
いやー、毎日本当に暑いですね。
お盆は1000円高速が終わったものの、連日大渋滞。帰省される方は是非お気をつけて安全安心な楽しいドライブを。
さて、前回は
デミオスカイアクティブの試乗ショートレポートをお届けしましたが、なんと早速先週末にに2日間に渡って1台抑えテストする事ができ、燃費計測を含めて、あらゆる様々なステージを、徹底的に走り込んでロングランを敢行してきました。現在、レポート作成中…
その前に、この車のインプレッションをしておかなければ…ということで、最大のライバルと目される、スズキの新型スイフトの1000kmロングラン試乗のインプレッションを今回はお届けします。スイフトに関しては、登場直後に簡易レポートを書きましたが(
その1、
その2)、投稿期間の関係もありますが、この2本が歴代PV数でもトップ。しかもかなりの断トツっぷり。それだけスイフトの注目度が高い、ということもあるのかもしれません。
というわけでテスト車両の紹介。前回は16インチを履くXLでしたが、今回はベースモデルの15インチを履くXG。124万円という価格ながら、プッシュスタートにオートエアコンなど、ベースモデルですでにフル装備状態。スターティングプライスだけを見ると少し高めな印象ですが、コストパフォーマンスは非常に高いと言えるでしょう。逆に言えば、もう少し装備内容を精査して、取っ付き易い価格帯のモデルを設定する必要があるかもしれません。
前回の試乗レポートと同じ内容になりますが、軽くクルマの紹介を。3代目となったスイフトは、先代からガッチガチのキープコンセプトのデザインで登場。ただプラットフォームまで変えたところから見て、わざわざ先代モデルに似せるようにデザインするほうが難しかったに違いありません。それだけスズキの自信っぷりが伺えるスタイリングです。
インテリアのほうは質感劇的アップ。このセグメントの国産では明らかにナンバー1でしょう。フィットよりもキレイにまとまっており、デミオには確実に勝ち、露骨にコストダウンに走ったマーチやヴィッツと比べると、その差は歴然。ただ実際には上手に「高級そうに」見せるその素材の生かし方が上手い、と表現したほうがいいでしょうか。このあたりの技は、少し前まではトヨタが断トツに上手だったのですが、ヴィッツを見ても分かる通り、今となっては…。
気になると言えば、そのメーターパネルの表記も、エアコンモニターも、スイッチも、全体的にちょっと小振りで、操作する際に少し目線移動が必要なのが玉に傷。シフトレバー付近の処理も高級感たっぷり…実際のシフトの操作感は案外にカチャカチャと節度感が薄めなのですが、ブーツカバーで巧みに演出しているところがまた上手いところです。
さて、ドアを開けシートに座ってみましょう。前回のレポートでもお届けした通り、この時点で他の国産同セグメントよりもスイフトが頭ひとつ飛び抜けています。ドアのバシッと閉まる音の良さ、座面・背面ともにたっぷりとしたシートサイズ、チルト&テレスコでばっちりと決まるシートポジション。目線自体が高めなのはお約束ですが、立ち気味のAピラーとも相まって、視界は全方位に良好。しっかりと作り込んである事がこの段階で伺えます。
さて、全車標準のプッシュボタンを押してエンジン始動。新型の1.2L4気筒ユニットは振動が少なく、また車全体の静粛性が優れている事もあって、このあたりの静かさは本当に2Lクラスのクルマとも全く遜色のない出来と言っても過言ではありません。昨今コストダウンばかりが目立つ同クラスから比べれば、本当に120万円台のクルマとは思えません。
ESPが付き7速CVTとなるXSは試せていないので、前回レポートしたXLとの走りの差は主にタイア。前回は185/55R16のBSトゥランザ、そして今回のテスト車両のXGは175/65R15のヨコハマDNAdb。一応両方とも転がり抵抗を考慮されたOEMチューンタイアですが、その他のグリップバランスやロードノイズ性も優秀な、「金のかかっている」タイアです。
両車乗り比べてみての感想として、今回推したいのはベースモデルの65扁平15インチ仕様。見た目は当然16インチの方がスポーティ。乗り心地は16インチがアルミ、15インチがスチールホイールという事で意外に差はほとんど感じられなかったのですが、スイフトらしい軽快感を重視したセットアップとしては15インチのほうがマッチしているかな?という印象でした。操舵フィールを比べると、16インチはどっしり、15インチはスッキリ、といったところ。日常域で一番大きな差は最小回転半径の違い。16インチは5.2m、15インチは4.8m。この差は結構大きく感じられ、以前の16インチ仕様で感じられた取り回し性の悪さは、15インチ仕様ではほとんど気になりませんでした。
