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2021年06月14日

2020年式BMW320d xDrive M Sport感想文

2020年式BMW320d xDrive M Sport感想文
レビュー情報
メーカー/モデル名 BMW / 3シリーズ セダン 320d xドライブ Mスポーツ_RHD_4WD(AT_2.0) (2019年)
乗車人数 2人
使用目的 レジャー
乗車形式 試乗
総合評価
おすすめ度
4
満足している点 1.中心的なプレミアムブランドの立ち位置を堅持
2.大型キドニーグリルも成立させたFrマスク
3.ディーゼルとは思えない走り
4.路面変化にも強いロードノイズ性能


不満な点 1.街乗りで不便に感じる最小回転半径5.7m
2.ランフラットタイヤがもたらす突き上げ
3.TFT液晶のタコ表示(好みの問題)
4.車線維持装置の反力の強さ


総評


友人が長年保有していたボルボV40からBMW3シリーズへ買い替えを果たした。8年前、前保有のV40を検討していた当時、一緒にAクラスや1シリーズに試乗し、私は別で個人的にCTにも試乗することでプレミアムブランドのエントリーモデルを横並びで堪能するいい経験が出来た。当時は各社が特徴を出しながら、プレミアムブランドに興味がある層を吸引しようと魅力的な新商品が多く出た時期であった。

かつて国産高級車と輸入車の間には価格帯に大きな隔たりがあったが、輸入ブランド側が大いに国産車に歩み寄ることで今まで上級国産車を選んでいた層が輸入ブランドにチャレンジしたくなる契機のようなモデルが多くデビューした時代である。そのセグメントもいまやFFが当たり前となり、各社がクルマの個性というよりコネクテッドやらエモーショナルデザインに傾倒していく昨今、たっくる氏は(メーカーの思惑通りに?)ステップアップを決断。品質とアフターサービスに重大な懸念があったブランドからの乗換えに至ったというわけだ。

BMW3シリーズは言わずと知れたかつてのエントリーモデルである。現代の5シリーズの祖先となる1500(ノイエクラッセと呼ばれた)の縮小版である02シリーズが源流である。




そういえば小学校の時に、オレンジの02に乗っていた先生が居たので今でもマルニを思い浮かべるとオレンジ色をしている。(そう言えばあの麻生元総理大臣も若い頃はマルニに乗っていたらしいと雑誌で読んだ)



3シリーズとしては1975年に初めて歴史に登場している。5シリーズをベースとした軽快な2ドアサルーンだったが、1982年の2世代目で4ドアが登場してメルセデスベンツの190Eと共に日本でも大ヒットした。私が通っていた中学校では技術家庭科の先生が若い頃に買った320iをピカピカにして乗っていた。



1990年の3代目はグッと現代的なプロポーションを得つつ、エンジン搭載位置を後ろに引いて運動性能を飛躍的に向上させ、アルテッツァに大きな影響を与えている。



その後も小型スポーツセダンの世界的ベンチマークとして君臨し続けて世界累計販売1500万台を記録したBMWにとっても最重要モデルともいえる3シリーズは2019年のフルモデルチェンジを受けG20型を名乗った。友人が購入したのはG20系の320d_XdriveのM Sportである。

現行型は2019年にデビューし、始祖である02シリーズの様に5シリーズと同じP/Fを使うことになったが、それどころか7シリーズとも同じP/Fであるというから、P/Fのもつ柔軟性は相当に高い。
先代よりも110mmも全長が伸びて軸距は40mm伸びたのは兄貴分に引きずられたとも言える。

スリーサイズは全長4715mm、全幅1825mm、全高1440mm、軸距2850mmという立派なものになった。最大の競合車といえるメルセデスベンツC200は全長4690mm、全幅1810mm、全高1425mm、軸距2840mmと少々BMW3シリーズよりコンパクトだ。いまの日本で似たサイズを探すならレクサスISが挙げられる。4710mm×1840mm×1435mm、2800mmと非常によく似た諸元であるが、これは競合車なのである意味当然である。自分にとって分かり易い比較対象はやはりプログレとなるのだが、プログレは4500mm×1700mm×1435mm、2780mmだから、較べれば215mm長く、125mm広く、5mm高く、70mm長い。完全に格上の車である。(当たり前だろ)

