こんにちは、銀匙です。
さて、「レンズシステム」の構築を考える際、超広角レンズの選択は結構悩ましいものです。
なぜなら情報がめっきり減るからです。
大体普通の人が使う焦点範囲は、広角端で24mm(35mmフルサイズ換算)なんですね。
なので28mmとか24mmのレンズは割と低価格で買えるし情報も多いのですが、そこから1mmでも広角になると途端に値が上がり、買う人が減り、情報が減る。
私は以前から超広角の終着点はVoigtlanderのUltraWideHeliar12mmF5.6だと言ってきましたが、これはもう極地の世界です。
そこまでは要らない。
でも24㎜じゃ狭いんだ。
もうちょっと、あとちょっと、ほんのちょっとでええんじゃ。
そんな方の為に、現在入手可能な20㎜前後のレンズ3本について、同じ環境で撮った写真を元にお話ししたいと思います。
ただ、NikonのAi20mmとかCanonのNewFD 20mmとかOM 21mm F3.5ではありません。
その辺はきっと誰かが紹介してるはずですからね。
ちなみにこれらは大体中古で2~3万とお考え下さい。
なお、SONY純正の20mmF1.8(SEL20F18G)は新品で約11万円です。
そんな所を背景として含めつつご覧ください。
α7CにPENTAX SMCT20mmF4.5を装着した場合
最初の1本目はPENTAXのM42マウントレンズ、20mmF4.5です。
これは1970年代の発売であるので、オールドレンズとして紹介します。
とはいえ10群11枚で最短撮影距離は0.2mと、20mmレンズとしては十分現代に通じるスペックを持ってます。
鏡筒径は58㎜前後であり、PENTAXのM42レンズとしては太く、重いです。
中古の実売は新宿でおよそ2.5万位です。なのに買取の方は1万切ります。
しかしあまり見かけないという不思議な相場観です。
開放がF4.5ゆえ、開放でもそう滲んだりボケまくることはありません。
1ノッチ動かしたF5.6以降の方が絵は締まりますが、絞り羽が5枚しかないので逆光でもろに絞りの形が出てしまいます。
開放F4.5の1枚
1コマ絞ったF5.6の1枚
順光F5.6では画面四隅の端に流れが若干認められる場合もあるものの、総じて絵の締りはよく、端に行くに従って2字曲線的にどっすんと暗くなることもなく、広角だから特別と身構える必要はありません。
F5.6サンプル
ただ、開放でF4.5なので、夜景の撮影、特に星景写真に用いることは不可能でしょう。
暗すぎてシャッターが30秒を越えてしまい、星が動いてしまいます。
α7CにVoigtlander ColorScoper 21mmF4を装着した場合
次は現在も販売されている、ライカMマウント用のカラースコパー21mmF4です。
値段は新品でおよそ4万。中古は相場の動きが激しく、下手すると新品並みの値段を提示されたりします。
これはれっきとした現行レンズですし、画質を徹底的に追求とメーカーはうたってるのですが、一言で言ってクセ玉です。
まずは逆光を見てみましょう
開放F4
F5.6
以前説明したように、赤茶系のゴーストが映り込んでます。
その形も開放F4から複雑な有機形状ですので嫌な人は徹底的に気になるでしょう。
また、逆光でさえも四隅にはPENTAXの20mmF4.5より明らかな暗さがあります。
順光、斜光であっても全く変わりません。
順光、斜光サンプル
ただし、これだけコンパクトなレンズで四隅に至るまで流れがない点は素晴らしい。
いっそモノクロでハードコントラストとかにして撮ると良いのかもしれません。
クセをどう生かすか、撮影者に問われているレンズという感じがします。
例えばリコーのGR21のようなレンズと考えるとしっくりくるかと。
これもまた開放F4なので、星景写真には向きません。
α7CにTTArtisan 21mmF1.5を装着した場合
最後は今年2021年4月に追加されたばかりのレンズです。
バリ最新です。
製造元は中国は深圳の銘匠光学というメーカーのレンズです。
中国製レンズというとアマゾンでAPS-C専用レンズを5千円から1万円程度で売ってたり、マウントアダプター内にイメージサークルを0.7倍に縮小するレンズを組み込んだ、フォーカルレデューサーを売ってたりするメーカーに多いです。
彼らの源流は監視カメラ、CCTVカメラ用のレンズから成長してきたと思われます。
その為ColorScoperのようなクセ玉は無いのですが、味が無さ過ぎてスマホカメラと比べて何が良いのか悩むので、近年様々なマウント用に売り出されている、数万円クラスのMF専用レンズは手を出しませんでした。
