
GT-Rに続いては、これも個人的にとても印象的だったマセラッティグラントゥーリズモ。今年初めのJAIA輸入車試乗会で試す事ができた1台です。
まず簡単にラインナップを整理しておくと、基準となるグラントゥーリズモはV8の4.2L405psにトルコン式6速ATの組み合わせ。これに対しハイパフォーマンス仕様のグラントゥーリズモ「S」はエンジンが4.7L440psと強化され、ギアボックスは6速の2ペダル式セミオートマ。ちなみにSはミッション搭載位置もトランスアクスル方式と変更を受けています。
そして今回試乗したこのグラントゥーリズモ「Sオートマティック」。これはエンジンはSの4.7Lに、トルコン式6速ATを組み合わせた仕様。価格はちょうどノーマルとSの中間くらいであり、日常性と過激さを絶妙に組み合わせたモデルと言えるでしょう。ちなみに、トランスアクスル方式のSは前後重量配分が47:53とリア寄りになるのに対して、こちらのトルコンAT仕様は49:51と、より前後バランスは良好となっています。
さて、説明もそこそこに早速試乗開始。アイドル状態では室内はあくまで静寂。シフトをDポジションに入れての動き出しは極めてスムーズ。これもトルコン式のコンベンショナルなATのおかげもあってのマナーの良さでしょう。
しかしまぁ走り出してみると、なんと乗り心地の素晴らしい事か。一応Sを名乗るだけあり、足回りはハード仕様でタイアはピレリの超扁平極太20インチ。しかしながら路面が細かく荒れていようが大きくうねろうが、サスはしなやかにストロークし嫌なフリクションは一切感じられません。かといってブカブカとするような動きは皆無で、ピッチ方向の動きもバシッと1発で収まり高速域でのフラット感も上々。車重2トンに迫るとは思えないほどのステア操作に対するダイレクト感とクルマとの一体感もさすが。ステアリング自体の重さも気にならず、先ほどの低速でのマナーの良さも含め、日常域での快適性はさすがラグジュアリークーペ、と膝を叩きたくなります。
…しかし、これだけで終わらせないのが、マセラッティの真髄。ひとたびアクセルを踏み込めば、そこにはイタリアの血が沸き立つ快感が湧きあがります。
足回り以上に素晴らしいのが、やはりエンジン。排気量が大きい事もあり、3000回転以下でのんびり流す領域でもトルク不足は全く感じられず、3~5000回転では徐々に乾いたサウンドが耳に届きます。そして極めつけはそこから先…「コ」の音が強くいかにもフェラーリの血筋を感じる素晴らしいサウンドとともにタコメーターの針が上昇し、炸裂するパワーとともに体に響く鼓動とこの素晴らしいきめ細やかな回転フィール!440psという出力はちょうどトップエンド付近で発生されるという、排気量を考えれば超高回転仕様のこのエンジンの魅力は、どんな速度域でも、どんな回転域でも、それぞれ違った、しかしどこでも素晴らしい魅力的な表情を覗かせてくれます。こういう場面で唯一初期制動が甘めに感じられる6ポッドのブレーキフィールにはひと癖ありますが、慣れてしまえば踏力に対するコントロール性は上々です。
またATはこういった場面でも、トルコン式ながらパドル操作に対するレスポンスは十二分に素早く、スムーズそのもの。これならば日常性に幾分かの犠牲が伴うであろう2ペダルセミオートマより、この通常のATモデルのほうがベターなチョイスでしょう。
インテリアの質感とセンスが素晴らしい事は言わずもがな。リアシートに座る機会もあったのですが、身長178cmの自分でもキチンと座る事ができて実用性もすこぶる良好。またさらに求めるならば、ポルシェパナメーラよりも2000倍くらいはカッコいい、4ドアのクアトロポルテも選べます。
ごくごく短い試乗時間ではありましたが、乗る前に抱いていた印象は裏切られるどころか、さらに心酔してしまいました。あえてフェラーリではなくマセラッティを選ぶ理由とその価値を、今回身を持って体験できた事を大変幸せに思います。
Posted at 2010/10/09 11:24:31 | |
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マセラッティ | 日記