メルセデス濃度は…40%くらい?
というわけで、ニッポンレンタカーさんでメルセデスベンツ・Cクラスをお借りしました。
今回お借りしたモデルは、C180アバンギャルドのAMGスポーツパッケージ付車、借り受け時点で走行距離43,500kmのクルマでした。
年式は推定2015年式(ATが7速、装着タイヤが'15年33週製造)のクルマです。
今回、わざわざCクラスを指定で借りたのは「どこまでCクラスはメルセデスベンツらしいのか」を確認したかったからです。
では、どこをもってメルセデスらしいと判断するのか、判断基準に以下の3ポイントを挙げます。
(1)車両感覚の掴みやすさ、取り回しのしやすさ
(2)車両の快適装備品(エアコン、ナビなど)の操作のしやすさ、確実さ
(3)車両の巡航快適性(長距離巡航時の安定感、シートの疲れ感)
…いずれにしても、メルセデスベンツを「良き実用車」として判断する基準を掲げて乗ってみました。
(1)車両感覚の掴みやすさ、取り回しのしやすさ…思ったよりも運転は楽ですがセッティングの思想に疑問です。
最初に乗って走り出すと、とにかくノーズの長さが気になります。しかし、全般に小回りがよく利きますので、現有車(プロボックス)やプリウス、WISHの時から比べて乗りにくさは気にならなくなってきます。
上記の「慣れたクルマ」がCクラスに比べて鼻先が短いFF車ですので、峠道を走る感覚的には「カップアイスクリームをスプーンでえぐり取るように」ボンネットを突っ込んで曲がれば大体曲がれます。
その点で言えば、車両感覚の取り回しは300kmも乗れば慣れてきます。
…が、問題はステアリングに関して、2点ほど気になったポイントがあります。
一つ目はステアリングの形状です。まっすぐ走っている分にはまずほとんど気になりません。が、コーナリングであったり交差点の右左折、峠道の切返しを繰り返すとステアリング下側のD部分、それからその周辺のステアリングホイール断面が変わることが酷く気になります。というかステアリングを回していて気持ち悪いのです。握り感が変わってとっさに頭が「?」と混乱します。
二つ目はパワーアシストの設定です。大きな交差点を左に曲がろうとして、20km/h位からステアリングを切りつつ、歩行者がいたので減速して停止を…と思うと、ステアリングを左に切る力をそのままにしていて「切り増し」してしまうのです。つまりパーキングスピード域でパワーアシストを増やす設定にしています。
これもまた、運転していて混乱します。曲がるためにあれこれ考え確認しているのに、クルマ側が勝手に仕事を増やす…そんな印象を受けました。
(2)車両の快適装備品の操作のしやすさ…これはハッキリと「使いづらい」です。
マトモと言えるのはナビの音声認識レベルが高かったこと(携帯電話の音声認識くらいはマトモ)、携帯電話をBluetoothでつなぐとCDの情報を取得してくれること、この2点だけです。
温泉へ行くためにナビをセットしたのですが、電話番号検索でヒットしなかったのに「○○(←)に案内します」と違う目的地(箱根町役場)に行ってしまいました。道を間違えても細路の案内をナビ画面に表示せず、例えばUターンしたい、路地に入って左、左、左、右と回って元の道に戻る…という芸当には不案内です。
COMMANDシステムの操作スティックそれ自体が上でコマンド、下でコマンド、左右で選択、左で戻る(こともある)…など、操作性に統一性と直感的な扱いやすさがありません。
また、車両センターコンソール側にナビ、ラジオ、メディア、車両設定などが分かれていて、センターコンソールで完結していない(手先の移動が必要)です。加えて、ボタンが小さくどれも平べったいのでブラインドタッチはできず、さらに下側なので目線も下に落とさなければいけません。
これは安全運転をしようとするには停車して操作することを前提としており、例えばハイウェイ・ラジオへ切り替えて渋滞情報の確認…といったことにはまったく不向きです。
さらに、ハザードの位置がコマンドシステムの並びの一番右側(運転席側)で、これも同列に並んでいるのでとっさにハザードを出したいとき(サンキューハザードや渋滞ハザード)にCOMMANDシステムが切り替わる…という笑えない操作ミスがありました。
