いませんが、プラットフォームを一新したのであればもう少しパッケージング効率は煮詰めて欲しかった…こう言うと、スズキ陣営は「日本にはソリオがありますからそちらをどーぞ」という事になるかもしれませんが、いやそういう問題じゃないのです。いい車でも、スイフトが気に入っていながら、あのソリオのようなスタイリングのクルマに乗ろうとは、自分は思えません(笑)


そしてもう1つ。これは新たに気になった点なのですが、それは塗装のクオリティ。他の同クラス車でズバ抜けて良い…と感じるのはVWポロくらいなものですが、それにしてもちょっとスイフトのレベルは、軽自動車クラスを思わせる出来。これは薄いグリーンというテスト車両の微妙な色合いが問題なのか、はたまた初期ロット特有の問題か。ボディ表面の光沢感もはっきりと弱い印象。以前のテスト車両のブラックでは気にならなかったものの、他で言えばシルバーやブルーなどでもこの傾向は感じられました。これはどうやら「メタリック」が原因?

他のブラック、レッド、ホワイトはパール塗装(白だけ+21.000円)。他3色はメタリック。因果関係は確認できていないので不明ですが、他の部分のクオリティと作り込みがしっかりしているだけに、少々気になった部分。そういった事に敏感な方は、パール系のカラーを選んでいた方がいいかもしれません。

さて、色々書くうちにまた長くなってしまいました。あとはスズキの販売店自体の問題などもありますが、それらは以前の試乗記に記しているのでこちらでは割愛。しかし書くうちに、走りの良さを改めて思い出して、また乗ってみたくなってきてしまいました。これでもう少しパワーがあればなぁ…



なんて思っていたら、ついに出てきましたね。本命の新型スイフトスポーツ。改良型M16Aエンジンはさらなるパワーアップ&燃費向上、そして待望の6速MT搭載。ESPに7エアバッグ付。国内仕様は5ドア?タイアは想像するに17インチ?(ちょっと大き過ぎかな…)

しかし何より、エクステリアは超好み。ちょっとガキっぽいかもしれませんが、いいんです、自分はまだまだガキなんですから(笑)

この内容で、是非200万円切りを…いや、ひょっとしたら180万円台あたり?久々に現実的な範囲で欲しいと思わせる新車。登場が楽しみで仕方ありません。内容によっては、ひょっとしたら、就職時の愛車候補筆頭…!?…今から、ローンのシミュレーションや頭金の貯金を考え始めているのは、事実であります…(笑)




さて次回は、冒頭にも書いたとおり、スイフト最大のライバル?でもある、マツダのスカイアクティブデミオのロングランレポートをお届けします。ご期待ください。
Posted at 2011/08/13 17:16:00 | コメント(4) | トラックバック(0) | スズキ | 日記

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「明日は恒例のメディア対抗ロードスター4時間耐久レース。今年も64号車の監督やります。前日準備は洗車機の中のような豪雨。さて明日は??(^_^;)」
何シテル?   08/31 19:12
幼い頃から、車が大好きでした。 その気持ち変わらず、今も純粋に、自分なりに日々世の中に新しく生まれるクルマ、そのクルマを取り巻く事情や環境、ドライビン...
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