
さて、2012年最初の試乗レポートは、予告しました通りスズキの新型スイフトスポーツ。
前回のTMSで実車はすでにチェックし、さらに本気で愛車筆頭候補となっているのですが、できるだけそのあたりの私情を取り除いて冷静に…と思って進めていきます(笑)。
ノーマルモデルを1000kmロングランした時から、これベースのスイフトスポーツには期待大。その時はちょうど欧州仕様の画像が公開された頃、振り返ってみると…「できれば200万円以下、180万円なら万々歳!」っと書いていましたが、蓋を開けてみると、なんとびっくり価格は6MTで168万円。先代よりプラス15~20万円くらいを予想していたので、内容の充実度を考えればまさに嬉しいサプライズ。まさか諸経費コミコミで200万円に収まるとは…。
さて、今回は登場直後という事で、ご近所のスズキさんにて試乗。ちなみに試乗したのは昨年末の販売直後で、大阪府内に試乗車はまだ2台だけ。自分は平日に行ったのですがそれでもかなりの待ちが。最初の週末は、大阪に留まらず、奈良・滋賀・兵庫からのお客さんもいたのだとか!注目度の高さが伺えます。ここのお店は、街中メインの試乗コースとは違い、スイフトスポーツ専用にスピードアベレージの高いコースを設定していてくれたのは有難かったです。またCVTモデルの販売が少し遅い事もあって、最初のデビューフェアでの試乗車が自然と全て6MTモデルになる、というのも好都合でした。
テスト車はメインカラーでもあるチャンピオンイエロー4。初代からイエローのイメージが強いので新型にも引き続き採用…なんて簡単な話ではなく、実はこれ先代のイエローと製造工程も違ってかなり手間暇かかっている専用色。さらに言えば、これは国内仕様のみに設定される色であり、ハンガリー工場で生産される欧州向け左ハンドル仕様には設定なし。これだけのこだわりがありながら、キザシと同じプレミアムシルバーはオプションだというのに、このチャンピオンイエローはなぜか不思議な事に無償設定!これは素直に日本人として喜ばしい事ですね。反対に、さらにスポーティな3ドア仕様は日本では生産されず、ハンガリー工場での生産分のみ。つまりは導入するなら逆輸入車という形になって、価格も跳ね上がる…?イエローを取るか、3ドアを取るか、といったところでしょう。
さて、早速試乗開始。ドアを開けてシートに座り、ポジション合わせ。あくまで実用車なのでアイポイントの高さは仕方ありませんが、テレスコの調整量の大きさのおかげでアップライト気味ながらキチッとポジションは決まります。RECARO製シートの設定はなくなってしまいましたが、純正のバケット形状のスポーツシートもホールド性はなかなか。もちろん、不満のある方は、ヒップポイントを下げる意味を含めてシートレールと一緒にバケットシートに交換するのもアリでしょう。唯一、何故かサイド&カーテンエアバッグが省かれてしまったのだけが残念。欧州仕様では当然の如く標準なのですが…レカロ非設定含めて、少しでも値段を抑えたかったため…?ちなみにメーカーOPも純正HIDヘッドライト+オートライトのみ。生産枠を限りなく絞り込んでいます。もっとも、それ以外はほとんどフル装備。あとは個人的に好みのオーディオかナビを装着すれば、装備内容に不満は全くありません。
ピッチがひとまわり多く太めのスポーツ専用ステアリングは握りやすく、先代のようにやたら革の分割線が多くてうるさい印象もありません。あとは大きく違うのがメーター。針が赤→白へと変更。数字表示が全て水平になったのは視認性が良くて◎。むしろこれが普通。ベースモデルの改善を望みます。問題と言えば、フルスケール240km/hなのはいいものの、速度の刻みが30km/hずつとかなりアバウト。よって、街乗り領域では針がほとんど動きません。一応100km/h付近に簡単な目印がありますが、つけるならもっと目立たせるか、中央のインフォメーションモニターに速度のデジタル表示があってもよかったかも。オーナーの方は、特に40km/h制限の道でのスピードオーバーに要注意です。
クラッチをいっぱい踏み込み、プッシュボタンを押してエンジンスタート。この時点で感じるのは、ちょっと驚くレベルの静粛性の高さ。エンジンがかかっているかいないか分からないくらい。室内の遮音性が優れている事はもちろんの事、外で確認してみると、エンジン音自体が静か。派手な見た目のマフラーながら、排気音もとても静か。クルマ自体はとっても高級感のある大人の仕上がり。…ただスポーティモデル、ホットハッチと考えると、物足りないと感じる人が多いかもしれません。個人的にも、せめて吸排気系だけはちょっと手を入れたいかな…という印象でした。もちろん、そのあたりのアフターパーツはこれからどんどんと出てくるでしょう。
ポジションはきっちり決まるものの、1速位置がやや遠目かな?と感じつつ、クラッチミート。つながるポイントはやや近めながら、クラッチは軽めで操作性はとてもイージー。シフトフィールはワイヤー式のFF車としてはしっかりと煮詰められている印象。さすがに86と比べてしまうと分が悪くなりますが、ちょうど同じテンロクとなるルノーウィンドのシフトフィールと比べればいい勝負。個人的にはもう少し各ギアにしっかりとコクッと決まる印象が欲しいので、あえてシフトノブをもう少し重めのものに交換してみるのもいいかな?とも思ったり。バックギアは誤作動防止のリンケージを引っ張るとスッと入ります。
さて、動き出してからも静粛性の高さの印象はそのまま。195/45R17のタイアを履くので、速度アベレージが上がってくるとさすがにロードノイズはベース車よりも大きめ。ただそれ以外では本当に1.2Lモデルと大差ない、むしろ静かなくらい?に感じました。次に驚かされるのが、乗り心地の上質さ。確実にバネレートもハードセッティングで固めではあるのですが、市街地での荒れた路面でも、揺さぶられるような事もなく全く不快感なし。これはやはり微領域の初期入力からキチッと減衰力を発生させ足をしっかり動かしてくれるモンロー性のショックによる効果でしょう。ボディ剛性やフロア剛性も非常にガッシリしており、このクラスでは完全にオーバースペック気味にも思える17インチ45タイアを持て余す事なく履きこなし、全く飛ばしていないこの速度域からしっかりと足が動いてしなやかささえ感じさせてくれる…しかもまだ走行200kmチョイのほぼ卸したての状態で。このあたりの質感の高さは同セグメントでは断トツ、200万円以下の国産車と範囲を広げても確実にトップレベルと言っていいでしょう。ただ、逆に良すぎてスポーツとしては物足りん!と感じる人もいるかもしれません。
ステアリングフィールは、電動パワステの嫌なフィーリングもなく、タイアが太くなっていても低速時での素早い切り返しなどでアシスト遅れする事もなし。動き出しからすでにズシっと重いフィーリングが印象的だった先代から比べればスッキリと軽く、かつ速度が上がってくれば適度な重みになってくれます。直進性は良好、ややセンター付近からの舵を入れる際の反応が甘めにも感じますが、これでも低速時では、ワンダリングなどでややステアリングがとられやすい傾向があるので、このあたりがいい落とし所なのかもしれません。
1.6LのDOHCエンジンは、パワー&トルクともに向上し発生ポイントも下がっていますが、吹けがとてもスムーズで静粛性も優れており、荒々しく獰猛な印象は影を潜めてむしろ大人しくなった印象。もっとも、トルク感の向上は明らかで、飛ばしシフトもラクラク。3000回転以下でもスルスルっと街中のペースに合わせられ、扱いにくい印象は全くありません。この走行距離で上まで回すのにはためらいがありましたが、同乗の営業さん曰く最初の週末でもう皆さんガンガン回したい放題状態だった(苦笑)とのことで、どうぞ楽しんでください、っと。
というわけで少し失礼しましてそこから躊躇なく踏み込まさせてもらうと、4500回転付近からようやくスポーティなサウンドが「囁いて」、そのままスムーズさを保ってレブミリットの7200回転へ。頭打ち感はなくパワーはしっかり詰まっている印象ですが、高回転での圧倒的なパンチ力があるわけでもないので、間違っても可変バルタイ&リフトを備えたテンロクVTECなどとは比べてはいけません。もっとも、現代基準で排ガスや燃費の事も考えると、パワー含めてこのあたりが限度なのかも。スポーツユニットかどうかと言われれば?ではありますが、下からとてもフラットで扱いやすいエンジンとも言えます。当たり前ですが「フィールはいいけどライバルと比べると圧倒的に遅い」1.2Lモデルとは比べ物にならないくらいパワフルである事は間違いありません。
スイスポユーザーにしてみれば、まさに待望の「6速MT」。思えば先代のⅠ型では1~2速が離れすぎ、Ⅱ型以降はそれを改善すべくレブリミットが6800→7500回転へ、1速が2速側に近づいてそれに合わせファイナルも下げられてつながりの良さを改善したものの、それにより高速巡航で回転上がりすぎ…といった不満を、6速ギア採用でついに解消へ。とは言うものの、先代よりもクロスになった…というような印象はなく、むしろ巡航状態での改善幅が大きいかな?といった印象。1速で約55km/h、2速吹け切りでちょうど100km/h付近。この時点で6速へ入れると、だいたい2700回転付近。2~3~4速はもっと加速重視のギア振りでもよかったかなぁと思いましたが、100km/h巡航で3000回転以上楽々回っていた先代よりは、高速走行での快適性も燃費もかなり改善している事と思います。ちなみにエンジン特性の関係もあり、6速は60km/h付近でも楽々入れる事ができるので、一般道でも使える頻度はかなりありそうです。
他にも、タッチ・効きともに十分なブレーキ、ちょっとクイックな車線変更をしてもしっかりとしたリアのスタビリティの高さ、操舵中のアクセルONでもLSDが入っていないのにフロント内輪側のトラクションが抜けにくい接地性の高さ…などなど確認できましたが、あくまで街乗り+αの領域で30分ほどの試乗だったので、細かい事まではしっかりと判断できず。難しいかもしれませんが、できれば500kmくらい色々なステージで試してみたいなぁ…と思います。
さて結論。はっきり言いまして、分かりやすいスポーティさやキビキビとした軽快な動きなら、先代スイフトスポーツの方が上。もっとスピード域が上がらない限り、日本国内のワインディングなら、より積極的な荷重移動による動かし易さを感じる先代の方が楽しいかもしれません。先代ユーザーが新型に試乗して「なんだか物足りない…これなら今のでいいや」っと思う方が多いというのも頷けます。これは邪道かもしれませんが、新型の足とボディで、XS・RS用の185/55R16にインチダウンしてしまう方向でのセットアップもアリかもしれません。静かすぎるくらいの静粛性の高さに洗練された足、新型は「スイフトスポーツ」というよりも、より上級な「スイフトプレミアム」とでも言うような、そんなキャラクターも持ち合わせています。直噴ターボやDCTなどで武装する欧州ライバル勢からすれば、スイスポはある意味で旧来技術の集大成的存在。この足とボディなら、LSDを入れればはっきり言ってもう+50psくらいあっても十分問題なく対応できそうな雰囲気を感じます。そこは、アフターパーツの充実や、モンスタースイスポの登場を待つばかり…?
とかなんとか言いつつ、私情を挟むなら、実はこの一見大人しく感じてしまいそうな洗練された味付けと全体のコンセプトや走りのキャラクターの方向展開は、個人的に好みでまさにドンピシャな存在。先代のスイフトスポーツも今でも魅力的で好きな1台ではありますが、新型を見てしまった今、あらゆる点でこちらの方が優れているようにしか思えなくなってしまいました。先代ポロGTIやルポGTIの中古相場を確認している自分としては、この「ホットハッチ」というよりも「プレミアムスポーティハッチ」的な仕上がりは大歓迎。物足りなければ、これを素材にまた仕上げていくのも良し。感じ方は人それぞれでも、走りのポテンシャル自体が向上している事に間違いありません。乗った事がないので分かりませんが、サイズ的にも、初代ゴルフGTIってこんな感じだったのでは?なんて思ってみたり。そんなキャラの被るクルマたちのメーカーと、スズキが今や劣悪な関係というのが、なんだか皮肉っぽいですが…。
というわけで、見積もりまで取って、実は真剣に検討中。とりあえずHIDは装着して、ボディカラーはブラックか、いやいやここはやっぱりイエローか…。見た目すっきりな純正オーディオは意外に高いので、これならPND追加ではなくていっそ2DINのメモリーナビを付けてしまおうか…などなどと妄想しています。実際にプロトタイプに乗ってこちらもかなり惚れてしまったトヨタの86は、エアコンレスのレースベースで199万円はいいとして、標準モデルが241万円、上級モデルが279万円、最上級GTリミテッドは297万円…と、予想より+20万円くらいだったこと、スイスポより装備を揃えるとやっぱり約100万プラスになってしまう事を考えると…やはりビギナーな自分に、まだ86&BRZは贅沢かなぁ、という結論に至る気配濃厚です。
でもまぁ、まだ本当に購入するまでは、いくらか時間がありまして。その間にスイスポがⅡ型へと移行、サイドエアバック標準化&アイドリングストップ装備で175万円…なんて事になるのを願いつつ、今回のスイフトスポーツ試乗レポートを終わりにしたいと思います。
Posted at 2012/01/14 22:03:10 | |
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