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九郎田一馬のブログ一覧

2010年10月25日 イイね!

New!試乗記 新型マーチ12X 

New!試乗記 新型マーチ12X 
さて今回は登場以来何かと?話題の多い、新型マーチの試乗記をお送りします。前回のスイフトの試乗記では、その評判通りの仕上がり具合を確認しましたが、今度のマーチは果たして…。

ちなみに今回は、レンタカーとして1日借り出し、約500km様々なシチュエーションでテストを実施。加えてグレードは、レンタカーであれば通常は廉価版の100万円を切る12Sなのですが、今回は要望にお応えして頂き、アイドリングストップを搭載する中間グレードの「12X」を試す機会に恵まれました。価格で20万円以上の開きがありますが、やはり売りであるアイドリングストップ仕様をこういったレンタカーで配車してもらえるというのは「レンタカー評論家(?)」となりつつある自分としては、嬉しい限りです。笑






さて、まずはエクステリアから。相当に冒険をしたK12型のイメージを少し残しつつ、「かっこかわいい」フロントフェイスの顔付きは、以前ほど女性ユーザーに絞る事なく、ややユニセックスな印象へと変貌を遂げています。しかしながら、チャレンジングさで言えば先代の方が圧倒的。バンパーのフィッティングなどの精度上だけでなく、プレスなどのデザインからも「コストダウン」が見受けられる、残念な意味で貴重なクルマと言っていいかもしれません。また、従来の女性ユーザーには嫌われ、かと言って男性ユーザーにもさほど受けない、中途半端になった印象を与える心配も…。自分の周りだけの反応ですが、「前のマーチのほうが可愛かったのに」という女の子からの意見をよく耳にします。



そんな印象をさらに強める事になりそうなのは、インテリア。デザイン面、クオリティ面、いずれに関しても、2010年に登場したとは思えぬその出来。安っぽさがあるのは当然ながら、そのチープさをカジュアルさに見せるのがセンスであり、このあたりパッソあたりは実に巧みに「ごまかして」いますが、このマーチに関してはそのごまかしさえ感じられません。最上級グレードの12Gならば内装色の関係もありかなり印象が良くなりますが、量販グレードのブラック色のインテリアは質素の一言。メーターも悲しくなるくらいにシンプル。そしてシートはサイズ、質感、サポート性、耐久性など全てに置いて、イマイチ物足りないという印象です。



といきなり酷評気味でスタートしてしまいましたが、いざエンジンをかけて走り始めると…、なかなかどうして、これが実に活発かつ軽快に走ってくれて、印象がどんどん良くなっていきます。

まずは、3気筒の1.2Lエンジンと副変速機付CVTのマッチングの良さ。3気筒…ということで、NV(ノイズ、バイブレージョン)性能に不安もあったのですが、全くそれは感じない…と言えば嘘になりますが、かなり抑え込まれており、不快に感じるほどではありませんでした。少なくともトヨタ系の3気筒よりは、数倍マシな出来と言って良いでしょう。関心したのは、主に高回転時のフィーリングや、アイドリング時のポロポロといった振動などで3気筒の宿命を感じる時に、もちろんその振動自体の問題の解決だけでなく、それらのシチュエーションをできるだけ発生させないような、そんな工夫が走りのチューニングによってもたらされている事。



まず1つに、3気筒「だから」感じてしまうザラついたフィーリングを、3気筒「らしい」低速からのパンチ力で上手くカバーしている事。960kgと軽量なボディと、制御の賢いCVT、そしてこの次世代を担う新しい軽量コンパクトな3気筒1.2Lエンジンの組み合わせは、街中から高速道路本線合流あたりの速度域でも、アクセル操作に対し実にリニアに力強く反応。この「コンパクトらしい軽快感と俊敏さ」を持ち合わせた動力性能(フィーリングはまた別として)に限れば、明らかにスイフトよりも印象は上。よって、よほどの場面でない限り、高回転を使う機会はあまりなく、むしろ3気筒の弱点よりも、3気筒だからこそのメリットを実感する事の方がテスト中多く感じられました。巡航状態でも、ギリギリ大きな振動が発生しないポイントまで回転をスッと下げ、スロットルに対しギア比がチョロチョロと反応しない賢いCVTの相乗効果もあって、一般道でも燃費は19~20km/L付近とかなりの好成績でした。

