ステーションワゴンについて振り返ってみました。
文献や個人研究の結果、
自分の生きていない時代の記述もあります。
色々間違いがあるかもしれませんがあしからず。
●ワゴンブーム到来以前
モータリゼーションが加速した1960年代以前、
街角で見かける車といえばタクシーやハイヤー、
社用車やライトバン、トラックだった。
写真のように、乗用車=格調高いセダン=個人所有は憧れ
当時の日本人は乗用車に憧れを抱きながらも、
仕事に使うためにコロナラインの様なライトバンを買い求め、
平日はビジネスに、休日はレジャーに使用していたらしい。

この写真は当時のカローラバンのカタログだが、
バンとセダンで装備品の違いはほとんど無く、ワゴン感覚。
セダンベースのライトバンはベース車と
装備品はほとんど変わらず、高級感があったし、
荷室のユーティリティを遊びに使えることを精一杯アピールしていた。
とはいえ、我々の祖先はセダン(乗用登録)こそがステータス、
憧れの象徴であり、生活臭のするライトバンを敬遠する心理状態が
大多数を占めていたようである。
当時の自動車のお手本であった米国では既にステーションワゴンは
人気のボディタイプとなっていたことを反映して
国産メーカーもライトバンを豪華に仕立てた
ワゴンボディを設定したが、あくまでも人々の憧れはセダンであった。
1960年代、欧州ではバックドアを持つハッチバックが発明され、
日本でもこの流れに沿ったモデルが登場したものの、
バックドアつき=ライトバン、と言われてしまい、ヒットすることはなかった。
1970年代に入る頃にはわが国のステーションワゴンは
徐々に日陰者扱いにされていき、ワクワクする新技術は
よりセダンやパーソナルカーとしての資質を磨いたクーペ、HTに投入され、
ワゴンはなんだかオジサン臭いバリエーションになっていった。
一方で破竹の勢いで伸びた輸出仕様ではステーションワゴンが求められることから、
バンベースで装備をかなり豪華にしたワゴンが設定されていた。
1970年代中期にはトヨタがカローラクーペを
ベースとしたリフトバックというバリエーションを追加した。
これは、クーペをベースにルーフを延長、リアデッキを拡大し、
大型のバックドアを取り付けたもので、スポーティなクーペを
ベースに若者向けのお洒落で遊べる車を目指して開発されたものである。
その低重心なスタイリングと包容力のあるユーティリティは
シューティングブレークの先駆けともいえるものだったが、
わが国ではまたしても「バンみたい」とそっぽを向かれてしまい、
海外では成功したものの、国内ではさっぱりという状況であった。
1980年代に差し掛かるごろになると、同じくクーペをベースとしながら、
Rrドアを追加し、流麗なバックドアをつけたサニーカリフォルニアがヒットしたりもした。
●ステーションワゴンブーム到来
1990年ごろまで、徐々にステーションワゴンは遊べる車として浸透しつつあり、
サニーカリフォルニアやスプリンターカリブの様にバンボディを持たない
ステーションワゴンと平行して従来どおりのライトバンを豪華にした
ステーションワゴンも販売されていた。
このステーションワゴンが一躍脚光を浴びたのは1989年のスバルレガシィが発端だった。
事実上の先代モデルであるレオーネと違い、乗用車ボディのみで商用車臭さがなく、
シンメトリーAWDと水平対抗4気筒ターボエンジンが持つ圧倒的な走りが
「普通の車」に飽き始めていたユーザーの心に響き大ヒット。
大メーカーが提案してきたヒエラルキーに従わないクラスレスな魅力が新しく、
カローラ→コロナ→マークII→クラウンという従来のヒエラルキーは
分かりやすい一方で、そこからはみ出したいと言う心境を人々に植え付ける事に成功した。
そんな中、ステーションワゴンのレガシィやクロスカントリーのパジェロと言った
名作が「レクレーショナル・ヴィークル=RV」としてブームになり、
ステーションワゴンは一気に市民権を得ることとなった。
もはやRVという言葉も残っていないが、
当時は「RVこそが新時代のファミリーカー」ともてはやされた。
面白いのはこのブームに乗って
従来同様のバンベースのステーションワゴンも一緒に売れたということだ。
1995年にフルモデルチェンジしたカローラは、バブル崩壊の反動で
商品性が下がり、セダンもクーペも売れ行きが思わしくない中で、
フルモデルチェンジされずに残置されたステーションワゴンが若者を中心に
大ヒットするといった現象もあった。
1990年代からのRVブームで乗用車の中心はセダン・ハードトップやクーペから
ユーティリティ重視のRV(ステーションワゴン、ミニバン、クロカン)に移ってゆく。
●現代のステーションワゴン
90年代、ステーションワゴンは今までのようなセダンの代わり型ではなく、
メインの車型のひとつとして数えられるようになった。
セダンに飽きた層、若者層を中心にワゴンは一世を風靡した。
私自身も、何回か友人が所有するステーションワゴンを借りて出かけたことがあるが、
ユーティリティの高さに惚れ惚れするようなシーンがあった。
週末にまとめ買い、DIY、週休5日制でレジャーの機会が拡大・・・・
我々のライフスタイルが変わってきたからこそ、
このような車が真価を発揮するようになってきたともいえる。
ところが90年代の終わり頃からは、
ユーティリティを求めるファミリー層はミニバンやミニミニバンに移り、
若者層はコンパクトハッチバックに徐々にスイッチすることとなった。
販売サイドも一年車検のライトバン代わりに
二年車検のステーションワゴンを売る動きが加速された。
結果として、何年もかかってライトバンイメージを払拭したにも関わらず、
ステーションワゴンは再びライトバンの代替物へと変貌してしまった。
2013年の現代となっては、例えばトヨタのラインナップでは
プロボックス/サクシード、カローラ・フィールダー、プリウスα、
アベンシス、マークXZioだけになってしまった。
ただ、どうやら欧州ではステーションワゴン流行の兆しがあるらしく、
オーリスやシビックにステーションワゴンが追加されるという。
●まとめ
かなり乱暴にステーションワゴンという車型を振り返った。
かつてのセダンのお供え物だった事と比べると、
現代はDセグ以下ではむしろセダンこそが
ステーションワゴンのお供え物のような状況になりつつあり、時代の移り変わりを感じる。
個人的にはこの流れは1990年ごろに潮目が変わったように思う。
あの時代こそが私があこがれた旧き良き時代との分水嶺だったのかもしれない。
(もちろん今の車も大好きだが)
わが国や欧米もセダンからステーションワゴン、そこからミニバンに発展したが、
ミニバンの腰高な走りや燃費の悪さから、再びステーションワゴンが
見直される動きも十分ありうると思う。
そこで次回、私は重要なターニングポイントとなった
1990年ごろのステーションワゴンに乗ってみたいと思う。
今回はそこまでの予習。