今回のレンズはもともとライカM用で6万以上の高値がついていたのですが、ソニーEマウント用だと新品で3万少々と手頃になったので、21㎜という超広角で、明るい開放F値を持つレンズであることから購入に踏み切りました。
出たばかりのレンズなので中古が無く新品を買いました。
目的はもちろん星景写真に用いるためです。
星景写真の為だけに15万もするフォクトレンダーのノクトン21mmF1.4は買えないのです。
とはいえ、緊急事態云々のせいで星の綺麗な場所に行けないので、近所の昼間ではありますが撮影してきたわけです。
まずは逆光を見てみましょう
開放F1.5
F2
F5.6
開放の場合、もはや1/4000のISO100では足りずにオーバー露出となります。
さらにはこのレンズの評価で言われている通り、開放に近いと凄まじく滲みます。
一方でF5.6では普通の写真ですよね。これはF2.8辺りからこうなります。
また、今までの中国製レンズらしく、四隅にどっすんとした闇が出来るとかも無いです。プレーン。
広角レンズらしくない長い鏡筒の中には割と多いレンズが入ってるようです。
その証拠に結構重い。
ご覧頂いたように四隅の流れはないのですが、ボケという観点でこのレンズは微妙です。
ゾナー等の良いボケをするレンズでは、ボケ批評として「とろけるような」という表現を用いますが、このレンズでは「摺りガラスで滲んだような」という表現が合っています。
これは似て非なるものです。
銘匠光学はこのレンズのボケ具合を割と自慢しているのですが、私は好きじゃないですね。ピントから外れた所が唐突にザリザリする感じ。
昔の銀塩一眼のファインダーというと大げさかな?そういう感覚です。
とはいえ、このレンズの本領は宵闇の星が流れない程度のシャッタースピードで写す事。
また、星景写真ではわざとソフトフィルタを使って滲ませることで星を大きく見せ、明るく見せるテクニックもありますから、この滲み効果が意外と良い結果をもたらしてくれる・・・といいなあ。
実際撮ってないので何とも言えないです。
【追記】
自宅からですが、天頂方向に向けて撮影してみました。
F1.5(開放)
F2(1段絞った)
その他の撮影設定はISO1000の5秒シャッター(三脚固定)で同じです。
ただし空を暗くするためにトーン補正をどちらにもかけています。
2枚の写真どちらもで赤丸をしたのは同じ星ですが、F1.5だとこのぐらい滲みます。
F2で十分シャープになりますが、その分消えた星もありますね。
そこはシャッターを開くなりISOを上げるなりで対応できると思います。
ただ、上で書いた通り空が明るいのが自宅付近の家明かりによる光害の問題だけか、レンズにクセがあるのかは読み切れませんでした。
参考になれば幸いです。
蛇足ですが、星景写真を手軽に始めたいなら、実はMF世代の24mmF2.8レンズがあればいいのです。
(MFはマイクロフォーサーズじゃなくてマニュアルフォーカスの略ですよ、念の為)
なぜなら24mmという画角で開放F2.8を出す手法は枯れており、どのメーカーでも安定して良い絵を出します。
そして安価です。中古なら大体2万の予算で十分でしょう。
また、ターゲットが天の川などの場合、決してAFレンズ、特に電子制御式AFは避けた方がいいです。
電子制御式とは、フォーカスリングが永遠に回せてしまう奴です。距離指標が刻印されてない事が特徴。
なぜならまず、最新型のよほどの物を除けば、天の川の星では暗すぎてAFが合焦してくれません。
なのでMFモードでフォーカスリングを回して調節するのですが、電子制御式の場合、電源を切る度に焦点距離をリセットする仕様が多いのです。
星景写真では撮影に10秒とか30秒とかシャッターを開けるため、バッテリーの消耗が激しいです。
ゆえに使ってない時は電源を切るのですが、その度に焦点が例えば最短位置にリセットされるとその内人が再設定するのを忘れます。
ベストショットだと思ったらボケボケの写真、では泣くに泣けません。
その点、もともとMF専用のレンズなら、1度手動でピントを合わせたら、その位置でフォーカスリングにパーマセルテープでも貼って固定してしまえばズレません。
ピント合わせ自体は背面液晶で拡大しながら合わせればいいので結構厳密に出来ます。
AFが合焦しないよーなどと叫ばなくていいのです。
天の川とかになると45mmや35mmではちょっと狭いですね。
28mmならギリ良い所だけ入るかなって感じです。
裏返せば24mmで余裕な位広い空のある暗い場所でないと、天の川撮影には向いてないのです。
結構困るんですよね・・撮影場所。
いや、まぁ、ネットでなんぼでも天の川の綺麗な写真なんて転がっとるやんという話はナシにしてください。
スーパーの鮮魚コーナーでぎょうさん魚が並んでても釣りを趣味とする人がいるのと同じです。
自分で釣り上げることに意義があるんです(だんだん早口)