恒例の秋山登山。
今年は、舞茸フィーバーにうつつを抜かして忘れてた。
で、突如、昨年から温めていた”課題”に挑戦。
”課題”は、南アルプス玄関口の上河内岳。
茶臼岳とともに南アルプス入門編の山として広く知られている。
この山は通常、南側の茶臼岳から、あるいは北側の聖岳からの縦走での登頂が
一般的なのだが、実はもう一本のルートがある。
それが、この”課題”。
山頂から真東に伸びる嫋やかな「東尾根」。
この尾根は、ピークから2600mまでビッシリ美しい這松を敷き詰めた南ア有数の
激藪尾根。おまけに2600m以下にはシラビソ幼木の藪も付いている。
入山者は圧倒的に少なく、年に数パーティ、物好きな方々がこの尾根を下る程度。
今回は、この山から流れ出す上河内沢を遡り、激藪を泳いで山頂に達しようとの
試み。
いつものように
0:30 自宅出発
03:30 畑薙ダム 真っ暗な中、ヘッドランプの灯りでひたすら歩く。
05:30 ウソッコ沢小屋で沢歩きの身支度を整える。
05:50 周囲が見える時刻、上河内沢へ。
朝陽に映える上河内岳。
この時点では、今日一日の晴天は約束されたと確信していたが・・・。
川の真ん中に大石が現われ
美しい淵に落ちる小滝を過ぎると
07:20 横沢合流点、ここから本流から分かれ、支流の横沢を遡る。
1800m辺りの草原より源頭の横沢コル方面を仰ぐ。
沢の水は伏流し、もう足を濡らすことはないので渓流シューズからトレラン
シューズに履き替える。
1900m辺り、秋色の伊谷山(地図上2423m)山腹。あと1週間で素晴らしい
彩りを楽しめるだろう。
もう一度来ようかな・・・。
09:20 2000m二俣より南方向、大根沢山・大無限山を望む。どちらも深く
愛する辺鄙な山だ。
左俣が横沢本流。ここまで来るとの源頭のせせらぎが復活する。
最後の水補給点。
横沢コルへは、枯沢の左俣を辿る。
10:10 横沢コルに到着。
日が射さず寒い処だが、お結びで二度目のランチ。
少し登って振り返ると伊谷山(地図上2423m)。
ここも生きている内に一度登ってみたい山。
2500m付近。この草地が尽きるとシラビソ幼木が密に生えた藪漕ぎ1回戦に
突入。獣道を参考に藪の隙間を探しながら進む。
2550m、尾根が左に曲がり等高線が間延びした辺りは、ヌタ場が多い。
12:00 2600m樹林限界。
いよいよここからが激藪本番!!
とりあえず、突破口を探すがどこもかしこも人丈以上の這松、取り付く島もない。
力技で這松を押さえつけて太い幹に乗り、またその先の枝を押さえつけてその幹に
乗り・・・を繰り返す。
ガスに隠れた山頂が、ひどく遠い・・・。
12:30 2660m点。
来し方を振り返れば、北側からガスを巻き込んだ烈風が吹き渡り、いつ
の間にか這松やシャクナゲの枝に霧氷の白い華を咲かせている。
ここまで僅か60m標高をあげるのに30分もかかった。
這松の枝に”海老の尻尾”のように付いた霧氷は融けるものあり、再凍結してツララ
になるものあり。
握る手も、乗る足も滑ることこの上なく、無駄に体力と時間を消費する。
藪漕ぎ用に惜しげがないと思って用意してきたHCの作業用手袋は防水性も防寒性
もなくあっと言う間に絞れば水が滴る始末。
トレランシューズの中は、まるで子供の水遊びだ。
14:00 上河内岳山頂。
たった150m登るのに1時間半、北西風はますます吹き荒れ気温も低下。
着雪で字も読めない山頂標識は、まるで真冬の装いだ。
指先、足先には殆ど感覚がない。
おまけに雨具の上衣だけは着ていたが、藪漕ぎの動きがとり辛いのでレイン
パンツは履いていなかった。
おかげで下半身は下着までびっしょり、腿から腹まで寒気が上がって来る。
ここまでくれば、後は気楽な一般道だが、とにかくこの風から逃れる必要がある。
まず手袋を予備に交換、2枚だけ写真を撮り、登頂の知らせを2時間半も待ち続け
ている山神様と息子達にラインして即刻、下山。
この山の名勝”竹内門”、二つの門のような石柱の真ん中を登山道が通っている。
ここも冬ムード満点。
30分で窪地のお花畑。ここに逃げ込めば二重山稜が風から守ってくれる。
お花畑の手前、雷鳥が救助隊のように先導してくれる。
這松の陰に座り、靴下を乾いたスペアと交換。
防寒のためにフリース上衣を一枚重ね着。
そして、パワーバーを齧ってエネルギーチャージ。
これで行動を止めなければ、下半身の濡れにやられることは無い。
氷の花を咲かせた岳樺も見るだけなら美しいが・・・
3時間も”海老の尻尾”の生えた這松と格闘するのはもうコリゴリだなぁ。
15:20 お花畑から再度吹き荒れる稜線を歩き、2400mの茶臼小屋まで下ると
ピタリと風は止む。
これで安全圏だ、改めて山神様や息子達に状況報告。
東方を見ると伊谷山(地図上2423m)辺りに日が射しているのが、見えた。
山神様の連絡でも、街は素晴らしい好天だという。
先程までの試練は、標高2400m以上を吹き抜ける季節風がもたらした冬の洗礼か・・・。
下半身の冷えから体を守り、着干しするにはゆっくり休まずに歩き、発熱し続ける
必要がある。
それに最近ランニングで傷めた右ひざが、下りでは痛い。
20:10 畑薙ダム
ゆっくり、ゆっくり歩いて山頂から6時間もかかってしまった。
心配した長男から「遅い!」とライン。
(ちなみに10月初旬、彼は上河内山頂から畑薙まで4時間で下りている)
詫びを入れると「生きてりゃいい。」と・・・。
次男は、「運転気をつけて」と・・・。
22:50 自宅帰着。
山神様に詫び。
一日、遊んでやらなかったのでむくれているゴローにも詫び。
でも・・・・あ~、久しぶりに楽しかった~♪