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九郎田一馬のブログ一覧

2011年10月25日 イイね!

【試乗記】 トヨタカムリハイブリッド

【試乗記】 トヨタカムリハイブリッド
さて前回で予告していました通り、今回はカムリハイブリッドの試乗レポートをお届けします。今回もロングランではなく、一般公道を30分くらい走らせた程度なので、簡易的なレポートであるのを事前にご了承願いたいと思います。






今回の新型の登場でカムリは9代目。新型の登場を機に歴代モデルを振り返って見てみると、紆余曲折様々な事情を経て今に至っている事に改めて驚かされてしまいました。最初はセリカ・カムリ、その後はビスタと姉妹関係を結び(今改めて思うと、日本でのビスタの後継車はアヴェンシスなんですね)、その後はウィンダムと姉妹関係だったり、グラシアなんてサブネームがついたり…今では国内ではウィンダム(レクサスES)も導入されなくなり、9代目でハイブリッド専用車種へ。ちなみに、全チャンネル扱いではなく、新型はHVでもカローラ店専売となっています。世界基準で見ればベストセラー、しかし日本国内では「いい車」と褒められ続けていたものの、地味な存在から脱却することはできず。なのでここは伝家の宝刀「THS」で…!どうせガソリンモデルを入れても、日本人にはマークXもクラウンもありますから、これはこれで賢明な判断といえるでしょう。



っというわけで、まずはエクステリアから。のっけからではありますが、カムリ最大のウィークポイントはここ。先代までにあったアメリカ市場にウケそうな大陸的デザインでもなく、いかにも空力優先CADでちょちょいのちょいで仕上げました!的スタイリング。地味だとかシンプルはむしろ褒め言葉。シンプルなスタイリング、なんて結構難しいですからね実際。別に車のキャラクターを考えて、趣味性がない!なんて事は言いませんが、それにしてももうちょっと素直にすっきりとまとめられなかったものか…このカムリに限って言えば、日本人が好みそうなギラギラメッキ処理が、むしろ北米仕様の何の取り柄もない「無」な印象よりもいいかもしれませんが。ただ、ハイブリッドだからといって、安っぽいクリアテールにしなかったのは◎。SAIよりはマシ、なので、トヨタの中で言えばまだ妥協点なのかなぁ…。プラットフォームが先代と共通、サイズもかなり大柄なのですが、写真で見る限りあまり大きく見えないのも、新型の特徴といえるでしょう。



ということで、少しでもカッコよく見えるように?画像はモデリスタのエアロ+19インチを装着したモデル。こういうちょっと品のない?いじり方も、この車ならアリかもしれません。

ドアを開け続いてはインテリアへ。こちらは外見に反して結構好印象。何よりも「パッと見」の質感・クオリティが大幅アップ。よくよく見れば手抜きが散見、300万クラスなのに物足りない、これのどこが高級なの?というご指摘のある方はごもっともですが、それは今までのカムリを知らずに判断しているのでしょう。少なくとも「大きいカローラ」でしかなかった従来型に比べ、新型はインテリアの造りと高級(っぽそうに見せる努力)感は格段に向上しました。「サイバーカーボン」と呼ばれるインパネの柄も、ブラックの内装色と相まって、木目調とは異なる新たなアプローチとしては上々の仕上がり。レザー仕上げか?と一瞬騙されそうになる、ステッチをあしらったソフトパッドのインパネ表皮はアイデア賞モノ。



ナビは未設定、純正OP品もタッチパネル式、またハイブリッドでありながら、コンベンショナルなゲート式シフトレバーを採用するのも、保守的ユーザーには歓迎される要素。事実こういう奇をてらわない(=プリウスはもちろんの事、レクサスHS・CTやSAIでも拒絶する保守ユーザーが結構多かったとのこと。)フツーの地味セダンでハイブリッド、というジャンルには、確実に需要がありそうです。



リアシートの広さはFFビックセダンの真骨頂。HVの弊害はラゲッジスペースに…といいたいところですが、パッケージングの工夫で440L確保したのは立派。あえてスッキリとスクエアなスペースを設けるのではなく、とにかくいけるとこまでは絶対に広く!という精神なのか、見た目のキレイさ重視ではなく奥行き部分はデコボコ。右側だけトランクスルーを採用したのも意地に近い。トランクヒンジがダンパー式でなく室内に干渉するのが残念…と言いたいところながら、そういえば先駆車のドイツ勢も何故か近年次々に廃止している事を思い出しました。不思議。コストの問題?真相知ってる方いたら教えてください。




さて、車両の紹介も終わりまして、試乗開始。テスト車両は中間グレードのGパッケージ。これが販売の中心となると予想される、また個人的にも1番のお勧めグレード。ベースモデルの304万円より+13万円となりますが、その内容は17インチアルミ・本革巻ステアリング・運転席パワーシートなどなど、価格以上の充実度。絶対に16インチがいい!というのでなければ、素直にGパッケージを選んでおいた方がいいでしょう。もう1つ上の「レザーパッケージ」は、文字通り本革シートや純正HDDナビやクルーズコントロールが標準となりますが、価格もグーンと上がって+63万円の380万円。これはもう明らかにボッタクリ。しかも肝心の本革シートの出来がイマイチという有り様。というわけでお勧めはGパッケージ。これにディーラーOPのナビ+バックモニターなら20万円以下で装着できるので、このパターンが一番買い得感アリでしょう。ちなみに、VSCやサイドエアバッグは全車標準装備。

ボディーカラーは「トゥルーブルーマイカメタリック」と呼ばれる水色。HVっぽさならこれですが、車格に見合っているかと言えば…?ここは無難に白・シルバー・黒が売れるでしょう。ラインナップも恐ろしく地味ですが、クルマのキャラクターを考えれば納得。注目したいのはトヨタ初登場となるアティチュードブラックマイカ。202のソリッドブラックとは違う雰囲気で、なかなか好印象でした。

