メーカー/モデル名 | マツダ / フレア ハイブリッド XS(CVT_0.66) (2022年) |
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乗車人数 | 4人 |
使用目的 | レジャー |
乗車形式 | 試乗 |
おすすめ度 |
3
|
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満足している点 |
1.スムースなアイドルストップからの復帰 2.アイドルストップ時の減速挙動 3.巧みなマイルドハイブリッド制御 4.レーダークルコンの可能性 5.NAでも何とか高速道路を走れる動力性能 |
不満な点 |
1.残暑厳しい時期にA/Cの効きが悪い 2.ドア締まりの悪さ 3.運転席シート座面が長すぎてペダル操作しにくい 4.配慮不足の収納スペース 5.「クラスレス」が停滞気味 |
総評 |
代車でフレアを借りた。フレアとはマツダ版のワゴンRである。意外と知られていないが、初代ワゴンRの時代からマツダでもAZワゴンとして販売され続けてきた伝統ある一台だ。 ワゴンR/フレアは90年代の軽自動車業界にワゴンのユーティリティを再提案したパイオニアである。勿論オリジナルはホンダ・ライフステップバンになるわけだが、セルボモードをベースに制約の多かったなかで見過ごされてきた縦方向に成長させることでクラスレスな乗用車としての可能性を広げた点が偉大だった。 私は昨年、みん友さんのご厚意で2004年式ワゴンRに試乗済であるが、19年後のワゴンRの実力を家族四人で体感することが出来たので記録に残したい。 試乗車はNAでは最上級となるXSである。スズキブランドのワゴンRではカスタムZと呼ばれるスタイルで二段ヘッドライトだったFZに代わり、一般受けしそうな顔つきにリファインされたグレードである。専用の内外装と上級装備が備わっており、見栄えや装備水準で言えばリッターカーに匹敵する。 個人的には標準車の初代をイメージした外観に好感を持った一方で、上級車は2段ヘッドライトが特徴だったものの、ボディサイドと合わせてヴェルファイア・コンプレックスが垣間見えて好みでは無かった。そこに追加されたカスタムZ系は良い意味で無難な比較的分かり易いエアログレードである。専用の涼しげなフロントマスクは初代スティングレーを思い起こさせる。 ![]() 全体的なプロポーションは新P/Fを得たことでホイールベース拡大、キャビンを拡大して軽規格のなかで印象をワゴンRらしく見えるように変えた。 インテリアは初代から続くボリューム感のある意匠から脱却し。ホンダ風味だがインパネ面を大きく抉って開放感を出した。クルマの情報端末化の流れの中で7インチディスプレイオーディオの設定もあり、リビングのテレビ台にテレビがあるようなイメージだ。室内空間は余裕があるがポケッテリアは頭数はあるが、実際の使用シーンでは容量・配慮が不足気味。更にパッケージング的にはFrシート座面が長すぎて短足の私にはちょっときついのと、ステアリングが遠くてドラポジが決まらない点もマイナス。 走らせてみると、市街地では非力さを感じないばかりかE/Gが高回転で唸るようなことも無く意外と大人っぽい乗り味だ。乗り心地も柔らかく、送迎や買い物レベルなら何の不満も無く4人と荷物を載せてが移動できる。郊外の丘に出来た新興住宅地のアップダウンを走らせると非常に気持ちよく走ることが出来、アイドルストップ時の減速挙動や 復帰始動も他社では見られない洗練された印象だった。 ![]() 高速道路も状況が良ければ普通車のような感覚で走れる点は感心したが、高速道路の合流時の加速性能やシャシー性能は余裕が無く結局走行車線を大人しく走る程度に合わせ込まれている。市街地での快適性を思えば上位にターボがあるとは言え少し勿体ない気がする。 ![]() フレア/ワゴンRが最も得意とするシーンはやはり市街地だった。市街地なら時折ゆとりすら感じられる。ちょっと惜しいのは、各種性能のまとまりはいいものの、登録車を喰ってやろうという意気込みが足りない(精神論!)事だ。初代が持っていたクラスレスであることを現行型は諦めており、歴代フレア/ワゴンRオーナーなら気づける進化はあるものの、これならもうフィットもパッソもマツダ2もいらないね、と言える程の気概は感じられない。しかし、スズキというブランドの使命を考えればこれも仕方ないかなと最後に考え直した。やろうと思えばやれるのだろうが、庶民のゲタを提供するとうポリシーのため敢えてやらないのだろう。 現状のスズキのラインナップ上、アルトは責任感を感じるほどの低価格へのこだわりを見せる一方でスペーシアは登録車と競合する価格帯でも売れるモデルも擁している。中途半端になりがちなワゴンRは昔と比べて立ち位置が難しくなっている。 消費者の目はスライドドアに目が行ってしまうが、アルトの上がいきなりスペーシアでは極端だ。近年の功労者であるワゴンRをドライに切り捨てることも出来ず、遂にスライド付き派生車を出すに至った。最大の競合車であるダイハツムーヴは次期モデルでスライドドアを採用するという。 ワゴンRはあくまでもスペーシアに近づきすぎること無く4人で買い出しに行ける道具の最小単位であって欲しい。 ![]() ホンダN_WGNと比べるとターボ無しと言うこともあり厳しい場面があるが、逆に市街地のマイルドな乗り味などでは逆にフレア/ワゴンRの方が快適な場面もあるところが選び甲斐があって面白い。 総評は軽自動車としては★3いわゆるハイトワゴンの基準車と言える。普通車含めた絶対評価だと山道と高速道路での動的性能が厳しいので★2。 |
デザイン |
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●エクステリアデザイン
6世代目となる現行型フレア/ワゴンRは初代のテイストを色濃く残したエクステリアが特徴だが、試乗車はマイナーチェンジで追加されたカスタムZの自然吸気仕様である。 ![]() 元々は標準モデルに従来のカスタム相当のFZ、そしてフラッグシップのスティングレーの3つの外観が存在したが、FZの代わりに登場したグレードで比較的受け入れられやすいスッキリした顔つきは個人的にもFZより好感が持てる。ただ、そうなってくるとスティングレーの挑戦的な牛顔の存在価値が危ぶまれるのだが、ワゴンR全体としては台数上乗せが期待できる無難な上級グレードはプラスの存在だろう。 サイドビューは私の思うワゴンR像とは少しズレがある。Frドアのベルトラインがウエッジシェイプでアルファード風のシャークフィン風のセンターピラー形状があるのが特徴だ。ホイールアーチとドア中央にキャラクターラインが引いてあるが、 全体の硬質なイメージからすると何故かここだけが丸くてアンマッチな印象なのが気になってしまう。ただ、遠くから見てもサイドビューでフレア/ワゴンRだと分かるので競合車の中に埋没しない個性を手に入れていることは確かに認められる。 特徴的なのは切削加工付きの165/55R15インチアルミホイールだ。イマドキは軽自動車でも15インチは当たり前だが、本来はインチ数が小さい方が室内面積拡大や小回り性能確保に寄与する。とはいえ視覚的な安定感は捨てがたい。コンサバなタービンタイプのデザインはフロントマスク同様に万人受けするだろう。 ![]() Rrビューは初代を意識したバンパー組み込み型の横長タイプだ。試乗車はクリアタイプとなっており、大型リアスポイラーとこれまたアルファード譲りの上ヒンジ式のRrワイパーが特徴になっている。スッキリとしたバックドアウィンドゥ下端ラインはスッキリしていて良い。実は従来のワイパー配置はデザイン上、全長の決定点(最後端)となっていたのだがバックドア上部へ移ったことでバックドア面が後方へ移動できたことで全長は変わらないのにボディの全長は75mm延長された。さらに6ライトウィンドウが復活したことでウィンドウグラフィックスが350mm延長されてワゴンらしいプロポーションを取り戻すことが出来ている。 ![]() ワゴンRとフレアの違いはエンブレムに留まるが、フレアの特徴としてはベース車ではメーカーオプション扱いのアップグレードPKGが最初から装着されていることだ。本革巻きステアリングやメッキドアハンドル、15インチアルミホイールなどドレスアップ要素の高い装備が+9万円で追加されている。 個人的は初代に寄せたエクステリアデザインは好感を持っているがデザイン的には3代目の方が道具感があって好きだった。特にサイドビューのキャラクターラインとセンターピラーのデザインはイマイチだ。特に後者は前席をパーソナル空間、センターピラー以降を使える荷室として定義した事を表現していると開発責任者がコメントしていたが、後席の人も寛げる点こそがワゴンR/フレアの良いところなのに、特徴とデザインテーマが不一致に感じるなぁと残念に思った。 エクステリアデザインは 3★ ●インテリアデザイン インテリアはナビ画面を中心に車幅いっぱいまでエアコン吹出し口と同じ幅でインパネが伸びていてワイドな広々感がある。圧迫感を生まないようにえぐりを入れてトレイ面は低くしてセンターメーター採用によってステアリング周りもスッキリしている。(私はセンターメーター推進派なのでセンターメーターであってもネガにはならない) ![]() メタリック塗装加飾によって質感も上々でチープな感じを与えないのは流石。Aピラー回りの三角窓はわざわざトリムの色をベースの白から変えて黒く塗ることで死角的な広さ感が付与されているのが面白い。三角窓はぎりぎりまでセラミックが控えているので運転席から助手席側の視界も良好だ。 室内の広さを少しでも取る為にA/Cのスイッチが超小型の電気式になっている点は使い勝手が優れており、助手席の足元スペース拡大にも貢献している。グレードによってはヘッドアップディスプレイやUSBタイプCのコネクタなど新しい装備も盛り込んでいる。 驚くほどの先進性やデザイン性を訴えるわけでは無いが、下手なBセグを喰えるレベルの品質感を持っている事は評価できる。特に加飾がない廉価グレードであっても樹脂部品のフィッティングなど基本的な部分は共通しているので安いグレードを買ってもみすぼらしい気持ちにさせない点は素晴らしい。 内装は3★デザインは総じて3★ |
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走行性能 |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() E/Gをかけると軽やかにR06D型が始動した。高い燃費性能を実現するために、デュアルインジェクションシステム、クールドEGR、急速燃焼、高圧縮比化などの様々な熱効率向上技術を採用した新世代ベーシックE/Gである。従来型よりボア径が小さくなり、共連れで吸気バルブ面積も小さくなったので最高出力で2kW、最大トルクで2Nmダウンしているため、旧来の書き方で言えば49ps/5.9kgmという平凡なスペックになった。 ![]() 一方でフレアはスズキの新世代P/Fハーテクトを採用しており、フレームワークが連続的で美しい。屈曲した骨格を最短距離で滑らかにつなぐことで軽量でエネルギ吸収効率が高い。このP/Fのお陰で790kg(先代比-20kg)という軽量な車両になった。 ![]() 簡単なグラフだが、歴代のAZワゴン(フレア)/ワゴンRの車重の時代変化をまとめた。1993年の初代以降、新規格になっても車重を維持したのはお見事だが、その後は衝突安全の強化によって車重が増加していく。一般的に旧来のP/Fに衝突対策をすると部分部分に当て板(パッチ)を当てたり、局所的に板厚を上げたり、ハイテンを使ったりと 投資範囲が限られているので重くなりがちだが、スズキの場合はそれでも軽さにこだわってきた。(1998年の新規格でも軽さをアピールした軽量衝突安全ボディTECTと宣伝していたくらいだ) ![]() 軽いと言うことは、鉄で出来たボディの場合は板厚が薄くなったり、構造体の部品点数が減ることになるので、遮蔽性能が下がり、共振点が上がり、イナータンス(物体の動かされやすさ?を示す指標)が高くなるなどして振動騒音乗り心地の質感的分野ではデメリットになり得るのだが、衝突安全(相手が居ない場合)や強度、運動性能や燃費、原価の面で良いことづくめなのが軽いと言うことになる。 私自身の経験ではカローラを修理のためにほとんどの内装を剥がし、運転席だけをつけて走らせたことがあった。30kgくらい軽くなっただけなのだが、もう走りがまるきり違う。よく走るしよく曲がるしよく止まるという経験をした。だからこそスズキは軽さにこだわり、新型ワゴンR(フレア)では全面維新のP/Fの採用に踏み切ったのだ。 グラフを見て初代モデルよりも軽いという事実に触れて技術の進化に驚いた。E/Gはみかけのスペックがダウンしたとしても軽量ボディとの組み合わせを得て市街地のフレアは決して鈍重では無い。例えば信号待ちからの発進時、ブレーキから足を離しアクセルに踏み換えるとLiイオンバッテリーからのアシストが開始される。市街地の発進レベルの加速であればスーッと速度が乗るまで最大30秒間のアシストが続く。 ![]() アシストにはルールがある。例えば発進後から100km/hまでに範囲でE/G回転数が4000rpm以下であること、Liイオンバッテリーと補機バッテリーの充電状況が充分ある場合などだ。この時、三菱電機製のISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)によって2.6PS/4.1kgmのアシストを行う。オルタネータに電気を流してモーターとして使うというのは、まるで昔のママチャリの前輪に繋がったライト用のブロックダイナモが加速時に給電によって加速アシストを行うようなイメージで、実感としても「ああ、アシストされている」と分かるほど明確なアシストでは無い。エンジンの実力に付加するのでは無く、モーターの分エンジンに楽をさせる様な狙いなので分かりにくいのも理屈通りだ。特に、デビュー直後は発進時のクリープ動作を電動アシストのみで行うパターンもあったが今では無くなっているので一層有り難みが分かりにくくなっている。ただ、燃費計と睨めっこしていると、加速時、燃費が良いゾーンまで辿り着くのは確かに早い気がする。強めにアクセルを踏んでもリッター10は切らないのは恐らくアシスト効果なのだろう。 発進によるアシスト後、定常走行をしている限りは充電するようなそぶりを見せないが、前方の信号などでアクセルを離した瞬間から回生が始まる。元々充電制御付きのオルタネータなので減速時にせっせと発電しバッテリへ充電される。SOC(電池充電量)が豊富なときはちょっとした加速でも頻繁にモーターアシストするのだが、枯渇してくると発進加速時のみアシストする。 ![]() 信号に従い停止すると、直前(10km/h程度)で燃料節約のためE/Gが切れる。アイドルストップ時にガクッと減速度が強まってつんのめる挙動が当たり前だったはずなのにフレア(ワゴンR)は嫌らしい減速Gが立ち上がらないようにしっかりなめしている。この挙動はマイルドハイブリッドが敢えて駆動力を出して居るのかも知れないが、満点では無いにせよ違和感が気づきにくい程度には改良されている。さらにアイドルストップからの復帰が早く、静かなのはISGの恩恵だ。 ![]() 市街地走行では広々した室内の高めのアイポイントで運転でき、小回りも利き、右左折時の死角も少ないため、シティコミューターとしてのフレアの良さを感じるために子供の習い事の送迎やスーパーへの買い出しにフレアを連れ出したが、普段使っているデミオと比べても実用性は遜色なく、むしろ広くて荷物も積みやすい。 ![]() 更に狭い駐車場もバックモニターなしで一発で駐車できるのは気持ちが良かった。シティユースなら乗り心地も操縦性も然程気にならない。 本当に市街地オンリーの目的ならフレアで4人乗車しても充分に用事をこなすことが出来るだろう。そうなってくるともっとフレアのことを知りたくなるのが私の悪い癖で、そのままフレアを北に向かって走らせる事にする。 (続く) |
乗り心地 |
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(動力性能の続き)
フレアの走り知るために東海北陸道を使ってひるがの高原を目指す。通行券を取り、加速させていくが狙った速度に乗せるのに時間がかかる。絶対的な出力が足りていないという感じでランプ路を登る最中にBATTのSOCは枯渇した。 ![]() 床までアクセルを踏んで加速レーンを使い切ってようやく本線へ合流出来る。焦る余り加速レーンを余らせて手前で本線に入れば速度が足りず後続車に迷惑をかけてしまう。今回の試乗で何度も合流加速を試したが、いずれも加速車線内でアクセルを床まで踏め抜けば本線の制限速度には達する実力が与えられている。これは作り手側が「加速性能はここまで」と造り込んだ可能性がある。それ以上の余裕はターボが担当すれば良いので燃費を取るという明確な線引きを感じた。 本線合流後、走行車線ではCVTのお陰でE/G回転数が低い。以前試乗した3代目MTモデルは4000rpm程度だったが、フレアは少し加速させると同様に4000rpmを指すものの、平坦路を巡行するときは3000rpm程度に抑えられている。ギア比固定のMTはそのギア段で加速・巡航・登坂を担わなければならなが、CVTは変速比が無限に得られる。 100km/h定常走行ではフロアからの振動は絶えず発生しているものの、主にエンジン由来の高周波ノイズは思ったほど気にならないのは、エンジンのそばに設置されているグラスウール製のダッシュアウターサイレンサーの成果だろう。 一昔前の軽自動車にはこんなものは着かなかったし、大衆セダンでもディーゼル車専用装備だった時代もあるほどだ。部品費が上がることを嫌ってこういうアイテムをケチると、後々になって対策が必要になったときに内装部品に吸音材を貼ることになる。 高いレベルを目指す高級車は部品費が高くても許されるのだろうが、フレアのような軽自動車では如何に効率よく対策を行うかが大切だ。音源に近い位置で吸音してしまうのが、キャビン内のあちこちに吸音材を散りばめるより賢いとも言える。 フレア(ワゴンR)の開発責任者は振動騒音分野出身らしい。確かにフレアは高級車のような静けさは無いが、高速道路の全開加速時以外は「軽だよね」とうんざりされることが無いレベルに維持されている。それが高速道路でも印象が悪化しないので騒音は良く管理されている。 高速道路なのでスズキセーフティサポートの構成装置であるレーダークルコンを活用した。興味深いのは同じ車速でもクルコンONにするとCVTの変速比が若干ローギアードになることだ。クルコンに頼らずアクセルワークだけなら3000rpm以下で走れる平坦路を走っていても、クルコンを作動させると途端に4000rpm一定で走らせる。恐らく、車間調整のために加速する際のモタつきや、前方減速時のレスポンス維持のためにギア比を調整しているのだろう。そのため、高回転で走るのは何となく嫌なのだが、このレーダークルコン自体は動作が穏やかで作動させても怖くないのでよくできている。 ![]() 特に実感できたのは速度管理上、レーダークルコンは非常に有効だということだ。昔より格段に動力性能が向上したとは言え、660cc自然吸気のフレアにとっては高速道路で100km/hを維持することは簡単では無い。道路の傾斜や風向きによって踏み足してやらないと、油断すると状況が良いのに80km/h程度に速度が落ちてしまうことがある。レーダークルコンはコンスタントに速度を維持してくれるので使い方をマスターすれば初心者の慣れない高速道路や長距離ツーリングで威力を発揮する。渋滞の名所と呼ばれる場所は速度管理が難しい上り坂やトンネルであることが多いが、速度管理をクルマ任せにすることで忌々しい渋滞発生の芽を摘み取るポテンシャルを秘めている。レーダークルコンは決して無用の長物では無いので積極的に利活用したい。 日本有数の高地を走る山岳高速道路を走らせた。カーブや坂がきついのでペースを維持する事が難しくなってくる。動力的には床までアクセルを踏み込んでやれば加速はするのだが、流石にE/Gが回りすぎという感じで制限速度を維持する程度で走りたくなる。さらにコーナーを曲がりながら橋の継ぎ目を超えると瞬間的に強いショックが感じられる(サスが縮んでいるところに入力が来る)し、速度の乗った高架を走る際の直進安定性は未だに少々恐怖を感じるのでアクティブ性能の心理的限界はこの辺りにあるようだ。 ![]() 平坦な高速道路や都市高速ではほとんど馬脚を露わすことはないが、変化に富んだ高速道路では限界が見え始めた。外乱で進路が乱されがちになってくるので狙ったライン(≒道路の車線内)を走らせるだけで腕の筋肉に疲労を感じた。 高速を降りて山岳地帯の国道を走らせた。アップダウンが激しいので上り坂ではモーターアシスト、下り坂では回生と慌ただしく状況が変化する。長い登坂でバッテリーを使い切ってもアシストされないだけなので走りっぷりがほぼ変わらない点はメリットだ。味付け自体は低速トルク型なので車速が60km/h以下ならそれほど歯がゆい思いをしないで済む。下り坂では低転がり追求のハイギアなDレンジのままではどんどん車速が上がってしまうのでスポーツモードを活用した。従来のO/D OFFの様な感触よりももっと強い2レンジ級(この表現、若い人に伝わらないかも)の減速度が得られるので、利便性が高い。E/Gを回した方がISGがより多く発電してSOCを上昇させるので好都合だ。フレアは元々ブレーキがプア(踏力優先)なのでスポーツモードを使ってある程度減速させてからフットブレーキを使うことをお薦めしたい。 ![]() 下り坂の峠道のつづら折りコーナーを曲がる際も前後スタビライザーロール感を大きく感じないし、転覆を恐れて操舵初期からドアンダーという感じでは無く手応えが感じられる点で操縦性の進化を感じる。しかし調子に乗ってそこそこの車速(察して下さい)で劣化でうねった舗装の路面を通過すると、ストローク量を増やしたサスを以てしてもタイヤがバタついてしまうシーンがあった。こういうときは慌ててステアリングを切り足さずに保舵して通過後に操舵・制動を行うと恐怖を感じずに済んだ。 実際にフレア(ワゴンR)に乗ってみると旧モデルからの進化は充分に感じられるが、普通車を喰う実力かと問われるとそうでも無いというのが正直な感想だ。普通に山道も高速道路も走れるので多くを求めなければ充分満足できるんだろうなと言う程度の実力に留めてあるのは開発陣の狙いなのだと思われる。軽自動車の普通レベル+αは実現するが、それ以上の登録車領域には踏み込まないのがスズキ流なのだろう。 動力性能は普通車含めれば★2だが、軽自動車としては★3つかおまけして3.5である。 静粛性能や乗り心地は、突出して優れた面はないがちいさな改良の積み重ねでバランスが取れていてリーズナブル。絶対的に3★だが、3.5★をつけても良いかなと思えた。 |
積載性 |
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フレアのベース車であるワゴンRは、積載性に対するこだわりは強く、RrシートスライドやRrデッキと面一になるダブルフォールディング機構を備えたRrシート、長尺物を飲み込む可倒式助手席など伝統の機能は健在だ。特にRrシートスライドは週末のまとめ買いで大活躍だ。
![]() 旧い話だが初代のルノー・トゥインゴに学んだ初代ヴィッツがそうしたように、RrシートスライドこそBセグ以下の小型車に備わるべき装備だと私は考えている。人を乗せるときは広々したレッグスペースを確保し、荷物を載せるときはシートスライドで荷室を拡大出来ることが全長が短く全てを満足させられない小型車に求められる性能だと思うからだ。 ![]() 荷室デッキは床下に収納スペースが確保してありベビーカーを立てておけるなどカタログではアピールしていた。ただ、コスト優先の発泡率の高い白色の発泡スチロールは見た目からして弱々しい。 ![]() ここを耐傷付き性の高いシボ入りの脱着可能なトレイを敷いてやればもっと活用の幅が広がるだろう。せっかくデッキが自立するように工夫も見られるのに肝心な部分で損をしているようだ。 伝統の助手席洗車バケツ(?)も健在だが、今回はどうにも底が浅い。 ![]() バケツを外すとマイルドハイブリッド用のLiイオン電池が搭載されていた。DENSO製のバッテリーはまるでCDチェンジャーのような置かれ方をしているが、デッドスペースを有効活用した搭載方法だ。 全体を通して少々気になるのは普段使いの小物を置くスペースが存外に少ないと言うことだった。 ![]() インパネ奥のトレイ、カップホルダー、カードホルダー、ドアポケット、CTRアームレスト収納などイマドキ定番の収納場所でカップホルダー以外は全て容量が小さく、浅いので置いたものも不安定な状況だった。財布がドアポケットに入らなかったので、助手席前のトレイ上のスペースに財布を置いたら、交差点を曲がっただけで吹き飛んでいってしまった。 仕方なくベンチシート中央の運転席と助手席の間にあるアームレストの下に置いておいたのだが、 気づいたら後席フロアに落ちてカードがバラバラに散乱していた。 ![]() インパネの裏には恐らくインパネ骨格とエアコンダクトとW/Hの間を縫うように装備品のECU(お弁当箱)がぎっしり詰まっていて収納スペースのための窪みが作れないほどパンパンなのだろう。私の父がN_WGNに施していたように助手席前に滑り止めマットを敷く必要がありそうだ。 最も注目されるのは外装のピラー形状を活かしたアンブレラホルダーだろう。全長900mmまでの傘なら収納できる。分かり易く言えば例えば選挙で候補者が持っているあの透明な傘は全長が875mmなので収納OKということだ。 ![]() 傘入れのような面白さもあるものの、室内の収納スペースは実用性という意味で少しガッカリである。特にティッシュが動いてしまう助手席前インパネトレイと、ものが後席に落ちるアームレスト下の穴は問題だ。 パッケージングはワゴンRらしくアップライトで幅が狭い以外に不満が感じられない広さを誇る。頭上空間も拳3個分は確保されているから必要充分。 後席も広いので子供達からも好評だった。運転姿勢という面ではステアリングが若干内側2オフセットしているのとペダルレイアウトもN WGNで感心したようなレベルには達していない。一応チルトステアリングやADJベルトアンカーがあるのだが、私が求める姿勢に調整するとペダル位置に対してステアリングの遠さを感じたのでテレスコピック装置があると良かった。また、シートで指摘したいのは座面長さが私のような短足には長すぎて膝裏がつっかえるような不快感があった。少し尻をずらして座れば問題ないが、そもそもシートバックに骨盤を当てることが安全運転の第一歩なのでシート座面の適用身長が現代の脚が長い人たちにしか合わない運転姿勢なのは万人のためのフレア/ワゴンRには相応しくない。 ![]() 後席は少ししか乗っていないが、シートスライド機構があるのでニュートラルポジションに合わせると足引きが良好だ。スーパーハイト系ではシート座面をいたずらに長く採って室内長を謳うやり方が横行している。フレアも確かに最後端ではその傾向はあるが座面長が長すぎないのでシートスライドを合わせればベストポジションが取れる。本来は膝前スペースは程々にして前目アップライトに座る方が後輪から離れることによる乗り心地の改善効果は高いと見られる。 積載性を評価すると、居住性は良いのだが運転姿勢の取りやすさがスポイルして3★。積載性も荷室は広くRrシートスライドの便利さも評価したいが、収納の作り込みの甘さが気になるレベルなので2.5★。 |
燃費 |
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燃費はWLTCモードのカタログ値で25.2km/Lであった。今回は552.1km走行して24L(10L追加込)給油したので23km/Lとなっている。燃費計では21.9km/Lと表示されていた。
![]() 仮にオートストップやエア抜けの誤差を加味して1L余分に入ったとしても22.1km/Lとなるので燃費計は厳しめだ。家族4人乗車の状態で行程のほぼ全域でA/C常時使用状態だったことを考えると燃費性能は素晴らしい。 低燃費の秘訣はマイルドハイブリッドによる電動アシストとアイドルストップだけで無く、エアコンの能力が低いことも関係ありそうだ。気温が30度~32度という条件で運転したが、とにかく暑い。始動後小一時間走らせても額にはうっすらと発汗を感じるレベルで家族から暑いとクレームが相次いだ。普段よりもきつめの23.0℃の内気循環で設定しても状況は好転せずずっと強めの風が出ている状況だった。 ![]() それでも信号待ちの停止時には無慈悲にE/Gがストップする。エコクールという蓄冷式エバポレータが標準装備されているのでアイドルストップ中も冷気の急激な温度上昇は見られなかったのは素晴らしいが、1分強で室温が上がりすぎるようですぐにE/Gが起動した。オーディオすら無い車内でちっとも涼しくならないというのは家庭不和の元である。 結局、A/Cから冷風が出てきたのは日没後しばらく経ってからであった。日が出ていると全然冷えないので、E/Gルームの配管に断熱テープ巻いてあげたり内張を外して断熱材を施工してやると快適になりそう。 長距離メインとは言え、A/C常時使用で家族4人乗車でカタログ値の9割程度出ていれば燃費は良いと言える。 約20年前のワゴンR(MT)の場合は類似した仕様要件で15km/L程度の燃費しか出すことが出来なかった。今回のフレアは同じ自然吸気のFFモデルかつ、自動変速車だったにもかかわらず飛躍的な燃費向上を果たしている。 フルハイブリッドやディーゼルとは違うが、フレアの場合は地道な軽量化と軽という範囲内で可能なコスト質量をかけて庶民の足としての領分のなかで効果を上げている点は素晴らしく、さすがあの燃費戦争を勝ち抜いただけのことはある。 燃費だけは文句なしの5★がつけられるのだが、空調性能が犠牲になっている気がするので1つ減じる。 |
価格 |
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前輪駆動のフレアの価格、ワゴンRの価格は下記の通りだ。
![]() フレアはハイブリッドのみ、ワゴンRにはMTも選べる非ハイブリッドのFXがある。標準系のXGとFX-Sは同機種だが、カスタムZ系のNA/ターボ同士ではフレアとワゴンRで微妙に仕様が異なっている。 具体的にはNAのXSはZXのMOPであるアップグレードPKGが標準で着いているため、価格が約6.6万円高い。XTとZT全方位モニター用カメラPKGが着いて約7.5万円高い。 こうしてグレードの比較を行っているとカムリ?と勘違いしそうになる(笑) かつての上級グレードFXが最廉価扱いになっているのも往年の「deluxe」グレードのようで感慨深いものだ。 試乗車のXSの154万円(税抜140万円)という価格はひと昔ならターボモデルが買える価格帯だったと記憶する。154万円という絶対値は当時より高いのかも知れないがLEDライト(5万円)や先進安全機能(10万円)やマイルドハイブリッド(15万円)が着くことを考えれば、ひと昔と値段が変わっていないのでは無いかと思えてくるほど安心感のある価格設定だ。 下記のグラフは1988年から2023年までのスズキの従来型セダンのアルト、ワゴンR、パレット/スペーシアの最廉価グレードの時代進化である。(スズキ歴史館サイトと2023年のみWEBサイトより抜粋) ![]() アルトはギリギリまで値上げせず粘って時代の変化で耐えきれずに値上げ、というパターンだ。対するワゴンR/フレアの場合はブランニューモデルとしてデビューした際はアルト+30万円という値付けだった。これまでに無かった価値観を持ち、登録車のセダン/ワゴンの価格差を考慮するとこの様な強気の価格設定になるのも頷ける。2代目からは競合車の存在を意識して一旦値下げするも、2012年まで一定の傾きで価格は上がっていく。この時、アルトとの価格差は20万円、12万円まで接近するも再び差が開き最大で41.2万円まで価格差がついた。 2008年にはスーパーハイト軽としてスライドドアを備えたパレットがデビュー。車格的にワゴンRの上級となり、パレットは19.5万円高くなった。 我慢のアルト、最上位のミニバン的使い勝手のパレット/スペーシアの登場によって、元々高さ方向に活路を見いだしたワゴンRにガラスの天井が立ちはだかることになった。 現行ワゴンRは一旦ポジションを見直して初代の様な爽快なワゴンスタイルとシンプルさを取り戻した。スペーシアより23.6万円安く、2021年にデビューしたアルトより14.1万円高いレベルとなった。物価は基本的に上昇傾向を持つのでグラフが右肩上がりになること自体は仕方が無い。 ![]() 現代の軽は高い!軽のくせに総額220万円くらいする!という話をよく聞く(経験談)がそれは高い軽を選んで買っているのである。給料が上がらず、増税ばかりの世の中だが消費者である私達も意識を変えて何が何でもスライドドアだ、と凝り固まるのでは無く非スライドドアのフレアのようなモデルも候補に入れても良いと私は思う。 |
故障経験 | 故障と言うほどでは無いが、ドア締まりの悪さ(毎回半ドアになる)とA/Cの効きの悪さ、収納の鈍臭さは購入検討者には一言忠告しておきたいと思う。 |
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シトロエン DS3 2011年式 スポーツシック・エディションノアールII。 ラテン系ホットハッチ(プレミア ... |
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