• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

九郎田一馬のブログ一覧

2011年07月24日 イイね!

New!試乗記 新型デミオスカイアクティブ

New!試乗記 新型デミオスカイアクティブさて、Zであったりボクスターであったりリーフであったり…と、色々キワモノ!?な最近のネタでしたが、今回は久々の新車試乗記となります。

最近話題沸騰、個人的にも大注目な、マツダのスカイアクティブデミオの試乗レポートをお届けします。ちなみに、街中で軽く15分程度走っただけの簡易的なレポート。いずれ、ロングランを…したいところですが、レンタカーで配車してくれるかなぁ…(笑





スカイアクティブ技術について色々と詳しく書いていくと、とても1回では収まりきらないので、そこはあくまで走りの印象に絞って。むしろマイナーチェンジしたデミオがどう変わったか、その1グレードであるスカイアクティブがどうだったか、という観点でレポートしていきます。

ちなみに、今回のデミオに搭載されたスカイ技術はあくまでエンジンのみ。しかも当初から計画されていたわけではなく、この競争激しいクラスで強力な起爆剤となるべく、クルマの内容を見ていくと技術者の方々の苦労がにじみ出る「数字ありき」のスカイアクティブ第1弾がこのデミオ、と言えます。加えて言うと、CVT専用のこのデミオスカイアクティブは、日本市場専用モデル。いかにマツダが、今回このスカイアクティブで日本市場に勝負をかけているかが分かります。ある意味で、マツダの運命を左右する試金石でもあるのです。



さて、ハードルを上げ過ぎないところで、まずはマイナーチェンジでの変化を兼ねてのスタイリングチェック。一番目につくのはフロントフェイス。マツダのファミリーフェイス採用で、大きく口をあけニッコリとした豊かな表情になりました。ちなみに今回のマイナーチェンジで、以前は差別化されていたスポルトも同じバンパー形状になったのもポイント。サイド、リアからの変更点はなし。しかしもともと造形性の高いデミオのデザインは、今でも色褪せる事なく十分通用する、カッコいいスタイルですね。

さて、ベース車とスカイアクティブの見た目上の違いは、ヘッドライトにブルーのラインが入り、専用のアルミホイールとルーフスポイラー、そしてリアにエンブレムが装着される程度。ブレーキを踏むとテールライトがLED化されている事に気付きますが、見た目は同じデザインとなっています。またヘッドライトの装飾はアクセントになってていいですが、これを目立たせるためか、はたまたエンジン内のスペースの問題なのか、他グレードで選択できるHIDがなぜかオプションでも未設定なのが残念。スカイアクティブ専用の軽量14インチアルミは見た目もなかなかよくて○。スポークが細いので、リアのドラムブレーキが目立ってちょっと貧弱に見えるのが玉に傷かも。



見えないところで言うと、床下を覗きこむとベース車とは全く異なり、各部にアンダーパネルが装着されて相当に空力に関して工夫がなされている事が伺えます。ちなみにこの影響で、最低地上高はベース車比-15mm。Cd値は0.29とこのクラスではかなり優秀な方。

さて、ドアを開けて室内へ。インテリアの質感も現デミオの課題でしたが、モールやパネルの追加などで、色々とそのあたり手が加えられています。また。ハザードスイッチが赤色となって目立ちやすくなっているのは、細かいところながら気の効いている改良点。加えて、スカイアクティブ専用のブルーのメーターのおかげもあって、安っぽい印象はかなり抑えられています。



ただ、スカイアクティブの売りの1つ、アクセル&ブレーキだけでなく、ステアワークも含めてエコ運転を支援する、インテリジェントドライブマスター「i-DM」の表示がメーター左側にあるのですが、いかんせん表示が小さ過ぎて、これを気にしながら運転するのは正直危険。大人しく燃費計表示をさせておいたほうがよさそうです。繰り返しになりますが、メーター自体の質感は○。マイナーチェンジでできる範囲で最大限頑張って工夫しようとした努力は伺えます。