さて動き出し。ステアリングはテレスコ・チルト調整可能でポジションの自由度は○。エンジンスタートは無音ですが、それ以外はごくごく使い慣れたシフトノブを操作して、フツーのクルマと変わらない操作方法で動き出し始めます。まず初めに実感するのは視界の良さ。ボディサイズ自体はかなり大柄、全幅は1825mmもあるし最小回転半径だって5.5m…なのですが、コンベンショナルなセダンの形でアイポイントもさほど高くなく、Aピラーの角度もさほど寝ておらず閉鎖感もなし。実際街中での扱いやすさはかなり良好。この点で言えば、三角窓があるレクサスHS・SAIは、セダンというよりもどちらかというとミニバン的視界である事に気づかされます。



しかし、1つだけ突っ込んでおきたいポイントが。今回カムリにはドアミラーの根元付近に突起物(エアロスタビライジングフィン)が設けられており、これはなんとF1譲りの技術で、ボディ側面に渦を発生させて左右からのサイドフォースを強め高速域での安定感を向上させる…というもの。なんでカムリみたいなクルマに?という疑問は残りますが、実際ガムテープで覆い隠せば、その有無の効果の違いを実感できるんだとか。

…と話が逸れてしまいましたが、街中の試乗でそんな効果を体感なんてもちろんできるわけもなく。問題はこのドアミラーの形状。これもおそらく空力性能を優先した形になっているんでしょうが、この左右に絞られた「三角形」とも言えるドアミラーの視認性が、終始気になって仕方ありませんでした。燃費命!なのは分かりますが、多少犠牲になろうとも、もっとスクエアな形のドアミラーの方が絶対に見やすいし安全のはず。細かいポイントですが、指摘しておきたいと思います。

走りの印象に戻りまして、まず動き出しの印象は、トヨタHVに共通する、モーターだけで走り出すスムーズさが印象的。モーターの出力はSAIなどと同等ですが、注目は1540kgという車重。THSシステムを搭載しておきながら、この車重で収めた軽量化技術はもっと注目されてもいいはず。かといってボディなどに華奢な印象はなし。この軽さが走り面で多くの好印象を残す結果となります。



また、比較的エンジンがすんなりかかってしまう事も意外なポイント。もっともこれは一概に悪い事ではなく、走り出して一定速度に達した際にエンジンが止まる確率は確実にアップしており、トータルではエンジンストップが短く抑えられているような制御。無理にモーターだけに負担させようとせず、加速するところはスパッと両方使い、ある程度の速度に達すればエンジンはお休み状態を維持。ちょこちょこと放電充電を繰り返さず、ガバっと使ってガバっと充電。無理してどちらかに頼ろうとせず、お互いが上手く制御し合ってくれているおかげで、街乗りでのドライバビリティは大幅に向上しました。

どうせならモーターは絶対たくさん使いたい!という方は、エコモードで。これなら発進時のアクセルレスポンスが抑えられ、メーター上55km/h付近までスルスルーっとエンジンなしで加速する事も不可能ではありません。特筆できるのが、このエコモードが「後続車遅くてすいません」モードになっていない事。これは確実にSAIやHSよりも進化していると感じました。

このカムリ、パワーモードの設定はなし。それもそのはずで、ノーマルモードで加速力は十二分以上。特にFFなだけに、少しでも操舵している状態で大げさにアクセルをポンと踏むと、猛烈なトルクステアに襲われてしまうくらい、かったるいどころか積極的に速いと言える動力性能を備えています。これも軽めの車重が起因しているのでしょう。



そしてもう1つ。新エンジンも走りの好印象要素の1つ。AZ系からAR系に進化した新世代の2.5L4気筒エンジンは、アトキンソンサイクル形式を維持しながらも、パワー・トルクともにアップ。またAZ系2.4Lと比較して、格段にスムーズに回るようになったのも、動力系の滑らかさを演出するのに一役買っています。いい意味で4気筒とは思えない出来。ただ音自体もクルマ自体の静粛性向上の為かなり抑えられていますが、音質サウンド面でいえばマルチシリンダーにはちょっと敵わない…というのは贅沢な欲求か。しかし、噂では次期クラウンHVもこの2.5L4気筒を採用するとのことなので、相当に金と気合を入れて入念に開発されていたことが伺えます。



という事でパワートレーンは想像以上の良さを見せてくれましたが、フットワーク関連で言えば、そこまでの感動はなし。タイヤは215/55R17(ちなみに銘柄は16、17インチともにBSトゥランザ)と、まぁ常識的なサイズですが、乗り心地はコツコツと路面段差を拾って、どこか落ち着かない印象。速度を上げていくと乗り味はフラットになっていきますが、そうすると今度はコーナリング時の、特にロール方向の動きの大きさが目立ってきます。まぁフットワークに関しては一般的なFF大衆車の典型的な動きであり、このあたりは「大きいカローラ」を思わせる…のは、価格を考えれば仕方ないところか。まぁそれでも、HSやSAIがカムリよりいいか、と言われればそうでもありませんが。飛ばすクルマではありませんし、乗り味でプレミアム性はあまり感じません。しかしそんな中でも、軽くも重くもない適度な操舵力の電動パワステのステアフィールや、回生時のフィーリングにも違和感がないブレーキタッチなどは○。このあたりも、保守ユーザーのツボの抑え方としては、ちょうどいい落とし所なのかもしれません。

