先日のTC2000,ダンロップコーナーでオーバーランしかけるヒヤリハットがあった訳なのですが,意図的に進入を抑えて「確実にコース内に留まれる事」を確認した上でアクセルを開けていったにも関わらず,縁石を踏み越えてしまいました.
「アレではみ出すなんて,おかしいなぁ~?」と思いつつ,滑り易いコンディションだったので「きっと雨量が途中で増えたせいだろう」と結論づけていたのですが,何度も繰返し車載を見ているうちにモヤモヤしてきました.
攻めたドライビングで失敗したのならばともかく,置きに行ったドライビングで失敗するのは何かおかしい・・・と当時の感触を思い返したところ,立ち上がりで舵角を戻していった時にフロントタイヤの手応えが薄かった事を思い出しました.ヘビーウェットの路面,まして川が出来る部分なので(↓),
ハイドロプレーニング現象(タイヤと路面の間に水膜が出来て車体が浮き,ステアリングが利かなくなる現象)が起きて,手応えが薄くなってもおかしくはないのですが,縁石の真上を通過した際にズルッと滑った感触はなかったので,「手応えが薄かったのは,本当に雨のせいだったのか・・・?」と疑問に思えてきました.
そういえば,
40秒台に復帰した1月のTC1000でも,最終コーナーの立ち上がりで(↓),
想定よりも外側に膨らんでしまい,「しまった!」とミスを悔やんだ(コレのせいで40秒台に入らないと思っていた)事も思い出しました.この時も「コース内に留まれる!」と判断してアクセルを開けていったのにオーバーランしてしまったので,内心では「アレェ~?」と思ってはいたのですが,40秒台が出た嬉しさでスルーしていました.
この「イケる!」と思っているのにオーバーランする現象は,
LSDの仕様を変えて以降(↓)起きるようになり,
「LSDの特性にドライバーが合わせ切れていないんだろう・・・」と思っていたのですが,あれから1年半経つのに未だに感覚がズレるのは,さすがに何かおかしいんじゃないか?と思えてきました.
元々LSDの仕様を変更した理由は,LSDのスプリングの効きが強過ぎて,アクセルONした瞬間に一気にガッ!と効いてしまい,TC1000の1~2コーナー間でドアンダーになる現象を対策するためでした(↓).
変更前は,まさに「伸るか反るか?」という感じで,成功すればアクセル全開でもグイグイとフロントが入って行き,非常に良かったのですが,失敗するとまるでフロントがロックしたかのように外側へすっ飛んでいく,ピーキーな仕様でした.それを
プロにアドバイス頂き,失敗してもスルスルと斜めにクルマが進んでいく仕様へと変更したのですが,なまじスルスルと進んでいくため,アンダーステアが出ている事に気づきにくく,「えっ!? アンダー出てるの!!」とコースアウトし掛かってから気づく事が度々ありました.
その度に自分の感覚の鈍さ,コントロール能力のなさを悔やんでいたのですが,直近のTC1000・TC2000の経験を踏まえて「クルマ側がおかしいんじゃないか?」と思えてきました.
「クルマがおかしい」と言っても別に故障している訳ではなく,「ドライバーがアンダーステアを感じにくい特性になっているのではないか?」という意味です.ステアリングフィール(ドライバーがステアリング操作を通じて感じる部分)みたいな人間の感覚的な話になるので,AIと壁打ちしながら要因を深掘りしていったところ,「SATが弱いのでは?」とAIに指摘されました.
「SAT」というのは「Self Aligning Torque(セルフアライニングトルク)」の略で(↓),

(機械工学時点:
セルフアライニングトルクより)
進行方法に対し,ステアリングを切ってタイヤに角度(スリップ角)をつけた際,ステアリングを真っ直ぐな状態に戻そうとする力(トルク)の事です.交差点を曲がる際,最初はヨッコラセ!と力を籠めてステアリングを切ると思いますが,曲がり切ってアクセルを開けていくと,ステアリングが勝手にクルクルと回転し始めるので手の平でサーッと滑らせれば済む,アレです.
今のEF8はステアリングを元に戻す力(=SAT)が弱いため,特定の領域でステアリングが軽く,そのせいでドライバーがアンダーステアを感じ取りにくくなっているのではないか?と(=ドライバーがアンダーステアを感じ取れれば,舵角を維持しようとする意志が働き,アンダーステアを出さないのでは?というお話).
現状のフロントのトー角は,
OUT'20と若干開き気味にしています.
これは,当時ターンインで切り込み過ぎる特性があり(オーバーステア傾向),それに対して立ち上がりではアンダーステア傾向が強かったため,この両者のバランスを取る意味で開き気味にしました.しかし,後にターンインのオーバーステア傾向は「前後のブレーキバランスが合っていないせい」である事を
プロに特定頂き(↓),
この問題を解消してからは切込み過ぎる特性がほぼなくなりました.従って,トー角を元に戻しても良かったのですが,依然として立ち上がりのアンダーステアは強かったため,そのまま維持していたところ,今度はプロに「
大舵で曲がらない」と指摘されてしまいました.
この曲がらない原因がトー角にあるのか?はまだ特定出来ていなかったのですが(
先日のTC1000でも解決方法の片鱗が見えただけ),AI曰く,
・
205幅と195幅で0.05秒しか変わらないので,タイヤの横のグリップは使い切れている
・立ち上がりは,これにLSDの力が加わるので更に使い過ぎの状況になっている
・であるにも関わらず,
スクラブ半径がポジティブ過ぎる(↓)
・これらを踏まえると,横のグリップは既に飽和している
・立ち上がりでアンダーステア傾向になるのは当たり前だ
・これを解消するには,タイヤを縦に転がすべき(横→縦にグリップを割り振る)
・対策方法としては「LSDを弱める」「キャスター角を寝かす」「キャンバー角を立てる」等がある
・しかし,最も効果的なのは「トー角を減らす」事だ(↓)
・フロントのトー角が減れば,外輪は外方向ではなく,前方向に力が働く
・これでタイヤを縦に転がせるようになる
・副作用も小さいし,まずはこれを試すべき!
・・・との事でした.ここまで言われたらしょうがないという事で,
フロントのトー角を「OUT 20'」→「OUT 10'」へ変更しました(↓).
AIは「トーゼロ,もしくはOUT 5'まで減らせ!」と言ってきたのですが,さすがにトーゼロはやり過ぎなのと,次走る日光は大きな失敗が出来ないので過去実績値から「OUT 10'」に留めました.
ここまでのやりとりから「AIの言いなり」っぽくなってしまって少し癪だったので(苦笑),一応,ハルシネーション(AIが誤った情報をもっともらしく自信満々に答える現象)対策の意味も込めて「トー角を減らす事で本当にアンダーステアが弱まるのか?」の裏取りもしてみました.まず,「SAT」の特性としては(↓),
・スリップ角(≒ステアリングの舵角)に対して,凸型のピークがある
・ピークを過ぎた領域では,ステアリングを戻す力が弱い(≒戻す力が働かない)
・このピークはタイヤに掛かる荷重によって変わる
・荷重が弱くなればなるほど,ピークはスリップ角(舵角)が小さい側へ行く
・ここから,フロントに荷重が掛かるブレーキング時には「SAT」が強い(=手応えがある)
・一方,立ち上がりはフロントの荷重が抜けるので「SAT」が弱い(=手応えがない)
・だから,立ち上がりでアンダーステアを感じ取れないのは「SAT」が弱いせいで合ってる
・「SAT」を強くするには,低荷重時のピークにスリップ角を合わせれば良い
・現状ステアリングを切っている状態で「SAT」が弱いのならば,ピークを過ぎている
・ならば,ステアリングを切っている時のスリップ角を減らせば良いので,トー角を閉じる事は合ってる
・・・という事で,AIが嘘をついていない事も無事裏取りが出来ました.
ちなみに,TC2000のアンダーステアを感じ取れなかった際のステアリング舵角を車載から読み取ってみると(↓),
「45°未満」といった感じでしょうか.以前(トー角がOUT '15の時)
EF8のタイヤの切れ角を調べたところ(↓),
ステアリングを90°切るとスリップ角は約4°といったところだったので,舵角が45°なら半分の2°程度といったところでしょうか.この際のフロント荷重がどれくらいなのか?までは分かりませんが,上の特性画像から察するに,2°程度であれば確実にピーク前に来そうなので,何らかの違いは出そうかなぁ~?と思っています.
以上,「SAT」のお勉強でした.
なお,今回は「トー角の変更」で「SAT」の改善を試みますが,AIは「スクラブ半径を小さくする事も大事」と言っていました.そのための策としてホイールのINSETを「+45~+50にしたい」と言ってきたのですが,「
SPOONキャリパーに当たるから+42が限界」と答えると(↓),
「それならあんまり効果がないからやらなくていい」と言われました.但し・・・,
AI :これ以上は絶対にINSETを減らすな
私 :いや,INSETを+35くらいにしてトレッドを増やす事も考えているんだけど?
AI :それはダメ.立ち上がりのアンダーステアが悪化する
私 :え~,でもトレッド増えれば横のグリップも増えるじゃん
私 :それでアンダーステアが解消するかもしれないでしょ?
AI :いや,計算するとそうならない.INSETを増やしたらアンダーステアは悪化する
私 :分かったよ.そんなに言うならホイールの変更は諦めるよ・・・
という結論に至り,サーキット用のRZⅡに履き替えてトー調整のためにショップへ向かった訳なのですが,そこで
見たもの(↓)は・・・(続く?).
