こんばんは、銀匙です。
今日は車で入れるとある砂浜でパジェロミニ君と砂遊びに興じた訳ですが、ふと、過去の苦い経験を思い出しまして、今日は4WDって一口に言っても色々違うんだよという話をしようかと思います。
4WDと言われた時、間違いない事は何らかの駆動力を4輪全てのタイヤを使って地面に伝える「タイミングがある」という所までです。
それで良いじゃないかと思われるでしょうし、私もそう思っていました。
ところが話は簡単ではなくて「タイミングがある」という点が曲者なんです。
何故かというと「4輪全てに全く同じ駆動力を均等配分すると曲がらない車になってしまう」のです。タイトコーナーブレーキング現象ってやつです。
なので、違和感なく走れるように4輪にいつどうやって駆動力を分配するのか、その制御方法は機械式か電子制御か、果ては前輪後輪で駆動力の発生源が違うのか同じなのかなど、まぁ細かい分類がある訳です。
それらをどう選ぶかというと「何の為の4WDか」という設計思想なんです。
ここで、私がやってしまった苦い経験をお話します。
何年も前に北海道へ旅行に行った時にレンタカーを借りたのですが、折角だからと過去乗った事のない、クロカンっぽい車を選んだんですね。
キーを渡されたのはRAV4でした。
型式までは覚えていませんが、フルタイム4WDと書かれていたので、つまりいつでも4駆ってことだよね、M+Sタイヤ履いてるし、格好良いし最強やんかと勝手に思ったわけです。
それで北海道のオホーツク海の海沿い、本当に人も車の気配もない砂浜を見つけ、ちょーっと砂の上を走ってみたいなあと欲を出したわけですね。
折角クロカン借りたのだし(違う)
で、砂浜に入ったわけですが、てんで駆動力が無い。
あれっと思ったら前に進まずタイヤが空転してどんどん砂に埋もれていく。
アクセルを緩めつつ少しでも前というか元の道へ戻ろうともがいたわけです。
本来はヤバいと思った瞬間にそっとブレーキ踏んで止まり、すぐバックに入れてジグザグにハンドル切りつつジリジリ下がる方が良い(そもそも突っ込まないことが最善)なのですが、私は焦ってハンドル目一杯切って車を方向転換させようとしたんですね。
最小回転半径で、砂浜の上で、フルタイム4WDのRAV4で。
お分かりの方ならこれがいかに無謀な事かと苦笑されると思うのですが、当然最後は車の下っ腹が着地して砂に乗っかり、いわゆる亀状態となりまして。
見事大金積んでJAFに助けてもらうハメになったわけです。
助けに来てくれたお兄さんありがとう。
もうちょっとでオホーツクの波に飲まれてました。
まず、とにかく間違えてはいけないのは、クロカン(クロスカントリー・ビークル)という車達と、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)という車達は設計思想からして全然違うんだよ、という事です。
クロカン車は悪路の踏破性を主眼に開発されており、例えばジープ、パジェロ、パジェロミニ、デリカD5、エスクード、ジムニー、ランドクルーザー、ビッグホーン、レンジローバー、ランドローバー、ベンツGクラス等が該当します。
こいつらに積まれた4WDは基本的にデフロック、スーパーローなどという機能が盛り込まれてます。
スーパーローとは、エンジンが砂や泥といったトルクを奪われる条件下でもストールしないよう凄くローギヤードにすることが出来るわけです。
めちゃめちゃエンジン回転上がってタイヤちょびっとしか回らないけど超高トルクで力強く進めるよ、足を取られるような深い砂の中でも負けないよ、という感じです。
最新のランクルなんかもっと凄い電子デバイスで武装してますが、まぁ要するにクロカンは悪路走破性を向上させる為の4WDを積んでます。
ちなみに意外とクロカン的な4WDを積んでるのが軽トラです。
何故かというと畑やあぜ道が泥濘地と化す場合があり、農作物満載で泥濘地を超えねばならないとかいう過酷な状況を日常的に課せられるからです。
ただし致命的な欠点として乗用車に比べると乗り心地が悪いため、軽トラを除けばシェアを落としています。
ジムニーのように超コスパが良くてガチの本格クロカンは熱心なファンが買い支えていますが、最新のジムニーでさえオンロードや高速ではハスラーのターボモデルの方が乗り心地という意味では分があると思います。
少なくとも私は乗り比べてそう感じました。
一方、SUVは街をスマートに駆け抜ける背の高い車という位置づけであり、SUVのSである「スポーツ」の意味は「スポーツに必要な機材を積むことが出来る」とか、「ミニバン並みの高い視界を確保しつつ乗用車のように軽快に動けてスポーティでしょ」とか、意味はメーカーどころか車単位でバラバラです。
