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ノイマイヤーのブログ一覧

2025年04月13日 イイね!

2023年式 LBX ミニ感想文

2023年式 LBX ミニ感想文●「スニーカーのようなクルマをつくってほしい」

2023年11月にデビューしたLBXはレクサス初のBセグメントクロスオーバーSUVである。レクサス初の3文字の車名で「Lexus Breakthrough X(cross)-over」を意味するとプレスリリースにあるが、本来なら「BX180h」と名付けられていてもおかしくない。

TNGA-Bプラットフォームをベースにした1.5L THSのクロスオーバーSUVなのだから、「レクサス版ヤリスクロス」というゲスの勘ぐりをしない方が不自然だろう。

ボディサイズは下記の通り、ヤリスクロスとホイールベースまできっちり変えてきたあたり、意地でもヤリクロと言わせねぇ!という強い意志を感じた。こういう熱量は「強いトーションビーム」と揶揄されたあの高級ミニバンのRrサスを独立式に変えたときを思い出した。



レクサスのエントリーモデルは長年に亘りCT200hが担ってきた。HS250hの兄弟車でありながら、Aクラスや1シリーズを意識したコンパクトハッチバックで2010年代の国民車とも言える3代目プリウスをベースにキビキビした走りとレクサスの世界を結びつけて若年ユーザー・女性ユーザーから好評を博してブランドの裾野を拡げてきた。

2018年にはCT後継を狙ってUX200/UX250hが発売されたが、CTを継承せずに中途半端なナンチャッテSUVというキャラクターがどっちつかずに見えたのか、ラゲージ容量が小さすぎて忌避感が出てしまった。結果、CTをやめるにやめられず2022年11月末まで併売を続けざるを得なくなってしまった。

どんなブランドも高齢化が進むとブランドそのものの活力が無くなるので、廉価で元気なエントリーモデルが本当は必要だったのにレクサスはCTを育てずに放置し、安易にSUVブームにあやかったのがどうにも軽薄な印象を与えてしまったことも私は残念に感じている。(仮想的のAクラスも1シリーズもちゃんと進化を続けている)

そんな中、現われたLBXはそんなレクサスのエントリーモデルとは何かを考え尽くした戦略モデr・・・・・、いや・・・・実は豊田章男社長(当時)から「上質で毎日履き倒せるスニーカーみたいなクルマができないか」と言われて開発が始まったコンパクトカーだった。

Premium CasualをコンセプトにしたLBXは極めて私的なニーズによって産まれたというのが何とも「今の」トヨタらしいエピソードである。

スニーカーは気軽に履きやすく、歩きやすく、時には走れる。ファッション性もあり機能も重視される。だから毎日履いている人も居る。そう言われれば確かにLBXはそんな風にも感じられてくる。全長が短いから都市部でも扱いやすく、それでいて上質感のある内外装はレクサスが視野に入る層にとっては手頃なクルマと受け止められるだろうし、ラージセダンやミニバンを卒業した高齢者層にも魅力的な選択肢になる。

実際に運転して、なるほど基礎体力がしっかりしており例えば静粛性が高く、信号待ちで周辺の音を入れないという点で私のプログレを超えている。(25年も新しいんだから当たり前であって欲しいが)

一方で、高速域の余力の無さと市街地で残る突き上げ感はオールマイティさに欠けると感じた。思えばCTもちょっと脚が堅かったので、これがレクサスがやりたいことだったのかも知れないが、真の都市型を銘打って高速性能を重視しないというなら、もう少し乗り心地の角を丸くした方が我が国のオーナー達には嬉しさがあったんじゃないかと感じられた。或いはモアパワーのために例えばMORIZO RRのNA版の1.6Lを搭載して余力を産んでくれても良いのになと思った。ターボは強力すぎて一般の人には過剰だ。

LBXはそんなレクサスにとってとても重要なエントリーモデルとなった。クロスオーバーと言いつつ、世が世なら初代ISTの様にプレミアム2BOXと呼ばれてもおかしくないスタイルで、実質的にはプレミアムハッチバック車である。最近になって街でも見かけるようになってきた。

価格の面では、最廉価のカジュアル(420万円)が最近のトヨタ・レクサス車の水準よりも比較的お買い得な仕様設定なのが目新しい。CTを放置してエントリーモデルを蔑ろにした作り手の中にも後ろめたいものがあったのだろうか。

確かにヤリスクロスと較べるとグッと良くなっている、或いはノンプレミアムだがノート・オーラ辺りと比べても完成度が高い事は認める。しかし、価格に見合っているかと言われると「本当はまだやれるだろう?」と言いたくなってしまう。25年前の小さな高級車を所有しているからこそ、これが最新の小さな高級車だと認めたくない気持ちが私の中にある。高級車は大衆車では受け入れねばならない限界をカネを使って拡張して「我儘を聞いてくれる」からこそ高級車なのでは無いだろうか。その意味でLBXは装備水準もさることながら、都市型の域を出ないあたりもう少し自動車としての底力を発揮してくれないだろうか。



個人的にはモアパワーだ。M15A-FXE型は回すとE/G音が目立つので、もっと低回転で出力が出せるようなE/Gを組み合わせて高速巡航中の静粛性を維持したい。例えばG16E-GSE的な自然吸気E/Gを準備してでも余力が欲しい。

一方であくまでも都市型高級コンパクトとして動力性能を割切るのなら、せめて市街地での硬めの乗り心地をソフトに改めて欲しい。そして、他の方も指摘されているがせめて助手席パワーシートと電動チルテレは必要だろう。LBXで初めてレクサスの世界に足を踏み込む人も居るだろうが、そんな大切なゲストをガッカリさせてはいけない。

「シルバニアファミリー」でも「プラレール」でも新規参入者に対して一通りのパーツが揃う入門セットがおもちゃ業界にはある。子供達が楽しめる内容を厳選し、親が買いやすい価格で引き込んで沼に誘うわけだ。

LBXが特定の人(モリゾウさん)を喜ばせるためだけに産まれたとしても、量産されて販売されているのだから多くの人たちの笑顔につながる仕様設定も蔑ろにしてはいけないと私は思う。
Posted at 2025/04/13 23:00:57 | コメント(2) | クルマレビュー
2025年04月01日 イイね!

愛車と出会って19年!

愛車と出会って19年!4月1日で愛車と出会って19年になります!
この1年の愛車との思い出を振り返ります!

■この1年でこんなパーツを付けました!
カローラのミニカー発売されたんで買いました。
純正アルミ履かせたい!

■この1年でこんな整備をしました!
車検整備
車高調整
スロットルスプリング交換
助手席サンバイザー修理
ブロワモーター交換
アイドルストップ点検調整


■愛車のイイね!数(2025年04月01日時点)
1229イイね!

■これからいじりたいところは・・・
リアコンビのアース不良はなんとかしたいと思っています。
あと、賞味期限切れが見えてきたタイヤかな。
いつの間にか185/60R14がレアサイズになっています。

■愛車に一言
たまにナイトドライブに連れ出すとき、最高に楽しいです。これからも大切にしつつ、性能を発揮させて楽しく走らせていきたいです。

>>愛車プロフィールはこちら
Posted at 2025/04/01 23:22:26 | コメント(2) | トラックバック(0) | カローラ
2025年02月08日 イイね!

トヨタ博物館企画展「日本のクルマとわたしの100年」

トヨタ博物館企画展「日本のクルマとわたしの100年」例によって開催は終わっているが見学してきたので記録に残したい。

~公式紹介文~
今回の企画展では、「日本におけるクルマと女性のかかわり」という観点から自動車史を5つのゾーン、車両9台で紹介します。1910年代には日本で最初に免許を取得した女性、1950年代からはモータースポーツに参戦していた女性がいました。また時代の流れとともに女性ドライバーの増加を見越して、特別仕様車が登場しました。現在では、クルマづくりの現場において性別にかかわらず多様な人材が活躍しています。これらに関連した車両は当館収蔵車のほかに、国内自動車メーカー・自動車博物館様のご協力により展示いたします。

モビリティのあり方が大きく変化しようとしている今、愛される“クルマ”をつくり続けるためには、多様な人々の深く広い知恵を集め、熱意をもって取り組まなければなりません。本企画展では多様性のひとつとして、これまで見過ごされがちだったクルマと女性のかかわりを取り上げることで、新たな発見の機会をご提供します。来場者の皆さまにダイバーシティを尊重したすべての人とクルマのより豊かな関係を考えていただけることを願っています。


人類の半分は女性であり、クルマと女性の関わりにスポットライトを当てたのが本企画展です。そう言えば私の亡き母は20歳に教習車(クラウンのコラムシフト車)で免許を取り、会社員時代は社用車の初代シビックに乗って名古屋市内を走っていたそうです。私が産まれ、妹が産まれてからは自家用車のハンドルを握り、2015年に亡くなるまで現役ドライバーでした。

私が子供時代を過ごしていた1980年代後半から1990年代、女性ドライバーといっても特に珍しくなく、母の友人も皆自分の車を運転していました。(カルタスやパジェロに乗っていました)

伯母も皆免許を持っていてギャランΣやマークII、セリカXXもありましたね。

そして大正生まれの祖母も昭和45年頃免許を取り、RT40型コロナの中古車に乗っていたそうです。女性ドライバーだとトラックの運転手に幅寄せされるなど嫌がらせを受けたので、信号待ちで並んだときは窓を開けて「馬鹿野郎」って叫んだって言っていましたね(笑)

祖母は70代から80代初めにかけては埼玉から実家がある新潟にSV10(のちにSV40に代替)カムリで帰省していて私もよく祖母が運転する車に乗せて貰っていました。

こんな風に女性ドライバーという存在が決して珍しくなかった私ですが、この企画展では初の女性ドライバーについて調査したようです。ちょっと調べてみましたが、日本で一番最初に運転免許を取った方は1913年(大正2年)、当時横浜在住だったアメリカ人歯科医のウルフさん。そして日本人では1917年9月27日に23歳の若さで試験に合格した「渡邊はま」さんだそうです。単に運転技術だけではなく自動車の構造も理解し、路上故障した際には自力で応急処置をして生きて帰ってこなければなりませんから私見も難しかったのだろうと想像します。

●ダットサン 16型 セダン (1937年)





1936年には日産自動車が今後女性ドライバーが増えると見込んでダットサンで街を走り回ってアピールする「ダットサン・デモンストレーター」というキャンペーンを行ったそうです。展示車のダットサンはオースチンセブンを大いに参考にしたと思われるコンパクトな外寸と722ccという小排気量、シンプルなメカニズムは扱いやすく、今後普及が見込まれるセグメントだと思われ、デモンストレーターも
この16型か前のモデル15型で走り回ったことでしょう。



脱兎に由来して目が赤いウサギのエンブレムが着いており、同じくウサギモチーフが散りばめられたスズキラパンの大先輩でもあります。

●いすゞ ヒルマンミンクス (1960年)




いすゞは戦後、自動車技術習得のため英国ルーツグループと提携しヒルマンミンクスを生産していました。展示車は1956年にFMCされた2代目で例えば同時期のトヨペットクラウンやダットサンと比べるとスマートで垢抜けた印象があります。このためオーナードライバーに人気があり、「女性によるヒルマンエコノミーラン」という女性だけのラリーを開始しました。女性2名のペアで東京大阪間を一泊二日で走りきり燃料消費の少なさを競うレースを行っていたそうです。女性ドライバー層に対する長距離ドライブの普及と交通道徳の再認識、協議を通じた相互親睦を諮っていたと言いますが、交通状況の悪化などで1965年を最後に終了となったそうです。それにしても、どうしても脳内で自動車ショー歌が流れます。「ベレッとするなよヒルマンから」



●ダットサン フェアレデー 1200 (1961年)




モータースポーツ関連でもう一台展示されているのは第一回日本グランプリに女性が参戦した際のマシンと同型車だ。フェアレデーはダットサンベースでFRP製だったボディを鋼板製に改め、1000cc「ストーンエンジン」を1200ccにスープアップして強化された改良型。展示車は、一層低重心に見える塗り分けの2トーンカラーですが、モールは欠品して塗装(カッティングシート?)で再現されていました。
決して息を飲む美しさ、とまでは言いませんがこういったお洒落な車をあの時代の日本で世に出していたという点で銀座に本社を構えていたお洒落な日産自動車を偲ぶことができます。

●ダットサン ブルーバード 1200 ファンシーデラックス(1963年)




日産車の展示が続きますが、このクルマは本企画展の目玉と私が考える「ファンシーDX」です。もう、これを見に来たと言っても過言ではありません。小型乗用車の本流であるブルーバードに女性オーナー向けに設定された恐らく最初のグレードであるファンシーDXはお洒落なカラーコーディネートだけでなく、多くの小柄な女性のためにシートスライド量が拡大されています。



更に車内で着替えられるような目隠しカーテンやUVカット機能を持たせたフロントガラス、後席で寛げるようなシートバックテーブルなどの便利装備や、手荷物が多い女性のためのコートハンガーや傘立て、ハイヒール立てに加え、助手席サンバイザーには化粧ポーチまで内蔵されている親切っぷりには驚かされます。極め付けは方向指示器作動時にオルゴールが鳴るというメルヘン仕様。



女性ドライバーのために何ができるか、を恐らく男性ばかりだった当時のエンジニア達が知恵を絞った成果なのでしょう。今、女性が選びがちな軽自動車に近い方向性のグレードと思います。

●ダイハツ ミラ (1982年)




女性ドライバーが増加したことで若年層のファーストカー、或いは低価格なセカンドカーとして軽ボンバン市場が急速に活性化した時の中心的な車種の一つがここに展示されているダイハツミラです。

乗用車(軽セダン)のクオーレをベースに後席を折りたたみ式の簡素なものにして最大積載量200kgの貨物車扱いとすることで、排ガス規制の緩和や節税が可能となり実質的に維持費の安いパーソナルカーとしてヒットしました。余談ですが、私の実家で初めて購入した新車も軽ボンバンの「ミニカ・エコノ」でした。

元祖は1979年発売の「アルト47万円」でお馴染みのアルトが発明したジャンルで
思い切って装備も簡素化しつつ、敢えて悩ませない様にモノグレードとしてとにかく安く買える新車であろうとした点は令和の現代でも見習って欲しいくらい鮮度のあるコンセプトです。

●スズキ アルト 麻美スペシャル (1985年)



展示車はスズキ歴史館からやって来た麻美スペシャルです。2代目のアルトは初代同様に低廉なベーシックカーという性格を受け継ぎ、バイアスタイヤで4輪ドラム、Rrリーフリジッドという簡素な構造ですが、それでも女性オーナーを意識してお洒落さを忘れ無いようにしていました。



麻美スペシャルはエアコンやAMラジオ、熱線入りバックドアガラスなど快適装備が追加された特別仕様車です。麻美というのはアルトの広告に出ていた小林麻美さんにちなんでいるとか。



今は軽ボンバンで節税すると言うより、普通車から軽を選ぶことで節税されているような印象です。女性を意識したアルトの立ち位置はアルトラパンなどのフェミニンな軽に引き継がれています。



●トヨタ WiLL Vi (2000年)





バブル崩壊を経て従来の価値観にとらわれない若年層のために新しい商品を異業種コラボで実現するというWillプロジェクトに参加していたトヨタの商品がWill Viです。かぼちゃの馬車をデザインテーマにし、傑作コンパクトカー初代ヴィッツのコンポーネントを活用して大胆なCピラーのクリフカットやキャンバストップ、フランスパンをイメージした内装などデザイン命のスペシャルティコンパクトカーでしたが2年足らずで生産を終了しています。

デザインのために当時のトヨタでほぼ標準採用していた社内規格であるGOAを取らなかったという拘りっぷりには驚きました。決してヒットした車ではありませんでしたが、優等生的な車ばっかりでは面白くない、という当時のトヨタの意気込みが感じられます。


ここまでは我が国の自動車と女性ドライバーの関わりに沿った展示が行われていました。以降は、自動車メーカーにおける女性エンジニアによるクルマ作りに焦点を当ててマツダとレクサスという2つのブランドで女性が開発総責任者になったモデルが展示されていました。

1986年に施行された男女雇用機会均等法によって、いわゆる大企業だった自動車メーカーにも女性総合職を採用する動きが加速し、当時珍しかった女性エンジニアが入社するようになりました。それまでの女性社員は一般職で昔で言う「お茶くみのお姉さん」というアシスタント的な役割から、男性と肩を並べて業務に取り組む総合職に活躍の場が拡がったということです。


●マツダ デミオ (2014年)



嬉しいことに妻が毎日乗っているデミオが展示されていました。マツダ系の展示施設以外だと初めてではないでしょうか。初代からのミニワゴンスタイルから、先代でキャラ変し、スタイリッシュな欧風コンパクトカーに舵を切りました。スカイアクティブ技術がふんだんに織り込まれてクラスレスな実力を持ったコンパクトカーとしてマツダ2と名称変更された今も販売されているロングセラーモデルになりました。

デミオの実験分野の責任者はマツダで女性唯一の特Aテストドライバー資格を持った竹内都美子さん。運転席座面は小柄な女性のために短めにしつつも、男性が困らないように硬度を調整し、ディーゼルターボの力強い走りも「合流路でモタモタしない」ことで女性ドライバーに寄り添ったクルマとしたといいます。

●レクサス UX250h (2021年)


この展示車のチーフエンジニアは材料技術出身でトヨタ自動車の技術総合職一期生である加古慈さんが務めました。CT200hのマイナーチェンジから開発責任者の職に就き、恐らくCTのモデルチェンジ版であるUXの開発も指揮しています。

高級車ながら扱いやすいサイズ感なので女性オーナーが多いことが特徴で、ユーザーに近い視点が求められたのでしょう。

そう言えばマツダの竹内さんもMX-30の開発責任者を務められていますが、女性エンジニアが仕上げた2台は共通して大きすぎず、可愛すぎない。そしてちょっと電動化やエコロジーを意識している、というところも不思議な共通点なのかなと私は思います。

~まとめ~

「日本におけるクルマと女性のかかわり」とテーマにした企画展は新鮮なテーマだし、ダイバーシティという現代的な切り口で自動車の歴史を俯瞰したことに価値があると思いました。ただ、最後のコーナーの女性エンジニアの活躍に関しては、現在活躍する2人にスポットを当て、延々とインタビュー記事を載せるのでは無く、もう少し学芸員の視点を織り交ぜた上で短縮し、もう少しクルマ開発に携わってきた女性について掘り下げてみるという動きがあるともっとよかったと思います。

断片的にしか知りませんが、1991年の5A-FE型のヘッドカバーは女性デザイナーが手がけたと言われているし自分が知り限りでもカラーデザインの分野でも女性は活躍しているし、精密な組立て技術が必要なインパネのラインには女性が向いていると聞いたことがあります。更に言えば学生時代に私は大型バイクの複雑なフレームを溶接する女性作業員の神技巧に感銘を受けてましたし、私の伯母は長年大型トラックドライバーの職について乳酸菌飲料を向上から運んでいました。

女性エンジニアの活躍以外にも自動車、そしてさらなる多様性の時代に目を向けてくれると更にいいものになったと私は思います。そして、クルマと女性の関わりというテーマなら、ゲストとして助手席に乗せて貰う視点でソアラやシルビアのようなデートカーの展示や、ライフステージが変わって自らハンドルを握るファミリーカーとしての90年代のミニバンが一台くらいあってもよかったし、皇后雅子様が外務省職員だった時代から愛用してきたカローラIIの同型車なんかも展示して貰えると更に見応えがあってよかったのでは無いでしょうか。



また、ブルーバードファンシーDXではたくさんの特別装備が追加されていたのですが、「スリッパータイプのアクセル」など単にカタログを転記するのでは無く
それが何を意味するのか深堀してくれると私達に新しい気づきを与えて貰えたかなと思います。或いは、そこで取上げられた装備の中で今も残っているものがあるかどうか、など何かトヨタ博物館らしい掘り下げがあってもよかったのでは無いでしょうか。

個人的にファンシーDXに装備されたアイテムの中で少し気になってササッと調べてみたのがバニティミラーです。1966年発売の初代カローラの時代は女性が化粧直しに使うバニティミラーは助手席に着いていました。記録に残る1969~1975年の運転免許保有者のうち女性は17%~21%。