メーターを見ていると気付く事がまた1つ。タコメーターのレッドラインは、なんと5500回転とかなり低め。これは、マツダ技術陣が燃費目標達成をするため、最後の最後で犠牲にした部分だそうです。CVTとの組み合わせだからこそ割り切れた部分かもしれません。実際にこの1.3Lはタコ足4-2-1排気でなかったりと、制約上本来のスカイアクティブの技術を全て搭載できているわけではありません。

さて、色々確認したところで、試乗といきましょう。試乗車はラディアントエボニ―レッドマイカ。またパッケージオプションが2つ装備された豪華仕様。なぜかスカイアクティブ仕様のみ、運転席シートリフターがオプションとなっており、このあたりの装備の加減マジックは上手く騙されずに判断しなければいけません。



さぁエンジン始動。外からはエンジン音はいたって普通、マフラー付近の排気音は少し硬質感のある音ですが、安っぽい印象はありません。試乗当日の天候は晴れ、気温は34度。当然エアコンは全開状態でのスタートです。

ゆっくりと動き出して、歩道の段差を乗り越えて合流…この瞬間でもまず感じる事ができるのは、足回りの改良とボディ補強がとても良く効いているという事。現行デミオが大幅なシェイプアップをして登場した当初、その軽快で機敏な動きに驚いたと同時に、先代デミオがもっていた乗り心地の良さやスタビリティをある程度犠牲にしている感じは否めませんでした。端的に言えば、コンパクトカーらしい軽快感を手にいれたと同時に、このクラスらしい安っぽさも同時に露呈したというか…機敏だけど華奢、そんなイメージが個人的には強かったように思えます。そのあたりのバランスのまとめ方はスイフトの方がはるかに上手だった…

しかし、今回のマイナーチェンジで、リアサスブッシュの特性変更やダンパーのリファイン、鉄板肉厚化などによる念入りなボディ補強などの改良が行われたおかげで、この華奢で安っぽい乗り味はかなりの部分で改善されたように思えます。たとえば、段差を乗り越えた時であったり、ハーシュネスの遮断やダンピング性能の向上など、あくまでタウンユースでの試乗に限った印象ですが、この速度域でもその進化度合をはっきりと感じられただけに、これはワインディングや高速などでもきっと実感できるはず。シャシーの改良はスカイアクティブに限らず全グレード共通して行われているので、まずはこの素の基本性能の部分の進化を歓迎したいところです。

次に感じたのは、静粛性の良さ。デミオってこんなに静かだっけ!?っとちょっと驚いてしまったほど。これはスカイアクティブ専用の遮音性を高めたフロントガラスや吸音材などの新素材を取り入れた専用シートなども影響しているでしょう。個人的には、スイフトといい勝負。ダウンサイジングユーザーにとっては嬉しいポイントです。専用スペックのヨコハマアスペックの印象も、飛ばさない領域では上々のマッチング。

さて走り始めてもしばらくはエアコンON状態が続きますが、なんとこの灼熱の悪条件の中で、10分ほど走るとエンジンがストップ。以前アクセラに乗った時は、マツダのi-stopの作動条件はかなり限定されている印象があったのですが、アクセラやビアンテよりもはるかに積極的にアイドルストップをさせる制御へと変わったのは○。高価な専用タイプとはいえ、バッテリーが1個搭載に減ったのも歓迎したいところです。


さて、話は動力性能の方へ。まずはスペックをおさらいしておくと、スカイアクティブ1.3Lは84ps・11.4kgmと、出力の面では高回転分を犠牲にした分少し下がり、またトルクも少しダウンし最大発生回転数も上がっている…など、スペック上見る限り少し寂しい印象。しかしながら実際走ってみるとこれがゼロ発進から十分に活発でトルクフル。エコを意識し過ぎてドライバビリティが下がり、アクセルを逆に踏み気味になって本末転倒…なんて事はほとんど感じませんでした。むしろ従来の13C-Vよりも活発に感じるほど。

もちろん、幹線道路への合流など、少し瞬発力が問われるところでの加速はそれなり。CVTのセッティングもアクセル開度が少ない場面ではナチュラルでとってもいいのですが、踏み気味になると回転が先に上がってその後で速度が追い付いてくる…というような、ちょっとCVTの嫌な部分が目につく場面もありました。このあたり、街乗りでは反応が鈍くて少しかったるいけど、速度域が上がってくると俄然印象がよくなってくる…というスイフトの副変速機付CVTとちょうど印象が逆という感じです。1.2Lのスイフトとの動力性能で比較すると、街乗りではデミオSKY断然勝ち、速度域が上がってくると良い勝負…といったところでしょうか。