そしてその燃費の良さと、もう1つの3気筒の弱点をカバーするのは、注目のアイドリングストップ機能。この完成度に関しては、初物としては想像以上と言って良いでしょう。停止後数秒たってエンジンがストップ、もちろんブレーキを踏んでおかなければエンジンが再始動してしまいますが、マツダのi-stopのように少しでもペダル踏力が弱くなるとエンジンがかかるような事もなく、ブレーキを離してからのエンジンスタートの反応も実に自然。加えてエンジンがストップしている間は、当然の事ながらその時に3気筒特有の振動に悩まされる事もありません。



また、日産方式ではステアリングをある程度切っていてもエンジンはストップ。そのかわりにブレーキを踏みつつ、ステアリングに少しでも力を加えるとエンジンがスタートするロジックは、右折時などにエンジン始動がワンテンポ遅れないかという不安を取り除いてくれる、実に利に適った実用性の高さを体感する事ができました。今回のマーチで、もっとも関心した部分は、このアイドリングストップの完成度の高さだったかもしれません。今年の猛暑が過ぎ去った後のテストだった、というエクスキューズを残さなければいけませんが…。

さて、思った以上に良い!と思いつつ、そう思った部分の紹介はすでに終わってしまいました。苦笑

そのパワートレーンの出来の良さを思いつつ、しかし、そこからはどうしてもウィークポイントばかりが顔を覗かせます。まずは足回り。大まかに言うと、「しなやかさに欠け低速での乗り心地は大した事ないのに、かといってロールはひたすら大きく、速度が上がるにつれてフワフワした印象が大きくなる…」といった悪循環に。唯一、このクラスとしてはかなりゆとりのあるサスストロークでリアの接地性変化が少ない事には関心しましたが、おそらく基本性能という部分ではなく、セッティングが悪さをしているのでしょう。ダンパーの減衰であったり、ロールセンターの軸バランスの悪さであったり、ロールスピードがコントロールできていなかったり…。

またスイフトと比べると静粛性に関しては悲しい程の差があり、「最近のこのクラスのクルマは静かだなぁ。」とよく思う事が多い中で、「あぁ、久々にこのクラスのクルマらしい賑やかさだなぁ。」と苦笑いしてしまいました。もちろん、これはこれでこのクラス本来あるべき姿の提案、とも言えるかもしれませんが…。電動パワステの出来や、ボディ剛性のしっかり感、むしろ、走りに関しては散々だった先代K12(とくに前期初期モデル)と比較すれば、各段に良くなっているのは事実ではあります。

しかし現代基準のコンパクトで言えば、トータルバランスの仕上げとして、走りのキャラクターをもう少し絞り込んでもよかったような気がします。スイフトのように全項目で良点を稼げるのならそれがベストですが、そうでないマーチのキャラクターを真っ向否定するつもりはないので(これに関しては後述)、程良くまとめたセットアップもできたはずですが、イマイチ熟成不足というか、方向性に捉えどころがないとしか言いようがありません。ここは今後のマイナーチェンジや、ツインチャージャー仕様追加時の改良に期待したいと思います。



そして、個人的にどうしても気になった部分を2点。1つはタイア。今回のテスト車12Xには、純正で聞いた事のないような格安ブランドが装着されており、日常域では少しロードノイズが大きめかな?という印象でしたが、評価が激変したのはウェットコンディションで走った時。ここ最近のタイアでは感じた事のないような、ちょっとおっかなびっくりするほどの、唐突に訪れるウェット時のグリップ感の欠如とハイプレの起きやすさ。とくになんてことのないコーナーで、ステアリングが急にフッと抜けた時は恐怖そのものでした。タイアを確認しても、距離的に考えても、一皮むけてちょうど一番タイアのおいしい期間くらい。これでこの性能では…もし自分が仮にこのマーチを日常的に乗るならば、コストうんぬん関係なしに、まず速効国産タイアに履き替えます。VDC標準云々以前の問題として。12Sと12Gに装着されるファルケンも、タイ生産ですが…。