こういった「見ないと操作できない」「止まらないと操作できない」システムは個人的に全くダメです。
(3)車両の巡航快適性…レーダークルーズは賢くシートは良好、ただしサスペンションは日本に合っていません。
都合、東京-小田原城までの移動に3時間弱座りっぱなしだったのですが、シートは快適で降りてもお尻の痛さ、背骨の違和感はありませんでした。一つ文句を付けるとすればシート表皮で、1時間も駐車して戻ってくるとメチャクチャ熱くなり、加えて背中の蒸れは取れません。布張りの方がずっと快適です。
レーダークルーズコントロールは道中使ってみましたが、これが付いていると先行車がいると勝手についていってくれるので、安楽と言えば安楽です。ちゃんと完全停止もします。(完全停止からの復帰は人手を介す必要あり。)
ただしサスペンション、タイヤが18インチのランフラットということもあって日本の道路設計に対しては硬すぎます。法定速度をオーバーするとフラットライド感が出てきそうな印象はあります。
特につらかったのは長尾峠を走っているときで、ガタンゴトンドシンバタンと体・シートごと揺さぶられます。ただしその時のステアリング系へのキックバックはないので、操作に大きな影響はなかったです。また、タイヤとの相性も(だいぶ使い込んだタイヤのせいもあって)あまり良くなく、高速道路では「コーッ」という音が予想よりも大きかったです。
あと、上記の偏平ランフラット+スポーツサスペンションに対してブッシュ類が作り分けされていないようで、そこそこのペースで首都高を走ると妙なブルンブルンというゴム感があります。ちょっと気味が悪いです。
他に気になったのがATの造り込みがちょっと甘いです。
巡航やタウンライドにはもってこいですが、エンジンブレーキの効きが甘いこととパドルシフトで操作した時の反応速度が鈍いです。峠道ではエンブレを使っても作動するまでにブレーキを踏まねばならず、ほとんどシフトダウンの意味をなさなかったことも多かったです。(飛ばし過ぎ、と言われればそれまでですが。)
最後に燃費の報告、397.1kmの走行でハイオクガソリン33.93Lを給油、燃費は11.70km/Lとなりました。ただし走行中はエアコン使用、アイドリングストップはOFFで使用した結果です。
そろそろまとめます。
このCクラス、日本で使うには操作系の統一性が薄くやや使いづらいクルマです。
またAMGスポーツパッケージ付は(特にこのクルマが製造されたであろう時期は)試乗してからの購入を勧めるクルマです。安楽に走ろうと思うならAMGはない方が賢明です。
操作系の話というのは、ステアリングの急なパワーアシストの上昇、COMMANDシステムとハザードの使い勝手が(ほとんど絶望的に)悪いことが、シフトセレクターやクルーズコントロールの操作レバーをコラム周りに集中させステアリング操作に専念させること、とにかくハンドル操作はきちんとやってもらおうという「思想の矛盾」を感じさせるからです。ともすれば、コラム周りの設計者とセンターコンソール周りの設計者は正反対の人か?と思うくらい違うのです。乗りなれれば少しは気にならなくなるでしょうが、昔のメルセデスはこの辺もしっかり操作性を統一させていたという印象が強く、設計思想がガラリと変わっている印象を受けます。
…で、もし私がCクラスを買う余裕があったら買うかって?
…うーん、BMW・3シリーズと迷うと思います。ただしアウディA4、レクサスISと比べるならメルセデスベンツ・Cクラスを買います。ジャガーXEは良いクルマですが、大きさがあるのでもっとしっかり乗ってみたいのが本音です。
このCクラスでは、これじゃなければならない、どうしてもこれにしたいんだ、と思わせる決定的で強い魅力は薄く感じました。(個人的には先代後期型(W204型)のC180だったら即決していたと思います。)
Posted at 2018/08/23 23:15:18 | |
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