今の世ではSUVが主流です。
前述のRAV4のほか、ハリアー、CX30、アウトランダー、ジューク、ハスラー、果てはBMWのX5、ポルシェのカイエン、ボルボのXCなどなど、枚挙にいとまがありません。
これらの見た目は非常にクロカンに似てるのですが、こちらの4WDは基本的にデフロックやウルトラローがありません。たまにSNOWモードとかある車もありますが、あれはミッションに2速発進というかハイギヤード化させるだけです。
先程もあえて書かなかったのですが、デフロックとは何よという話をするとものすごく長くなるので、無いと何が困るかだけ言えば泥濘地や凍結路、ふかふかの砂浜といった悪路で簡単にスタックしてしまうのです。
要は悪路踏破性の為の4WDではないんですね。
強風や雨天の高速でもふらつかせないとか、コーナリングや加減速を快適にするとか、舗装路での快適性支援の為の4WDなわけです。そう設計されています。
特に致命的なのが最小回転半径に近い、ハンドルを目一杯切った状態での悪路走行であり、ほとんど2WDと変わりません。
そしてこの方式の4WDは実に多くの4WD車に採用されてます。
昔は生産コストが安いという理由で採用され、生活4駆なんて蔑称もあったのですが、近年ではこの方式は駆動配分方法と電子デバイスの相性が良い事が解り、普段はFFみたいに振舞わせて要所要所で4WD的にとか、カーブで外に膨らまないように内輪だけ駆動を切るとか高度な制御が出来るようになったのも一因です。
デフロックやウルトラロー付きのクロカン用4WDというのは、クロカンの車体設計もありますが、振動を伝えやすく、構造が重く、高価であり、都市走行にはまるで必要ないというか、むしろ邪魔です。
その上でオンロードも快適にするとなるとマイナス状態からの改善になるので、それこそランクルやレンジローバーのように目が飛び出るお値段になっていきます。
ちなみに前輪はエンジン駆動、後輪は電気モーターで駆動する4WDとか、ランエボのようにラリーで戦う為に高度な制御を入れて2WDより高速のまま旋回出来る4WDとか、本当に4WDには沢山の種類があります。
ただ、普通にカーライフを送るうえで出会うのは、いわゆるSUVライクな4WDか、クロカン的な4WDかだと思います。
と、言いつつ話をややこしくして恐縮なのですが、たとえばデリカミニの4WDはいわゆるSUVライクなやつですが、空転時は空転を抑制する電子デバイスを用いてスタックしにくく脱出しやすくする装置が付加されており、泥濘地はさすがにダメでしょうが凍結路からの脱出くらいはアクセル踏むだけで簡単に出来るよう設計したそうです。
似たような技術はクロカンである最新型のジムニーにも搭載されており、デフロックしなくても軽い対角スタックならそのまま脱出できるとのこと。
更に言うと同じ車種でもグレードによってSUVライクな4WDとクロカン的な4WDがあったり、SUVでも走破性を考慮した車があったりと、線引きも曖昧になっていたりします。
4WDと一口に言ってもその目的は悪路走破性とは限らないので、用途に合ってるかの確認が大事です。
私のようにSUVで砂浜の上を最小回転半径で回ろうとして亀になる人は少ないでしょうが、雪道や凍結路からの脱出は市街地での運転でも起こりうる状況です。
その時、特にレンタカーなど不慣れな車なのに、
「4WDだから大丈夫!」
なーんて過信したら実際は2WDと変わんなかったって事になりますので、冬道は本当にお気を付けください。
特に2WDだろうが4WDだろうがブレーキ性能は同じというか、むしろ重い分4WDの方が不利まであるので絶対アテにしないでください。
雪道で夏タイヤの4WDに乗るくらいならスタッドレス履いた2WDを選んだほうが遥かに良いです。
電子デバイスでブレーキ制御支援的な事をする4WDってあるのかな?
GTRさんのあれはそうなのかなあ・・・
まぁともかく。
そんなわけで、今日の私はデフロック直結でスーパーローモードにセットしたパジェロミニで砂浜を軽々と走って帰ってきたわけです。
車から降りると靴にザクザク入ってくるような目の細かい砂でしたが、NAながらいっぱしのクロカン4WDを持つパジェロミニ君はスイスイ走れまして。
素晴らしいなあと思いつつ、過去の失敗を一人恥じていました。
皆様は4WD車のハンドルを握る前に、その車の4WDが何の為に設計されたものなのか確認してくださいね。
では、では。