• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

九郎田一馬のブログ一覧

2011年09月19日 イイね!

【試乗記】日産ジューク15RX

【試乗記】日産ジューク15RXさて、今回試乗レビューをお届けするのは、日産のジューク。デビューして1年以上が経過していますが、改めて今回たっぷり乗る機会を設ける事ができたので、レポートしたいと思います。




まずこのクルマを語るには、とにかくそのデザインから始めなければいけないでしょう。とにかく変な?奇抜な?強烈な?そのルックス。好き嫌いは別として、明らかに最近の国産車では有り得ないほどのその見た目の個性の強さ。けども、それが故に印象に残るのかもしれませんが、街中でやたらよく見かけるような気がする…?それもあながち間違いではなく、登場後順調にセールスを重ねているようです。反面、そういえば、同時期に登場し、性能も上、車格も上なのに価格はほとんど同じ…な三菱のRVRは、ほとんど見かけません。

良くも悪くも好き嫌いがはっきり分かれるジュークですが、その個性の強さが想像以上に受け入れられた印象。特によく思うのが、意外と年齢層が高いユーザーを多く見かけること。派手な色のジュークを、おじさんおばさんが運転という…実際購入者の年齢層も、20代から60代付近まで、見事に幅広い分布なのだとか。最近流行りの絞り込みマーケティングで、開発ターゲットユーザーを”30歳独身のイギリス人男性 ウィリアム。”という超ピンポイントに絞り込んで開発が進められたジュークが日本でこういう結果に…つくづくクルマの個性とマーケティングの奥深さを感じます。

加えて、例えば上を見れば、ムラーノであったり、エクストレイルであったり、デュアリスであったり、根強い人気を集めているSUVの兄貴分もあり、それらのコンパクト版…というデザインスタンスで登場させれば、ある程度は確実に…なのですが、その人気にあやかる事なく、さらにチャレンジをしてくるあたり、今の日産のデザイン部門の勢いを感じさせてくれると言えるでしょう。



フロントフェイスは、まるで「顔」。眉毛部分がポジションとウィンカー、グリル内蔵の目玉部分がヘッドライト。あまり目につかない下回りの樹脂部分もしっかりデザインされており、スキを見せません。左ドアミラー下部分に装着されている2面ミラーのおかげで、補助ミラーが装着されないのも○。リアビューはZ風のテールランプをボディラインに上手く溶け込ませているあたり、その造形とプレス、生産技術に関しては見事。ただ、実際にブレーキとウィンカーが点灯するのは下部分だけで、Zのように光らずダミー部分が多いのは価格を考えれば仕方ないところか…LEDでも埋め込めば、夜での後続車へのアピールもアップしそうです。



さて、奥歯に物が挟まったような物言いになりましたが、はっきり言って出た当初からこのジューク、僕自身は受け入れられない側の人間でした(苦笑)。しかしながら今回乗ってみて…印象は一変。そのあたりを、順に追ってレポートしていきます。



ドアを開けてシートに座ります。車高は1565mmと立体駐車場アウト(アーバンセレクションは-15mmで適応可能)な微妙の高さではありますが、乗り降りのし易さで言うとこれが絶妙の値。このあたりもシニアユーザーの受けがいいポイントかもしれません。

シートはたっぷりとしたサイズで、ホールド性もなかなかのもの。目の前には視認性と質感に優れる大径メーターと、これまたZを思わせるグリップの太いスポーティなステアリング。テレスコ調整が欲しいところですが、比較的満足できるポジションを取る事ができました。先ほどのフロントフェイスの「眉毛」部分がドラポジ状態から見える事もあり、見切りは良好。これは意外な事だったのですが、これだけデザインコンシャスなクルマなのに、全方位視界に関して大きな犠牲になっている部分がないのはお見事なポイントです。

