先日のことですが、日産の本社ショールーム(日産グローバル本社ギャラリー)にお邪魔してきました。目的は発表間もない新型車のキックスだったのですが、今回の主題はそれではなく「プロパイロット2.0」の試乗体験についてです。
帰り際に試乗カウンターに寄ってみたところ「スカイラインのプロパイロット体験ならいま試乗車も空いています」との事だったので、乗せていただいた次第です。
プロパイロットとは日産版の自動追従クルーズコントロールのことで、乗せていただいたスカイラインに搭載される「プロパイロット2.0(以下、プロパイロットと略称)」は
(1)前車追従型クルーズコントロール
(2)高速道路上での車線認識と車線維持コントロール
(3)車両後方の並走車両監視と車線変更
(4)上記(1)~(3)をナビデータに連動して高速道路上の統合制御
ができる…と書けば多少は柔らかくなるでしょうか。ひとくくりで言えば
「高速道路上はほとんど自動運転、ただしナビデータに連動する」
というものです。
というわけで試乗に際してもナビに行き先をセットし、日産の本社から首都高に乗って湾岸線まで移動します。(ここまでは通常通りの運転)
湾岸線に乗ってからプロパイロットをセットします。するとナビに登録されている制限速度を検知し、続いて自車の車線と周囲車両を検知すると完全作動します。
完全作動した時の車両の動きは、以前乗ったエクストレイルのようなタイムラグのある、カクカクした動きとは全く異なる滑らかな動作でした。これならば手放し運転(←作動条件が整えば可能)でも違和感がありません。
前走車両に追いつくと、車両のメーターディスプレイに「前走者を追い越しますか?」と表示され、ステアリング上のスイッチを押すと自動で追い越ししてくれます。
この時はウィンカーレバー操作も不要(車両側で自動操作)、またディスプレイ表示時点で後方車両がいないことも「車両側で」チェックしています。操作してみると、アクセル制御、ステアリング制御、ウィンカー動作も含めて違和感がありません。ウィンカーもちゃんと「3回点滅(=3秒後)」してから変更動作に入ります。
ここで、なぜそれができるようになったのかを説明します。
車両側に合計24個のセンサー(内訳はカメラ7台、レーダー5台、ソナー12個)が内蔵されています。それぞれ
・車両の前方(遠距離レーダーと3台のカメラ/それぞれ視野の大きさと得意な距離が違う)
・側方(ミラー下のアラウンドビューモニター用カメラも含め、ソナーで隣の車線いっぱい/4mくらい?と上記カメラ)、ソナー、サイドレーダー)
・後方ソナー、レーダー(側方用と範囲が重複している)
で複合的に車両周囲を監視しています。これらの統合制御で周囲車両の監視と車線の認識、それから車線内の「どこにいるか」をチェックしています。
ナビデータ側にも道路上の地形データと車線データが入っており、試乗した時に乗っていただいた方の説明曰く「誤差はおよそ5cmの範囲内」とのこと。
ちなみに車室内側にもカメラが1つ備わっていて(赤丸の部分)、これで運転者の目線を監視しています。
もしわき見運転をしているとシステムが検知すると警告動作が行われ、それでも運転者が目線を前方に向けない場合は「車両側で自動停止プログラムが作動して自動でオペレーターコールに通報」されるとのことです。(運転者の意識喪失…突然死や病気による失神などに対応)
現時点でナビデータを含めて対応しているのは高速道路、自動車専用道路などに限定されており、一般道と首都高速道路は対象外とのことです。また作動速度域が65km/h~100km/hまでの間で、新東名高速道路の120km/hは(本記事掲載時点で)「試行制限速度区域」のため対応外(車両側は100km/hとして認識する)とのことです。
対応の高速道路や高速道路上の制限速度変更、車線情報はナビデータの更新でアップデートすることが可能とのことです。
試乗プログラムも往路が終わって復路に入り、いくつか説明員の方に質問をぶつけます。
(Q)ナビデータを更新しない、できなくなったらどうなるの?
(A)ナビデータ時点のデータが適用される。ただ実際の走行位置とズレがある場合はプロパイロットの作動が解除され、通常の追従型クルーズコントロールと白線認識になる。
(Q)ナビデータと連動しているということは、GPS情報が入手できない区間はどうなるの?
(A)プロパイロット操作はしない。対象は長いトンネルの中などが該当する。
その時はディスプレイに表示される。
(Q)高速道路上で制限速度の変更や工事による車線規制がある場合はどうなるの?
(A)車両カメラで速度標識を検知して、カメラで認識した速度を優先させる。
車線規制の場合はプロパイロットの動作解除になる。
(Q)自動車線変更中に例えば他の車両が猛スピードで接近したら動作は中止するの?
(A)自動動作中の場合は車両で認識できない。運転者自身で危険回避する必要がある。
(Q)高速道路から外れて一般道に入ったとき、プロパイロットの「作動解除表示」はあるの?
(A)ある。メーターに表示される。
(Q)一般道で対応することはできないの?
(A)一般道の場合、歩行者・自転車・信号の検知、車両速度と車両制御の反応速度が安全側に作動しない(検知できても回避動作が間に合わない)ことから現時点で対応はできない。
やりとりしているうちに試乗コースも終盤に入り、プロパイロット体験区間が終了して通常の運転をして日産自動車の本社へ戻りました。これで体験は終了です。
アンケートを記入して担当の方へお渡しし、以上で試乗が終わりました(高速道路通行料も含めて費用は無料。)
乗ってみてどう思ったかをまとめます。
「高速道路上の手放し運転」が可能という点で、確かに滑らかで安定した走行体験をすることができました。
一方で「車両が反応しない、対応できない領域がある」ということは一つのネックで、運転者がスカポンタン(まともに操作できない人)だと「いざプロパイロットが解除されても危険回避ができない」ことにもなりかねません。
別のものに例えると、寝起き直後に4桁の暗算をいきなり解け!と言われても対応できないような事態が発生しない、とも限りません。
あくまで「プロパイロットは運転者の疲労軽減などを目的とした補助機能」であることを割り切って、人間が適切に車両を操作する必要がある点はまったく変わっていません。
そう考えると…私は「自分で運転を、操作を楽しみたい」と思う側に立つ人間ですので、この機能は「あっても使わないかな」というのが正直な感想です。
もしご興味を持っていただけるようでしたら、一度体験してみることをお勧めします。私のように「いらないかな…」と思うか、あるいは「ぜひとも欲しい!」と思うかは、経験してみないと分かりません。
ディーラーで試乗車を借りて試す…はなかなかハードルが高いですが(そもそも興味本位だけなら迷惑でもありますし)、関東近郊の方であれば日産自動車の本社で体験できます。是非ともお試しください。
Posted at 2020/07/11 22:47:34 | |
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