駐車場でねっとりと車を見せてもらったが、さすがプレミアムカーと思うのはボディの素材にアルミが惜しみなく使われていることだ。例えばフードはプレスによって作られたアルミフードで、サスタワーはアルミダイカスト製だ。後者はリブが配置されており剛性を高めている。



アルミは高価な材料なのだが惜しみなく各部に活用されている。エンコパ内を見ているとエッジ部のシーラーがふんだんに塗りたくられており、さらに塗装は艶々のアルピンホワイト。「高級車だからメンテナンスはディーラー任せ、どうせエンジンルームなんて見ないから、上塗りは不要、無駄なところにお金をかけるのはお客様に失礼」的な小賢しい屁理屈を並べ立てる事無く、愚直に積み上げる防錆に対する意識の高さ、長く使おうとするユーザーの期待を裏切らない姿勢はまさしくプレミアムブランドに相応しいもので感銘を受けた。

ボディスタイルはBMWである事は主張するが、適度な範囲に収まっているのは好ましい。ボディサイズが大きくなったこともあり、室内空間に不満な点は無い。大きなセンタートンネルを必要とするFRであることを意識させない広さだ。なにもミニバンやSUVを買わずとも家族三人でお出かけすることも十二分に対応可能な実用性がある。走らせるとボディサイズの大きさにより持て余すかと思いきや、不思議なことにワインディングではその時だけ車体が縮んだかのような扱い易さを見せてくれる。少々、ステアリングアシストの力が強すぎたりして工事で片側通行の道路を走ったときに看板に突っ込みそうになったり、車線維持装置が過敏でかえって疲れてしまったり、まだ運転支援技術とドライバーズセダンとしての立ち位置に埋めなければならないギャップがあったことも事実だが、個別調整により大幅に改善するので大きな欠点になっていない。

更に高速道路ではガッチリした車体の醸し出す安心感を背景にハイペースの走行をしても一切の恐怖感を感じさせない。仮に何か怖いなと思うことがあればブレーキさえ踏めば安全に危険から遠ざかることが出来る。試乗当日は久しぶりに会う友達とドライブを楽しみながら320dと半日を共に過ごした。近況報告や320dの印象などたくさんの話題に富んだ会話の端々で「BMW」という単語が出るたびに、今度は320dのBMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントがすかさず会話に割り込んでくるのを楽しんだ。

自動車業界には徐々にEVシフトの波が迫ってきている。そんな2019年にデビューした3シリーズは5シリーズを基準に7と3を共通P/Fで開発したという。既にエントリーモデルはFF化が完了しているが、3シリーズ以上は商品として古典的なFRセダンを貫かねばならない。ボディサイズ拡大はその影響をもろに受けているが、それでもなんとか3シリーズを3シリーズらしくまとめようとした意思を感じた。3シリーズが他ブランドよりも有利なのは、そもそも古典的なプレミアムセダンのBMCとして君臨しているので自ら立ち位置を探してあれこれと自分探しのたびに出なくてもよいということだ。制約はあれどもとにかくBMW自身が信じる自らの立ち位置から動く事無く駆け抜ける歓びを体現するセダンを作ればよい。このクラスのセダンは何となく「スポーティ」を売りにしたグレードが前面に立つことも増えており、本来は「走り命」なBMWが本領を発揮するはずだ。私が始めてBMWを運転したのは2003年頃で、同級生のお父さんの宝物のZ3に乗せてもらった。ウエット路面を走っているとは思えないグリップ感、1900ccとは思えない強烈な加速。こういう味わいが今回試乗した320dでもちゃんと感じられた。スポーティを身上とするBMWはしっかり得意としてきた伝統の味を守って商品にしている。こういった永続性こそがプレミアムブランドに必要でころころと売れ筋の商品だけを店頭に並べれば良いというわけではないことをよく理解している。