もう1つ、それはドアミラーについて。歴代マーチの伝統として、視界の広さと運転のしやすさは美点として引き継がれており、それはこの現行K13マーチにも当てはまりますが、ただ1つ、ドアミラーの幅が最近のクルマにしてはかなり狭め。写真で見る限り若干ではありますが、これが車線変更時に、目視で確認できない部分が、ミラーの死角と重なってしまう事がよくあり、慣れるまでかなりヒヤヒヤした気分を味わいました。ミラーtoミラーの狭さはクラス随一で、すれ違いなどではその効果をいかんなく体験できますが、それを少しだけ犠牲にしても、もう数センチだけドアミラー幅を大きくしてもらえれば、さらに安全なドライブが楽しめる事と思います。



さて、色々書いてきましたが、自分としては酷評する部分がありつつ、クルマそのもののキャラクターを真っ向否定するわけではありません。イマイチ個性がない部分は気になりますが、別にスイフトやフィットのようにならなくても、コンパクトで扱いやすくて必要十分範囲の性能で、タイ生産のメリットをいかんなく発揮したライバルよりも手頃な価格のマーチのまとまり具合だって……

…手頃?


そう、マーチ最大の欠点は、その価格。別にタイ生産どうこうは、クルマ好きであったり経済学的に産業の空洞化を一層進める深刻な問題…ではありますが、別にマーチを買う女性ユーザーにはそんな事は後付けの事実なので関係ないでしょう。

ただ、スイフトのXG、フィットの1.3Gとほぼ同価格の、マーチ12Xの約123万円という価格は、それらと比較した時に、仕上がり度合やまとめ方を考えると、どう考えても高すぎ。キャラクターや方向性は認めますが、それに見合った商品性、価値提案がなされているかと問われれば、はっきり言って「NO!」。わざわざタイから持ってきたものを再度日本で製品チェックし、たいして良くもなっていないのに割高な価格を掲げてしまうあたり、日産はいったい何を考えているのやら?グローバル的展開で見るとこの方法は十分合理的なのでしょうが、日本にいるユーザーは首を傾げるしかないでしょう。まだ装備的にも質感的にも充実している12Gですが、これで約147万円になってしまうなら、それこそ論外です。

仮の話、極論になりますが、例えばもしこのアイドルストップ付の12Xが12Sの値段で(すなわり100万円前後で)、12Gが12Xの120万円前後であるならば、その商品性とコンセプトから言って、「これはこれでアリ!」と大きく評価が変わっていたと思います。しかしながら、現状で見る限り…よほどこのスタイリングが気に入った、もしくはマーチじゃなきゃ絶対に嫌!、または筋金入りの日産フリークである以外に、このマーチを「今の価格で」お勧めする理由は皆無に等しくなります。さらに言えば日産車をどうしても、というのなら、古くてもノートのほうが数倍お勧めでしょう。


質を求めるのか?それとも価格コンシャスを推し進めるのか?ここで中途半端に迷っていれば、韓国中国車に日本車は食われます。間違いなく。スイフトやフィットはその点では少し安心する出来の良さと商品性の高さですが、このマーチはその危機感をより一層強めてくれる1台と言えます。

もともとこの新型マーチが持つ、グローバル戦略車としての素質は悪くないと思います。事実良い部分、関心した部分も多くありました。日産には今後、そのクルマの実力に見合った商品力を備えて欲しいと要望して、このレポートを終えたいと思います。
Posted at 2010/10/25 00:01:44 | コメント(3) | トラックバック(0) | 日産 | 日記

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