また、シートリフターの調整量がかなり大きめで、少しアップライト気味にすれば視界もさらに良くなり運転し易いポジション、逆に思いっきり下げると足を投げ出し周りに包み込まれるような、そんなスポーティな印象を抱かる…といったように、シート調整ドラポジ次第でかなり違った雰囲気を味わわせてくれる、これは新型エルグランドにも共通したポイント。アイポイント自体は高いのに、その印象を極端に抱かせないドラポジが取れる…というのは、高速移動時などに強い味方になってくれました。



さて、インテリア上でジューク最大の見せ場となるのが、バイクを思わせる派手なセンターコンソール…なのですが、テスト車は地味なシルバー塗装で、あまり大きなインパクトはなし。もちろんこちらの方が落ち着いてて良いという人もいるでしょうが、目立ちたい人ならやはり赤をチョイスする事をお勧めします。カップホルダーに加えて、前方には横長の平べったい滑り止めゴムが配された収納スペース…これは最近流行りのスマートフォン置きにバッチリの位置。さすが、よく考えられています。





もう1つの大きな見せ場が、インパネ上に配置された「インテリジェントコントロールディスプレイ」。普段はこのようにエアコンモードにしておきボタンを操作。で、ちょっと走りのモードを切り替えたいなぁー…と思ったなら、右側のドライブモードもポチっ。そうすると…




なんと、先ほどのボタン配置はそのまま、ボタンの操作内容自体がそのまま瞬時に入れ替わってしまうというカラクリ。そのボタンの操作や見た目の質感を含めて、いやーお見事。これは本当によく出来ています。キレイな液晶ディスプレイは単体では見やすく、エアコンやアクセル操作に伴って色々と変化してくれるのも実に楽しい。

…が、最大の欠点。それはこの装着位置自体。特等席はナビに占領されてしまっており、この低い位置では完全に視野を移動させる必要があって、運転中全く視界に入らないというのが実にもったいない。発想自体は大変いいのですが…これでは完全に宝の持ち腐れ。その事を気にさえしなければ、ドラポジ状態からハザードスイッチを含め、シートから肩を外さずに全てのボタンが手が届く範囲で操作できるというこのあたりの空間設計は非常によく出来ています。それだけに…ナビの位置を含めて、もうワンプッシュ挑戦してほしかった。

もう1つ、派手な内装の雰囲気の中で、唯一シフトノブ周辺だけがデザインに置いてけぼりを喰らった印象。1.5Lで価格を考えるとまぁ贅沢なお話かもしれませんが…1.6ターボ仕様だとマニュアルモード仕様となるので、少し華やかさは出るでしょうか。



アルファ風のピラー内蔵型ドアノブを操作してリアシートへ。さすがに開口部は狭く、乗員性はちょっと犠牲になっている部分。しかしいったん乗りこんでしまえば、見た目の印象よりも全然狭くない…むしろ十二分なスペースがそこには広がっています。グラスエリアの関係で閉鎖感は少しあるものの、頭上空間は適度に取られており、ひざ前スペース自体は結構厳しいのですが、足元付近の余裕と前席下への足入れ性が非常に良いので、座っていると不思議と狭さを感じさせません。前席を含め、しっかりパッケージングを煮詰めたなという印象がとても伝わってきます。



ラゲッジスペースはフラットなのですが、開口部自体が高く荷物の出し入れは大変。また奥行き自体はかなりあるのですが、いかんせんDピラーは思いっきり寝かされているので、ここはハッキリと犠牲になっている部分。これに不満のある人はもう1サイズ大きいデュアリス買ってください、という割り切りでしょう。ノートのラゲッジを見て全然狭くない、と思う方なら不満はないかと思います。

テスト車両は15RX。1.5Lの上級モデル。ターボモデルと共通デザインとなる17インチタイアとアルミはオプションで、ベースは写真の16インチ。銘柄は完全サマータイアのヨコハマのdbなのは16・17インチとも同一。走りのバランスは別として、迫力満点のフェンダーに合わせるには、19インチくらいを履かせてやりたいところ(笑)ですが、開発者の方からすると、この205/60R16サイズがジュークのベストマッチングなのだとか。



では早速走りだしてみましょう。エンジンスタートともにキューブなどと同じメーターアクションを確認して、ちょっと普通過ぎて面白みのないシフトを握りDレンジをチョイス。エンジンはこのクラスの日産車ではお馴染み1.5LのHR15DE。ただ内部には大幅に改良が加えられており、ツインプラグならぬデュアルインジェクター、1シリンダーに2本のインジェクターを用意するという贅沢な(ちなみに世界初)仕様、しかも吸気側に加え排気側にも可変バルタイが組み込まれ、114ps/15.3kgmへパワーアップと燃費改善の両立を実現。これに組み合わされるのは、すっかりお馴染みとなったジャトコ製の副変速機CVT。



この組み合わせは本当に良く煮詰められており、日産の1.5L級パワートレーンはこれで完全完成形になった、と言いきってもいいくらい、そのくらいバッチリの完成度の高さを見せてくれました。ジュークは車重が1170kgとノートやキューブなどと比べ少し重めながら、それらを全く気にさせない必要十分なパワフルさ。街中で走る際の低~中回転域のトルクもたっぷりとしていてかったるい印象は全くなく、上まで回してもパワーの伸びが感じられます。またサウンド的にもすっきりしており、フィーリングも好印象。120km/h付近を超え始めるとさすがに1.5Lの排気量を感じさせられますが、日常域では4名乗車でもほとんど不満はないはず。街乗り+高速+ワインディング、元気良く走って14km/L台に乗ったのも立派。

さらに言えば、CVTの出来もいい意味でそれに拍車をかけます。以前スイフトでお伝えしたようなローからハイへと移行する際のトルク抜けはやはりジュークでも若干確認できますが、1.5Lの余裕さもあり個人的には無視できるレベル。速度が上がっていってからのアクセルに対する反応のリニアリティは他のCVT搭載車と比べても現時点ではベストな出来。右足の操作次第で加速時のエンジン回転を任意でコントロールできる感覚は、回転の上がりと速度が一致しない…なんて古臭いCVT車からは一線を課す仕上がりとなっています。

ちなみに、先ほどの「インテリジェントコントロールディスプレイ」で「エコモード」と「パワーモード」を選択する事が可能ですが、エコモードはかったるすぎて危険なモード燃費追求仕様、パワーモードは少しだけ反応はよくなるものの大きな違いは起きず、95%は終始ノーマルモードで走る事となりました。これで十分、これが一番、です。



もちろん、モアパワー!というのであれば自慢の1.6L直噴ターボモデルもありますし、4WDが選べるのもターボだけ。しかも4駆はトルクベクトル式4WDでリアサスはマルチリンクになるという贅沢っぷり。ただ、6速マニュアルモードが付くメリットはあるものの、ターボモデルのCVTは副変速機「なし」である事に要注意。まだ未試乗なのでなんとも言えませんが、決して小さくない価格差を考えても、このジュークのベストバイはFFの1.5Lモデルのようが気がします。


それをさらに強めたのが、フットワークの良さ。実は今回ジュークに乗って一番びっくりしたのがここ。クロスオーバーSUVかな?っと思っていましたが、なるほどこれなら、姿形が少し変わった、イマドキのホットハッチなのかもしれない…と言われても納得してしまいそうな、そんなハンドリングの良さを見せてくれました。やたらライバルとしてMINIやシトロエンの名前が出てくるわけです。

具体的に言うと、まず驚くのがロール剛性の高さ。この目線この車高の高さなのに、コーナーにかなりいいスピードで侵入していっても、とにかくロールしない。決してステア操作に対するクルマの動きは、MINIのように分かりやすいクイックさがあるわけでもなく、むしろ比較的落ち着いた挙動なのですが、まぁロールしない。Bプラでもやればここまで出来るのか!と、驚嘆に近いものを感じました。足をガチガチに固めているわけでも、サスストロークを狭めているわけでもないのに、とにかくハンドリングが軽快。アンダーも少なく、むしろリアを上手く滑らせながら曲がっていくFFホットハッチのようなセッティング。ステアリングフィールに関しても、電動パワステの出来はこのクラスの国産車で考えるとトップレベルのナチュラルさを持っており、重くも軽くもないちょうどいい操舵力で終始違和感を抱かせないチューニングになっています。

もちろん、ある程度まで攻め込んでいくと、最後の最後の部分でタイアのグリップに頼り切ってしまうような突っ張った動きに終始してしまいますが、そこはまぁちょっと非日常域でありますし致し方ないところ。これだけよく動くのにVDCがオプションでも装着できないというのは少し難アリですが、リアの動き出しは比較的早めにくるものの、そこからのコントロール性と収まり方、クルマ全体の挙動のまとめ方は、このボディサイズでこのサス形式でこの車高の高さで考えると、そして最後に価格を考えると、かつての走りの日産のプライドを久々に感じさせてくれる実用車、と思えます。



この答えとして、エンジンと同じく実際かなりの部分で改良は加えられており、トーションビームサスのリア周辺も、実はセレナ用のパーツなどを多く用いており、剛性の確保などにはかなりの部分でキチンと対応されているそうです。しかしやはり16インチがベストマッチングというのもあながち嘘ではなさそう。と言うのも、乗り心地自体これほどロール剛性が高いにも関わらず決して悪くなく、ハーシュネスの遮断も見事なのですが、全域…動き出しから高速域にかけて、どの速度域でも、大きな入力時はいいものの、小さい路面の荒れた部分やアンジュレーションに対してクルマの落ち着き不足、乗り心地は悪くないんだけども、常にスィートスポットにハマらないドタバタ感が終始していた点が少しウィークポイント。バネレート自体はさほどでもないので、これはおそらく小さな入力での動きが渋いダンパーの減衰による問題か。

エクストレイルやディアリスのようにザックス製でも使えば劇的に良くなる…のでしょうが、これも価格を考えれば贅沢な文句かもしれません。55扁平17インチではどうなるのか、ちょっと気になる部分です。加えて、鉄っちんなら見えませんが、見た目がリアがドラムでアルミホイールだとダサい…という問題も含めて、ブレーキにはもう少しストッピングパワーの余裕とカチッとしたフィーリングが欲しいところ。

それと少し関連してますが、VDCに関しての問題ですが、登場時にオプションでも未設定ということで、クルマ好きやメディア関連からはかなり口酸っぱく野次られたのが記憶に新しいところですが、日産としては価格をできるだけ抑えたかった事、加えて同価格帯になるキューブのVDC装着率が1%に留まる事、を考慮した結果なのかもしれません。実際この上級モデルの15RXで180万円切り、15RSタイプVなら約162万円と、この見た目でこの質感でこの走り、ユーザーの心をくすぐる実に上手い商品設定と言えるでしょう。もちろんそれと同時に、開発の人たちがここまで走りに関してはしっかり頑張ってくれているんだから、VDC含めての価格設定で戦略立てろよ!とも言えますが。これはいずれ1.5LモデルでもVDCが標準装着され、その際にリアブレーキもグレードアップ…することを期待しておきましょう。

個人的にはもちろん、トルクベクトル4駆+1.6L直噴ターボの16GTFOURが気になるところですが、こちらの価格は245万円超と一気に60万円近い値上げ。また、これくらいの価格帯になると、ライバルたちも違ってきますし、また200万円切りなら満足!なインテリアの質感なども、250万円クラスと考えるとちょっと…と、思えてくる部分もあったり。加えて、純正17インチアルミをオプションで装着してしまえば、そのホイールデザインを含めて外見に全く違いがない、というもの難アリ。事実、売り上げ比率を見ると、ターボモデルはFF・4WD合わせてもごくわずか。ほとんどが1.5L。しかも、お買い得な特別仕様車のタイプVや、15mmローダウン(なんとスプリングカットで実現!)で立体駐車場対応としたアーバンセレクションなど、日産も売り上げに見合った売り方をしてきているのが分かります。実際に乗ってみて、おすすめも当然こちらのほう。



いやーしかし、最初は見た目だけのクルマ、しかもその見た目自体が全然好きじゃない(笑)ということで期待していなかったのですが、いやいや予想に反してヒットしてる理由は見た目だけにあらず!ということを痛感。やっぱ、クルマは見て触れてそして乗って、最後に評価を下さなければいけませんね。このジュークの出来を見ていると、マーチで大きく裏切られた部分は、次期ノートの完成度でかなり埋め合わされるかも…ちょっと今から楽しみになってきました。


それはそうと、日産さん、ターボ売れてないんでしょ?次は1.5LモデルにVDC付けるのと同時に、FFでもいいのでリアがマルチリンクじゃなくてもいいので、1.6L直噴ターボ+6速MT、そんなジューク16GTSR、価格210万円、なんての、出しませんか?スイフトスポーツくらいやっつけられますよ?個人的に、本当に欲しくなっちゃいますよ?笑
Posted at 2011/09/19 16:36:41 | コメント(5) | トラックバック(0) | 日産 | 日記
2011年09月03日 イイね!

【試乗記】デミオスカイアクティブ、徹底ロングランテスト!後編

【試乗記】デミオスカイアクティブ、徹底ロングランテスト!後編さて、前回に引き続き、今回はデミオスカイアクティブの高速やワインディングといった、速度や入力が高めとなるステージでの印象をお伝えしていきたいと思います。





高速巡航ペースだと想像以上に良好な燃費を叩き出す事を確認して、さてここからは高速域での走りの印象について。関西以外の方には少しイメージが付きづらいのが申し訳ありませんが、ステージは名阪国道~東名阪道~伊勢湾岸、折り返して伊勢湾岸~東名阪道~新名神~名神~阪神高速、といったルート。悪評名高い?名阪国道は知る人なら分かるかなりのアップダウンや路面の荒れ方、そして国道とは名ばかりの相当に速い道路のペースなど、このクラスのクルマにとってはかなり過酷な場所です。

MC前の旧デミオでも何度も同じ場所を走った事がありましたが、ちょうどここが一番苦手とするステージでした。一般道やワインディング領域では楽しい味付けも、こういった路面が荒れ気味の高速ステージでは、どうしてもシャシーの頼りなさや足回りの華奢さが浮き彫りとなり、少し調子に乗って飛ばすとおっかなびっくり…直進性も低下しリアのスタビリティもおぼつかなく、冷や汗をかかせるような挙動に終始する結果に。ハイスピード域での安定性と快適性が旧デミオ最大のウィークポイントでした。



さて新型は。これが本当に見事、本当に「激変」と言っていいレベルで改善されていた事に、素直に驚かされました。街中でも足やボディの変化は実感できましたが、その効果は速度域が上がるにしたがってさらに大きく感じる事ができます。

具体的に言うと、まずはリアの落ち着きと踏ん張り感の向上。エコタイア専用スペシャルのアスペックを履くのでグリップの限界値は知れていますが、そこに至るまでのクルマ全体の挙動の穏やかさは、高速域で間違いなくドライビングする安心感へとつながっています。リアがしっかりとした事でフロントが逃げる…ということはなく、その分はっきりとロールは以前よりも大きくなってはいますが、むしろしっかりと舵を効かせて自信を持って高速コーナーをクリアする事ができるようになっています。もちろんそんな気合いを入れる領域だけでなく、ボディ補強やサスのリセッティングとダンパー減衰見直しなどにより直進性自体も大幅に改善されており、それこそ巡航速度で車線変更をする…そんな何気ない動きだけでも、しっかり感としなやかさを高次元にバランスした今回のデミオの足の良さを実感できるでしょう。



そしてもう1つは静粛性。進化著しいこのクラスにあって、デミオはこの速度域での静かさレベルは「並」。いや、むしろ弱点だったかもしれません。しかしこれも一般道インプレッションで書いた通り劇的改善。軽量化との兼ね合いの中でよくぞここまで頑張った!といった印象。ライバルと比べると、フィットハイブリッドやスイフトには少し劣るくらいのレベルで静かになったといえるでしょう。また、空力性能向上のため装着された床下のアンダーカバーのおかげで、特にリア付近からのロードノイズがグッと減ったのも副産物的効果。恐らくは雨の日などで水しぶきの巻き上げ音なども減少していることかと思います。ただ砂利道などでは、反面石がパチパチと当たる音が逆に目立ったりする事も。

こうなってくると残念に思えるのは、電動パワステの嫌な部分を払拭しきれていないステアリングフィール。ステアレシオ自体はクイックですが、こういった高速域ではもう少し操舵が重めで、また中立付近や微舵をいれた時のリニアさが欲しいところ。また、リアのどっしり感が増した事は記しましたが、あくまでも限界域に達するまでの挙動が穏やかになったというだけで、例えばリア荷重が抜け気味になる急制動時に直進性が失われるくらいにリアがフワッとしてしまうところまでは改善しきれていませんでした。もっとも、このグレードなら今はDSCが装着されているので安心ではありますが。



さて動力性能の方ですが、街中では十二分の性能を披露してくれた1.3Lスカイアクティブエンジン。しかし徐々に速度が上がってくると、1298ccという少なめの排気量などの影響もあってか、低~中速域でのトルクの薄さとレスポンスの悪さを感じる事がしばしば。これは、アクセル開度が少なくなると即ギア比を燃費最優先の巡航モードに切り替えて低回転を維持しようとするCVTのセッティングも影響しているかもしれません。シフトノブにはSSモードを選択するスイッチがあり(エコカーと言えども、マツダらしいですね)これを押すとアクセルに対する反応がさらにスピーディになりますが、これだと回転だけ先に上がってその後に速度が追いつく…というようなちょっと古臭いCVTのようなフィーリングが助長されます。むしろアクセルに対する反応をよりリニアで穏やかにするエコモードがあってもいいのでは、とも思ったり。また自論になりますが、アクセラ1.5LのCVTがとてもいい出来だったので、贅沢ながらCVTにマニュアルモードがあればなぁ…と考えてしまいます。

しかしそれらをあまり気にせず、アクセル全開でちょうど5300回転あたりをキープしながら加速していくと、絶対的パワーでは大した事ないものの、それにも関わらずゆっくりでありながら、かなりの速度域になっても確実にじわじわと速度が伸び、メーター上で確認できた最高速は結構なもの。これだけ出れば十分実用的。このあたり、特に100km/h以上では確実に空力性能向上パーツによる効果が実感できます。強烈な横風吹き荒れる伊勢湾岸道で、周りのクルマについていきかなりのハイスピードクルージングができた事がその実力を物語っています。またそういった速度域でも、ソフト気味の足は接地性を失わず、乗り心地もあくまで快適に保てているのはお見事。

1つ気になったのがノイズ。これはスカイアクティブエンジンによるものかどうかは分からないのですが、静粛性がかなりレベルが高い中、ちょうど2000~3000回転付近の巡航状態での常用回転域で、ちょうど蝉の鳴き声のような「ジィー」といったような音が耳で確認できました。路面状態に関わらず発生し、またアクセルを少し開け気味にして3000回転を超えると消えたので、ちょっとこれは気になったポイント。今のところ他の試乗記などでは指摘されてはいませんが、一応報告としてここに記しておきます。



さて、続いてはワインディングロード。表六甲・裏六甲を始めとして、六甲山周辺のドライブウェイ・ワインディングスポットを徹底的に走り込み。エコカーであっても、あくまで「カー」とついているならば、走りの性能もおろそかにしてはいけません。

ここでも、足回りの改良による懐の深さを実感。まるでサスストロークの容量が大幅にアップしたかのように感じるその挙動変化の分かりやすさと落ち着いた挙動は、本当に旧デミオと全くキャラクターが変わっています。じわっじわっとロールは進行し、できるだけ大きな挙動変化を起こさずに、次のコーナーへと上手くヨー変化をつなげていく…そうするとi-DMでブルーレベルを維持しながらワインディングを駆け抜けていく事ができます。ただペースを上げていくと、純正14インチサイズのアスペックの、特に横方向に関してグリップレベルが物足りなくなってきます。その軽快なフットワークに対して、入力が大きくなると結構いとも簡単にズルッとテールアウト気味になるので注意。もっとも、そういった際に介入するDSCの制御はとても自然で、走りを極端に邪魔しない設定となっています。是非、これならベースモデルにも拡大設定を。

こういった場面でもう少し…というなら、もう少しグリップ志向の違うタイア銘柄か、もしくはエコ銘柄のまま1サイズインチアップしてみるというセットアップもアリかもしれません。もっとも、このタイアを最大限生かしながらスリップアングルをつけずに上手く走っていく…というのも、これはこれで頭を使いながらドライビングを楽しむ事ができるというのが、このスカイアクティブ本来の狙いなのかも。



…と少し奥歯に物が挟まったような言い方になってしまいましたが、はっきり言って、こういったワインディングのようなステージでは、圧倒的に楽しめるのは旧デミオのほう。固められた足はロールが少なく、そこからステアリングの反応は実にシャープで、コーナーをパキンパキンと駆け抜けていけるこの爽快さと軽快感は、まさにFFのロードスターとも言いたくなる本当に楽しい出来。総合的には新型の方が自動車としての完成度は高い…のですが、それらは旧デミオの良さを全て受け継いで…というわけではなく、交差点を1つ曲がっただけである程度こういったクルマ好きにビビビっと(笑)響く部分は少し薄まってはいます。もっとも、こんな事まで気にする人間は、ごくごく一部でしょうが…。

では、スカイアクティブのワインディング路での注目は…?それは燃費。今回のロングランで、いわゆる専門的知識を持たずに、普通の人がこのスカイアクティブに接したところで得られる分かりやすいメリットは?という事を探っていましたが、その1つとして「アクセル開度が大きい場面でも燃費の悪化率が低い」という事が挙げられます。

他のエコカー、いわゆるハイブリッド系は、あるスポットにハマると本当に驚くほど燃費が伸びますが、逆に言えばそのスポットから外れてしまうと期待通りの燃費数値は望めません。また、順調に数値を伸ばしていても、例えば登りのワインディングでエンジンを回し気味にすると途端に…といったように。



しかしながらスカイアクティブデミオは、そういったワインディングでも悪化の幅が最小限で済んでいる印象でした。画像は中間地点、高速ハイペース走行からワインディング全開走りを終えて400kmを超えた時点での燃費。状況下からして真夏でありながらこの数値をキープしているのは、立派という一言に他なりません。

現状で「スカイアクティブが思ってた以上に燃費が伸びない…」という評判を聞くのは、おそらく街中オンリーでの使用の場合でしょう。確かにこういった条件では、以前と比べればはるかにi-stopの時間は長くなりましたが、薄めの低速トルクと、それを補うべくしてアクセルに対して反応のいいCVTのセッティングが災いし、12~13km/L台という数値も見られます。しかしながら、販売時期が夏場である事も考慮して、おそらくはこれが今回スカイアクティブの実用燃費の底値でしょう。

ざっと計算したところで、街中では~15km/L、少しペースが上がってくると20km/L台にすぐ突入し、流れのいい郊外の道路や高速域では23~24km/Lに迫る事だって比較的容易。一度エアコンOFF&真剣80km/hキープエコランを行い、燃費計で29.2km/Lまで確認もできましたが、少し非現実的すぎるので割愛。しかしながら真夏でこの結果ですから、やろうと思えば相当に伸びる…HVに慣れた基準ではその分衝撃は緩和されるのかもしれませんが、やはり純粋なレシプロエンジン搭載車としての燃費はかつて体験した事のないほどズバ抜けていい、そう評価していいと思います。もちろん、一番使われるパターンが多いであろう街中のストップ&ゴーが続く状態での一般燃費の向上も課題。そこは、スカイアクティブドライブの6速ATが出れば、もう少し改善できそう…?

それよりもやはり気になったのが、航続距離の問題。アンダーカバーを装着するために新規で起こしたガソリンタンクの容量は、ベース車-7Lの35L。イマドキ軽自動車レベルのこのタンク容量。しかもデジタル表示のガソリン計表示は8分割表示。実際20km/L近い数値をキープしていたものの、560kmを過ぎたあたりで残り1目盛りで警告灯が点灯。やはり7L分の減少は惜しいと言わざるを得ません。精神的にも落ち着きがなくなるので、この時点で給油。給油量は29Lだったので、燃費計数値は少し甘めでしたが、まぁ誤差で許容できる範囲と言えるでしょう。

例えば同条件で比較して、満タン状態から残り7Lを余らす状態まで走ったとしましょう。スカイアクティブは消費28L、20km/Lで計算すると巡航距離560km、同条件でノーマルモデルの13C-Vの燃費を15km/Lだったとすると、消費は35Lと考えると巡航距離525km。5km/L違いというのは大雑把な目安ではありますが、日常域で互いの燃費の差がさらに近付くとなれば、おそらく実際にオーナーになってみても、給油頻度は大きく変わらないのでは。もちろん1回あたりの支払額は給油量が少ない分安く済みますが、ガソリンスタンドに寄る頻度があまり変わらない…というのは、燃費のいいクルマに乗っているという感覚があまりなくなるような気がします。

ここが今回事前にも気になっていて、いざ実際乗ってみてもやっぱり引っかかった部分。燃費を叩き出すために空力性能を重視、そのために減らされた燃料タンク、でも1トンを超えてしまった車重、しかしながら残されたスペアタイア……社長の鶴の一声で、マイナーチェンジでスカイアクティブを搭載するというその判断の、綻びが見える部分です。もちろん、開発者の方々の努力の跡は運転していると隅々で実感。しかしながら、もともとの土台に無理があったのも事実でしょう。



しかしながら、そういった部分から目を逸らして、このセグメントのデミオとしての価値を考えると、実に有用なマイナーチェンジだったと言えます。圧倒的に変わってよくなったボディ、足回り、それを含めた走りのセッティング、高速域での安定性…クルマ自体が1ランク車格アップしたような仕上がりは、本当に見事。スカイアクティブは当然目玉商品ではありますが、あくまでもマイナーチェンジで追加された1グレード…くらいの心持が、ちょうどいいのかもしれません。

ということで、機会ありましたら、また「非」スカイアクティブの素4AT仕様やスポルトなど試して、この新世代デミオの可能性を見ていけたら……そしてもちろん、スカイ搭載の新型アクセラや、フルスカイ仕様となるCX-5なども、登場したら是非またテストしてみたいと思っています。



最後に、最終燃費報告。給油後はさらに燃費を気にせず積極的に走り、i-DM判定で2点台という低評価(笑)を出しつつ、最終的に855km走行した後の燃費がご覧の表示。実測は18.58km/Lでした。総合的にはフィットHVに若干追い付かず、しかしながらそれを除けば断トツにいい、というところでしょう。


Posted at 2011/09/03 23:11:09 | コメント(4) | トラックバック(0) | 日記

プロフィール

「明日は恒例のメディア対抗ロードスター4時間耐久レース。今年も64号車の監督やります。前日準備は洗車機の中のような豪雨。さて明日は??(^_^;)」
何シテル?   08/31 19:12
幼い頃から、車が大好きでした。 その気持ち変わらず、今も純粋に、自分なりに日々世の中に新しく生まれるクルマ、そのクルマを取り巻く事情や環境、ドライビン...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2011/9 >>

    12 3
45678910
11121314151617
18 192021222324
252627282930 

リンク・クリップ

軽井沢MTG2024参加しました 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2024/05/27 21:07:08

愛車一覧

スバル レガシィB4 スバル レガシィB4
シビックタイプR(EP3)からの乗り換えです。 VTECから乗り換えるので、エンジンに ...
ホンダ シビックタイプR ホンダ シビックタイプR
国内外様々な車種100台以上を試し乗り、いざ自分で何を買えばいいのか分からぬ状態…で、辿 ...

過去のブログ

2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2011年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2010年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation