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2023年01月08日

2022年式CX-60感想文

 2022年式CX-60感想文
レビュー情報
メーカー/モデル名 マツダ / CX-60 XDハイブリッド プレミアムモダン_4WD(AT_3.3) (2022年)
乗車人数 2人
使用目的 その他
乗車形式 試乗
総合評価
おすすめ度
4
満足している点 1.6気筒エンジン
2.FRのP/F
3.魅力的な掛け縫いインパネ
4.常識外れの低燃費
5.手が届きそうな価格レンジの広さ
不満な点 1.未成熟な湿式クラッチの躾
2.分かり易すぎるモーターアシスト
3.期待外れな後席の居住性
4.寂しい18インチホイールのデザイン
5.気持ちは分かるけどINLINE6のアレ
欄外.(MT…)
総評 ●正攻法?逆張り?
2022年9月、以前から予告されていたマツダが送り出すラージ商品群の一発目が日本で発売された。その名もCX-60、新規開発された縦置きFR構造を採用したP/FをもつプレミアムSUVである。

プレスリリースに拠れば
時代の要求に応える環境・安全性能を備えながら、日常の一般道走行から高速道路を使った長距離ドライブまで、余裕をもって運転を愉しめる「ドライビングエンターテインメントSUV」をコンセプトとした、2列シートミッドサイズSUV
とのこと。

ボディサイズは下記の通り全長が4.7mを超えるミディアムクラスでCX-5よりも165mm長く、45mm幅広く、5mm低い。ホイールベースは170mm伸びたが、FRを採用する競合はどれも2800mmを超えておりセグメントとしては標準的である。



マツダは2010年以降スカイアクティブ技術をアピールし、2012年に世界的トレンドど真ん中のCX-5を発売した。CX-5はアクセラのオーナーが次に買い換えるクルマとして構想されたと言う。読みは当たりマツダとしては大ヒットを記録した。特に2.2LディーゼルのスカイアクティブDは走りが緩慢なSUV、燃費が悪いSUV、或いは黒煙を吐くながらトロトロ走るディーゼルのイメージを簡単に塗り替えた。2014年には29000台以上のディーゼル車を販売し、日本のディーゼル車の再普及に寄与した。

今回取り上げるCX-60はCX-5オーナーが次にステップアップするクルマ、と言えばイメージしやすい。正式なデータは無いが、売れ行きからCX-5の上級移行の市場性があると判断されたのだろう。或いは元々プレミアムブランドを目指しすマツダにとって記号性のあるFR+L6搭載ありきだったのだろうか。・・・いずれにしても2022年としては異例なほどトラッドな様式を持ったSUVがここに完成した。

マツダは元々欧州的な味を好むブランドであった。スカイアクティブ技術を謳いだしたとき、今後の自動車はハイブリッドになると誰もが信じていた中で「内燃機関の最大効率を狙う」「効率のいい内燃機関+小規模な電動化」という独特の筋書きを描いていた。スカイアクティブDは見事にヒットするも、内部に詰まるスス問題やディーゼルゲートによって苦しむこととなり、全てを打開できるはずのスカイアクティブXでも価格に見合った商品性を持っていないと判断されてトーンダウンせざるを得なくなるなど当初の想定から軌道修正を余儀なくされる中、欧州チームはHEVに勝てないと見てEVシフトを主張し始めた。

マツダの企業規模を考えると急激なEVシフトに着いて行けそうに無い。元々マツダは欧州を意識しながらも決して欧州のモノマネで終わっていない。ダウンサイジングに対して早々に否定的な意見を持ち、CX-3の1.5LスカイDは1.8Lにスープアップさせてライトサイジング(排気量適正化)を謳うなど独自のポリシーを持っている。今回のFRや直6の採用も、伝統の様式を持つことで権威を持ちたかっただけでも、欧州チームの逆張りをしたわけでもなく、マツダにとって作りたい車がそうあるべきだっただけなのだろう。(プレミアムと一目見て分かる様式なのでスケベ心は多少あっただろうが)

前置きが長くなったが、「既存CX-5ユーザーの為のポストCX-5」が積むべきE/GはCX-5が持つ「驚きの走り」と「低燃費」を維持向上することが求められる。開発陣は最初に「ポストCX-5」が持つべき動力性能を試算して500Nmだと決めたという。現行CX-5(平均車重1675kg)のスカイDは2.2Lで450Nmという大トルクを発揮する。CX-60ディーゼル車の車重平均は1865kgなので同等の走りをさせるには1.11倍の500Nmが必要だと求められる。

500Nmなら現行2.2Lの改良で到達できるかもしれないし、排気量を2.7L程度に上げてやれば十分対応できるのだが、そのままでは燃費性能が悪化してしまう。マツダはライトサイジングと言う考え方を提唱している。これは排気量を闇雲に下げず、必要な動力性能に対して排気量を大きめに設定することで、排ガスや燃費に厳しい燃焼をさせず、余裕を持って燃費に優れるリーン燃焼領域を広げようというものだ。

「ポストCX-5」を考えたとき、500Nmのトルクを確保した上で排気量を1.1Lアップの3.3Lを選択した。気筒数は違えど2.2Lのボアストは同一なので「同じ燃焼ノウハウ」を活用することが出来るのである。3.3Lあれば本来は450Nm×1.5=675Nmを出すことだって可能であるが、敢えて500Nmに留めることで余力を排ガス性能と燃費に振った。排気量が3.3Lになるとプレミアムを謳うモデルとして4気筒エンジンの商品的限界が顕在化する。4気筒のまま排気量拡大するとピストンの上下往復による加振力が増大し、振動が増えて商品性を損なうため6気筒化することを選択。

マツダにはV6の経験があるのだからV6を選択できたが、問題となったのが排出ガス問題である。年々厳しくなる排ガス規制だが、エンジンそのものの燃焼をよくすることだけ対応は出来ず、触媒などの後処理装置が必要である。例えばガソリン車に使われている三元触媒はご存じの通り白金・パラジウム・ロジウムである。どれも貴金属であり車両原価に対して大きなウエイトを占める。V型E/Gは左右のバンクにエキマニが取付けられ、そこに触媒が着くので2個必要であるが、直列E/Gは全ての排ガスが片側に集まるので触媒が1個で済んでしまうので経済的なのである。同じ理屈でメルセデスも2017年に直6エンジンを復活させている。

直6を選んだ以上、横置きは困難なことから自然に縦置きFRが選ばれる。一見、「プレミアムブランドになりたいマツダが身の程もわきまえずカタチから入った」と思われがちだが意外とロジカルだ。



マツダは新世代商品群を一括企画することでどのセグメントのモデルも等しくマツダの最新技術が織り込まれるようにしていたが、開発者にとってコンパクトハッチバックから3列SUVまでを同時に見ることは負担が大きくなりすぎていた。既にマツダは「スモール」「ラージ」と商品群を2分して開発の効率化と最適化を図ろうとしている。マツダ3やCX-30はスモールであり、今回のCX-60は初のラージ商品となった。

だからこそCX-60は確かに力が入っている。マツダの新しいSUVであり、CX-5より立派で、後輪駆動であることが一目で分かるエクステリアデザインだ。インテリアもマツダ3やCX-30とのファミリーを感じさせながら、マテリアルやワイドなセンターコンソールで格の違いを見せつけるような堂々たるもので納得感がある。

走らせると、6気筒らしい振動の小ささやCX-5で度肝を抜いたディーゼルらしい力強さは健在。そこに後輪駆動的なステアリングの素直さや小回り性能、或いはMハイブリッドによる介入が感じられるなど運転体験の新しさは十分感じられた。乗り心地の硬さは私は気にならなかった。

発売したのはe-SKYACTIV DことディーゼルのMハイブリッドのみだが、マツダのプレスリリース情報によると6月下旬の予約受注開始から9月中旬までの期間でで8726台を受注とのこと。販売台数目標は2000台/月とのことだが、半導体不足やマツダ自身のギブアップによる遅れなどがあり順調に生産・登録が推移するか今は大切な時期だ。受注内訳は6気筒ディーゼルが8割を超えるという状況で一ディーゼルユーザーとしても嬉しい傾向だ。グレード比率までは見えてこないが、CX-5検討層が背伸びをするならベーシックなスカイDやスカイGで十分。


CX-60は見て乗ってみるとマツダらしいコダワリが強めのニューモデルだった。また高価格帯への挑戦というマツダにとって重要な使命を背負っており何としても失敗はしたくないだろう。その思いが顧客を取りこぼしたくないと言わんばかりの幅広い価格設定に現われている。SUVを何となく探している人にはお薦めできないが、CX-5が好きだった人ならきっと気に入るであろうポイントは抑えていた。危惧していたガッカリするような酷い出来映えにならず胸を撫で下ろしたが、パッケージング的な完成度やエクステリアデザインの洗練度は価格に見合っていない部分があることも確かだ。更に、試乗した限りだと高級車としてはもう少し洗練させるべき箇所が残っている。少しでも商品改良で良くなることに期待したい。

個人的に装備表を見ているとXD Lパッケージ(400.4万円/423万円)が最もお買い得感の高い仕様設定になっていると判断した。FFベースの競合とも肩を並べる価格設定でありながら本格的高級車の味わいが楽しめるメカニズムが奢られているのは面白いと感じる人が居ればいいのだが。私の稼ぎでは簡単に買えそうに無い価格帯だが、国産車からFR+直6を復活させてくれたマツダを素直にお礼を言いたい。

クルマとしては★3つだが、古典的なレイアウトの復活に感謝して+1。
項目別評価
デザイン
☆☆☆☆☆ 3
●エクステリア
エクステリアデザインは、一目見てマツダ車と分かる魂動デザイン。デザインを統一して面で強くアピールできるのは中規模メーカーならではのメリットである。マツダ3以降のPhase2デザインとのことだがデザインコンセプトは"ノーブル・タフネス"、SUVらしいタフさと上級モデルらしい気品を持たせる試みである。デザイン当初はビジョンクーペを参考にSUVの枠組みに落とし込んて行ったという。

分厚く力強いフロントマスク、ロングノーズショートデッキは後輪駆動のプレミアムSUVであることを一目見て認知させるプロポーションだ。Frマスクは力強さを感じさせる大型グリル。高出力車は強力なE/Gを積んでおり、強力なE/Gはより多い廃熱がある為、冷却の為の開口が必要であることは今も昔も変わらない。従って、大きなグリル(や長いフード)は自然と力強さを連想させるアイコンの一つになっている。CX-60は従来のマツダ車と比べると縦の比率を拡大し、SUV的な力強さを訴求する。このことは他のマツダ車より5角形の尖った部分(ナンバー直上)の角度が大きい事でも分かる。また燃費性能の為グリルシャッターが採用されており、駐車時は閉じていることから停車時の見栄えは完璧だ。中のアルミ素地色の部品が見えること無く完成品質も十分配慮されている。見栄えついでに書き残すと、CX-5ではバンパー成型後の端末のバリを処理せず放置しているのがヘッドライトとの隙間から丸見えだったのが、
CX-60では流石に見えにくいように改められた。



両側のヘッドライトはマツダらしい切れ長・・・と思いきやヘッドライトの幅は狭く実は縦二段構造になっている。縦目のヘッドライトなんてルーチェ・レガート以来じゃ無いか!ただ、真四角の縦二段では離れ目に見えるしバランスが悪いため、LOビーム(上段)の直下にL時のデイライトを設け、グリルにライティング機能を持たせることで「疑似切れ長」ヘッドライトとしている点が大きな特徴である。最初は離れ目感が強く「やっちまった」と思ったのだが、ライトが光って疑似切れ長であることを知ると納得がいった。

サイドビューはFRであることを強調するようなAピラーを後ろに引いたロングノーズが目を引く。精神的なベースモデルであるCX-5も横置きE/GながらAピラーを後ろに引いて優雅さを演出していたが、CX-60ではフェイクではない本物のプレミアムディスタンスが得られた。ホイールアーチはタイヤの踏ん張り感を強調するレリーフが刻まれ、グレードによってはホイールアーチモールはボディ同色に塗装される。



ちょっと「INLINE6」と記されたサイドシグネチャーなるオーナメントは気恥ずかしい気もしたが。CX-60はプレスラインでのデザイン表現では無く面のうねりで表情を見せるデザイン手法である。ボディサイズも余裕があるのでうねりだけでも十分ボリューム感やメリハリを演出できる。ただ、真横から見るとCX-5とほぼ同じサイズのキャビンがかなり後に追いやられていて、まるで某1シリーズの先代モデルのように見える。SUVの持つ実用性という部分よりも情緒的な部分を重視したパッケージングであることを物語る。個人的に惜しいと思うのは前後オーバーハング部の分厚さである。価格帯が近いハリアーでは黒素地パーツを効果的に使ってプロポーションがよく見えるように視覚的に引き締めていたが、CX-60では前後(特に後)のボリューム感がありすぎるように感じる。似たような成り立ちのボルボXC60はくの字に曲げたRrコンビランプで軽快に仕上げ、アルファロメオステルヴィオは角を削って軽快に見せているのだが、荷室スペースや臓物の関係で絞ることが出来なかったのだろう。

Rrビューも同様にショルダーの張り出しが足りないのでどこか引き締まった様に見えにくい。ここを絞ることはユーティリティを虐めることになるが、どうしてもそれは出来なかったのだろう。デザイン開発の段階で車幅を1850mmから1890mmに拡幅したが、ガラス面ごと外に出したので相対的に面の出入りが小さくなって陰影が小さく平たくなってしまった感もある。サイドビューを重たくしているRrバンパーが何とも締まりが無く、CX-5の方が程よく緊張感があるのは残念である。



もしかすると上級グレード用のフルカラー仕様が悪さをしているのでは無いだろうか。恐らく中級以下の黒素地モールがあった方が引き締め効果が期待できて意匠的にはアリかも。

CX-60のエクステリアデザインは私にとってはプレミアムSUVの水準の中で取り立てて格好いいと感じるほどでは無かった。小さめのヘッドライトとグリルによる錯視効果や景色が映り込んだ面の表情を楽しませる非常に挑戦的な部分もあるが、まだ不慣れな感触がある事を否定しきれない。エモーショナルの洪水から数歩退いたあっさり味は素晴らしい。しかし、もう少し絞り込んだ部分も欲しかった。競合する欧州系プレミアムブランド達だって、似たような部分も未消化な部分もあるが、伝統のバッヂでそれを分かりにくくしている。残念だがマツダはまだプレミアムブランドとして認知されていないのでユーザーの目も厳しいと思われる。

●インテリア
インテリアデザインもエクステリアと同じく"ノーブル・タフネス"を表現している。縦型の空調ダクトは風向きをいじるのが少々やりにくいものの、インパネの一等地を左右に貫くワイドな大型インパネデコレーションパネルと共に圧倒的な広さ感を演出。





パネルそのものは幅広い価格帯に対応してハードプラスチックからスエード調タンカラーまであるが、展示車は日本的な美意識を持たせた掛け縫いパネルを採用してさすがプレミアムSUVと言わしめる視覚的効果を得た。

更にドアトリムに本木やクロームメッキの加飾を与えてきらびやかさも感じさせる。



運転席と助手席を分けるセンターコンソールはFRらしい立派でたくましさを演出しているが、実際にトランスミッションが存在しており見かけ倒しでは無い。大きなセンタートンネルによって室内を圧迫しないようにワークスペースが小さい機械式シフトレバーを採用するが、敢えて誤作動を防ぐ為にシフトレバーを動かせて視覚的にもレンジを分からせるロジカルな考えはマツダ的。

真円形状のステアリングの奥はフル液晶12.3インチメーターが採用された。コスト的にも表現的にも自由度が高い。廉価グレードには機械式メーターと7インチ液晶がセットになっているが実はコスト的にはこちらの方が高いかも知れない。

マツダ車に乗り慣れた人にはシフトレバー以外はスッと馴染みやすいインターフェースで好感が持てる上に、明らかにプレミアム領域に踏み込んでいることが分かり易い。特に「プレミアムモダン」内装はマツダらしい白い内装と言うだけで無く、ジャパンプレミアムを感じさせるし、高級クルーザーをイメージした「プレミアムスポーツ」も大胆な2トーンカラーのステアリングなどよく頑張ったなと思うクオリティだ。更に下の「エクスクルーシブ系」になると合成皮革の内装になる。本来は十分高級感のあるマテリアルなのに何だか物足りなく感じてしまう辺りはプレミアム系の商品力の勝利である。

総評としてマツダが作ったFRのプレミアムSUVとして期待されるデザイン性を持っている。エクステリアは基本パッケージングの制約を感じてしまったがインテリアはマツダでありながらプレミアム領域として恥ずかしくない豊かさを表現できている。

エクステリア2、インテリア4で個人的には3★。
走行性能
☆☆☆☆☆ 4
試乗したのは3.3Lディーゼルのプレミアムモダン(4WD)である。腐っても直6を積んだサルーンに乗っている者としては最新の6気筒がどのような走を見せてくれるのか非常に期待していた。

ドアを開けるとドアがロッカー下面まで覆う掃出しタイプのドアだった。これは泥汚れに強く、ロングスカートを履いた人の乗降時に大いに助けになる機構だが、ドア下端とボディの隙間を塞ぐウェザーが大変スッキリしていて見栄えがいい。こう言う部分を気にする人は居ないとばかりにビラビラのウェザーの切れっ端が露出していたりウネウネと波打っているようなSUVが普通だがCX-60は非常にスッキリしている。



プレミアムブランドを目指すならこうあるべきだ。目に入って見苦しい構造体はあってはならない。

乗り込んでシートベルトを着用する。CX-60はラップアウターがシート付になっているので小柄な方がシートを前方にスライドしてもベルトが取り出しやすい方式になっている。3ドア車だとベルトが取り出しにくい経験を持つ人が少なくないがシートベルトが気持ちよく着用できることは安全の第一歩であり、この部分を大切にしたこの構造は非常に優れていると私は評価したい。

CX-60の目玉装備としてドライバーパーソナライゼーションシステムというものがある。言い換えれば、ドライバーの顔位置を認識して自動的に目の位置を元にCX-60側で最適なドラポジを提案するというものである。ドラポジにこだわっているブランドの車なのでこう言う装備も意義があると言える。元々のドラポジがぐちゃぐちゃだと、そもそもベストなんか無くてどこかで諦めるだけなのだから。営業マンが操作してくれたのだが、私の好きなドラポジよりもステアリングが上を向いて少し背もたれが倒れた。あくまでお薦めなので私は私のドラポジに合わせてE/G始動。

一瞬ブルンと前後軸回り大きく揺れた瞬間に縦置きを感じた。始動してしまえばアイドル回転域では静粛性が高い。Pレンジのままで空ふかしさせてみたが高回転までビリビリとした振動を感じさせない点が紛れもなく6気筒である。



試乗日は寒い日だったが、A/Cをつけると室内温度を検知して自動でステアリングヒータとシートヒータが作動する。お節介と言えばそうなのだが私は有り難いと感じた。暖房はE/Gの廃熱を利用しているので、暖機が邪魔されると燃費に影響する。その意味でヒーターの効きをマイルドにする為にシートヒータやステアリングヒーターを活用する考えなのだろう。

運転席からの見晴らしはいい。エンジンフードが長く「偉いんだぞ感」が感じられるだけで無くホンダ流に言えばノイズレスなものだ。高級車なのであらゆるものの「見え方」も気をつけなければならない。

シフトレバーは独特のエレキシフトと呼ぶタイプでP-Rを横移動、R-N-Dを縦移動というパターンである。この得意なパターンは電気シフトが持つ使用後、ホームポジションに戻って分からなくなる事を防ぐ意味があると言う。

店舗から出る際に思ったより取り回しがいいと感じた。最小回転半径は5.4m、CX-5が5.5m、ハリアーだと5.5~5.7mなのでFRレイアウトであることと車幅の広さの相乗効果でタイヤ切れ角の確保が有利で骨格系もストレートに通しやすく素性が良くなる。

道路に出るが、ダイレクト感のあるフィーリングにハッとさせられる。まるでDCTに乗っているかのようなスパスパ決まる感じは欧州車的な味わいを是とする人には魅力的だろう。6速では段が少ない(?)と言われ続けてきたマツダの内製ATだが、8速化するだけでは無くトルコンレスの湿式多板クラッチを使った独特な構造のミッションを採用している。



トルコンが無いから前後長が短く、ハイブリッドを組み込みやすいというメリットもある。また、大トルクE/Gを積んでいるのにトンネルが小さく出来るのも大径になるトルコンや単板摩擦クラッチを持たないメリットだ。(→だからMTが乗らない・・・合掌)

渋滞路ではちょっと1速で引っ張りすぎだったり、低回転でギクシャク気味なシーンもある。この辺りはDCTに慣れた人なら十分許容できるだろうがトルコン派には慣れとメカニズム的理解が必要だ。

ただ、プログレを知る私の感覚だとこの変速感はシフトショックだと感じてしまう。クラッチのつなぎ方なのか回転の合わせ方に制御的一筆を入れて欲しい気持ちが最後まで残った。

市街地走行ではエンジンは存在感を感じさせずしずしずと回る。信号停止を繰り返したが、ブレーキフィーリングは踏力が高めだが板ブレーキという感じでは無く扱いやすい。

M-HEVは48Vで駆動される12.4kW(16.9ps)、153NmのモーターがE/GとATの間に挟まっている。E/Gが不得手な部分をモーターで補うことで排ガス・燃費性能を向上させる目的である。



車重を考えれば物足りないスペックで、ストロングHEVと比較すれば電動走行を楽しむ性格では無く主体はあくまでも直6E/Gである。惰性走行(コースティング)時にクラッチでE/Gを切ってモーターだけで回生したりモーターの力だけで走行できるものの、シーンは限定的。一応EV走行の期待にも応えてくれるのだが550Nm(M-HEVのみ)もあるユニットなのにEV走行を維持するためのアクセル開度調整に一喜一憂しているのは馬鹿馬鹿しいのであまり気にしない方がいいと感じた。バッテリー容量も0.33kWhという小容量(参考:エクストレイルは1.8kWh)に留まるのだが、軽くなるので悪い話では無い。下り坂でアクセルを離すとスッとタコメーターが0に落ちる。燃費だけならフューエルカット出来るのでE/Gを回しても構わないが、クラッチを切ってE/G止めることで回生出来る量が増えるはずだ。

残念なのはブレーキペダルを踏んで減速し続けて止まる直前に一旦E/Gが再始動して再びアイドルストップするシーンだ。ショックや音と言うより何だかせわしなく、高級車に求めたい鷹揚な感じが損なわれる。タコメータ表示があるからこそ慌ただしい感じに余計に気づくのかも知れない。アイドルストップ後の発進では効率の悪い領域でモーターアシストをしてくれているらしい事が視界を遮らない配置の大型ディスプレイによって分かる。

世間はせっかくハイブリッドを買うんだから電動感を、という方向性だがそっちがお好みならPHEVが控えているのだからICEを愛する人たちの為のM-HEVは割切っている。
乗り心地
☆☆☆☆☆無評価
(走行性能の続き)

営業マンの計らいで自動車専用道路を試させてくれた。ここぞとばかりグッと踏み込んだが、十分早さを感じる。自分の知る限り高級車で速いなと思ったのはレクサスLS500hだった。確かにLSは速いのだが速すぎて怖いと感じるほどだったことを考えればCX-60はそれほど凄くは無い。それでも日常的な使い方で安心して踏み込めるし、回転が上がっても気持ちいいのは6気筒が持つ良さだ。



100km/h時のE/G回転数は1400rpm程度。我が家のデミオと大きく変わらないハイギアードさだ。この様な場面でE/G音がほとんど聞こえない。試乗後にチェックするとE/Gルームの隙間に詰められたシールスポンジに驚いた。シールスポンジは非常に高価な部品であるにもかかわらず、この潤沢な使いっぷりはオーナーの方は是非一度ご自身の目でも確認していただきたい。



また、社内外の隔壁感に大きく効果があるサイドドアガラスも、CX-5よりも分厚いものが奢られている。サイドドアガラスは質量がかさむのでなるべく薄いものを使いたがる傾向にある中でしっかり質量をかけている感がある。ただ、車格を考えれば上級グレードだけでも局所的にガラスの遮音性能が落ちてしまうコインシデンス効果の心配が無い中間膜を持ったアコースティックガラスを採用しても良かったんじゃ無いかとは思う。この辺りは年次改良で手が入るかも知れない。

短時間ながらレーダークルコンや車線維持補助機能を確認。日進月歩で進化する中でCX-60も最高レベルとまでは行かなくても十分実用的な性能を持っているように思えた。

自動車専用道路を降りて帰路は郊外の一般道を走らせた。舗装の荒れた路面を通過したが、こもり音は発生するものの許容レベルか。通常走行時はエクストレイルが採用しているようなANC(アクティブノイズコントロール)を使っていないようだがE/Gに起因するこもり音は感じなかった。勿論そこだけを聞こうとすると耳が圧迫されているようなされていないような微妙な程度の圧迫感はある。しかし1000rpm近傍をよく使う割には低回転こもり対策は十分されていると思う。

直線メインの試乗コースだったので存分にコーナリングに関しての確認は出来なかったが、街乗りレベルでちょっとしたコーナーは曲がってみた。スローと評されることの多いステアリングだが、巨体の割にはスッと向きを変えてくれるは気持ちが良かった。私のRAV4の様にショートホイールベースと軽さを活かしたキビキビしたゲイン満載の感覚では無く、ステアリング操作に対するリニアな反応を楽しむ気持ちよさである。プログレほど個性的なスローさでは無いが、遠くを見て早めに仕掛けていけば決して応答遅れがあるようなスローさでは無く分解能が高いと解釈が出来そうな味付けになっている。

CX-60で忙しくワインディングを攻めるような走りをしなければ、十分不便は無いのでは無いかと思う。

店舗まであと少しというところで営業マンがBluetoothを使って「平原綾香のJupiter」を突然かけ始めた。マツダの社員研修会ではオーディオの良さが分かり易い曲として件の曲が推奨されているというのである。確かに低音から高音まで綺麗に楽しめる楽曲なので気持ちは分かるが「スンスンスーン」とか「風は西から」ちゃうんかい(笑)

店舗に着いた際、営業マンがJupiterをMAX音量にしてくれた。聞いてられない程うるさいのだが、車から降りてドアを閉めると音漏れが少ない。これは端的にCX-60のシールの良さ、遮音吸音の良さを知らしめてくれる良いデモンストレーションであった。オーディオの音漏れを減らすと言うより、停車時の電話の声が漏れにくく、プライバシーを守る意味でも優れている。中の音が漏れないと言うことは外から入り込んで来る音も漏れないと言える。

試乗の結論としてはプレミアムに挑戦するCX-60の意欲を十分に感じられるドライビング体験だった。私が知っている直6のFR車と比べると、安楽さ、ふんわり高級な感じよりも、シャープな空気の澄んだ凜とした感じをCX-60から受けた。私が乗る小さなマツダ車と比べれば相当に洗練されているし、余裕を感じるのだがマツダ的な味わいはしっかり残っている。

ただ事実として大柄なクルマ言うことで廉価グレード以外で簡単なスイッチ操作で設定できるリバース連動ミラーが備わるなど、扱いやすさに配慮をし、綺麗な周辺カメラが車両感覚を助けるものの絶対的な大きさがあるのは事実だ。さすがに今時の広くなったスーパーの駐車場ですら隣の車に気を遣う事になるだろう。まだ、大型セダンよりはコンパクトなサイズの為コレじゃ乗れないとみんなが匙を投げる大きさでは無いにせよ私はこのサイズでJR大和郡山駅から南鍛冶町~北鍛冶町を通る抜け道や鳴海あたりをスイスイ走る自信は無いなぁと言うのが感想だ。まぁそんなせせこましいところを走らないで済むならCX-60の良い面を一層楽しめるだろう。

どうしてもボディサイズは取り回しと走行安定性などの背反が出る。CX-60を検討するCX-5保有の方も是非試乗してご自宅の車庫に駐車して行きつけのスーパーの駐車場に止めてみて欲しい。行けそうだと感じるなら後輪駆動や6気筒の世界があなたを待っている。

評価をするなら大きさを感じさせない走りに4★。
ただし、トルコンレスATやMハイブリッドのマナーの悪さは慣れるまでは気になるだろう。逆に素のディーゼル3.3LはM-HEV用よりもスペックこそ劣るものの、不安要素が一つ減る分こっそりと期待している。
積載性
☆☆☆☆☆ 3
運転席に座るとSUVらしいアップライトで広さを感じる。ただし、無尽蔵な広さと言うより自動車として丁度いい程度のものである。ドラポジがキチンと決まる感じがするのはマツダならではのものだ。FR車だが左足の足元が広いのは車幅が広いだけで無く、例のトルコンレスATのおかげである。例えば副変速機を持ち大きなトランスミッションを持つランクル70だとクラッチペダルが右寄りになってしまうし、RX-8やロードスターもE/G&T/Mを極人に近づける設計をしているからどうしても左足がきつい。私が数ヶ月に一度乗っているプログレも左足スペースは余裕が無く、センタークラスターにソフトパッドが設定されているほどだ。CX-60も意地悪的に見えればトンネル縦壁に出っ張りがある。ただ、それも影響は極めて小さいので安心して良い。マツダ車は元々Frタイヤと着座位置を離しているのでFR的な良さを持っていたが、CX-60ではFF的な良さも手に入れた。

前席が悪くないので期待を持って乗り込んだが印象がそんなに良くない。第一に着座位置がやけに中央寄りでトヨタ車のよう。レッグスペースも狭くは無いが広くも無いので例によってFrシートレッグを避けて足を置く必要がある。スッと座ってサッと足が前に出せれば快適だが、なぜ後席と前席の着座位置を左右方向にずらしてしまうのか。まさか側突性能維持の為の投資をケチって後席だけは物理的な距離を取りたかったとかそんな情けない理由では無い事を祈りたい。そしてシートバックも腰のサポートはしっかりしているが上半身がゆるゆるで落ち着かない。丁度カタログ値に出てくる「室内長」を採りたいが為にシートバックを後方に逃がした昔の国産セダンを思い出した。また、座面と床の落差が小さいセダン的というより、フレーム車的な座らせ方はPHEVとフロア面が共通だからなのだろう。電動車はとにかくバッテリーを床に最大限置きたくなるからでその分フロアが高くなってキャビンを圧迫する。勿論フロア面の高さがメリットに振れる面もあるにはある。FRの割にRrセンター席にるプロペラシャフトの出っ張り小さい。これはSUVで床が高い事で相対的にプロペラシャフトが道路側に近いからと考えられる。

ついでながら私が過去にCX-30で指摘した「べこべこ」ドームランプ(天井灯)の押しボタンスイッチだが、隙詰めをするスペーサーが着いてフィーリングに配慮した痕跡があった事を私は見逃さなかった。押してみるとベコつきは無いが逆にカタカタ異音が出ていたので惜しい・・・後もう少しで完成だ。

私の感想文でいつも出てくるが我が家の場合、子供を2名乗せるので後席は座り心地以上にCRS取付け性や快適性が気になる。まず、Rrドアがほぼ直角に開く点は便利。そこからCRSを取付ける場合、ISO-FIXバーはカバーを外せばすぐ出てくるタイプなので我が家のデミオのようにシートの表示を思いっきり拡げてガバガバにしてしまう懸念が無い点もスマートである。

ラゲージスペースはBOSE無しのサブトランク込みで570L、CX-5の522Lを超える容量を確保している。このクラスとしては当たり前とも言える手触りの良いカーペット敷きのデッキサイドは標準装備である。開口部はスクエアでこの容量なら我が家が積みたい程度の荷物は十分積めそうである。

評点をつけるなら3。前席の正しく座れるポジションは貴重だし、ラゲージも必要十分に広くカーペット敷きなのは高評価をつけたい。一方で後席の快適性は期待外れと判断する。このサイズともなると後席の快適性は一定レベル以上を望みたい。FRパッケージングを強調するためキャビンを後ろに寄せすぎていて荷室を確保してしまったツケである。普通のSUVならもっとアップライトに座らせて何とかマネキンを収めるのだが・・・・。目指したイメージがビジョンクーペなので・・・。ここからセダンを作るならもっとホイールベースを伸ばして後席レッグスペースを確保して欲しい。
燃費
☆☆☆☆☆ 5
私がスカイD(MT)のデミオに乗っていて驚愕したのは動力性能と燃費の高次元の調和である。HEVではなくICE車のフィーリングを残したままこれほどの加速と安心して遠乗り出来る燃費性能はディーゼル車の魅力の根源に近いものがある。

私が初めて初代CX-5に試乗したときもそうだった。最初に20Sに乗せて貰った際、高回転までスムースに回るエンジン、6速ATのレスポンスよくリズミカルな変速に感心した直後XDに乗った。あの図体(失礼)で脳みそがズレそうな息の長い加速に圧倒された。

現行のCX-5もWLTCモードで16.6km/L(AT+4WD)を達成しており、CX-60のM-HEVで21.1km/L~21.0km/Lである。純ディーゼルの場合18.5km/Lであるからいずれにせよ重量増を含めてもCX-5同等の走りと燃費を実現している。

2020年にデビューしたHEVのハリアーはFFで21.3km/Lを達成しており、CX-60は大したことが無いようも見える。

私が試乗した際に、トリップをリセットして挑んだものの、自動車専用道路を走らせているときは20.2km/Lまで伸びたが最終的には18.6km/Lに落ち着いた。燃料が軽油であることを考えればストロングHEV車と肩を並べるシーンも出てきそう。
走りの質感を考えると間違いなく驚異的な燃費と言えそうだ。

数値だけで無く、日本なら燃料費で更に差がつく。簡単に計算してみた。レギュラーガソリンを160円/L、軽油142円/Lとすると、CX-60は160円で1.127L給油できる事になる。つまり、レギュラーガソリン換算すると23.8km/Lとなる。

ディーゼル車であれば間違いなく5★
価格
☆☆☆☆☆ 4
2022年1月9日_装備表、MOP表追加

CX-60は価格帯が広い。価格表は下記の通り。



2022年の水準で税込299.2万円というエントリー価格は明らかにバーゲンプライスだ。
恐らくハリアーの299万円を強く意識したのだろう。一方で最上級グレードは626.5万円でユーノスコスモより高いマツダ史上最高額の乗用車である。

CX-60のグレードは複雑だが、大きくICEモデルと電動化(M-HEVとPHEV)モデルに大別される。
ICEも電動化モデルもそれぞれガソリン/ディーゼルに分かれている。価格表からも分かるとおり、ガソリンは25S_S_PKGが最廉価だが、ディーゼルは素仕様というべきXDがラインナップされている。イメージリーダーの6気筒の裾野を広げたいという思いがあるのだろう。さりげなく、グリルがスポーツ仕様と同じハニカムタイプが設定されていてちょっとしたコダワリを感じた。

一つ上にXD_S_PKGがあり素XDとの価格差は34.1万円。つまり、299.2万円の25S_S_PKGがあるのなら265.1万円の素25Sがあってもおかしくないのである。2.5LのSUVなので、相場観的に(110万円/L)のレートで275万円に対し、SUVプレミアム30万円をつけて305万円程度でも決しておかしくない相場観だが、流石にCX-5の価格と近接しすぎるのだろう。

ICEモデルは敷居の低さを感じさせながら上級のL_PKGやエクスクルーシブモードはCX-60乗り換え層のステップアップ需要に応える。

かなり複雑な仕様設定になっており、参考の為25Sを基本として簡単に解説を残しておく。

まずはXD(324万円~)から。

後席に人を乗せる頻度が小さいなら、プライバシーガラスさえ我慢できれば十分な内容だ。装備水準がそこまで高くなかった初代CX-5の代替ならこれもアリでは無いか。

S_PKG(25S:299万円~/XD:358.1万円~/PHEV:539万円)




実用的な装備が奢られ、セットオプションの幅がかなり広い為、CX-5保有層で価格に厳しい層にとっては有力な候補となる。セットオプションの価格差から4.4+8.25=約12.7万円の差額と見積もれる。差し引き58.9万円の価格差のうちE/G分は46.2万円となる。価格差は高いが排気量700cc分の差として考えれば割安と言えるだろう。

L_PKG(25S:341.6万円~/XD:400.4万円~)


ガソリン/ディーゼルの価格差はS_PKGと比べると42.8万円に縮小。2022年の上級SUVという枠組みで考えた場合、安全装備が揃うだけでなく内外装のグレードアップを考えるとL_PKGの装備は十分以上の満足感が得られるだろう。

エクスクルーシブ・モード(25S:384.5万円~/XD:443.3万円~)


CX-5にも設定のあるグレードでICEモデルの最高峰だ。ディーゼルにはパノラマルーフだけが備わりガソリンとの価格差が46.7万円差となる。

ここから上が電動化グレードだ。XDハイブリッドとPHEVという先進のユニットを積んでいるが、仕様としてはエクスクルーシブ・モードの装備内容をほぼ継承した「エクスクルーシブ・モダン」と内外装をスポーツ風味に味付けた「エクスクルーシブ・スポーツ」が実質的スタートラインだ。価格はどちらも505.5万円なので見た目の好みで選べば良い。

プレミアム・モダンから減らされる装備はパノラマサンルーフのみ。追加される装備はSBSに前進時左右接近物検知機能が追加される他はAWDベーシックパッケージに加えてグリルシャッター、20インチながら切削加工と塗装付きのホイール、フェンダーのサイドシグネチャーガーニッシュが黒からクロムメッキに変わる。黒素地だったモール類がボディカラーになるフルカラー仕様となる点が最も特徴的だ。個人的には黒素地の方が引き締まっていてカッコいいと思う派なので、あまりフルカラー仕様は刺さらない。またFrバンパーの形状も外観上の変化点だ。

スポーツ仕様はグリルが横ハニカムに変わり、ドアミラーが黒になり、アルミホイールも黒塗装、さらにメッキ加飾がブラックメッキ、内装もブラック化される。

M-HEV化による価格差を見積もろうとすると、(505.5+12.1)-465.9=51.7万円となる。装備差はアルミ切削塗装(予想+1万円)、加飾追加(予想+1万円)、外装フルカラー化(用品価格+35.9万円!)を差し引くと12.8万円となるのだが、生産ライン装着なら半額位が妥当なので実際は29.8万円程度の価格差ではないだろうか。他社では30万円程度でストロングハイブリッドが手に入るのにこちらはマイルドハイブリッドでは割高にも思えるが実質的な性能アップ分を考えれれば妥当な線である。

PHEVと2.5LガソリンICEでは189万円だ。競合するハリアーPHEVの価格差は166.2万円だったので少々価格差は大きいのだが、その分、25S系の価格が安い値付けで戦略的だったのだ、とも言えそう。

CX-60のフラッグシップとなる「プレミアム・モダン」と「プレミアム・スポーツ」はデザインで頑張るマツダの面目躍如とも言えるハイセンスな世界が楽しめる。もはや機能面の差は無く、パノラマサンルーフ(MHEV標準)やドライバーパーソナライゼーションPKG(5.5万円)の差以外の価格差は内装のグレードアップに費やされる。

例えばインパネデコレーションパネルは優しい風合いのパネルで掛け縫いの表現が使われてジャパニーズプレミアムを感じさせる。トリムの木目も、本木に変わり、ステアリングにもさりげなく白ステッチが入る。レザーシートの中央のアクセントクロスも紋様は和服の帯のような雰囲気を再現しており確かに魅力的だ。

スポーツの内装は大胆にタンカラーを使い、スエード調のインテリアパネルが奢られるほか、本革巻きステアリングは黒とタンの2トーンカラーを採用する。高級クルーザー船をモチーフにしたというこのカラーリングはラグジュアリーなスポーティネスをうまく表現している。

モダンとスポーツの価格差はないので同列に語ると価格差は547.3-523.1=24.2万円。内容を考えれば決して小さくない価格差なのだが内装の魅力で納得して欲しいのだろう。正直、国産プレミアムブランドを超えたかも知れないセンスに脱帽レベルだ。
その他
故障経験 (価格の続き)
このワイドバリエーションの仕様のアウトラインを掴むとすれば、①ICE系はCX-5から違和感のない+αの仕様設定で、セットOPTながら、細かくニーズに合った仕様をオーナーが決定できる。②HEV系は装備は考え得る最良のものを奢り、内装のセンスでは完全にプレミアム領域に到達している割に価格はお買い得設定だ。

内装のセンスの良さにヤラれてプレミアム系に逝ってしまうのもいいのだが、個人的には6気筒エンジンを味わいたいので素のディーゼルを選びたい。M-HEVのモーター介入のギクシャク感が気になるのでM-HEV無しを選択。装備のバランスからXD_L_PKGが最もお薦めしやすいグレードである。

XD_LPKGの4WDでボディカラーは新色のロジウムホワイトにグレージュ内装、MOPは無し。
用品はナンバーフレーム、ヒーリングレセクション、ラゲッジマット(カーペット)、フロアマット(ラグジュアリ)、サンシェード、ナビ用SDカード、ETC2.0、2カメラドラレコ、ホイールコート、ボディコート、防錆アンダーコート、フューエルフィラーデカールなど。

本体価格428.5万円+車体色5.5万円+DOP58.7万円+諸費用12.3万円と言ったところだ。
実際はメンテナンスパックや延長保証も欲しいので総額500万円を超えてきそうな感覚だが、
まぁ最上級グレードを買わなくても満足できるグレードが設定されていると言うだけで良心的に感じてしまった。



絶対値としては高いが、昨今の新車の相場感覚を考えるとお買い得にすら見えてしまうのは私の目が段々見慣れてきた証拠なのだろう。

価格の評価は内容を考えればお買い得と言える。また、最上級を買わなくても満足できる様な逃げ道?がある点も評価する。

●故障
営業マンが気づいていたけど気づかないフリをしていた現象で、Uターンなどステアリングを大きく切った際に「ガリゴリ」系の大きな異音を確認した。まさかタイヤとフェンダーライナーが干渉、なんて事は無いだろうが複数の個体で発生するので「何か」を抱えている気がする。

いちマツダユーザーの意見としてトヨタ車辺りと比べると、品質面の物足りなさ(DPF再生距離・EPSひっかかり・異音現象・マツコネフリーズなど)がある。購入する方は延長保証はお忘れ無く。

●蛇足
私としてはビジョンクーペを見てしまった以上このP/Fを使った流麗なセダン(或いはステーションワゴン)を目にしてみたい。マツダ9を出せ!なんて言わないので5シリーズやEクラスに挑戦できる新型マツダ6は見てみたい。それでもビジネスとして成功させるのは難しそうなのは素人の私でも分かることであり・・・・

無責任発言を続けると本気でマツダ6のオーナーになろうする人は迷わずCX-60を買い、メーカーからのアンケートに「次は本格セダンを検討したい」と言い続けるべし。ネット民の無責任な発言、或いはマーケティング調査以上にオーナーの意見には重みがある。その際にCX-60に対して気になる部分を全てメーカーに伝える努力をすると良い。CX-60がコケるとマツダは次に繋げる体力が無くなり、かつ商品展開を慎重にせざるを得ない。マツダファンじゃ無くても選んで貰える可能性があるSUVでボリュームを稼ぎつつ、CX-60で得られた知見を生かした少量生産のマツダ6が出るシナリオに持って行けるのでは無いか。その時に買い換えてもSUVなので下取り価格はある程度期待できるはずだ。恐らくSUVのCX-60を「RV車など乗用車ではない、要らん」と見送ってセダンを待っていてもマツダの規模・体力では到底セダンは開発できないだろう。それでもマツダにセダンを開発させる呼び水としてSUVを一旦挟むことが必要なのかも知れない。一方でマツダもせっかくFR P/Fを手に入れたのだから真っ当なセダンを持っておくことはブランディング的にも価値はあるはずだ。ビジネスとしてSUVを先行させたのは私は正解だと思う。しかし精神的支柱になるセダンは絶対に必要だ。
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Posted at 2023/01/08 01:40:54

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この記事へのコメント

2023年1月8日 21:11
本当なら自動車専門誌が書くべきレポート、今回もありがとうございます。

展示の置物だけですが、私も見てきました。
直6FRレイアウトながら、室内は狭くなく、後席フロアトンネルの小ささに感心しました。
プレミアム内装は高級でヤバいですね。こんなのを展示で目の当たりにしたら、その場でやられて注文書にサインしてしまいそうですw
ただ、アウトランダーPHEVもそうだったのですが、中級の竹グレードでも十分以上の質感を持っているのは、ご指摘の通り好感です(松ばかり売れてほしいのはどこのメーカーでも同じでしょうが)。

現代のマツダはどう見ても「アンフィニとユーノスの夢の続き」なのですが、どこに向かうのかな?と思っていたら、全く予測不可のラージFR車…。これはまさかのアマティではないかとw

しかし価格は戦略的で、お値打ちとプレミアムをうまく成立させているように見えます。
アマティがノアボクやシエンタと価格帯で被るなんて、どういう世の中なのだろう(爆)
コメントへの返答
2023年1月9日 23:41
コメント有り難うございます。
自動車専門誌は最近生ぬるいというか、30年前から変わっていない感じが不満です。もっともっとクルマを分析し、指摘すべきところは指摘すべきデナイノかと?

直6のエンコパの長さは後退したFr席のおかげで運転している限り狭さは感じにくいと思いますね。後席も狭いと言うほどではないにせよ決して広くはない。アップライトに座れるSUVってもっと気持ちいいパッケージングだったけどなぁという思いです。

プレミアム内装は一クラス上の高級車に相応しい見栄え品質を達成してます。まさにセンスとマテリアルの相乗効果だと思います。

中級の良さは特筆すべきだと思います。最近のあからさまなグレードマネジメントの嵐が吹き荒れる中、良心的な仕様設定だと思います。マツダ的に収益を追う、ではなくP/Fで投資した分、台数で償却を進めたいのかも。

「アンフィニとユーノスの夢の続き説」はなるほどとお思います。バブルが崩壊しなかったネオ90年代ならこんなRV車が出ていたのかも。(でも副変速機ついてそうwww)アマティは私もMAG-X誌でしか存在を知りませんでしたが当時は辞めといて正解だと思いましたが。CX-60はアマティ計画で諦めたセグメントへの再挑戦という意味で重要な車種かも知れません。

>アマティがノアボクやシエンタと価格帯で被る
言われて初めて気づきましたが、CX-60は高いと言いながらお買い得ですよね。

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