そういった点で少し不満がありつつも、実際エンジンの吹けはスムーズで、エンジンサウンドも軽やか…なのは、マツダのズームズーム魂の意地でしょうか。劇的な気持ち良さというものはありませんが、燃焼効率を追求した最新レシプロエンジン…という前置き云々はさておいて、普通のユーザーがなんら不満なく違和感なくサッと乗れてしまうという、いい意味での自然な仕上がりは、完成度の高さを感じさせます。「走りを犠牲にしながらこの目標をクリアするのであれば簡単だった。」という開発陣営の言葉に、走りとエコを両立すべく真っ正面から勝負をした、その意気込みを感じます。

というのも、実際SKYデミオに乗ってみて一番感じるのは、新しいエンジンの性能や燃費…云々ではなく、やはりその走りのフットワークの良さなのです。前述したように足やボディの改良の効果は走るほど実感でき、乗り味面での質感の向上っぷりは見事。少し挙動としてはマイルドに、落ち着いたような印象もありますが、だからといって退屈になったというわけではありません。ステアに対してフロントはリニアに反応し、直進性やリアのスタビリティは明確に向上。ちょうどプレマシーのモデルチェンジで走りの目指すテイストが大きく変わったように、今回のNewデミオも、スパンスパンとした分かりやすいスポーツテイストから、旋回Gの繋がりの良さを強調したような、そんなシャシーの懐の深さを感じる、オトナのズームズームへとステップアップしたような印象を持ちました。このあたり、また今後スカイアクティブ「ではない」普通の新型デミオで確認したいところです。

今回はあくまで限定的な条件の中での短い試乗だったので、印象としてお伝えできるのはこのあたり。試乗車は500kmほどしか走ってないド新車でしたが、この時の車載燃費は14.3km/L。状況としては一番悪い場面だと思えるので、このあたりが燃費の最低ラインだとすれば、フィットHVに追いつかないとしても、なかなか優秀なポテンシャルが期待できそうです。


さて、今回のスカイアクティブ第1弾のデミオ、「エコカー」という基準ではなく、マツダというスポーティな印象を背負いながらこの形でまとめあげた点については、拍手!久々にストーリー性のあるこれからのスカイアクティブの展開、フル搭載となるCX-5が実に楽しみ。競争激しいこのクラスですが、スカイアクティブという絶対的なイメージリーダーの登場はデミオのアピール度としては◎。それに加えて、スカイアクティブばかりが注目されがちなものの、「素」のデミオとしてのシャシー性能の向上っぷりが、個人的には地味ながらもとても嬉しいポイント。


…と、かなり絶賛気味になりましたが、最後に苦言も言っておきましょう。スカイアクティブ搭載によって1トンを若干オーバーしてしまったのは残念ですし、また排気系の取り回しの影響で、燃料タンクがなんと6Lも減っている事も忘れてはいけません。燃費は良くなっていても、その分航続距離は相殺されてしまうのがこのSkyデミオなのです。

加えて、140万円という価格を意識し過ぎてか、ところどころ装備のケチりが見えるのも事実。是非ともセットオプションのパッケージ1は装着しておきましょう。僅か5万円アップで、シートリフターに撥水ガラスにドアミラーウインカーに後席中央ヘッドレスト&3点ベルトにオートライトにレインセンサーワイパーにプライバシーガラスに…と、明らかにお買い得で盛りだくさんな内容なので。

また、DSC&TRCの標準化はエライ。…しかし、スカイアクティブ以外には、なんといまだオプション設定さえされず。これは大減点。とくに今回の改良で、普通の素のMTモデルや、スポルトなんかも商品力を大いに増しています。このあたりの商品企画での問題は色々難あり。初代デミオ後期型ですでにDSCを設定していたその先駆者ぶりはどこへ。是非、早急に改善を。自分が欲しいのも、スカイアクティブじゃなくて、スポルトの5速MTなんですから(笑)



という事で、激励と期待を込めて、試乗記を終わりにしたいと思います。
Posted at 2011/07/24 22:14:23 | コメント(4) | トラックバック(0) | マツダ | 日記
2011年07月02日 イイね!