買ったばかりの車をわざわざ予定を合わせて思いっきり運転させてくれた友人に大感謝。
項目別評価
デザイン
☆☆☆☆☆ 3
●エクステリアデザイン
エクステリアデザインは誰が見てもBMWだと分かるくらいブランドが持つ雰囲気を充分に表現している。最近のBMWのデザインには変革の兆しが見られ、それが私のようなコンサバな私には理解が難しい意匠もある。3シリーズは過剰ともいえるまでの冒険はせず、安定感がありな誰が見てもBMWのセダンといえるまとめ方をしている。



つまりフロントマスクには4灯式ヘッドライトの中央にグリルシャッター備えたキドニーグリルがあり、エンジンフードはストレート6が収まるくらい長く、サイドビューは典型的なセダンスタイルでRrドアの見切り線は一直線でQTRで「く」の字に折れ曲がってキャビンを小さく見せる工夫をしており、リアはセダン好きが喜ぶようにトランクリッドの後端をつまんでセダンらしさを強調し、タイヤの踏ん張り感を強調したいかにも走りそうなプロポーションだ。特にくの字を強調するドアフレームモール形状は今回始めてカットされてボディ側に残るように変更された。デザイナーの視点で部品のつながりを考えればドアにくっついていて欲しいところだが、ここがドアについてしまうとドアを開けた際にドアハンドルと最大張り出し部の距離が大きすぎて身体にエッジをぶつけてしまう懸念があり意匠と使い勝手を両立する為の対応なのだろう。



BMWは高級乗用車のブランドとして広く認知されており、しかも3シリーズセダンはど真ん中のモデルである。中心的なブランドゆえ、奇を衒う必要は無く直球の意匠で何の問題も無い事こそがフォロワー達に対するに対する強みだ。後発ブランドは常に先行するBMWやメルセデスとの違いが何かを念頭において企画が練られてゆくので、奇を衒ったものになりやすく自滅するリスクも高いのである。試乗したG20系BMW3シリーズは「こんな意匠なら欲しくない」とファンを失望させること無く、纏め上げられている。先代のF20系のフロントマスクの方が個人的にはスタイリッシュだと感じるが少々大味な新型の方がたくましさを感じさせるBMWのイメージからは外れない。また、ボディサイズが大きいのが不思議なことに3シリーズだと分かるのも面白い。繰り返しになるが、セグメントの中心的モデルであるからど真ん中の直球ストレートでデザイン開発が出来るメリットをこの320dは充分生かせている。

試乗車はMスポーツなので標準車と前後バンパー、アルミホイールなどで差別化されている。
320d Mスポーツの場合18吋ホイールが装着されるが、個人的には19吋の意匠よりもきらびやかで好感が持てる。



スポーティなMスポーツ意匠がしっくり来るのは320dに積まれたディーゼルエンジンのガソリン車に遜色の無い性能がもたらす高揚感やスポーツセダンを信条とする3シリーズというキャラクターを考えればMスポーツが魅力的に映ることも当然か。

●インテリアデザイン
インテリアもプレミアムブランドのど真ん中らしい誰かを意識することの無い自身の世界観だ。あくまでも操作性を重視した真円状のステアリングが第一に目に飛びこんでくる。次にフルTFT液晶のスピードメーター、インパネの中央に配置されたディスプレイが鎮座する。センタークラスターは伝統に違わずドライバー席を向いておりドライバーオリエンテッドでスポーティかつハイテクなテーマとなっている。




スピードメーターは独特な左右対称形状で中央にナビ画面や情報ディスプレイが表示のメインで左の速度計と右の回転系も針の動きが左右対称で回転数が上がると反時計回りに指示する事だけは違和感を禁じえない。要するに慣れなのだが、確かにトルクが豊富なディーゼルターボ車ゆえ2000rpm以下で走っている限りさほど目くじらを立てることは無いが、スポーツ走行になって中回転以上を使うシーンでは速度と回転数を見るために視線移動が段々大きくなるが、そもそもドライバーがエンジン回転数を気にする必要が無いという実際の状況を元に判断されているのだろう。ドライブモードをECO_PROに設定すると表示から回転数が消え、燃費計表示になるのだが、エコ走行をしていると表示が太めのステアリングにかかってしまう点も少々残念だった。

フル液晶なのだから、往年の見やすいアナログ速度計風の意匠に操作で切り替えられるような機能を考えてくれても良いと思う。プレミアムブランドなのだからそういうわがままに応えられる準備はしておいて損にはならないはずだ。

BMWのインテリアは長年プレミアムブランドとしては少々質素だというのが定評である。確かに同じドイツの他のプレミアムブランドの内装を見ると、煌びやかで先進的な意匠がセリングポイントになっている例もある。それらと較べるとBMWは洗練されていないという感想を持つのは私も非常によく分かる。例えばサンバイザーが樹脂丸出しでチルテレがマニュアル式であるなど仕様設定に疑問符がつく部分もあるのだが、運転席シートはシート座面の長さ調整が可能で脚の長い人への配慮が心憎いし、運転を邪魔するような難しいギミックは慣れが必要なiDriveくらいで後は意匠的な差別化よりも必要な触感・質感を持ちながら必要な機能を満たすことに専念した内装はスピードメーター以外で奇を衒った部分は無く私は好感が持てた。
走行性能
☆☆☆☆☆ 5
全長も5ナンバーサイズを越える車を運転するのは久しぶりで身構えてしまうが、スタートスイッチを押す。短いクランキングの後2.0L4気筒ツインターボのディーゼルエンジンが目を覚ました。

190ps/4000rpm、40.8kgm/1750-2500rpmという途方も無い実力を秘めたディーゼルエンジンであるとは外からでも分かりにくいほど、特有のカラカラ音が聞こえてこない。

電気式シフトのボタンを押しながら引く動作でDレンジに切り替わり、パーキングブレーキも当たり前の様に電気式となっている。

走り始めてすぐ分かるのは俊敏な発進加速で、湧き上がる鬼トルクをトルコン8ATが連続的に駆動力に変換してDCTに遜色の無い速さでシフトアップされていく。8速もあると普段の走行で何速で走っているのか?なんて考える隙も与えない。

今回の試乗で走ったルートではボディサイズが仇となるような難しい場面は無かったが、ボディサイズの大きさはどうしても感じざるを得ない。勿論、私は過去にもっと車幅の広いSUVも経験しているが、セダンは全長が長く、アイポイントが低い為に市街地の運転のし易さでは彼らに分がある。しかし320dには画質の良い周辺カメラが備わる為、面倒くさがらずにカメラを確認する慎重ささえあれば決して扱いに困ることは無い。ただし最小回転半径は5.7mと大きいため、お世辞にも街中で乗りやすい車とまでは呼べない。この理由は4WDでFrドライブシャフトの角度的制約だけではなく、大径タイヤを履きながら上級車と同じP/Fを使う(左右のFrサイドメンバー間のスパンが広い)という制約も加味されるだろう。

いずれにせよ、市街地での320dは周囲に気を配りながら、車体の四隅を支援デバイスを駆使して操る。ヘンに狭い路地へは迷い込まないというひと工夫を入れておかないと持て余すシーンも出てくるだろう。抜け道を優雅に‘すり抜ける歓び’は楽しめないだろうが、このあたりはサイズ拡大を止めようとしないあらゆる自動車メーカー共通の弱点とも言える。そのことがオーナーの友人にとって致命的かと言えば、車通勤でも無く奥様も車を運転しない条件であるからナーバスになる必要がない。

高速道路に流入した。2000rpmも回らないうちにズバズバと8速ATはシフトアップを繰り返すが、その間トルク切れも感じさせず優雅に100km/h(1400rpm)へ到達。タコメーターの数字を見なければディーゼル車であることを忘れそうになる。カラカラといったディーゼル的なノイズは一切発生しない。自身もディーゼル車を運転する機会が多いがBセグメントゆえ、ディーゼル音が聞こえないというのは嘘になるが320dに限っては本当に分からない。

さっそく最先端の全装備パッケージを試す。緊急時自動ブレーキとアダプティブクルーズコントロールに車線逸脱防止ステアリングアシストを基本とし、渋滞時のハンズオフ運転、狭い路地のバックで重宝するリバースアシストなど至れり尽くせりの安全デバイスが奢られているが、まずはアダプティブクルコンをONにしてクルージングをスタートする。ハンズオフは渋滞時の使用に限られるから一応ステアリングに手をかけて手を添えておけばレーンから外れないように制御されるし、前方との車間距離も充分に確保して同乗者にも気づかれないほどの走りを見せてくれる。‘車任せで駆け抜けてもらう歓び'がそこにはある。運転を楽しみたい人のBMWにこの機能が必要かと問われると、やはり必要であるというのが私の見解だ。ドライバーの体調も常に万全でもないし、あらゆる気分に寄り添える包容力が高級セダンには求められるからだ。

田舎町のICで高速道路から流出して、国道をひた走る。私が大好物の片側1車線で追い越し禁止だが時々登坂車線が現れるような山岳国道である。段々と交通量が減り制限解除になる。その道路を気持ち良いペースで走らせるとき320dは類稀な才能を発揮させ始める。車幅1825mmのボディサイズは私にとって少々持て余し気味でライン取りのマージンの少なさから窮屈に感じるのではないかと考えていたが、面白い事に意のままの走りをしてくれるし、少しもボディサイズが気になることは無かった。大型トラックでも走れるように工夫された道路自体の線形のよさと、意のままの俊敏な操縦性の相乗効果なのだろうか。アクセルオフでコーナーに侵入し、スッと操舵角度が決まれば舵角を維持してコーナー立ち上がりでほんの少しアクセルを踏んでやるだけで大トルクのディーゼルエンジンは低回転に留まりながら粛々と駆動力を出し続けてくれる。8速もあるのでもはや何速に入っているのか意識しようとしても難しいものの、常に適切なギアを選んでくれる信頼できるATだ。

操舵輪と駆動輪が分かれているFRベースの4輪駆動だから、とかそういう方法論抜きに320dは意のままの走りを見せる。段々とアップダウンが厳しくなってきてもビッグトルクの恩恵で登坂車線があるような上り坂でもあたかも平坦路のようだ。




途中で操縦性が堪能できる‘たまらなくツイスティ’な区間に差し掛かる。シートバックに背中が押し付けられるような加速を見せるが決して恐怖感は無い。コーナーが近づきパドルシフトでシフトダウンするが、元々スロットルバルブの無いディーゼルエンジンゆえに期待ほどエンジンブレーキは利かないから、フットブレーキのお世話になる事になるが、1680kgの車重を感じさせない滑らかなフィーリングとただ正確に運動エネルギーを殺し続ける一級品の安心感がある。勿論限界点に遥かなるマージンを残した走行であることは当然だが、思いっきり加速して思いっきり減速しても絶大な安心感を維持し続ける。太いけれど回し易い真円形状のステアリングを左に切る。鼻先の重さを一切感じさせず、正確にドライバーの行きたい方向へ安定してコーナリングしていく。出口でアクセルを強く踏むと再び強烈な加速にしびれそうになる。18インチのタイヤは着実にグリップしスポーツセダンに相応しいパフォーマンスを発揮する。数本走り終えた後でもブレーキとタイヤは一切音を上げる様子が無く余裕を残していた。単なる有名ブランドの高級セダンではなく、BMWのスポーツセダンなのだと理解できた。

ドライブが楽しすぎて、少しだけ帰る時間が遅くなった。お互いに家族が居るので約束した時間に帰宅することが求められている。カーナビで到着予定時刻を意識しながら高速道路のランプウェイを駆け上がった。ニューミュージックの名曲で歌われた競馬場もビール工場も過ぎ去った遥か先の区間をBMWはぐんぐん加速していく。前が空いているとペースが上がるが、今まで運転したどの車よりも速度域が高い。ほとんど速度を落とさずにコーナーでも安定して曲がれてしまう。前方が詰まってくるとあおり運転にならぬよう速度を落として車間も多めにとるのだが、どういうわけか譲られてしまい再びペースが上がってしまう。昔、新婚旅行で訪れたドイツでVクラスに乗せてもらいアウトバーンの追い越し車線をかっ飛んでいくBMW達をたくさん見てきた。ガイドさんの「ミュンヘンナンバーのBMWは飛ばし屋とよく言われています」と面白い話を聞いた事が思い出される。



車速がある程度高いと高速道路上のアシスト機能が活性化する。段々とレーンコントロールアシストがストレスに感じ始める。ステアリング反力によって存在感を強烈にアピールしてくる。山岳国道では速度域も低く機能が働かなかったが、高速道路では運転支援をしようと努めてくれる。しばらくの後、それまで感じなかった疲労感に包まれてきた。実はこの機能はデバイスの感度をユーザーの任意の状態に調整が可能でオーナーが感度を低めに調整してくれて見違えるほど走りやすくなった。感度が標準以上ではデバイスの存在が嬉しいと感じる反面、自由自在に操る楽しみが不十分なように感じたから、高速道路を長距離走るなら感度低目に設定することをお勧めしたい。どっしりとしているがその中で運転操作を俊敏に反応する走りの良さが遺憾なく発揮できる。

普段使いでは走る場所さえ選べばOKという感触に留まるが、郊外のワインディングや高速道路を走らせるとまさに水を得た魚のようであった。320dの色濃い走りの味が全てメリットとして生かされる。家族を乗せて山道をぶっ飛ばすわけには行かないが、たまの一人の時間ができた時はディーゼルらしからぬ熱い走りも充分こなしてくれるが、いいスポーツセダンはゆっくりと走っていても面白いものだ。また、大切な家族を乗せて長距離ドライブをしなければならないときも安全マージンをしっかり確保しつつも疲労少なく目的地を目指せるだろうし、その時に運悪く悪天候だったとしても4輪駆動が保険的に安定した走りをサポートするはずだ。
乗り心地
☆☆☆☆☆ 3
私はいくらBMWがスポーティセダンを得意としていてもプレミアムセダンに位置する以上は快適性もノンプレミアムよりは秀でていて欲しいと考えてしまう凡人だが、320dは総じて快適性は高い。

市街地走行の歩道の段差などでもワッと声が出てしまうような衝撃は無い。ホイールの大径化争いをしている自動車業界において18吋ホイールはそれほど大きい方ではない。しかし実車を見れば迫力充分でタイヤもぺたぺたに薄く感じる。加えて標準グレードよりも10mmローダウンになるスポーティなサスが装着されているというのにそれほど不快な印象は無い。ただし、ランフラットタイヤ特有の堅さがあり荒れた路面で気になるシーンがあった。まぁ、スポーツというキャラクターを加味して許容レベルであると判断しているが、
オーナーの御家族は乗り心地がよいと非常に高評価をつけられている事実を考えると、私がちょっと柔らかい車に慣れすぎていたのかも。

静粛性はさすがというべきで、不快なシーンは全く無い。振動も騒音も出ないのでディーゼルという事実を疑いたくなるほどだ。走行中、路面の舗装状態が切り替わる事が多々あるが、こういうシーンでも路面から伝わるこもり音が一気に大きくなるようなことも無く、このあたりが体幹を鍛えたスポーツセダンらしい。



高速道路からワインディングまで走らせて乗り心地の堅さは感じたが騒がしいという印象は一切抱くことは無かった。勿論、一切音がしない聴力検査ブースのような静かさは無い。しかしキャビンの重々しい隔壁感があり、かっちりした運転感覚と相まって高級車に期待される静かさは3シリーズで充分担保されていたことは素晴らしい。
積載性
☆☆☆☆☆ 4
セダン特有のトランクルームを開ける。オーナーから作法を教わってキック式のトランクリッドを試す。自動でリッドが開いた後に現れるのは480Lもの容量を持つトランクルームで実用上不満の出ないサイズである。



横幅に余裕があるため、ヒンジアームを格納するようにトリムがカバーしており、リッドを閉めた途端、荷物を痛める心配が無いのもさすが高級車である。

欧州車としては常識的にラゲージは真っ直ぐでRrパンサイドにはネットで仕切られたスペースが作られて拭き上げ用のクロスやタイヤワックスなどの洗車道具を気軽において置けそうだ。ちなみに、工具箱もこの部分の底板を外すと現れる。作り付けの立派な工具は既に無く、トーイングフックと差し込みドライバーだけというシンプルな構成なのはランフラットタイヤでタイヤ交換用の工具が不要である事が寄与している。



内装の収納関係は常識的な範囲無いだが、ガチャガチャと散らからないように各スペースにはフタが設定されており必要に応じて内装との統一感にも配慮が行き届いている。
燃費
☆☆☆☆☆ 5
もともと燃料代が安いディーゼル車であるが、そもそもの燃費も高くカタログ値はWLTCモードで15.8km/Lであった。

今回の試乗では481.2km走らせて軽油を27.5L給油した。燃費はカタログ値を超える17.5km/Lをマークし、走り方を考えれば驚きの低燃費と言える。
例えば環八通り沿いのGSで限界まで満タンにして東名高速道路に乗り、高速道路を延々走った場合、関門橋を超えて門司港ICまでは無給油で走り切れ、ICを降りて割安な軽油を満タンに出来る実力を持つ。しかもあのパフォーマンスで、だ。



ディーゼル特有のメンテナンスとして尿素水の補給は必要だ。これはAdBlueという商品名で企画化されており、排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を水と窒素に変化させて無害化させる尿素SCRシステムを積んだエンジンには必須のデバイスだ。マツダのスカイアクディブDは高価な後処理装置無しで規制をクリアしたクリーンディーゼルを売りにしているが、この後処理装置という奴が例えば尿素SCRシステムとなる。化学工場のような高度なことをやっているが、ユーザーはAdBlueの補給だけで浄化性能を維持できるのはまさに技術の賜物である。既に大型トラックや多くの乗用車にも採用されており現代のNOx後処理装置の決定版となっている。AdBlueの補充はディーラーのメンテナンスパックで無料補充の対象になっているようなのでランニングコストに影響するほどの影響は無い模様だ。
価格
☆☆☆☆☆無評価
320d xDrive MSportの車両本体価格は税込641万円。本格的プレミアムカーともなるとそれが割安なのか割高なのか分からなくなってくる(笑)。

私の稼ぎで買えない車なのでもはやリアリティを持てないと言うことなんだろう。試乗車はコンフォートPKG装着車なので+11.7万円となり652.7万円が車両本体価格だ。

参考にならない事を承知で2Lクラスのディーゼルターボ車と言っても、大昔(1996年)のカムリZXディーゼルターボ4WD(247.6万円)とは大違い(笑)。
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Posted at 2021/06/14 23:04:19

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この記事へのコメント

2021年6月16日 21:22
G20をここまで分析し解説している文章は、そうはないのではないでしょうか。とても読み応えがありました。

私的には318iでも充分という印象を受けていますが、このグレードならではの良さもありそうですね。

Cクラス、A4と並んで、セダン&ワゴン党の最後の砦と思っています。定番という長い歴史を背景に難民が集まっているのではないかなとも。一方で、一昔前のEセグに匹敵しつつある、サイズの拡大と価格の上昇が気がかりではあります。年々手が届かない域に向かっている感が拭えません。
コメントへの返答
2021年6月16日 22:23
コメント有難うございます。本感想文を書くに当たり、入手できる雑誌も借りてきたんですが、意外と追加モデルの320dの記事が少なく難儀しました。3事態が定番なので、一々ジャーナリストに試乗してもらい広報活動に協力してもらう必要が無かったのかも。

318iで充分説は私も理解できます。一方でBMW買うなら直6になる320iかなー、とかいう心理が出てしまうのですが、もはやM340iを買わないと直6を体験することも許されないわけで、だったらディーゼルかな、という流れです。圧倒的なパフォーマンスとランニングコストのよさは抗いがたいものがあります。

ジャーマン3のセダン/ワゴンがラインナップから外れる日、地球上のセダンが消滅しそうな勢いですよね。BMWですら、大中小を一つのP/Fで共用させないと事業が成り立たないのだとしたらいよいよ、Dセグメントのセダンは存在できなくなってくるのではと恐れています。価格上昇は全く以って同感で、友達も頑張ったと思います。
2021年6月17日 16:51
ふむふむと読んだので、今日改めて同じ道を一人で途中まで走ってきました。

登坂車線で譲ってもらったときのスムーズな追い越し、高速の合流レーンでも楽に速度を合わせられる加速に驚き。かつ、よく曲がります。上りも下りも不安感がありません。前の車の前後バランスとか駆動とか全然違うので当然なのかな。

乗り心地はまあまあ満足。前の車もその前の車もだいぶ硬かったのか、これまでよりも車が跳ねるような感じは少ない気がします。うーん。うちの家族が不憫になってきた。でもうまく教育できているとも言えますが。

あとはやっぱり回転半径がツラめです。うっかりすると店舗からの出入りで反対車線にはみ出しそうになります。慣れとは言え、気遣い作業だなあ。あとは運転席側のミラーもリバース連動で下を向くか、ドアを開けながらバックできないと自分はまっすぐ駐車できません。アラウンドビュー的なやつにまだ慣れない。

エコモードの強烈なダラダラ感が逆に新鮮でした。街中でトラックも多いところを走っていると、信号からの発進で置いていかれるという。今までもふんわりアクセルで発進していたけれど、露骨に離されていくので、コンフォートモードとのキャラの違いが面白い。やればできる子なのにサボってる感がすごい。でもエコ全振りで低燃費が叩き出せるのはやっぱりできる子だからか。

ということで、見事メーカーの術中にはまり、ランクアップしてしまいました。でももうこれ以上は手を出せないので、次の車は一周回って100%ファミリーカーになってるんじゃないかな。電気で動くやつで。
コメントへの返答
2021年6月18日 22:11
コメント有難うございます。試乗コースを改めて乗るのは、自分もディーラーで試乗させてもらったあと、自車で同じコースを走ったりします。

誰かと一緒に車に乗った後、改めてそのコメントが自分にも当てはまるかどうか確認することはすっごく重要なことだと思います。

乗り心地は19インチよりは絶対に有利だと思います。自動車業界はデザイン上の理由でどんどん大径化していて最後は26インチとかマウンテンバイクみたいになるんちゃうかと冗談で言っておりますが。

たっくる家は平常時なら関西への帰省があると思うし、名阪国道なんかを走るならフットワークの軽さやXドライブの安定感はメリットがあり良い選択をされたと思いました。

最小回転半径は走る場所を選びそうです。逆に市街地メインで機動性を重視する人は318iか1シリーズをどうぞと言いたいのでしょう。

エコプロモードはまぁ、燃費アタックする時とかですね。山岳国道ではエンブレを聞かせないでハイギアでタイヤを転がしていく制御なので使いどころはあんまり無いですね・・・。最低でも標準モードで楽しむべきですね。

次は・・・・充電環境させよければPHEVとかも良いと思いますけどね。とりあえずしばらくは軽油でお願いします!
2021年8月9日 14:09
こんにちは。
今の3シリーズは、5や7と同じP/Fを使っているのですか。
FRの1シリーズセダンを真剣に熱望していた私が愚かでした。
BMWの金看板も商品を維持するのに苦労している事は初めて知りました。
個人的には、性能の高いエンジンを載せる→高いタイヤを履く→トラクション確保のために4WD化→高価格化
という循環に抗いたいため、できるだけ小さいエンジンの車を選びたいです。
とはいえ、3気筒の3シリーズはフェイドアウトしましたね。
コメントへの返答
2021年8月10日 21:57
コメント有難うございます。

FRセダンは3/5/7でコンポーネンツを共有しているようです。硬派な1シリーズが好きだったのにモデルチェンジでFFになり勝手にショックを受けていたのですが、さすがに3以上は守り通しました。その背反がP/F共通化だったと。まるでカペラのP/Fを縮めたファミリアを思い出します。

先代の後期から導入された3気筒ですが、早々になくなっており後期から再び導入されるかもしれませんね。

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何シテル?   04/26 21:48
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カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2024/04/15 09:03:00
リアゲートダンパー交換 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2024/04/07 19:59:30

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