さて、燃費ですが、今回は限られた時間・ステージなので明確な計測はできず。走行200km程度のド新車の参考数値ではありますが、試乗開始時点での燃費は14km/Lほど。その後30分ほど走って、14.8km/Lまで向上しました。実用的な街乗り燃費数値はこのあたりでしょうか。SAIやHSは実用域の燃費が全然良くない!との悪評がありましたが、カムリはそれよりは少し伸びそうです。また、タンク容量が65Lとかなり大きいので、例えば高速燃費が18km/L程度だったとしても、1回の満タンでの航続距離1000km超えは結構簡単に達成できそうです。



疑問と言えばメーター上の燃費計。3眼式で見やすくシンプルにまとめられており、中央のインフォメーションモニターもこの程度の表示で十分。問題は右側の燃費計。立派なメーターで表示されているものの、これは「瞬間」燃費計ではなく「通算」燃費。つまり、走り出してある程度燃費が落ち着くと、針はほとんど止まったまま。瞬間燃費はその縁がグリーンに点灯して表示するのですが、視認性的に考えて場所配置は明らかに逆。なんでこんな事になったのか、大いに疑問なポイントでした。

さて結論。スタイリングは「?」。フットワークや乗り味は前回乗ったアヴェンシスほどの感動は無く至って普通のトヨタフィーリング、しかし最新世代アッパークラスのTHSシステムの熟成度、燃費性能とドライバビリティの両立はなかなかの見どころ。次世代への提案性は感じられないものの、20世紀的コンベンショナルセダン+21世紀的最新ハイブリッドシステム、という組み合わせを待っていたユーザーは結構いるはず。しかも、このボディのボリュームで、「手の届く」300万円ちょいの価格設定。少なくともこのクルマがあるならば、中途半端な存在となったSAIはその存在価値が無になったのと等しい…と言っていいでしょう。実際、あれほど地味な存在だったカムリですが、初期受注台数で見る限り、かなりの躍進。それだけ国内の「ハイブリッドアレルギー」は顕著…?という不安と懸念もありますが、まぁ今回カムリをハイブリッド1本に絞って国内展開したことは、大正解だったと言えるでしょう。そして全然期待してなかったのですが、パワートレーンの進化は想像以上。思っていたよりも全然いいクルマでした。

さて、そこでトヨタに要望したいのは、もう少し1サイズ小さい、普通のセダンハイブリッド。やはりカムリのボディサイズでは日本のユーザーには大きすぎるというユーザーは少なくないはず。例えば次期プレミオ・アリオンどちらかをハイブリッド専売にしてみたり…そう、ここで気づいたのは、まさしく初代プリウスの「正当な」後継車。ベルタ~プレミオサイズの、日本で扱いやすい運転しやすい、そんなユーザーの気持ちに応えるジャパニーズ和風ハイブリッド…そんな1台に期待したいと思います。




…さて、次回の試乗記は、話題の新車「ダイマツミラウース!」
ではなく(笑)



ダイハツミライース。
こちらを先週末に、早くも徹底テストする機会に恵まれました。
次回、ここでまたお伝えしたいと思います。

Posted at 2011/10/25 21:35:13 | コメント(2) | トラックバック(0) | トヨタ | 日記
2011年02月01日 イイね!

New!試乗記 トヨタFJクルーザー

New!試乗記 トヨタFJクルーザーさて、忙しさに苛まれて、すっかり月1更新ペースとなってしまいました。苦笑

バイトと就職活動の両立、セミナーや説明会に参加するためにバイトを休み、けどバイトを休めば収入が減り生活も就活の交通費も厳しくなり、けど説明会の予約を早い者勝ちで取りやり繰りするだけでも大変で、そしてバイトもすぐ代わりを見つけなければいけない…という悪循環の中、大学ではテスト期間に突入するという、まさに地獄(笑)の週間をなんとか乗り切りました。幸い単位取得には余裕があるので、留年や卒業できないなんて事にならないのが救い。テスト種目も最小限で済みました。あぁ、過去の自分に感謝。笑

経団連やら色々で就職活動の開始時期を模索しているそうですが、せめてやはり2~3月くらいにしてもらいたいですねぇ…と言いつつ、すでに始まっちゃってる2012卒の自分にはもう関係のない事ですが(苦笑)

さて、大阪在住の自分は、移動という点でまだとても恵まれている方なのですが(大きい規模でだと、東京か大阪、あとは名古屋が会場のメインでしょうか)説明会の予約状況次第では、東京へ足を運ぶ事も多くなってきました。ばびゅんと新幹線で2時間半?いえいえ、そこは予算優先で8時間かけて深夜バス。これが寝れないし狭いしツライ…運転大好き人間としては、自分で500kmちょいをピュッと運転して行く方が楽なんですけどねw

さ、前置きが長くなってしまいました。そういうわけでせっかくの東京行、説明会が終わりバスの時間までかなり余裕があったので、ずっと前から行きたかった池袋のアムラックスへお邪魔しました。目的はヴィッツとFJクルーザーの試乗。現在45分タイムレンタルが無料!という太っ腹な企画を開催中で、ちゃっかりこれに便乗してきました。

で、ヴィッツはまぁのちのちにしまして、今回最大の収穫だったのが、FJクルーザーの思わぬ良さに気付けた事。個人的にはMINIやフィアット500など、クルマとしての出来には共感できるものの、過去へのオマージュを現在のコンプライアンスの中で実現しようとする、ノスタリアズム?の傾向はあまりそう好むものではありませんでした。過去を美化し過ぎる傾向も。「あの頃はよかった」だけでは、技術もデザインも進歩しません。伝統は時として呪縛にもなります。

それに、FJクルーザーの北米デビューは2006年。中身は先代プラドがベースであり、技術的にも大してポイントがあるわけでもありません。むしろ、最新か否かで言えば、間違いなく「古い」1台。というわけで、雰囲気だけのクルマ、ということで舐めきっていたんですね。

…で、実際乗ってみました。結論から言うと、もうなんかすいませんでした。国産も「たまには」こういったプロダクトでクルマ作ってってください。…最初と言ってる事が真逆です(笑)。しかも、たまに?なぜこんな心境になったのか…は、追々。





さて、試乗車はベースモデルのブラック×ホワイトの2トーンカラ―。装備充実の「カラ―パッケージ」や、ビルシュタインサスをもつ「オフロードパッケージ」もありますが、装備的にはこのベースモデルでもなんら不満なし。「デフロック」やら「アクティブトラクションコントロール」やらオプションは豊富で、カタログを眺めるだけでも色々と妄想が…。

そんな中、個人的に「付けなくてもいい」と思えるのがアルミホイール。純正サイズの17インチアルミや、60扁平20インチのアルミも用意されていますが、このクルマには間違いなく「鉄っちんホイール」が一番サマになっていると感じます。70扁平17インチのバカでかい迫力ったらありません。(ちなみに純正17インチは265幅、オプションの20インチだと245幅と20インチのほうが若干幅狭に。最小回転半径はともに6.2mで同一。)



ブラック×ホワイトの鉄っちんホイール姿…いやぁー、カッコいいですね。欲を言えば、こんなにピカピカじゃなくて、いたるところそこらじゅう泥っだらけのほうが、さらに雰囲気が良くなるかもしれませんw。もし自分がオーナーなら洗車なんてせずに、徹底的に汚れさせておいてそのまま放置、なんてのもアリ?事前に「もし乗るなら…」と想像していた仕様そのままバッチリだったので嬉しさ2倍。もちろん、鮮やかなブルーやイエローの展示車もいい雰囲気でした。

さてドアを開けて、運転席に「よじ登り」、ドライビングポジションをとると、目の前に広がる景色は今まで経験したことのないもの。幅はバカでかく、しかし天地方向はとても狭く、ポジション自体は案外足を投げ出すような乗用車的感覚で、けどもアイポイントは尋常じゃなく高い。まるで正方形の箱に閉じ込められたような感覚で運転することとなります。視点の高さは4トントラックと同じ、そしてグラスエリアがトラックの半分以下でスポーツカーのよう、と言えば、なんとなく想像していただけるでしょうか。その証拠に、フロントワイパーは短いブレードの3本拭き。見た目だけの演出でなく、こうでもしないと雨の日は前が見えません。笑



インテリアの質感は…なんて、このFJクルーザーには愚問でしょうか。300万円ちょいという、見た目にしては割安に感じられる分、高級感を味わうところは皆無。しかし、グローブ装着前提で操作性を考えられているおかげで、シフトノブも、エアコンも、各レバー類スイッチ類がとにかくバカみたいにデカく、操作性は極めて良好です。試乗車はブラックなので、内装パネルの色もブラックなので一見地味な印象ですが、ボディカラーとインパネが同色となるので、とくにイエロー・ブルー・レッドはかなり目立ちます。運転中これほどまでに自分のクルマのボディカラーを意識させるクルマはそうありません。運転席からは、だだっ広いボンネットも常に視界に入ります。

ステアリングは思っていたよりも小径でグリップも細く、パッと乗った印象では案外取り回しでのステア操作は楽…なのは錯覚で、全長こそ常識的ながら、このボディ形状と大きさ、そして特殊な視界では取り回し性は国産乗用車最難関の分類に入ります。とりわけただでさえ狭いリアガラス面積をさらに覆うスペアタイアのおかげで、後方視界は最悪。かつてのいすゞ・ヴィークロスを思い出させます。ドアミラーが縦長なおかげで、ミラーtoミラーはなんとiQとほぼ同じ!との触れ込みがありましたが、そのiQのミラーtoミラーの数値自体が、アウディA4よりも大きい事を知る人はそういないでしょう。デカいタイアとオーバーフェンダーで、車幅感覚…とくに幅寄せなどは、相当に神経を使う事は覚悟しておく必要がありそうです。ま、このクルマが気に入った人にはどれも気にならない事でしょうがw



そんなボディな割に、リアシートやラゲッジスペースが案外広くない事も知っておく必要があります。RX-8と同じ方式の観音開きドアも使いやすいとは言い難く、リアシートの足元スペースは、狭いとまでは言わないものの、あまり長時間座りたいとは思えません。ラゲッジもフロアの高さ、その割に低い全高、短めの全長で思ったほどの広さではなし。申し訳程度にハッチガラスが付いていますが、こんな狭くて高い位置だとさして便利でもなんでもありません。苦笑

エンジンは4.0LV6。組み合わされるのは5速ATで、シャシーはフレーム。X-REASもビル足もついていない素の仕様。しかし乗るとさすがトヨタ車というか、荒れた路面や少しスピードを上げた時、コーナー時にモノコックとは違う事を意識させられますが、普通に走ればなんら違和感なし。乗り心地もいたって快適。パートタイム4WDなので街中だと常時FR状態で走らなければいけないのは少し残念ですが、ファッションでこのクルマを乗るユーザーには別にどうでもいいのかもしれません。ブレーキもストッピングパワーはこのクルマには必要十分。ロール・ピッチ・ブレーキング時のノーズダイブの大きさ、コーナリング時の挙動変化の大きさ、高速走行時の緊急回避時のスタビリティうんぬん…このクルマにそのようなオンロードで飛ばした時の云々を言うのは、愚問というところでしょう。のんびりまったりクルージングするには最高です。



エンジンは低速からトルクたっぷり、踏めば上までシュンとキレイに回ってくれます。車重を考えれば、十分にパワフルで余裕ある動力性能と言っていいでしょう。欲を言えば、ちょっと排気音がジェントルすぎるというか、優等生すぎるというか。ここはマフラーなどの排気系チューンでもっとドロドロとした迫力あるサウンドを……それか、むしろディーゼルの方がこのクルマのキャラクターにマッチしているかもしれません。