New!試乗記 ポルシェ ボクスター 後編

New!試乗記 ポルシェ ボクスター 後編 さて、散々引っ張ってしまったボクスターの試乗記も、いよいよ締めです。



前編はこちら。

中編はこちら。




早朝、6時過ぎ。

目覚めると、空はどんよりしているものの、雨は落ちてこず。幸運。

さて、2日目。平日のため高速代をケチりながら(笑)南下、東名高速を目指します。

すでに通勤ラッシュがスタートする中、129号線を通って、東名高速厚木インター方面へ。当然、屋根はフルオープン。ストップ&ゴーが続く中、若干の低速のパンチ力不足を感じながら、それでも踏み込めば上までスパンと回るエンジンの気持ちよさ。抜群に歯切れのいいPDK。しかしそんな中でも、クラッチ制御のマナーはあくまでも滑らかで、加えて乗り心地は改めて感服するほど良く、いったい今自分が乗っている車が、高級車なのか、スポーツカーなのか、一瞬分からなくなるような、そんな感覚に何度襲われた事か。



そして、本当にもう言い古された言葉で、使いたくはないのですが、まさにこのボクスターは、“ゆっくり走っていても楽しい”クルマだと言い切れます。ロードスターのようにある意味でそこを思いっきり狙っているレベルなクルマならまだしも、明らかに性能としては一級品の速さと質感があるというのに、時速5km/hから、加減速を繰り返していても、一定速度で走っていても、飛ばさなくても充足に満たされるこの感触。それはボディ剛性の「質感」であったり(高い、だけじゃない)、「手の平が喜んでいる」ダイレクトかつすっきりとした美味しいステアリングフィールであったりするのですが、すべての基本性能に対して、べらぼうに金がかかっている。そんな事を嫌が故にも実感させられます。

これが「新車で買える一番安いポルシェ」だと言うのに…。絶対的には高価な車である事は間違いありませんが、これを一度味わってしまうと、今まで自分で乗った車の経験値と比較し、相対的に高い…どころか、これだけよけりゃ当然だな、という気持ちが沸々と…。


そんな事を考えながら、3時間ほど心地いい渋滞に巻き込まれつつ、ようやく高速に乗りこみ、東名下りの左ルートでハイスピードクルージングを楽しみ、足柄SAにとひとっ風呂(温泉のあるサービスエリアって本当に素敵です)。風呂から上がれば、なんと予報外れて、雲の隙間から日差しが見えてきました。よし、このままオープンで楽しめる…御殿場ICで降りれば、目指す場所はもう決まり。クルマ好きにはたまらない、そしてボクスターの本領発揮ステージである、芦ノ湖~箱根スカイラインのワインディングインプレッションに突入です。



平日の、お昼前。こんな時間帯だけあって、観光名所でもあるこのあたりも、人も車もまばら。時たま、ルノールーテシアRSや先代のZ4・M、R32スカイラインGT-RVスぺⅡなどが、気持ちいい音を響かせながら、ワインディングを駆け抜けていくのが目に入った程度。雲の中から太陽の光が漏れる中、屋根を開け放ったままボクスターのスロットルを踏み込んで、この車の真髄を楽しむ事にしましょう。

スタートからドンっ!とアクセルを床まで踏み込むと、わずかにスキール音を響かせながら猛然と鋭くダッシュを決めてくれます。トラクションコントロールが一瞬介入しますが、その制御はとても自然で、失速感は全くなし。これは制御が上手いというだけでなく、このボクスターがもともと備えるトラクション性能の良さとも言えるでしょう。テスト者はスポーツパッケージを装着していないので、ローンチコントロールは装着されていませんが、サーキットでもない限りこれくらいの鋭さを感じる事ができれば、全く不満はありません。

さて、目の前に広がる、運転好きには理想的とも言えるコーナーの数々を駆けていきます。車雑誌や、テレビで、見たことのあるコーナーの数々。あぁこのコーナーが、CGでよく見かけるあのカットのやつかぁ…なんて事を思ったり。