ワインディングで飛ばす領域になると、確かに15インチモデルの方がフロントのアンダー傾向が早めに現れますが、16インチモデルでは完全に足が勝ち過ぎてパワー不足っぷりがさらに目立ってしまいます。乗り心地にあまり大きな差が感じられなかったのはおそらくバネ下重量の違い?それでも、16インチでもさして足のバタつきを感じさせないセッティングは見事。けど個人的には15インチサイズ+アルミホイール装着で、乗り味とフットワークの良さをさらに高次元にバランスしてセットアップしていきたいところです。そもそもこのクラスのアシグルマに16インチサイズはいくらなんでもやり過ぎ…まぁこの傾向は、スイフトだけに見られるわけではありませんが。
フットワークだけではなく、コンフォート性もスイフトはかなりのハイレベル。風切り音やロードノイズの侵入も少なく、静粛性の高さは間違いなくクラストップレベル。直進性もよく路面が荒れていても接地性変化が少なく、ビタっと安定。とても1トンを切っている軽量な車だとは、こういったステージでネガティブ方向に感じる事はありません。乗り心地も15、16インチともに満足できますし、そのおかげで長距離のロングドライブもまったく苦になりません。ワインディングでの軽快感と高速道路での重厚感のバランス、この落とし所は見事という他ありません。まさにこのあたりの感覚は、欧州セグメントに本気で戦っていってやろうという気合いを感じさせてくれる仕上がりです。
その反面、やはりちょっと影が薄くなってしまうのは、パワートレーンに関して。4気筒エンジン+副変速機付CVTの動力性能は、1トンを切る車重に対しては必要十分以上。ですが、ここまで足とボディが良いとなると、やはりモアパワー!と叫びたくなってしまいます。それはスポーツを待って…なのかもしれませんが、それだとちょっとやり過ぎ、というユーザーもいるでしょう。個人的には先代モデルのように、1.5Lクラスのエンジンを搭載した「普通のスイフト」の上級モデルがあれば…と思ってしまいます。
その原因として、このエンジンとCVTのマッチングにも少し問題があるように思えます。4気筒エンジンならではの上質なフィーリングと吹け上がり、3000~5000回転付近の中回転域のトルクもなかなかのもの。しかしながら、どうしても発進直後~2000回転付近のトルクが薄めで、街中での発進時や巡航状態からスロットルを少し開けて加速…といった場面で、少しばかりモタモタしてしまいます。また副変速機付CVTも、ちょうど50~60km/h付近でハイギアに移行する際に、巡航モードながら若干アクセルを踏んでいる状態…そういった時に、加速Gがアクセルを踏んでいるのに「フッ」っと抜けてしまうような違和感、これは1000km乗ってテスト終了まで、どうしても拭う事ができませんでした。
リニアな加速フィール+燃費も優先したい、それを狙ったセッティングとしては、フィーリングはがさつなものの、低速のパンチ力に優れる同排気量のマーチの3気筒エンジンとスイフトと同じCVTは、より自然なマッチングだったという感想です。マーチはタコメーターがなかったのでより違和感なく受け入れられたのかもしれませんが、このあたりの街乗り領域での加速の機敏さで言えばマーチの方が長けている…逆に言えば、マーチが勝っている部分はここしかないのですが…苦笑
反面、高速域になってくると、印象は大きく変わってきます。回転域が上がりトルクが太い部分で変速が行えるようになったおかげで、アクセル操作に対するレスポンスは大幅に向上。とくに追い越し加速時に、アクセルの踏み方次第で、まるで普通のトルコンATがキックダウンするように回転を右足で自由に操る事のできるフィーリングには驚き。ここまでCVTでエンジンとの意思疎通が図れるとは。速度域が高いステージでここまでのナチュラルな仕上がりを見せてくれるCVT車はこれまでありませんでした。ここはもう手放しで褒めたい部分です。CVT嫌いな人も気持ちを改めてしまうかも。もちろん街乗り領域のかったるさについては、MT車やXSの7速パドルシフト仕様ならば、幾分印象としては改善されるかもしれません。