時代が進み1976年~1985年でに22%~34.5%まで向上しています。この頃、女性をターゲットにしたグレードでは運転席にバニティミラーが装備されるようになりました。面白いのは女性が助手席に乗ると思われるクルマでは助手席にバニティミラーが設定され、女性自らステアリングを握るためのクルマには運転席にバニティミラーが備わるようになりました。1981年発売のセリカには助手席バニティミラーが初めて装備され、1982年発売のコルサの女性向けグレードには運転席バニティミラーが装備されていました。



1986年~1995年になると35%~39%とほぼ男性に並び始めましたが、この頃の男性ユーザーが多かった1992年式マークIIは上級グレードこそ両席サンバイザーでしたが、下位グレードは助手席のみの装備に留まり、コロナになると上級グレードには助手席バニティミラーが備わるものの、カローラでは1991年、LIMEグレードが無くなったことでバニティミラーそのものが廃止されています。今までは車種の中で女性向けグレードを仕立て、そうでない男性ターゲットのグレードでは助手席にバニティミラーが装備されているのが当たり前でした。一方で、カローラIIをはじめとする女性をターゲットにしたコンパクトカーには当たり前のようにバニティミラーがつき始め、1994年の最終型では各種装備がグレードダウンされる中で主要グレードに両席にバニティミラーが備わるほど市民権を得ています。



更に女性達がミニバンで子育てをするようになった1990年代のミニバンも例えば1992年のエスティマルシーダでは上級グレードのみ助手席バニティミラーが備わるのみでしたが、1996年のタウンエースノアでは最廉価グレード以外は両席バニティミラーが装備されるなど、運転席と助手席の性差?がほとんど無くなりました。

ちょっと横道に逸れましたがこの企画展は女性ドライバーの起こりからマーケットの創出へ展示が流れてきたものの、最後は流れが変わって、会社の大先輩へのヨイショとまでは言いませんが急に楽屋ネタになってしまったのが少し残念に感じました。




更に言えば、それだけ大事なデミオもUX250hも、黄砂でかなりクルマが汚れていて、UXのグリルは砂が詰まっていましたしモールは白化していました。博物館に展示するのだから、しかもつい最近まで現行型として販売していたクルマなのだからお金をかけずに綺麗にしようと思えばできたと思うのです。ちょっとフクピカで拭き上げた程度の実車は仮にインタビューに協力した女性エンジニアが見学に訪れたときどう思うでしょうか。サラリーマン的にも不味いんじゃないでしょうか。さらに読むのにかなり時間がかかるインタビューのボードは完全に蛇足でした。もしかすると学芸員の栄達や内部の組織的な何かのためには重要なのかも知れませんが、いつものトヨタ博物館の様にフラットな立場で自動車の歴史を取上げていただきたいです。

Posted at 2025/02/08 23:55:36 | コメント(5) | トラックバック(0) | イベント | クルマ
2025年02月02日 イイね!

2024年式 JEEPラングラー ミニ感想文

2024年式 JEEPラングラー ミニ感想文●おしゃれは我慢
JEEPラングラーに乗る機会に恵まれた。試乗車はバリバリの2024年式の2.0アンリミテッド・ルビコン。



GENERL PORPOSE VEHICLE→GP→JEEPというネーミングの由来だと聞いたことがある。そんなJEEPラングラーは第二次世界大戦時に開発された究極の実用車とも言える軍用車をルーツに持ち、1987年の初代モデルはタイヤを小径化し、乗用車ライクな雰囲気も持たせた三菱でいうパジェロのような立ち位置のオフローダーだ。数回のモデルチェンジを経て試乗車と同じJL系は2018年にデビューした。



試乗したルビコングレードは走破性を高めたトップグレードで専用の17インチマッドテレオンタイヤや4Lレンジの減速比を他の2.717よりもローギアードな4とするなどハッキリと走行性能に差が付くような装備差がある。スタビライザーをスイッチ操作によってフリーにすることでサスストロークを一時的に増加させる電子制御式Frスウェイバーディスコネクトシステムという呪文のように長い装備も装備されているのは珍しい。

ボディサイズは4870mm×1930mm×1855mmと大柄でホイールベースは3010mmという長さだ。フレーム式の伝統的なオフローダーの方式を真面目に守っていて車重も2tを超えるヘビー級。その巨体を2.0L直4DOHCターボで走らせるというのだから少し心配になってしまう。



質実剛健な出自のラングラーだが、実車を前にすると7スロットグリルや丸型ヘッドライトがカッコイイ。4人で試乗したが全員が「カッコイイ・・・・」と思わず口にしていたくらいだ。そのうち3人は「必要に迫られて仕方なく車に乗っている」レベルの車に興味が無い層なのにそう言わしめるJEEPの商品力は明らかに突出している。

全身から走破性の高さ、タフさが滲み出ている。例えばE/Gフードオープナーは無く、フェンダーの横の留め具を外してE/Gルームにアクセスする、とかワゴンボディに見えるが、実はFRPの外装はボルトオンで外れてオープンになる、などあらゆる部位に特別感がある。



更に外ヒンジのドア、継ぎ目が剥き出しのサイドシル、バックドアを開けたら見える必要以上にカッコイイサイドシルなどなど全身からJEEPのエッセンスが湧き出していた。ラングラー自体は1987年だが、JEEPは1941年から続くブランドだ。その事を最大限活かしたヘリテージの有効活用も見ものだ。



例えば17インチホイールや内装の一部にJEEPのアイコンが埋め込まれていて所有する者にJEEPの世界に浸って貰うための工夫は随所に見られる。



乗り込んでみると、想像よりも現代的で例えばランドクルーザー70の様なメカめかしい操作系では無くAppleCarPlayが使える12.3インチタッチパネルモニターやフルカラー7インチディスプレイ付きメーターやオートエアコン、ACC、衝突軽減ブレーキなど現代の実用車レベルの装備は備えているところが特徴だ。

走破性と信頼性を第一に考えるなら、なるべく機構が単純でプリミティブな物の方が良い。現地で故障しても修理して帰ってこられるからだ。しかしラングラーは悪路を走るための本格的な機構を備えながらアクセサリー的な装備を備える。もしかすると大半のユーザーにとっては本格オフロード機構の方がアクセサリーになるのかも知れないが、先に書いたとおりの本格的なメカニズムとファッショナブルなクルマとしての性格を打ち出しているのは朴訥としたランクル系とは異なる在り方で面白い。

プロユースの機能を持ちながらそれをファッショナブルに見せてプレミアムカーとする手法はレンジローバーも同様だが、JEEPはどちらかというとオフロードイメージをことさら大切にしている様に感じる。



運転席でドラポジをとるとペダルレイアウトが悲惨で左足の置き場に困る。いまやJEEPもストランティスの一員であり、ストランティスといえばアルファロメオのジュリエッタのMTも全く左足の置き場が考えられていなかった。JEEPの場合ATなのにブレーキペダルのすぐ横が足が入るスペースになっているがフラットなフロア面に足を置くので戸惑ってしまう。ランクル70も同様だがトランスミッションが大きいのでセンタートンネルも大きくなりペダルレイアウトが苦しくなりがちなのは理解してあげなくてはならないが、ATでこれかと思うと、個人的にはこれだけでも毎日のる事を遠慮したくなってしまう。

大出力E/Gを積んでいるから、トランスミッションも張り出しが大きくトンネルも大きい。ラングラーよりもマシだが、ランクル70だってかなり厳しい印象だった。こういう弊害をなくすにはマツダCX-60の様に湿式多板クラッチを使うなどの飛び道具を使わないと難しいだろうが、BEV化という手もある。

一方で4人乗りステーションワゴンとしての使い勝手は、あまり良くなく、ローディングハイトが高く後席の着座姿勢も脚を投げ出したような姿勢で、滑りやすいシートクッションゆえ尻がズレるとかアシストグリップが遠いとか特に褒められたものでは無い。軟派SUVの分厚いステーションワゴン的な快適さは望むべくもない。



JEEP、しかもイメージリーダーのラングラーなのであくまでもオフロードカーであることを軸として基本価値を維持し続け、決して自らのステータスを下げずにファッション性を持たせることで感覚価値を与え、ブランド全体の概念価値を高めている。

実用車としてJEEPを選ぶならグランドチェロキーもあるのだから、ラングラーは精神的支柱であれば良い。

1時間あまりの試乗タイムだったが、絶大なファッション性と引き換えに運転には多分に慣れを要する。「おしゃれは我慢」、と何処かで聞いたことがあるがラングラーに乗るということは目一杯おしゃれをするということなのだろう。★3だが、ファッション性とヘリテージの有効活用のうまさに1つ加算している。オンロードを走るクルマとしては★2
Posted at 2025/02/02 22:59:23 | コメント(2) | クルマレビュー
2025年01月25日 イイね!

2007年式コペン感想文

2007年式コペン感想文








満足している点


1.見る人を笑顔(・∀・)にするエクステリア
2.全てを許してしまうオープンエア体験
3.初心者に優しいアクティブトップ
4.絶品の4気筒E/Gと油圧P/Sフィーリング
5.10年に亘る生産継続


不満な点


1.ステアリングシェイク
2.ルーフ閉時の低級騒音
3.旋回中のバウンド時にフェンダーライナー干渉
4.市街地で気を遣う地上高
5.リクライニングして休憩ができない


用量用法を守って楽しくお使い下さい

歴史の始まりは1999年の東京モーターショー。ダイハツのコンセプトカーの中に軽のオープンを意味するKOPENというモデルが展示された。



KOPENには4気筒ターボE/Gに4輪ダブルウィッシュボーン式サス、4輪ディスクブレーキ、更にシーケンシャルモード付き4速ATと本格スポーツカーのようなスペックを誇ったオープンカーだった。ただ、この手の提案は決して新規性があるものではなく過去のモーターショーでもオープンスポーツモデルの提案は数え切れないほどあった。



たとえばスバル(富士重工)1961年のスバルスポーツが展示されていたし、1987年にはバブルの明るいムードを反映したJOCARではミッドシップ4輪駆動という夢のある仕様が奢られていた。





ダイハツも例に漏れずユーノスロードスターの成功に感化されたのか1991年に1.6LのX-021が出品されたが実際に市販されたオープンスポーツはリーザの完成車を熟練工が改造した「リーザスパイダー」で380台生産されただけに留まっていた。

90年代はバブル景気で企画された楽観的な軽スポーツカーが多数リリースされており、1991年のホンダ・ビート、スズキ・カプチーノ、1992年のオートザム・AZ-1はまとめて平成のABCトリオと呼ばれていた(Wikipediaではそう言っているが・・・)。

それぞれに特徴があり、スーパーカーを凝縮したようなAZ-1を除くビートやカプチーノは開放的なオープンスタイルだった。我慢できなかったのだろうが二度軽オープンカーのショーモデルを出していたスバルも1994年にヴィヴィオに1000台限定でTトップを追加した。このように軽のオープンモデルは小さなトレンドになっていた。

だからこそ1999年にショーモデルとして参考出品されたKOPENの軽オープンというコンセプトは周回遅れとも言えたのだが、かろうじて新しい提案があるとすれば軽自動車として初となる電動油圧による格納式ハードトップを備えていた事だろう。

確かに馬車の時代から普及期の自動車は幌によるオープンタイプがポピュラーだった。耐候性に優れたクローズドボディが主流になったのは、快適化・高速化が求められていた時代の要請だったが、快適なクローズドボディとオープンの愉しさを両立できないか、という技術的挑戦も案外歴史が古いのだ。



軽く調べてみると、旧くはプジョーが格納式ハードトップを装備し、開閉を電動化した初めての量産車種はフォードフェアレーン500スカイライナーであるという。長いRrデッキがせり上がる姿はまるで勝鬨橋のようだ。

1990年代になるとメルセデスのSLKやプジョー208CC、VWイオスなど従来のソフトトップに満足しないスペシャルティカーの+αの要素として格納式ハードトップが再び脚光を浴びていたトレンドもKOPENが電動油圧による格納式ハードトップが与えられる由縁だった。今までパーソナルカーとしての派生車種はスポーティに仕立てることが多かったが、もっとカジュアルにオープンエアを楽しめる格納式ハードトップはこの時期のちょっとしたブームの兆しがあった。

KOPENが好評だった事を受けてダイハツは市販化を決定。2001年には2度目のショーモデルCOPENを出品した。K(軽)オープンを意味する「K」をコンパクトの「C」に置き換えたコンパクトオープンに車名が変わり、翌2002年に正式に発売された。初代コペンはこのトレンドを追い風に軽自動車ながら電動油圧の助けを借りた格納式ハードトップを押し込んで見せた。90年代初頭のABCトリオが採用した後輪駆動であるとかユーノスロードスターが採用した4輪独立懸架といったいわゆる本格スポーツカー的なメカニズムを採用せず、FFでRrトーションビーム式サスペンションという現実的な選択をしている点も特徴である。

その分、アクティブトップ(格納式ハードトップ)や4気筒ターボE/G、マニュアルモード付き電子制御4速ATを備えて「スポーツ一直線」というより万人ウケしやすいファッション性の高いパーソナルカーというフォーマットでデビューした。




149.8万円(MT/AT同価格)という当時の軽自動車のハイエンド価格帯だったが、当時のリアルな感覚でも高いと思わなかった。4気筒ターボE/Gで格納式ハードトップを備えたスポーティなクルマなのだからムーヴやMAXの最上級グレードと同等の価格帯でも納得感がある。さらに、コペンは本社工場のエキスパートセンターという元々ミゼットIIを生産していたラインで製造されていたこのも価格以上のプレミアム感の醸成に寄与している。

コペンの生産はダイハツ社内の高技能者を集めて手作りに近い工程で手間暇をかけていた。例えば、ある部品を取付ける際のトルク指示が1.0Nm~2.0Nmの指示があるとすると、本来は指示範囲内のどのトルク値で締まっていても良いのだが、エキスパートセンターでは人間の手で1.5Nmに近づける努力をする。工程内のタクトタイムは60分なので、一般的な自動車工場の1分とか2分よりも遙かに長い作業時間が与えられるので一人の作業者が工程内で品質を作り込んでいる。一般的な量産車であれば、トルクがばらついても問題ないように設計するし、車体の建付けも最悪バラツキでも干渉しないように余裕を持って設定するものだがコペンの場合はそこを切り詰めているからこそ、軽という小さな枠の中でこのような趣味性の高いクルマが生産できているのだ。

並のプランナーならミラやムーヴといった量販車種と混流生産させる事を考えるかも知れない。ラインにおける部品の種類には限りがあるから、コペン専用部品は極力他車と共通化を強いられるし、設備の都合上作れずに簡素化、他車都合の設計変更を強いられてしまうため、コペンのあのエクステリアデザインは実現出来なかっただろうし、緻密な建付け調整が求められるアクティブトップを組むことが出来なかったはずだ。

運良くそれで立ち上げても趣味性が高く販売量が限られるコペンはその混流ラインでたまにしか流れてこない。そういう機種は作業の習熟が進まず、品質も出荷OKレベルにはなっていても、設計者が意図した図面の中央値狙いにはならないのだ。

このエキスパートセンターは10億円という多額の投資を行っているが、ミラやムーヴだと50億円は下らないというから、少量生産のメリットを活かして投資効率と品質の最大化を図る事が出来ている。あの時代のダイハツのあらゆるピースが綺麗にハマった成果が初代コペンだったのだろう。



デビュー後のコペンは意外に街でよく見かけたし、私の周りでも同期や会社の先輩3名、後輩が1人、出向先の上司も所有していた。2輪を卒業してコペンが欲しいという友人と共に一緒に中古物件を探し、新車に近い価格ながら、バリものの中古車を一緒に選んだこともある。だから、今回お借りする以前にも私の周りに7台もコペンが走っていた事になる。

「オープンカー」という手を出すにはハードルの高いジャンルでありながら、愛らしい形とワンタッチでハードトップが開閉できてしかも、耐候性が抜群という機能を兼ね備えたシングルのパーソナルカー、お洒落なセカンドカー、或いはちょっと贅沢な通勤用車という丁度良いニーズにコペンがハマったのだと思う。

やはり軽自動車だったこともコペンのユーザー層の幅を拡げていた。バブル期に1.6LのX-021を商品化していてもユーノス・ロードスターと競合し、1.6Lから1.8Lにスープアップした改良に果たしてダイハツが追従して1.8Lを用意できただろうか。(トヨタから4S-FEを融通する手はあっただろうが)



コペンは元々5年で2万台生産する程度の計画であった。つまり月間334台想定されていたという。決して事業として大きな利益が出るモデルではなかったが、月販500台目標だったところ、デビュー一ヶ月で5000台を受注、三ヶ月後に10000台を受注するなど想定以上の人気を得ることができた。

ライバル不在とは言え、新車効果が落ち着いて販売量が減ってきても時折限定車で話題を喚起しながら粘り勝ちをしたと私は評したい。結局、歩行者保護に関する法規が必須になってしまう2012年8月ギリギリまで販売された。

ダイハツ自身は世界的大ヒットのマツダに遠慮して決してヒットしたとは言わないが、ほぼ国内限定の市場に向けたニッチ商品としては充分にヒットしたと言えるのでは無いか。

定量的に語ればABCトリオ(A:4409台、B:3万3892台、C:2万6583台)の合計に迫る5万8496台が生産された。1.3Lに16インチホイールを組み合わせた輸出モデルを含めると6万6444台生産されている。つまりコペン1モデルでBとCの合計に匹敵する台数が生産されている。

コペンは愛くるしいエクステリアデザインやワンタッチで開閉できる気軽なオープンエアモータリングの敷居の低さとキビキビした走りの両立が今までに無い魅力だった。また、ハードトップを閉めればガチャガチャという低級騒音に襲われるし、オープンにしたらしたでステアリングシェイクや意外とハードな乗り心地など、それなりの覚悟を求めてくる。

これがコスト意識が緩慢な1990年代に産まれていたなら、ATの為にJB-EL(自然吸気の58ps)あたりが積まれて走りの特性が分かれていただろう。しかし、実際のコペンはターボE/G一本で、しかも比較的ハードなサスチューンを選択していたがそれがコペンの個性をかえって際立たせたかも知れない。

20代の頃、まだコペンは新車で売っていたし、オーナーの同期から短距離を一度乗せて貰っていたので、全く未知というわけでは無いはずなのに、今回1ヶ月に亘って生活を共にしてすっかりコペンの世界にハマってしまった。

たとえば朝、子供を送る段階で屋根を開けてしまい、通勤路は農道を含んだロングコースを選んでしまう。夜、残業もみっちりやって疲れ果てているはずなのに、そして帰宅後に課せられた家事が山積みなのを分かっているはずのに防寒着を着込んだままオープンのコペンで遠回りをして帰宅してしまう。



防寒着を着込んでヒーターをガンガンにかけておけば真冬でもコペンは思ったほど寒くない。サイドドアガラスを上げておけば高速道路だって余裕のオープンクルージングが可能である。家とは逆方向の峠道をコペンでドライブすれば脳から分泌されるドーパミンで感性が研ぎ澄まされていったし、ナイトドライブで冷え切った身体を温める背徳のカップヌードルもたまらないグルメだった。

休日もちょっと親戚からもらった玄米を精米するとか、子供を習いごとに連れて行くとかそういう用事を見つけては屋根を開け、隙あらば遠回りして帰ってしまうので私はコペン依存症・・・或いは寄生虫に身体を乗っ取られたカマキリの様ですらあったのだ。

ワイヤー引きスロットル、MT、油圧P/Sという気持ちよく走れる3要素が備わる上に4気筒ターボでオープンボディなのだから「楽しい」が渋滞するレベルだ。この幸福感がホンモノなのかを確かめたくて、現代のEPSやCVTから決別したいという某スギレン氏を誘ってコペンに乗って頂いた。ほどなく満面の笑みを浮かべるスギレン氏を助手席から見て「ああ、コペンはホンモノだ」と実感した。



コペンに乗っていると「そんな些細なこと気にせんでもええやん」という大らかな気持ちになれる。自転車のように近所の路地を走り回っても探検するもよし、たまにはレーシングカートのような気持ちで目を三角にして走っても楽しい。コペンで走り続けたい、もう目的地に着いてしまうのが嫌だな、と名残惜しくなるのがコペンの魅力だ。

だけど、コペンから降りて私が普段運転しているRAV4やカローラに乗り換えれば数分で2リッターハイメカツインカムの低速トルクの強さとかセダンの剛性感から来る安定した操縦性によってコペンの魔法から醒めるのである。

重要なのは絶対的な性能が秀でているかでは無くて、乗る人を陶酔させる魅力を持っているかどうかなのだ。その意味でコペンはスペシャルティカーとして第一級の素質を持っているし、運転を楽しみたい人のための相棒としてもライトウェイトスポーツとしても充分以上の実力と類い希なバランス感覚を持っていると確信している。

運転直後に評価をつけたらうっかり5★にしてしまいそうだ。しかし、公平に見ればステアリングシェイクはもう一筆入れて欲しかったので4★である。ファーストカーにしないのなら、これは買いだ。興味がある人は検討して欲しいし、オープンを抜きにしても4気筒5速MTで油圧P/S・ワイヤー引きスロットルという極めて運転しやすい特性に惹かれる方にも勧めたい。



●デザイン

コペンがデビューした当時、丸いフォルムを見た人は、ミニソアラとかアウディTTのパクリ、ニュービートルと・・・・と言った具合に他車に似ていると指摘されることが多かった。

確かに冷静に見ても、確かに丸っこいフォルムやレトロ感を狙ったコペンはそういう指摘があってもおかしくない、と思わせるだけのものはある。

しかし、コペンのエクステリアデザインを担当したデザイナーは1990年の「オプティ」を担当したデザイナーと同一人物で丸いヘッドライトと丸いフードバルジは初代オプティと同じモチーフなのだという。聞けば1991年のX-021も同じでありダイハツはオリジナリティのある丸目のデザインテイストを既に擁していたのだ。

「2人乗り小型オープンスポーツカー」生産累計世界一のギネス記録にもなったマツダのロードスターだって最初はエランのパクリと言われてきたのだからコペンだって「出る杭は打たれる」的いちゃもんが着くのも想定できる。ましてやダイハツは、ミラジーノに「コンパーノにインスパイアされた・・・」という苦しい言い訳をした過去がある。それだけにオプティをモチーフにという話を聞いても受け付けない人が居たとしてもまぁ仕方ない。



コペンの特徴はお椀をひっくり返したようなフォルム、笑顔のようなフロントマスクと前後そっくりなリアビュー、格納式ハードトップである。

フロントマスクは肩が丸く削られたシルエットと大きな丸目ヘッドライトの下には小振りなフォグとターンシグナルがあり、E/Gフード見切りを延長した形状でラジエーターグリルにつながっている。90年代後半の日本を賑わした2ちゃんねるでよく見るAA(アスキーアート)のような表情は見る人を笑顔にする。

フードは鉄に較べて変形しやすいアルミ製(ヤング率が鉄の1/3)だが小さい曲率を持つため、張り剛性もそれなりにある(洗車機で凹むようなことは無い)ものの、少し力を入れて拭き上げるような動作をすると全体が変形してしまう精密機械のような繊細さも持っていた。



このフードの上部にはおでこのように凸面がつけられている。フードバルジはE/Gなど内蔵物とのクリアランスを取る為に設定されることが多いが、コペンの場合はデザインのためのバルジ形状なのだという。それは同じデザイナーの作品であるオプティ、X-021(ショーモデル)にも共通する手法で車両センター付近が一番曲率が小さく端に行くほど大きくなっているのだとか。旧車ではこういう処理が多いということで永続性、ロングライフデザインを考えたときに内面から湧き上がる押し出す力が感じられる意匠として採用したそうだ。

ラジエーターグリルはグレー塗装されて楕円形の穴が抜いてある四段構成なのだが意匠面が上を向いていて光を受けて明るく見え、洗車時に拭き上げもし易く、ありがちなハニカム模様とか格子模様とは違うコペンらしい個性がこのグリルパターンから伝わってくる。現代のラジエーターグリルは冷却性能よりも空力を考えてギリギリの開口しか設けない割に意匠的に大開口の見た目を与える例が多い。そこで意外なほどラジエーターグリルが塞がっていて冷却性能ギリギリにしてしまう例もある中でコペンのラジエーターグリルはごくシンプルで自然だ。例の楕円形のパターンを抜けてくる風は余り多くないが四段構成の隙間から走行風をたくさん吸うことができる。



サイドビューはAピラーがある方が前、くらいしか判別できないほど前後対称に見える。開発中はアルファロメオスパイダーのようなウエッジシェイプも検討されたようだが、前後対称・水平基調のシルエットはコペンならではだ。

15インチという当時としては大径のホイールを履きながら、ホイールアーチの平坦面でホイールの存在感をダメ押ししている。実はプレス成型的には平面を打つことが意外と難しい。というのは、曲率をつけてあげないと薄い鉄板はびよんびよんに撓んで映り込みが汚くなるからである。フラットな面というのは実は微妙に凸形状になるようにしてあったり、本当にフラットな面では図面とは異なって金型メーカーの職人が図面の公差内で誤魔化してしまうといったような神業が存在する世界である。

「すべて本」のデザイン開発記では社内規で30mm以内というところを55mmまで寸法をとっているので恐らく生技泣かせの平坦面なのだろう。その報酬はタイヤの踏ん張り感を強調するだけで無く、フェンダーの断面の角度を寝かせることができ、コペンが持つ曲面的嗜好を無理なく成立させられた事だ。カーデザインというのは、情緒的でありながら、コンセプトの実現のために意外と理屈っぽく見た目を整えている。

サイドシルに長方形の蓋が着いているが、これは開発中にホイールベースを伸ばした名残であるようだ。燃料タンクの関係で後輪を後ろにずらしたとのことで2001年のショーモデルだと綺麗にツライチだが、量産型ではツギハギの跡が残ってしまった。(広告やすべて本に出てくるコペンは全て継ぎ目が埋められているのが不思議だ)

ドア後~Rrホイールアーチまでのエリアは3ドアにとって重要な部位でここが間延びするとダックスフントのように胴長に見えてしまう。4ドアと2ドアでホイールベースを強要するモデルの場合、3ドアのドア後端からが単調になってしまうのは画像検索してみればよく分かると思う。例えば往年のフェアレディZも2シーターと2by2を比較してみれば2シーターの方がプロポーション的には有利であることが分かると思う。

コペンの場合、ドア見切りが機能上必要な開口部より後方にある。もちろんドアヘミング(ドアの外板と内反を爪折りして接合する工法)のためでもあるが、コペンの場合は明らかにそれよりも後に引くことで不便にならないギリギリまで後に引いて退屈な面が残らないように気を遣っている。他車の場合はエアインレットをつけたりエンブレムをつけたりキャラクターラインを入れてこの部分が悪目立ちしないように配慮しているが、コペンはツルンとした意匠が売りなのでやれたのはドア見切りくらいである。

これ以外にもドアガラスとクオーターガラスの間でパキッとクリーンハウスが折れていたり、本来はカッコ悪く見えてしまいがちな要素をコペンは持っているのだが、駐車場にちょこんと止まっているコペンを見ていると絶許(絶対許さない)の対となる「全許(全部許す)」状態である。



個人的にコペンで好きなのはリアまわりだ。前後対称?と思わせるような面白い丸型テールの表情が可愛らしいが、Rrにルーフ格納機構とルーフそのものを収納するスペースが必要なのにそれと悟られない丸いフェンダーは見所がある。

また、Rrコンビネーションランプは赤いレンズ面全体が光り電球の光が直接見えないように工夫されている。コストが厳しい登録車であっても豆電球が分かり易いクルマがごまんとある中でコペンはしっかりとした意志を持って投資され、それが成功している。ただ、デザインのためだけで無く、室内から電球を交換できるような構造にするために自ずとそうなったそうだが結果はとにかく大成功だ。

コペンのエクステリアデザインは、私が考える「いいデザイン」の中には必ず選ばれると思うくらい好みだ。近年、ダイハツから1.5Lクラスのサイズ感で初代コペン的なショーモデルが出品されていたが、不思議なくらい間延びして見え、僕はノーリアクションだった。日本らしい小さくしていいものにする思想が表現されたデザインだ。



大好評だったショーモデルと変わらぬテイストが維持されたエクステリアとは異なり、大きく現実的に変えられている。ショーモデルはアルミ削り出しのセンタートンネルや正面のソフトパット3連メーターが特徴だった。シルバーと味のあるグリーンの組み合わせは明るく大人っぽい気品を感じた。

ただ、量産設計となるとそこには様々な要件が積み重なってこのテーマを守り抜くことが難しくなったため、永続性のあるデザイン、狭い室内をスッキリ見せるデザインに改めた。サイズに制約がある中でドラポジに拘ると、例えばドアトリムは大きく削られてグリップ位置に制約が出る。大柄な人が座って膝を曲げたときに干渉しない一まで前に出されている。さらにネット式のドアポケットは収納しないときは柔らかいのでその分を室内スペースとしても扱える。

更に面白いことにインパネの丸いエアアウトレットはユーノスロードスターの流用品らしい。投資節約と言わず、先駆者へのオマージュなのだと解釈している。この丸いアウトレットをイメージの中心としながらも実用性が高く、スポーツカーらしさも残している。メーターは3連メーターが近接して融合したようなレイアウトとし、アナログの水温計・燃料計も残されている。



オプションで真っ赤な革内装が選べたがスポーツカーらしいアイコニックなカラーリングで元々の真っ黒な内装色とのマッチングも良い。ショーモデルのグリーンも良かったが黒い内装色とのマッチングは少々悪かっただろう。

もう少しCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)的質感表現があっても良いと思ったが、モデルライフ途中では効果的に内装色を追加して鮮度を保ったことは良かった。オリジナル状態でも格上のオープンモデルでも同等レベルに留まっており、当時の軽自動車としては標準的で納得できるレベルにはある。キャビン居住性との寸法の取り合いの中では伝統的なスポーツカーに見えるように善戦したといえる。

デザインは外装4.5★で内装3★ オマケして平均4★。

●走行性能

~まずはクローズで~
朝、出勤前に子供を保育園に連れて行かなくてはならない。カーポート下にちょこんと佇んでいるコペンの丸っこいキュートな後ろ姿がある。どちらが前なのか分からなくなりそうな外観は子供受けが良い。2ドアなのでドアが大きく、隣の車が気になると思いきや、軽自動車なので大きな開度でも乗降できて子供にとっては乗り込みやすい。スイッチ操作でラゲージドアを開け、カバンや上履き、水筒を突っ込んで私も乗り込んだ。普段より足を奥に突っ込んで一気に尻をハイバックシートに落とした。

ドアを閉めるには少しかがんで前方にあるグリップを握って閉める。この配置関係はレバー比ゆえドアが重く感じるのだが、もともと軽量なドアを持つコペンなら気にならずに済む。



端からこのクルマのキャビンが広いはずなんて無い。全く期待はしていないから、運転席に座ったかまくらの中に張り込んだような秘密基地感と同時に「あれ、座れる」という意外な感想が浮かぶ。絶対狭いはずなのに感覚的に決して狭くない。

頭はルーフに接触しないし、足元が存外に広い。ペダルレイアウトが自然でステアリングとの不自然なズレも無いからドラポジは素直に決まる。少しストレートアーム気味なポジションの方がコペンには似合う。

考えてみるとFRよりトランスミッションがはみ出さず、センタートンネルが不要なことから有利、MRはホイールベースを短くしないと無意味なことから、キャビンは運転姿勢が取れるか取れないかの限界を狙うため、FFは有利だ。

キーを回してJB-DETが始動した。始動した瞬間に高く澄んだE/G音が気持ちよい。アイドル振動が小さく、回転数も低いのは4気筒E/Gを積んでいるからだ。



軽自動車で4気筒は、1989年のレックスを皮切りに1990年のセルボモード、1993年のミニカなど軽自動車の新たな標準になるかと思われたが、摩擦損失が多く、排気量固定ゆえ1気筒あたりの排気量が小さく、低速トルクが細いためスポーティな性格のモデルで無ければ魅力が出にくい。結果、さほどのニーズが無かったため、量販モデルは再び3気筒となったが、コペンに4気筒を積むというのはクラスレスな軽自動車という意味で大正解の選択だった。以後、あらゆる場面で4気筒の正しさを答え合わせする羽目になっている。

暖まると1速に入らなくなるロッド式マニュアルトランスミッションは、発症するまでは節度感があってスポーツカーとしての期待値を上げてくれる。少しゴリッとした感触のまま1速に入れて発進を試みた。

低速トルクが細い4気筒、というフレーズが頭によぎるが、軽量でローギアードな事もありクラッチミートは行いやすい。保育園の送迎とかコンビニとかそういう用途なら、2000rpmごとにシフトアップしていれば難なく走る。3000rpm位まで回せば充分俊敏で運転の楽しみが得られる。



E/G音が澄んでいて3000rpmまで回してもどこか心地よい。走り出してからずっとガチャガチャと騒がしいのは路面の凹凸で重たいルーフが暴れているから。サンバイザー付近でロックしているから、飛んでいくことはないが路面入力で屋根が浮いて落ちてくるときに音が出る。普通の車を乗り継いできた人ならうるさくて我慢ならないだろう。気になる音はこれくらい(だが随分うるさい)で他は乗り心地が悪いとか突き上げが酷いというレベルでは無くクーペなら許されるレベルだった。小さな路地も安心して走れ、対向車が来ても何も怖くないのは軽自動車の魅力そのままだ。

ある雨の日、せっかくなのでクローズ状態のコペンで夜の峠道を走らせた。低いドラポジのコペンはただでさえスピード感があるが、クローズ状態だとかまくらの中にいる様な感覚でぴったりと身体にフィットしたような感覚になる。



3速から4速あたりで軽く流していると、コペンのシャープな切れ味に驚きを感じる。丸っこい愛らしい見た目とは裏腹に反応がスポーツカーのそれなのだ。切ったら切っただけ曲がっていくし、3000rpm以上を維持していれば加速は充分満足できるので軽自動車だと言うことを忘れてしまいそうになる。

脇からシカが飛び出してきて何回か急制動を行ったが想像より手前でキュッと止まってくれる。機敏なのに信頼できるコペンの走りはスポーツカー的な味が相当濃く、なんとなくダイハツ技術陣のコペンに対する意気込みや、それまでの鬱憤がここで発散させているかのように感じた。それくらいクローズ状態のコペンはよく曲がり適度に加速する。ヘアピン続きの下り坂でも安心して突っ込めるし軽自動車ゆえにライン取りが自由で走りやすい。山を下りきる頃、すっかりコペンは優秀なスポーツクーペだと確信した。

途中雨が降ってきた。ミストや間欠時間調整ができないワイパーをLOとHIを切り替えながら走ったが雨打ち音も小さく、さらにソフトトップだとたまに発生する雨漏りなんていう失態を一切見せず、ハードトップクーペとして淡々と走ってくれた。

キャビンが小さいから空調もよく効いて曇りも皆無だ。Rrウィンドゥもガラスなのでデフォッガーが有効でかつてのビニール製ウィンドウを採用したオープンカーと比べれば雨天時の快適性は相当違う。かつて同級生のお父さんが所有していたBMW Z3は雨天に走ると水滴が落ちてきたのが衝撃的だったが、ウェザーストリップ設計者の細やかな設計技術とばらつかせない製造品質の賜だろう。

クローズ状態のコペンは決して広くもないし開放感も無いが、ソフトトップの不便さを払拭しながらもスタイリング的に格納式ハードトップが欠点になっていない点も素晴らしい。

この状態で高速道路も走らせているが車高の低さが空気抵抗の小ささに直結して動力性能に不足は無い。5速のままでも4速にシフトダウンしても充分な駆動力が得られる。100km/hの回転数は4000rpm近く、相当ローギアードなのだがうるさい!と腹が立たないのは音色が良い4気筒ターボの静粛性のお陰だ。横から見たときに翌断面に似ていることから揚力が発生して高速域で少し落ち着きが無くなることを懸念したが、ここでコペンが出しうる速度域では問題だとは感じなかった。


~市街地~

晴れた朝、先にアクティブトップを開けておいた。靴を履いて玄関から出てきた娘は大喜び。ちょっと保育園に行くだけでもテンション爆上げだったのは面白かった。保育園に駐車後、登園する子供もじっとこちらを見ているし、付近を集団登校する小学生達から「あ、屋根が無い」とか「小さい」という率直な感想がそのまま耳に入るのも楽しかった。



コペンは屋根を開けただけで世界が変わる。視界が急に開けて今まで見えなかったものが見えるようになる。毎日あれほど通った会社への退屈な道のりも新たな発見が続出した。オープンだから風を感じて匂いを感じた。外界から遮断されたパーソナル空間も自動車の魅力の一つだが、そればかりじゃない、ということをコペンは教えてくれる。朝日を浴び、真っ黒な内装色でも室内が明るく感じられ、そしてシームレスに外とつながるのも悪くない。屋根を開けるだけで、いつもの送迎や通勤が楽しくなってしまうのがコペンの魅力だ。



視界が広いから右左折も死角が無く安全だ。普段はパノラミックビューモニターに助けられて車に乗っていても、そんなまどろっこしいものを必要としないコペンは安全性が高いとすら感じてしまう。

一点注意したいのはコペンは最低地上高が105mmと低いので路面干渉リスクが高いことだ。保安基準の90mmは達成しているものの、これ以上シャコタンにする必要が無いスマートさだが、ショッピングモールのスロープ段差などでFrサブフレームを干渉させてしまうリスクは非常に高いので注意されたし。この最低地上高を実現するためにE/Gオイルフィルタエレメントは専用品番を起こすという気合いの入り方だ。

また、少し元気に左折するようなシーンでホイールがバウンドしているときに操舵するとフェンダーライナーと干渉する音が聞こえた。タイヤの包絡軌跡は検討しただろうが、フルバウンドしてブッシュが縮んだような場面までは見切れていないのかも知れない。尤も普通にステアリングを大きく切っただけで干渉する某車よりはマシか。



いわゆるタウンスピードで走っていればコペンは低速でも扱いやすく、妙な癖が無いので安心して運転できる。具体的にはワイヤー引きスロットルのレスポンスが良好でクラッチも繋ぎやすく、トルクも充分ある。また、屋根を開けていても冷たい風が吹き込みにくく快適性も充分ある。

また、油圧P/Sはロックtoロックが2.9というクイックなステアリングだが、これが交差点を曲がる際にステアリングを持ち替えること無く一発で曲がりきれるところが気持ちが良い。ほとんど持ち替えること無く曲がれるのはタイトなキャビンを持つコペンにはありがたい。そして油圧P/Sゆえに微小領域の反応が素直で気持ちが良いのと操舵からの戻りも自然なので運転そのもにストレスが無い上にヘッドクリアランスはこぶし∞個の開放感も味わえる。

いまどき、気持ち良いE/G+しっとりした油圧P/S+ワイヤー引きスロットルをMTで楽しめる車があるだろうか。ましてや屋根が開いてしまうのだから罪深い。

なんでもない市街地を4速50km/h位で走っていても楽しい。コペンはアクティブトップ以外は当時として旧い技術・大衆車向けの技術を使っているが、それらをフィーリングの良さという強みに変えている。だから、市街地をのんびり走っていても笑顔になってしまうのである。



少し褒めすぎているので苦言を呈すると、名古屋走りをしようとするとタービンブレードと当たって削れても問題ないアブレダブルシールを使ってロスを減らしたとはいえ、ターボが効いてくるまで若干モタつくのと、乗り心地自体はリーズナブルであっても必ずしもコンフォートでは無いので心して乗って欲しい。

~高速道路~

オープンカーにとって不利な高速道路を走らせる。ETCゲートを越え、ランプウェイを駆け上がる。決して舗装状態が良くない(特に本線以外)ので荒れた路面を走るとドーンとショックが入るが底付感は無い。2速全開で80km/h、3速7000rpmで100km/hまで回しながら本線に入った。



普通の4気筒E/Gでも4000rpm以上の領域はE/Gがうるさくなるが、コペンのJB-DETは澄んだ音質で8500rpmまで回るので心地よいから音量が大きくても許せるというお得なしつけ方をされている。

8500rpmまできっちり回した全開加速では0→100kmで13秒を少し切るくらいで絶対的な速さがあるというレベルではない。高回転域では頭打ち感が出るので恐らく7000rpm程度でシフトアップした方が速そうでもある。この高めのレッドゾーンの意味はワインディング路で明らかになる。

100km/h時の回転数は4000rpm。この回転数だと、アクセルをほんの少し踏み増しただけでレスポンスよくトルクが立ち上がる。低回転でトルクが湧き上がる気持ちよさも確かにあるのだが、予め高回転域で運転するコペンは難しい技術を使わずに高レスポンスを実現している。確かに過給機の最適化を図りものの本によると2800rpm時のアクセルレスポンスは30%改善されたという。またターボチャージャーはコペン専用品でコンプレッサハウジングのシール構造をアブレダブルシールとし、高精度の樹脂材を使用してコンプレッサー翼との隙間を1/3に縮小する、或いは軽量化で慣性モーメントを削減し、インペラ数を増やすなどコペンのために技術が奢られている。バブル期の遺産だったギア駆動の狭角DOHC16バルブ(≒ハイメカツインカム)の高回転型E/Gだが、単なる時代遅れでは無くしっかりコペンの魅力につながっている点は幸運だった。



高速道路の回転域ではコペンはどこからでも速い。新東名の120km/h巡航も容易い。その気になればもっと上の速度域でも巡航が可能だと確信できる。(リミッターはあるだろうが)市街地だと少し堅めの乗り心地も丁度良くなり、直進性も確保されている上に上記のレスポンスの良さゆえに軽らしい動力性能のギリギリさを感じること無く高速道路を走れてしまう。



・・・ここまではクローズ時と印象が同じだが高速道路をオープンで走る行為は強い走行風が気になるだろう。風が吹き込んで極寒、と思われるかも知れないが、ヒーターをMAXで稼働させ、コートを着て手袋をしていれば耐えられるレベルだ。
サンバイザーを上目に調整して気流を飛ばせば渦を後方に飛ばしてくれて長い髪も乱れない。そしてサイドドアガラスを上げておけば更に快適な走行が約束される。だから、モーターサイクルに近い開放感を得ながらも快適性は明らかに自動車らしい実力も持っている。



私は結局300km以上オープンで高速道路を走らせているが、雨が降っていない限りこのままオープンで走り続けたいと思える程気に入った。独身者でスーツケースを助手席に積んで長距離運転して実家に帰省する、なんてドライブも冒険心が満たされそうだ。

~ワインディング~

このクルマで峠に行くなというのは吉本新喜劇を観劇して笑わずに我慢する、或いは山崎蒸留場を見学した後の試飲会に行かないくらい勿体ない行為である。

結論を先に書くと、コペンは峠が最も楽しい。市街地でスクーター的にも使えるし、高速道路でも安定して走れるが、全ては峠のためである。

この日のために選んだのは三重県と滋賀県を結ぶ某峠。クローズ状態のままハイペースで走らせた高速を降りて適当な路肩でルーフを開けた。少し肌寒いが紅葉が美しい。2速と3速を多用する登りは後ろから来たペースの速いライダーに道を譲りながら楽しんでいく。複雑なアクティブトップを積んでいるとは言え、830kgという軽量なコペンは高回転を維持していれば決して加速は遅くない。とにかく速さを追求するレースをするような走りでは無いのでコーナーに侵入し、切り込んで立ち上がりで強めに加速、早めに次のコーナーに備えるという普通の峠ドライブレベルだとコペンは丁度良い。



全開加速しても(良い意味で)たかが知れているのでコペンの性能を遺憾なく発揮させながら走行できる。本当に速いスポーツカーを持ってきても持て余してしまうだけで無くミスをした際の被害も甚大になる。もっとも、コペンのコーナリングは安定していてコントローラブルだ。

オープン時のコペンはほぼ常時、路面の凹凸を拾ってワナワナとステアリングが左右に揺れるシェイクが発生していた。これはルーフを閉めていると発現しないのでルーフが開いたことで剛性が低下したのだろう。ちょっと最近のクルマでは感じないようなシェイクのレベルに驚いた。特定のE/G回転で振れが大きくなるというより路面入力で大きくステアリングが揺れてしまう様だ。またウインドシールドガラスとAピラーもワナワナと揺れて振幅が目で見えるかの如く暴れている。楽しい操縦性とパノラマビューによってほぼ相殺されているが、もう少し何とかならないのかという思いもあった。

上り坂の深いコーナリングでは立ち上がりで少々トラクションが抜けるような感覚が少々あった。メーカーオプションのLSDがあれば相当楽しかっただろう。胸すく加速を味わった後で再びコーナリングだ。車高が低くコーナーでグラッとロールするような感覚が無くズバッと舵が決まる。

以前運転したロングホイールベースコンセプトのオープンスポーツモデルと比べると、同じくらいクイックなステアリングだが、応答遅れが無く反応がリニアなのはコペンの方だ。何というかステアリング操作に対する反応の分解能が高い。単位入力あたりのボディねじれ角で表現されるボディ剛性の観点ではホイールベースが短い方が有利だ。コペンの場合は床下に大型のX字ブレースを入れるなどオープンモデルとしては異例なほどシャキッとした走りが楽しめるのは開発陣のスポーツカーへの情景がそうさせたのかも知れない。この見た目なのでもっと穏やかな方向性でまとめても充分に支持が得られただろうと私は推測する。過激な方向に持っていくだけなら3rdパーティが勝手にどんどんカスタムパーツを出すからだ。



快晴の青天井の峠は空気が澄み切っていて髪を冷たい風がなでてゆく。

山頂のトンネルを抜けると下りセクションが始まる。私の技量だと上り坂でも充分速いと感じてしまうのだが、下りは「待ってました!」とばかりジェットコースターのような感覚で駆け抜けていく。当時の開発陣曰く「六甲なら負けない」とのこと。

高回転で歌うJB-DET、浅いコーナーをアクセルを軽く抜いてほとんど減速させずに安定してクリア。クローズ時の剛性感は明らかに無いのに不思議とバランスが取れている様に感じる。重量配分は車検証でFr520kg/Rr310kgだが、ルーフを開ければ重心が下がり前後バランスが改善されているのかも知れない。FFゆえコーナリング中に限界域に近づいているときに扱いやすいこともコペンの魅力だ。アクセルを抜いてリアを積極的に流すような運転はできないが自分のAE92の様な愉しさがある。



橋の継ぎ目を越えても、堅くとも角の無いショックに留めて私の目線は動かされない。そこから先はつづら折りのヘアピンが続くのでしっかりヒールアンドトウを使ってシフトダウンしてコーナーに侵入する。レブリミットが8500rpmと高いので高速域から低いギアを選んでもオーバーレブすることなく変速できる点に懐の深さを感じる。相変わらずステアリングはスパッと決まるし立ち上がりも鋭い。集中して走り込んでいくうちに車内でエンドレスリピートしていたTUBEの「風に揺れるTommorow」が段々聞こえなくなった。



意のままに駆け抜けるために運転に集中する事はなんて気持ちが良いことなのだろう。勿論、私が普段運転するRAV4やプログレだって気持ちが良い瞬間があるのだがコペンのそれは別格だ。もしかすると山奥の誰も居ない露天風呂で大自然に囲まれながら開放感に浸る、或いは「ヌーディストビーチ」で開放的な気分の中でアクティビティを楽しむ行為に近いのかもしれない。(後者は想像に過ぎないけれども)



この純度の高い運転行為を楽しむのにコペンは何の不足も無い。並の屋根が開くだけの自動車よりも楽しくなってしまう。ちょっとオーバーペースかなと思ってもコーナーでちゃんと前輪に荷重をかけて無理をしなければ深いコーナーも刺激的な横Gに耐えながらクリアできる・・・と思っていたのもつかの間。下りコースの終盤、なんでもないコーナーで減速が不十分でラインから外れそうになった。ブレーキが甘くなり、タイヤも熱でダレてしまったのだ・・・。



あともう少しで走りきる惜しいタイミングでクーリング走行に入らざるを得なくなった。少しだけタイヤを奢ってみたり、ブレーキ系にも手を入れたくなってみたくなる。そうすると、8500rpmまで伸びて欲しいなぁ・・・などと考えてしまった。

久しぶりに嗅いだ焦げ臭いニオイを楽しみながら、いつもよりゆっくり自宅を目指した。



コペンの走行性能は軽自動車として、ライトウェイトスポーツカーとしても ★4(走りきってたら5)

●収納居住性

まず大前提として軽自動車であり、格納式ハードトップを持つコペンに充実したポケッテリアを望む人は少ないだろう。機能の厳選、mm単位の調整によってドラポジが整えられ、一般では考えられないほどの建付け調整を人の手で行って格納式ハードトップを積み込んでいるからこの意匠とパッケージを実現していることを人は
自然に理解してしまうからでは無いだろうか。

オープンにするための手順をおさらいしよう。E/Gを始動した停車状態でサンバイザー外側付近のロックを解除する。小さなキャビンなので運転席に座ったままロック解錠が可能だ。




その次に、センターコンソールのプッシュ-プルSWを「引く」とアクティブトップが動作を始める。このスイッチ操作はちょっと悩ましくて、窓を開けるときは押すのでこの時の感覚で何回か間違えたことがある。



前後に押し引きするのトグルスイッチだと直感的に分かる(屋根を後に開ける/屋根を前に閉める)のだが、スイッチを新設する投資は受け入れられなかったと思われる。既存のPW用SWにタンポ印刷する他なかったのだろう。

さて、そのSWを引くとまずPWが全開になり、普段は下がらないQTRウィンドゥも全開になる。次にトランクリッドがリンク機構を駆使して前開き(一般的なトランクの反対)でせり上がる。賢いのはトランクリッドの跳ね上げ時に立体駐車場などで上部構造物に接触してしまわないようにリンク機構を使って車両後方に動きながら最低限の動作量になるようになっている。



トランクリッドが上がりきったら、次に屋根が持ち上がる。おおっと歓声が上がりキャビンが開放感に包まれる。




屋根は「く」の字に折れながらラゲージスペースに格納されて、最後にトランクリッドが自動で締まり、「ピッ」と動作完了を知らせてくれる。ここまで20秒足らずで終えてくれるそうだ。サンバイザーの位置を整えたら走行可能だ。



ただ、些細なことだが、上の写真の様にルーフを開けた際に段差が残ってしまうのがほぼ完璧なデザインのコペンにとって玉に瑕なのだ。そんな完璧主義者のためにオープニングカバーがある。当初はオプション装備だったが、2008年以降標準化されている。



下の写真の通り、完璧な見た目になるのだが、実際に取付けるのが面倒くさい・・・。私も2回取付けたが、恐らく一生に2回ということになりそうだ。



屋根を閉める時は、SWを「押す」と閉める動作を行う。逆の動作で屋根がウィンドシールド枠に設置し、トランクリッドが締まる。最後にブザーが鳴っても窓は全開なのでPWを操作して屋根を上げてやる必要があるのが開けるときとは違う。

アクティブトップ作動中は内外気切替レバーの左にある作動灯が点灯するので、万が一の作動中の完了し忘れやロック忘れを防止してくれる。この作動灯のピクトグラムがISOの一般的なものではなく、コペン専用にデザインされている点にも注目しておきたい。



この状態でラゲージオープナーボタンを押した。ぼん、と作動音がした後トランクリッドが浮いた。前開き(通常のセダンと同じ)に開いたラゲージスペースの光景はほとんどがルーフで後端には傘やちょっとした洗車道具が置けるか置けないかのスペースしかない。



ルーフを閉めてしまえば思いのほかラゲージは大きく、ゴルフバッグも載せられるというからゴルフを趣味とする当時のおじさんたちのセカンドカーにはぴったりだし、気合の入った人なら旅行用のスーツケースを積み込んで旅行し、ホテルに荷物を置いた後はオープンで周遊が楽しめる。この手のクルマとしてはよく考えられている



ただし、長距離ドライブにおいて車内で休息をとる事が難しい点は要注意だ。2+2のオープンならまだしも、軽2シーターともなると、運転姿勢は満足いくポジションが取れたとしてもリクライニングしたり脚を伸ばすことは不可能だ。



ライダー達のようにベンチで寝転んだりしないと身体を伸ばすことすらままならない。かつて20代だった私がヴィヴィオで行っていたような夜通し走り続ける貧乏自動車旅行をコペンで行うには若者でもハードルが高い。オーナーの方はどうやって休息をとっているのだろう。

コペンは居住性も積載性も誇る車ではない。絶対評価で★1だが、軽オープンということを考えれば★3。私の通勤やドライブ程度の目的なら収納も納得感があり、クローズ状態ならスーツケースも積める。ノーマル状態からオーナーが手を加えないと快適なドライブは難しいだろう。

●燃費

コペンのカタログ燃費はアクティブトップのMT車で18.0km/Lだ。これがディタッチャブルトップのMTだと18.8km/Lに向上し、同じアクティブトップATだと15.2km/Lとなる。

既に初代フィットなどによるカタログ燃費競争が始まりつつあった当時、コペンの燃費が良いと思って居る人はそんなに多くなかったが、この燃費では買って貰えない、と焦るほど悪い燃費でも無かった。

今回の燃費記録は試乗で1770km余りを走らせて平均13.1km/Lであった。カタログ燃費の72.7%と決して悪くないのだが、給油毎に注目すると12.1~15.4km/Lまでの幅がある。



楽しすぎて走らせまくった燃費が前者で、長距離ツーリングで燃費を多少意識して走ったのが後者である。おそらく屋根を閉めて高速道路の走行車線を淡々と走っていればカタログ値超えは不可能では無いと思う。しかしながら、コペンが持つ愉しさが私に低燃費走行など許してくれないのであった。

「ああ、燃料を多めに噴射してるんだろな」と頭で考えながらも脳が喜んでいるという状態に陥るからである。

かつての私はカローラですら淡々と高速道路を走って20km/Lを出したことがあるのに、コペンではうまく行かないという面白い経験をした。ただ、燃料タンクが40Lあるため、長距離で普通に走っていれば一気に500km程度なら十分に可能だ。軽自動車のサイズ感で満タンから500km一気に走れるBEVはまだない。航続距離という意味でもコペンはリーズナブルな燃費性能を持っていると言える。★4つとする。



●価格

価格は下記の通り、変速機やルーフタイプにかかわらず統一価格と非常に珍しい。



最も主力となる電動油圧アクティブトップ仕様は15インチアルミホイール、フォグランプ、前面UVカットガラス、電動リモコンドアミラー、油圧P/S、チルトテレスコピック機構、PW、キーレスエントリー、マニュアルA/Cなど基本的な装備品がしっかり装備されている。

安全装備も最初からフル装備で両席エアバッグやABSは当然としてEBD(前後制動力自動制御システム)やプリテンショナー・フォースリミッター付きシートベルトも装備されている。

原価的に不利な電子制御4速AT(マニュアルモード付)が5速MTと同価格というのはATが割安というより、MTの価格が少し値上げされて好事家から粗利をとろうという商人魂を感じるが、今回試乗した限りだとMTの愉しさゆえ、AT同価格でも許容できる。



この状態が標準仕様で、コペンには3つのパッケージOPTと4つの単独OPTの設定がある。

①Gパック
プロジェクター式ディスチャージヘッドライト
イモビライザー
CD/MDデッキ一体式AM/FMチューナー(16cmスピーカー×2)
・・・税抜価格10万円

②スポーツパック(アクティブトップ専用)
専用ハードサスペンション
Rrパフォーマンスブレース
「COPEN S」デカール
・・・税抜価格10万円

③レザーパック
シートヒーター付本革シート
MOMO社製本革STG(約5.1万円)
・・・税抜15万円

その他、単独OPTは

オープニングカバー(アクティブトップ専用)
・・・税抜価格2万円

LSD(5MT専用)
・・・税抜価格3万円

エアロディフレクター付きロールバー(ディタッチャブルトップ専用)
・・・税抜価格2万円

特別塗装色
・・・税抜価格3万円

アクティブトップとディタッチャブルトップは同一価格だが、装備内容が細かく異なる。ディタッチャブルトップはアクティブトップには備わるラゲージパーテーション、電磁式トランクオープナーとイージークローザーが装備されず、エアロディフレクター付きロールバー(税抜2万円)も着かない。その代わり、スポーツパック(税抜10万円)、Rrスポイラー(約4万円)が標準装備されている。

つまり、差額12万円が発生しているはずなのに同価格ということはアクティブトップは12万円相当だということになる。この低価格は大変魅力的だろう。確かにディタッチャブルトップはアクティブトップより30kg軽量で走りに特化した純スポーツカー的な性格を強めたモデルであるが、アクティブトップで精一杯敷居を拡げようとしたオープンカーの世界を考えると、途中で仕様が廃止された歴史的事実も納得がいく。



さて、私だったらアクティブトップの5速MTを基本にGパック+LSDに用品でMOMOステを選ぶ。ディスチャージと手頃なオーディオは欲しいし、本革ステアリングも欲しい。LSDは今回試乗してどうして元は思えなかったが、トラクション性能に対しては備えておきたい。スポーツパックはつけなかったが、標準設定でも峠で充分笑顔になれたので不要と判断した。そのお金でブレーキとタイヤに投資しておきたい。シートヒーターも魅力的だが、標準シートでも充分だと思えたし、寒さに対してはブランケットを準備しておけばいい。

ちなみに、2008年末の新車情報雑誌に掲載されていた購入金額見積もりは下記の通り。

本体  1498000円
消費税  74900円
取得税  40400円
自動車税  7200円
重量税 13200円
保険料  26280円
登録諸費用30000円
リサイクル 9550円

総額1699530円
3年後残価45%

OPTをつけても200万円もあれば買えてしまうのは当時でも相当なバーゲンプライスだった。先人たるABCトリオも150万円付近の価格だったので決してボッタクリの高さではなかったが、コペンの場合はマニアックは諸元を捨てた見返りに装備水準が高く、実利をとった割安感があった。



モデル末期にはアルティメットエディションが税込182万円(税抜173万円相当)だったが、これも特別装備内容を考えれば決して高い訳では無かった。

そして現在、中古車価格は高騰している。2014年から2世代目が発売されているにも関わらず初代の程度の良い個体は200万円を超える価格で売られている。

新車価格の149.8万円は間違いなくバーゲンプライス。★5

●故障

アクティブトップは複雑な動作をあっという間に実行して日常と非日常を20秒足らずで切り替えてくれる見事な舞台装置である。ただ、残念ながら試乗車は油圧が正常に立ち上がらないためスイッチ操作をしてもゆっくりしか動かず、しまいには「んーーーーー」というだけで一向にトランクリッドが開こうとしなくなる。30秒ほど経つとSWを引き続けても以上と判断されて動作を止めてしまう。



仕方が無いので片手でSWを操作し、片手で動かないラゲージドアを手動で押してやるというツイスターゲームのような姿勢を強いられる。季節が進んで更に寒くなると全く動かなくなってしまった。片手ではきついので、ストックしていたレジ袋を右足に靴下のように履いた状態で足でSW操作して両手で開閉を行った。



そんな大変な思いをしてまでわざわざ屋根を開ける必要があるのか?という疑問が湧く人も居るだろうが、コペンには屋根を開けたくて仕方なくなる魅力があるのだ。

アクティブトップが魅力の大きな割合を示すコペンなのに、アクティブトップが故障してしまうと本当に辛い。真面目に修理すると相当高額(40万円以上説あり)だが、専門店が自力でリビルト品を販売しており、これを使えば安く修理できる。

Posted at 2025/01/25 01:03:51 | コメント(3) | トラックバック(0) | 感想文_ダイハツ | クルマ

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「@M-T-K さん バブルでGOってあの165km/h出した方の、、、(笑)コンフォートが出る前の時代を再現するタクシーってなかなか知識求められますね。逆にコンフォートと同時代の作品なら随分楽できますが、同じ車をたくさん並べないとウソくさくなると言う(笑)」
何シテル?   10/15 13:21
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