このステージのボクスターは、まさに水を得た魚。フロントが205というタイアサイズとは思えないほどの接地性の高さ、旋回中の前後バランスの良さ、そこから脱出にかけての抜群のトラクション…こういった場面ではまさに「これぞスポーツカー!」な楽しさを味わえます。路面が荒れていてもボディはそれをしなやかにカッチリと受け止め、アクセルを踏めばNAらしいレスポンスの良さと乾いたエキゾーストノート。実際に飛ばし始めると、クルマ自体がどんどん軽く、小さくなっていくような錯覚。また、ノーマル17インチでも自分のような素人レベルでは十分のグリップレベル。危なげな挙動は全く見せず、最終的に攻めていくと立ち上がりでお尻が流れる挙動になりがちなものの、基本的には「微」弱アンダー気味なセッティングも安心感を助長させてくれる要素です。

さすがに高いクルマなので、PSMはもちろんON状態。途中何度かメーター内にピカピカ光って制御を知らせてくれましたが、その動作領域は、少なくともドライ路面ではスポーツドライビングの邪魔をほとんどしない絶妙な設定。それよりも、この個体にはLSDが装着されていないので(オプション設定アリ)、コーナー立ち上がりなどではむしろそっちのほうが少し気になるくらいでした。

…さて、ここまできて、あえてある事には触れず、試乗記を書いてきましたが、ここでようやくその事に触れておきましょう。いろんな良さを感じつつ、ボクスター…自身のポルシェ初体験でもっとも感銘を受けた点。


ブレーキです。





ポルシェのブレーキは宇宙一。ポルシェで褒められる点として、まず代表的に挙げられるブレーキの良さ。今回もちろんそれも楽しみにしていましたが、いやー、さすが。おったまげるほどにブレーキ性能は、本当に素晴らしかった。

ましてや巨大で高価なPCCBでもなく、ポルシェの中では「普通」のブレーキではありますが、これでも国産一級品のスポーツカーと比べたって、なんら劣ってはいないであろう素晴らしい一品。ボクスターよりも速い国産のクルマはいくらでもありますが、これほどまで「止まる」事にさえファンなクルマは、果たしてあるのか…

具体的に言うと、まずはその絶対的なストッピングパワーの余裕。これはボクスター、いや広くポルシェ全般的なリア寄りの重量配分を始め、ボディであったりサスペンションであったり、そもそもの素の性質も多大に影響されているのでしょうが、まぁとにかくよく効く。どんな場面でも、下りのワインディングでガンガン踏んでも、ビクともしない。常に、かっちり、きっちり、止まる。速度を落とす、のではなく、まさしく速度を「殺す」勢いでビシッと止まる。これはスポーツカーに限らずとも、運転していて絶対的な安心感と余裕をドライバーに与えてくれます。



続いては、そのコントロール性。街中での渋滞でもナーバスなところは全くなく、いたって普通。ストロークが国産車などに比べて少し長めなところだけしっかりと認識していれば、まさに踏力に対しての減速コントロールが自由自在。まるで足でそのままローターを踏みつけているような、ダイレクト感と微調整のしやすさ。ブレーキを踏んで関心したクルマはたくさんありましたが、ブレーキを踏み減速する、という行為に対して、これほど楽しさを感じられるクルマは、このボクスターが初めてです。

最後にもう1つ、ABS制御の上手さ。ドライ路面ではガツンとブレーキを踏むとキュキュっとスキール音が聞こえるくらいに、タイアの性能を100%使い切ってキチンと止めてくれ、ブレーキを残してコーナーに入る際の旋回ブレーキングでもロバスト性は完璧と言っていいほど高く、相当にアンジュレーションのキツいコンディションで、わざといじわるに強めに踏んでみても、4輪の接地性をキチンと把握して、直進性を乱す事もむやみに制動距離を伸ばす事もなく、いつも最適な減速状況を作り出してくれるこの巧みさ。この後、ワインディングを走り終え東京方面へ帰る途中、突発的なゲリラ豪雨に襲われたのですが、そんなウェットの中でもこのブレーキの安心感は全く揺らぐ事ありませんでした。