こういった点からも分かる通り、スイフトはある意味で街乗りベスト…といった従来、もしくは今でも最優先事項として当然されるこのセグメントのセッティングから、確実により高い速度域のマーケットを重視しているという事が伺えます。これスイフトが国際戦略車として狙っていくマーケットのボリュームゾーンとしては当然。しかし同クラスの一部国産車がだらしないクオリティで新車を出している結果、この日本でもスイフトは間違いなくキラリと輝く魅力を持つ、端的に言えば所有する事にプライドを持てる、そんな素敵な仕上がりを見せてくれ、それが評判・評価の高さにつながっています。
ちなみに燃費計測もしたのですが、高速巡航モードでは20弱、1000km走行で一般道4割、高速6割という条件で17km/L台を記録。アイドルストップ仕様が追加され街乗り領域の燃費がさらにアップすれば、鬼に金棒でしょう。
パッソやヴィッツやマーチを見ていると、この先の日本国産車が、頭角を現す韓国・中国車にやられてしまう…という危機感が大きくなるばかりですが、このスイフトを見ていると、よしよしまだ大丈夫だ、という気持ちを大きくします。
…しかし、ここはいつもの通り、絶賛モードで終わる事なくしっかりと難癖もつけておきましょう(笑)
スイフト最大の欠点、それはラゲッジスペース。後席の居住空間はある程度確保されていますが、それから後ろ…積載能力が、いくらこのコンパクトクラスとは言え、あまりにも低すぎます。剛性と修理性を優先したバックドア開口部の小ささはまだ良いとして、上下分割式ながら、アルト程度の奥域しかないのはちょっと最低限レベルを下回っています。その割り切りがあったからこそこの走りのクオリティが実現できた…と開発陣は言い訳するかもしれませんが、何もスイフトはスポーツカーではないのですから。
出た当初も問題視していましたが、先日乗ったスカイアクティブのデミオの試乗で、あぁデミオのトランクってこんなに広いんだ…と再認識し、改めてスイフトのほぼ唯一かつ致命的弱点がさらに露呈した印象です。何もフィットほど広くしろ、とは言いませんが、プラットフォームを一新したのであればもう少しパッケージング効率は煮詰めて欲しかった…こう言うと、スズキ陣営は「日本にはソリオがありますからそちらをどーぞ」という事になるかもしれませんが、いやそういう問題じゃないのです。いい車でも、スイフトが気に入っていながら、あのソリオのようなスタイリングのクルマに乗ろうとは、自分は思えません(笑)
そしてもう1つ。これは新たに気になった点なのですが、それは塗装のクオリティ。他の同クラス車でズバ抜けて良い…と感じるのはVWポロくらいなものですが、それにしてもちょっとスイフトのレベルは、軽自動車クラスを思わせる出来。これは薄いグリーンというテスト車両の微妙な色合いが問題なのか、はたまた初期ロット特有の問題か。ボディ表面の光沢感もはっきりと弱い印象。以前のテスト車両のブラックでは気にならなかったものの、他で言えばシルバーやブルーなどでもこの傾向は感じられました。これはどうやら「メタリック」が原因?
他のブラック、レッド、ホワイトはパール塗装(白だけ+21.000円)。他3色はメタリック。因果関係は確認できていないので不明ですが、他の部分のクオリティと作り込みがしっかりしているだけに、少々気になった部分。そういった事に敏感な方は、パール系のカラーを選んでいた方がいいかもしれません。
さて、色々書くうちにまた長くなってしまいました。あとはスズキの販売店自体の問題などもありますが、それらは以前の試乗記に記しているのでこちらでは割愛。しかし書くうちに、走りの良さを改めて思い出して、また乗ってみたくなってきてしまいました。これでもう少しパワーがあればなぁ…
なんて思っていたら、ついに出てきましたね。本命の新型スイフトスポーツ。改良型M16Aエンジンはさらなるパワーアップ&燃費向上、そして待望の6速MT搭載。ESPに7エアバッグ付。国内仕様は5ドア?タイアは想像するに17インチ?(ちょっと大き過ぎかな…)
しかし何より、エクステリアは超好み。ちょっとガキっぽいかもしれませんが、いいんです、自分はまだまだガキなんですから(笑)
この内容で、是非200万円切りを…いや、ひょっとしたら180万円台あたり?久々に現実的な範囲で欲しいと思わせる新車。登場が楽しみで仕方ありません。内容によっては、ひょっとしたら、就職時の愛車候補筆頭…!?…今から、ローンのシミュレーションや頭金の貯金を考え始めているのは、事実であります…(笑)
さて次回は、冒頭にも書いたとおり、スイフト最大のライバル?でもある、マツダのスカイアクティブデミオのロングランレポートをお届けします。ご期待ください。