通信簿的に見れば、項目別で点数をつけると、良いポイントはさしてなく、逆に気になるところを挙げればそれはいくつも出てきます。しかし、なぜかこのクルマ、別に飛ばさずとも、街中を走るだけで、とにかく楽しいんですよね。もう運転しながら笑っちゃうんです。ニヤニヤしながら「良いわー良いわーこれ。」ってドライブが楽しめる。一応評論的に文面を色々書きましたが、正直そんな事、そんな基準はどうでもいい。クルマとしての商品的価値は間違いなく高い。逆に言えば、カイエンやレンジならともかく、今売ってるプラドやランクルになんて、自分は全く興味が湧きません。けど、このFJクルーザーなら、気になる…否、むしろカタログを見ながら「自分が乗るとしたら、あーでこーでこうしてああして、仕様が決まったらここをああいじって…」とついつい妄想が広がってしまう。


それはやはり、クルマ全体が醸し出す「雰囲気」の良さなのでしょう。いわゆる「右脳」タイプのクルマ。もちろん「左脳」部分…メカニカルな面も決して、優先しないというわけではありませんが、結局その部分に関しては、よっぽど工業製品的に突出して優れたレベルのものでないと、購入意欲をそそられないわけです。今のトヨタにそちら方向で訴えてくれるクルマがあるか?残念ながら、片手で数えられるほどしか個人的にはありません。それでも、クルマ好きにとって自分はまだ寛容派なほう。他の方ならトヨタ、否、国産車で欲しいと思えるクルマなんて、ない!という方も多いのでは。

ただ、個人的にそんな状況を嘆いたとしても、それを武器に批判しようとは全く思いません。それは同時に新型ヴィッツに乗り、その「温度差」をもうマトモに感じたから。それは、大衆を狙うのか、それともアウトローを狙うのか、で違ってくるのだと。おそらく普通の感覚をもったユーザーなら、確実にこのFJクルーザーなんて眼中に入らない事でしょう。FJクルーザーの魅力に触れ、トヨタの現在のクルマ作りを批判する自動車ジャーナリストが一部でいるようですが、そんなものはナンセンス。やるならば、それは徹底的に左脳視点で、ダイナミクスや安全性を追求提言すればいい。むしろ個人的には、そう感じた時点で、「あぁ、やっぱクルマ好きって、自分って、世間の価値観からズレてんだなぁ」という事を改めて認識した、そんな感じです。



いやー、つくづくクルマ作りとは奥が深く、そして難しい。もちろんこれは本流じゃありません。メイン車種までこんなぶっ飛んだ事しろ、強烈な魅力をもっと盛り込め、なんて言うのは滅相もありません。パッソだってヴィッツだって、カローラだってヴォクシーだってアルファードだって、どーぞどーぞたくさん作って売ってください。偏差値が優秀ということ、それで良く売れるということ、それはそれは素晴らしい事ですし、資本主義の企業としての基本であります。

けど、けどですね。下から上まで幅広いラインナップをもつメーカーならば、このFJクルーザーの「楽しさ」みたいな感覚を持ち合わせたクルマが、もう少しあってもいいんじゃないですか?バカみたい、無駄こそ正義、そんなはっちゃけたクルマが、もう少しあってもいいんじゃないですか?それでユーザー層がさらに広がれば、儲けもんですよ。だって、「企業」といえども、「『自動車』企業」なんですもの。基本ができれば、応用でちょっとおふざけしてもいいんじゃないですか?トヨタさん。ちょっとだけでもいいから、「夢」を売る仕事、でもあると思うんですよ、クルマって。

あ、そういえば、オートサロンではだいぶ「おふざけ」されてましたね。別に一般の方から白い目で見られても、会社の内部で批判が出ようとも、たまにはいいじゃないですか。僕ら「アウトロー」な人間が、とっても楽しみにしてますよ。ね?トヨタさん。


そうだなぁ…巨大化しすぎて、なのに今じゃ3列シートの北米仕様をそのままもってきたヴァンガードのほうが売れちゃって、全く存在感がなくなっているRAV4を、思いきって最近流行りのアンダー2Lクラスまでダウンサイジングして、ジュークやRAV4、もうすぐ登場するマツダCX-5に対抗するべく、このFJクルーザー風のデザインにして売るなんてどうでしょう?ハマーH2→H3の流れみたく。実際FJとH3が同じ大きさだけども。そうすれば日本でも、いやトヨタさんが苦手とするヨーロッパでも、結構いける、かも?そこんとこ、いかがでしょうか?
Posted at 2011/02/01 00:15:17 | コメント(2) | トラックバック(0) | トヨタ | 日記
2011年01月12日 イイね!

New!試乗記 トヨタマークX

New!試乗記 トヨタマークX遅ればせながら…新年あけましておめでとうございます。






年が明けてからのんびり実家で過ごしたのも束の間、もう危機感を煽る、暗いニュースしかない2012就活生へとすぐさまスイッチを切り替え、パソコンの画面を見ながら…履歴書や自己PRとにらめっこしながら…うーうーと唸っている日々、大学が始まって、テスト期間と就職説明会が混同する大変な時期にまもなく突入…。考えるだけで気が重いですが、そこは息抜きという名のもと、2011デトロイトショーの情報を楽しみにしつつ…笑


という四方山話はさておき、新年1発目の試乗記は、昨年末の「カービューオブザイヤー」の国産車部門でベスト!と推した、マークXのレポートをお届けします。

CR-Z、ポロ、スイフト、BMW5シリーズ、と力作見られる中、なぜマークXなのか?最新のエコカーでもなければ、超絶にアグレッシブな魅力に長けているわけでもありません。なのに何故…。

話は遡る事、一昨年の東京モーターショウ。ここで登場直後のマークX、まだディーラーでもプレスにも試乗会が行われていない中、2.5Lと3.5Lの両方を同時に乗る機会に恵まれました。そう話題のクルマでもなく、大きく期待もすることなく、そして何の先入観もなくパっと乗ったのですが…これが、あれれ?いいなぁ…うーん…ちょっと待て…ひょっとすると、相当いいかも!?というような感じで、やけに印象に残るファーストインプレッションだったのです。スペック上で多く見どころのある、最上級モデルの3.5Lのプレミアムではなく、2.5Lの素モデルが特に…。



以来、ずーっとあの感触の良さがどこかに引っかかっていたのですが、トヨタレンタカーにて「カローラと同じ値段で新型マークXがレンタルできる」というなんとも魅力的!なキャンペーンに乗じて、約700km徹底的に走り込んでテストすることに。そして、あの時の感触の良さを、確信へと変える事になりました。それが昨年の個人的国産車ベストという結論に……

さて、前置きが長くなってしまいました(苦笑)。
テスト車両は廉価版の250G・Fパッケージ。エコカー減税の影響で、街中で見かけるのはほとんどG・リラックスセレクション。というか、売れているのがほぼこのグレードとSパッケージのみ。アルミを履いていないマークXを見かけたら、それは間違いなくレンタカーと見て間違いないでしょう(笑)。



しかしながら、装備的にはこのグレードでも実用上はなんら不満はなし。強いて欲しいならばHIDとアルミホイール、車格を考えればパワーシートや本革巻きステアリングも欲しいなぁ…と思えば、これらの装備は全て売れ筋グレードで揃います(笑)。だからと言ってこのFパッケージに存在価値がないわけでもなく、1つ上のグレードとの価格差は約30万円。決して小さくはありません。

そう、このマークXの価格は238万円。「高級車的装備」は少し貧弱ながら基本装備は十二分、加えて偉いのは先代とは違って、「サイドエアバッグ+VSC」を廉価版だからと言って省略しなかったこと。つまり、2.5Lエンジンと6速ATを搭載した、安全装備に抜かりのない、(世間的には十分に相当な)プレミアムセグメントのFRセダンを、この価格で味わえる。205万円のプリウスショックに影に隠れがちですが、これはとんでもないバーゲンプライス…ましてや、このマークXは国内専用車。そう考えれば、「価格」だけを見てもなかなか存在価値を感じられる1台なのです。



さて、基本はキープコンセプトながら、フェイスはより表情豊かにアグレッシブに。フロントフェンダーはマツダのパクり?いささか消化不良気味ではありますが、それはCADに頼りがちでクレイで検討を重ねない最近のクルマのデザインの悪い傾向…と、こんな話をし始めてしまうとまた脱線してしまうのでこの辺で。個人的にはそんなに嫌いではないものの、もっとスッキリとプレーンにまとめてもいいと思うのですが、このマークXの主査さんはかつてあのヴェロッサの商品企画を手掛けていた事もあったということで、まぁ変に無個性で埋没してしまう危険性とのバランスを考えてしまうと、落とし所は難しいところです。



しかし、1つだけ猛烈に褒めたいのは、先代で始めトヨタだけでなく他メーカーも追随した「バンパー内蔵型マフラー」をやめたこと。オードソックスな丸型左右出しで、デザイン上は退歩かもしれませんが、こちらのほうが絶対に良い!レクサスLS、クラウン、そして最も最悪なのはマジェスタ……「デザインのためのデザイン」でしかなかった、まるで髭剃りの残りのようなダサさから脱却しただけでも、個人的には大いに評価できるポイント。

インテリアは、先代のような奇をてらったポイントがないオーソドックスな仕上がり。コスト自体は相当に低く抑えて仕上げたそうですが、パッと見ではそう思わない「高そうに見える」処理の上手さはトヨタの真骨頂。クラウンやレクサスと差は小さくはありませんが、少なくとも100万円以上の差はインテリアを見る限り感じる事はありません。特にシフトブーツを使ったATシフトノブまわりの処理などはレクサスもかくやの見た目とタッチ。フェイクウッドの上手さもトヨタならでは。そんな中唯一惜しいのは、ドアを閉めた時の音。いかにも鉄板が薄そうなベイーンとした音は、雰囲気の良さを帳消しにしてしまいかねません。これは格下車種以下。個体差?13.000kmしか走っていませんでしたが…。



さて、実際に走り始めます。動き出してまず感じるのは、ステアリングのずっしりとした操舵感。トヨタユーザーからケチつけられそうな感じもしますが、そこはクルマ好きとしてはニンマリ。まずマークXの走りの上で最大の美点がこのステアリングフィール。電動パワステとは思えないナチュラルさ、可変ステアレシオではなくとも、クイックでもダルでもない絶妙なバランスへの落とし所。そしてなんと言っても嬉しいのは、今までのトヨタ車では望めなかった、ステアリングから伝わる路面からのインフォメーション性の高さ。シートとステアリングに伝わる感触が、それぞれ合致しながら走るこの感覚は、「情報遮断=快適な走り」と大いなる誤解で長年セットアップしてきたトヨタの高級セダンからの脱却を意味するものと言えそうです。もちろん、間違っても「ドイツ車に走りが追いついた!」なんてまでの大げさな事は言いませんが(笑)。

もう1つ良いのは乗り心地。走りのポテンシャル自体はゼロクラウンでの改革で劇的に向上したものの、反面乗り心地の部分で失った部分も多くありました。しかしこのマークXはプラットフォームの改良を重ねた上で、ようやく幅広い速度域で快適な乗り心地を実現したと言っていいでしょう。特にウィークポイントだった、リアサスのピョコピョコ感、低い速度域での荒い路面通過時の揺さぶられ感、その時に強く発生するステアリングへのワンダリング…これら悪評が1つ1つ潰されて、このマークXの16インチのセットアップでようやくスッキリとしたナチュラルな走りを実現できた…と言えそうです。少しだけ足元のドタバタ感が目立った時もありましたが、これは唯一鉄っちんホイールを履くためのバネ下重量の影響かも。ちなみに、オプションの235幅の18インチを履くと、シャシーやフロア剛性へのキャパシティがギリギリに感じられる場面が多くなるだけに、繰り返しますがベストマッチは16インチ(テスト車両の装着タイアは、ヨコハマのDNAdb)。見た目とのバランスを考慮しても、せめて17インチで上手くセットアップしたいところです。



2.5Lのエンジンは、今回レギュラー化されてパワーは少し減ったものの、実際乗るとこれで全く不足なし。いや、十分に速いレベルと言っていいでしょう。FRながらトラクションも十分。どことなく味気ないフィーリングに感じるかもしれませんが、それは反面とてもスムーズでシュンと6800回転のレッドゾーンまですっきり回ってしまうからかもしれません。もちろんこれで物足りなければ3.5Lを…となりますが、先ほどにも書いたシャシーのキャパシティを考えても、やはり2.5Lと16インチの組み合わせが、もっともまとまりがよく、もっともマークXという車格に相応しい仕上がりと言えそうです。事実、3.5Lモデルは全く売れていないところを見ても、それは明らか。

惜しいのは、少しリニアさに欠けるスロットルレスポンス。いわゆる「早開き」傾向でないところは評価できるのですが、発進時から徐々にアクセルを開けていく時や、バックする際に微妙な速度コントロールを必要とする時に、どこか「ON」と「OFF」のようなスイッチ的、と言えばいいでしょうか。つながりがどことなく唐突に感じられる時が時々ありました。これは変速ショックが皆無なかわりに、トルコンのスリップが少し多めなATのセッティングも影響しているかもしれません。



あおのATに関しては、積極的に走る時には、ブリッピング機能がないためにシフトダウンがドン臭く感じる時もしばしば。こういった細かいポイントが「旦那仕様」のままなのは、シャシーとステアフィールが大変良くなっただけに、より本格派な味わいを求めるならば、改善していかなければいけないところかもしれません。

もちろんこれは、Dレンジで普通に走っている時には全く気になりません。終始滑らかで快適、変速プログラムの適応性の広さはさすがといったところ。54:46とややフロントヘビーながら、ワインディングを結構なペースで楽しく駆け抜ける事ができたので、浮上したウィークポイントと言うところでしょうか。笑

そして燃費。街乗りで9~10、高速で13~14、エコラン巡航で16前後、700kmトータル走りまわって13km/L弱というのは、1.5トンを超える2.5LのFRセダンとしては望外にいい数値。ECOモードでも過不足なく走れた影響も大きいですが、ハイブリッドだけでなく、ここ数年コンベンショナルなガソリンエンジン車の燃費だってかなり改善した…前回のプリメーラから比べても、それを実感します。

もちろんプリウスや、SAIあたりの燃費には敵いませんが、何もクルマの魅力は燃費だけが全てじゃない…と考えているユーザーも、確実に存在します。月に2000km走る…というような条件でなく、せいぜい年間1万キロ程度…というのであれば、プリウスやSAIなどよりも遥かに優れたドライバビリティと乗り心地を併せ持つマークXに魅力を感じる人は少なくないはず。そしてなにより、238万円で、この確かな走りの実力。そりゃぁ、4気筒でも、Cクラスや3シリーズは確かに良い。ゴルフだって。けど、「輸入車」という存在が、世間一般的にはやはりまだまだ相当ハードルは高い…これはクルマが好きであればあるほど、専門的であればあるほど、それを忘れがちです。「価格」という要素を抜きにした視点で。



例えば世間体であったり、上司との兼ね合いであったり。いまだに「駐車場で目立つから」と言って白やシルバーを選び、「上司が乗っているから」とクラウンよりあえて下のクラスのクルマから選んだり、「営業先や取引先に外車に乗っていくわけにはいかない」等々……そんな人が日本には大勢います。最近では自分の同世代がいきなり中古のセルシオに乗ったりなんかする事もありますが、自動車ヒエラルキーはいまだ根深く存在します。

そういった中で、このいかにも「日本車」的なマークXは、特に日本市場が見捨てられがちな昨今に置いて、肩の力が抜けているというか、「課長」クルマここに極めたり。そういった感じがするんですよね。それは大き過ぎない全幅、でも横幅はこれでもか!とたっぷりなゴルフバッグ対策のラゲッジスペース、FRで小回りが効いて実に街中で運転しやすい…それでいで、クラウンほど和風じゃない。このセグメントのクルマがアメリカや中国を見てどんどん変貌していくのを見て(マークXは中国にも出すでしょうが)、どことなく欧州チックな日本車、こんなガラパゴスならば、喜んで歓迎…そんな気がこのクルマから伝わってきました。

日本大好き、友人からは時に右翼扱い(笑)される自分として、マークXが気に入ったポイントはそこ。これより+100万円以上だしてレクサスISを買わなくとも、十二分に「いいクルマに乗ってる感」と「そう見られてる感」を買う事はできます。こんな見栄や世間体を気にする人にも味わえる1台。プリウス旋風吹き荒れる中でも、そこそこ売れているのを見ても、日本人の堅実さが表れていて嬉しくなります。

男の真ん中でいたいじゃないか。侍X。キャッチコピーのダサさはさておきw、いまとなっては侍的雰囲気はあながち間違いではないかもしれません。そしてバカにするなかれ、性能や味もキチンと仕上がっている。地味、だけど、お勧めの1台です。

Posted at 2011/01/12 22:11:00 | コメント(2) | トラックバック(0) | トヨタ | 日記
2010年10月24日 イイね!

〔過去試乗記〕 トヨタパッソ1.OX

日産マーチ試乗インプレッション、編集中…

その間に、マーチの感想を言う前に振り返っておくべき1台、トヨタパッソの過去試乗記をお届けします。今現在このセグメントの国産はいわゆる「二分化」していますが、その一方の際たるポジションにいるのが、このパッソ。クルマ好きからは一番距離の遠いクルマ…かもしれませんが、この清き割り切りっぷりと現実志向は、トヨタのマーケティングおそるべし、と言ったところ。

少し言葉が悪いですが「この程度の出来」のクルマでさえ、キチンと商品としてそれなりに売れてしまうあたり、一般ユーザーとクルマ好きユーザーの価値観の剥離に改めて気付かされてくれる1台でもあります。それが良いか悪いかは別にして、現実主義「車」としてのパッソには、少し視野の根幹を揺さぶる「ユルさ」がそこに存在します。




トヨタのパッソに試乗する機会があったのでレポートしたいと思います。テスト車両は売れ筋と思われるベーシックな1.0LのX。ボディカラーはどれも特徴的な名前がつけられていますが、この色は「キナコメタリック」という薄茶色。

ボディサイズは先代から全長が若干伸びただけで、全幅も5ナンバー枠いっぱいではなく1665mmに抑えられました。最小回転半径は13インチ仕様で4.3m、またピラーの形状最適化やサイドのウエストラインが下げられた事により、解放感や視界の良さは抜群。まだ運転に慣れていないビギナー層に喜ばれそうなポイントです。愛嬌たっぷりの大きな明るいヘッドライト、またLEDのリアテールもポジション時とブレーキ時の点灯場所が異なっており、後方からの視認性も良くなっているのは○。



インテリアは直線志向でシンプルにまとめられており、先代に比べて格段に質感が向上しています。小物入れの数、形状も使い勝手よく考えられており、ダッシュボードが低いおかげで閉鎖感もなし。ただそれはあくまで先代比であって、同クラスコンパクトと比較すれば、価格なりの出来。しかしながら開発コンセプト自体そこを狙っているのでしょう。「チープだけどオシャレ」という目的は達成できているように思えます。



シートはイマドキ珍しいヘッドレスト一体型のハイバックタイプ。しかし見た目よりはサイズもサポート性も結構マトモで、「+Hana」のヘッドレスト別体ベンチシートよりも、むしろ好印象。しかしながら女性ユーザーの事を考えるならば、シート座面やベルトアンカーの調節は欲しいところです。



さて走った印象は、まず1,0L3気筒エンジンのフィーリングは幾分改善されたように思えます。プルプルとした微振動や「いかにも」な安っぽい排気音も無視できる範囲ではないものの、かなり抑えられた印象。とはいえ、プレミアムコンパクトを謳うiQならば難癖をつけたくなるものの、このパッソの雰囲気とポジションを考えれば、この3気筒のフィーリングとのミスマッチさも感じられません。また、先代の4速ATからCVTと変わったおかげで、限られたパワーをさらに無駄なく有効に使えるようになり、900kg+αの軽量な車重に対して必要十分な動力性能。価格的にもグッと高くなる1.3Lの存在意義は全く感じられない、と言いきってもよいでしょう。燃費も高速6割一般道4割、渋滞にも遭遇しエコランをほとんど意識しなかったのにも関わらず、19km/L台と実用燃費はかなり良さそうです。

ハンドリング、乗り心地、ステアリングフィール…云々は、このパッソに関しては多く語る必要のないクルマ、かもしれません。ハンドルは軽く、ブレーキもよく効き、女の子が運転しやすいと感じる要素は確実に抑えています。逆に言えば、クルマ好きの心をくすぐるような乗り味や楽しさは皆無。軽量コンパクトで数値以上によく走るだけに、それらを押さえていればとても面白い素材になるのに・・・と思ってしまいますが、これもある意味マーケティング重視の超現実主義「車」としての役目はキチンと果たしていると言えます。



ただ1つ、タイアサイズに関してだけは注文を。今時いくらコンパクトとはいえ軽量とはいえ、155の80扁平の13インチはあまりにキャパシティ不足。別にスポーティな走りを意識しなくても、ちょっと速いペースで曲がるとすぐにド・アンダー、そしてちょっと素早いハンドル操作をすれば、リアがズルッとスライド。やはり最低限のスタビリティを考えれば、オプションの14インチタイアは装着しておきたいところです。7万円少々でVSCを装着すれば14インチはセットで付いてくるだけに、こういった運転に関心のない女の子に多く選ばれるクルマだからこそ、ぜひマストでお勧めしたいオプションだと言えます。

こういったパッソ・ブーンのようなクルマは、クルマや運転に全く関心はなく、けどもナノイーという言葉には反応する…そんな女の子に気に入ってもらえるかどうか、それが全てなのかもしれません。そういった透き間ポジションにも抜け目なくラインナップする事ができるのが、トヨタ…または日本車独自の強みなのかも。ただ確実に勢い迫る中国車などの脅威を考えれば、こういった日本が得意とするクルマ作りだけでは生き残っていけないのかもしれません。アジア市場をも視野に入れる割安な層をいくのか、それともVWポロを代表する欧州プレミアムコンパクトにも勝負していくのか…もうすぐ登場予定の新型マーチ、次期ヴィッツ、フィットハイブリッド………今後の日本車の明暗を分けるのは、このクラスでどういった舵取りをしていくのかにかかっているのかもしれません。

Posted at 2010/10/24 01:08:48 | コメント(1) | トラックバック(0) | トヨタ | 日記

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