蛇足ではありますが、ポルシェのブレーキは、特に明記はされていませんが、ブレンボが採用されています。というよりも、ブレンボはポルシェと共に高性能を求め続けて、気がつけば一流ブレーキメーカーとなって、世界中の他メーカーからも採用され始めた…というのは、有名なお話です。

さて、本当に初めてのポルシェということで、その性能を実感することで、驚く事関心する事…驚きばかりでしたが、それで終わってしまっては面白くない(笑)ということで、当然もちろん気になる事無きにしもあらず、ということで、今回一緒に過ごす時間の中で、気になった点をいくつか…。



まずは、シート。抜群に良く効くシートヒーターは前回褒めましたが、長い距離を乗っていてもお尻や腰が痛くなる事もない、ドイツ車の良さをしっかりと感じさせてくれる一品…ではあるのですが、このボクスターをスポーツカーとして捉えた時に、ちょっとサポート性が全体に不足気味。特に肩付近をもう少しカッチリと支えて欲しいと感じました。



続いては、ステアリング。グリップが太めで、径も最適で、しっかりと脇の締まる「優れたドラポジに自然と誘う」いいステアリング。カチッとした革巻きの質感は○。なのですが、どうしても、このステアリング上を「横断」する、シルバーのプラスチック部分。これが運転中、どうしても手のひらに触れて気になる事が何度もありました。まぁこれは、とりわけ自動車パーツの中でもこだわってしまう「ステアリングフェチ」な自分だからこそ、の欠点なのかもしれませんが、やはりパリッとした全周1枚革巻きで仕上げて欲しいなぁ…というのが本音でありまして…。それでなくても、以前のPDK仕様になる以前の段階では、こんなデザイン性を優先した形ではなかったんですが…。



そしてステアリングの話をするなら、ついでにこれにも触れておかなければならないでしょう。素晴らしい変速を披露してくれるPDKですが、このステアリングシフトのロジックだけが、どうしても最後まで慣れる事ができませんでした。押してアップ、引いてダウン、という今までのティプトロ方式に慣れたユーザーを混乱させないようにとの配慮からこうなったそうですが…どう考えても加減速Gとは合わないし、またスイッチを押して反応してくれない(特に2段以上飛ばしシフトしたい場合の時など)事も多々。やはりこれはどう考えても、コンベンショナルなパドル方式の方が分かりやすいに決まってます。結局、ずっと、マニュアルモード時だと少し遠目になる(右ハンドルの弊害を唯一感じた部分)シフトノブで操作することとなりました。ま、MTなら…と思いきや、MTでもこの形状のステアリングになってしまうんですよね…それに右ハンドルのMTなんて、国内市場になんてどこにも見当たらない…(以下、ループ)

っと、ここで、フトある事に気がつきます。そうだ、最近確か、パドルシフト仕様のステアリングもオプション装着できるようになったんだっけ…そう思って探してみると、さっそくありました。左ダウン、右アップの、馴染みのあるパドルシフトが装着されたステアリング。



あ、見ると、このパドルシフト付のステアリング、プラスチックの横断もないし、最上部に目印の縦巻きステッチ、革のつなぎ目は下部分で、ほぼ全周革のつなぎ目のない、物凄く自分好みのステアリングではないですか…。オプション価格、74.000円ナリ。

そうだそうだ、ちょっとサポート性に不満を感じていたシートだって、ポルシェはオプションで選択が可能。ノーマルから、少しタイトな形状のスポーツレザーシートに変えれば、この不満だって解消されるはず。オプション価格、335.000円ナリ。



なんとか振り絞って考え付いた不満点は、全て「金でどうにかなる」結果となってしまいました(笑)。おそるべし、ポルシェのオプション商法。こういうことなら、足回りだってやっぱり18インチが欲しくなるし(190.000円)、乗り心地悪化分はPASMで補って(294.000円)、あっそうだ忘れてたLSDもちゃんと付けて(200.000円)、そうなるとボディやインテリアのカラーリングもこだわって…

こんな感じで自分の好みの1台を仕上げていけば、あっという間にノーマルのボクスターでも、ボクスターS…いや、しまいには911にさえ手が届きそうな値段になってしまって、はたまた全部要望詰め込んだら、注文生産で納車に1年近くかかってしまって、ようやく船で運ばれてきて、もうじき納車…と思ってきた頃にゃ、あらら次のイヤーモデルが出てきてさらにバージョンアップ…!?…理想のポルシェに出会う事、ポルシェの買い時とは実に難しい。というか、こういう事を考えてしまうのは、やはり一般的庶民の発想でありまして、ポルシェを買えるお金持ちのユーザーにはさして大きな問題でも、ないのでしょう。あぁ。(笑)



というわけで一気に現実に戻されてしまいましたが、最後にリアルなお話を。渋滞に巻き込まれ、散々ワインディングでアクセルを踏みまくって楽しんで、にも関わらず、走行終了後にガソリン満タンで燃費を計ってみると、なんと9.2km/L!渋滞とワインディング、それに高速ハイペース巡航区間がなければ、おそらく軽く10km/L台をキープしていたことでしょう。3Lクラスのミッドシップオープンスポーツカーでありながら。改めてですが、最新のPDKの制御の巧みさ、しいてはこのボクスター自体の万能さに、改めて驚き。


さて、以前、SDXさんに「ベンチマークとなるクルマはなんですか?」と質問を頂いた時に、2台、挙げさせてもらいました。

左脳的には(理屈、理論的には)、VWゴルフ。右脳的には(感情、感性的には)、マツダロードスター。そしてどうやら今回、自分は、このどちらをも凌駕し圧倒してしまう、まさに理想的基準車に、出会ってしまったのかもしれません。



「ポルシェって、いったい、どんなクルマなんだろう。」
試乗記冒頭に書いた、こんなクルマ好きなガキのフトした疑問。有難い事に色々な方のご協力があり、今回自分の身体をもって体感、体験し、その凄さと真実を、ヒシヒシと身にしみて実感した次第。20代前半の年齢では、今までたくさんのクルマを運転させて頂く機会に恵まれましたが、この日、この時に乗った、「初めてのポルシェ。真っ黒なボクスター。」との鮮烈な出会いの衝撃は、たぶん一生忘れない事と思います。と同時に、他のどんなクルマに乗っても、物足りなく感じてしまう…ポルシェ病。に、一時侵されつつありましたが、なんとか無事完治して、普通の軽でも運転の楽しさを失ってしまうような事には、なんとかならずに済みそうです(笑)。


「いつかは、ポルシェ…」。叶いそうにもない、貧乏大学生からすれば途方もない戯言ではありますが、自分の始まったばかりの自動車人生で、多大な影響を与えてもらい、また、目指すべき目標と出会えた、そんな貴重な24時間でありました。


…えっ?986初期型なら150万円くらいまで相場が下がってる?いやいや、そんな、ポルシェに手を出すなんてリスキーな…。えっ?後期型でも200万円台でゴロゴロある?987でも、300万円ちょいから良質なタマがそろってるって?…聞かないフリ聞かないフリ…(笑)
Posted at 2011/07/02 21:57:24 | コメント(4) | トラックバック(0) | ポルシェ | 日記

プロフィール

「明日は恒例のメディア対抗ロードスター4時間耐久レース。今年も64号車の監督やります。前日準備は洗車機の中のような豪雨。さて明日は??(^_^;)」
何シテル?   08/31 19:12
幼い頃から、車が大好きでした。 その気持ち変わらず、今も純粋に、自分なりに日々世の中に新しく生まれるクルマ、そのクルマを取り巻く事情や環境、ドライビン...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2011/7 >>

     1 2
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      

リンク・クリップ

軽井沢MTG2024参加しました 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2024/05/27 21:07:08

愛車一覧

スバル レガシィB4 スバル レガシィB4
シビックタイプR(EP3)からの乗り換えです。 VTECから乗り換えるので、エンジンに ...
ホンダ シビックタイプR ホンダ シビックタイプR
国内外様々な車種100台以上を試し乗り、いざ自分で何を買えばいいのか分からぬ状態…で、辿 ...

過去のブログ

2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2011年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2010年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation