先日はやぶぅさんとお話した時に「A050のMコンパウンド→G/Sコンパウンドに変更したら,G/Sの方が太かった」という話をお聞きしました.
そう言えば,去年だったか一昨年だったか,A050の型番が変わった→コンパウンドが変わったのでは?と一部で話題になっていた事を思い出し,その場では「まぁ,そんな事もあるかもしれないなー」と流したのですが,
はやぶぅさんのロガーデータを分析するに当たり,A050に関して調べ直していたところ,はやぶぅさんが使ったのは「A050」ではなく,「A050A」である事を思い出し,気になりました.
左から読んでも「エー・ゼロ・ゴー・ゼロ・エー」,右から読んでも「エー・ゼロ・ゴー・ゼロ・エー」で有名(?)な「A050A」ですが,「A050」と何が違うのか気になるので調べてみる事にしました.
遡る事19年前,2007年4月にこれまでYOKOHAMAの主力となっていた「ADVAN A048」に代わって「ADVAN A050」が発表されました.発売当初のサイズは以下の通りで(↓),
当初は「S」と「SS」のコンパウンドが用意されていたようです.
その約1年後となる2008年2月に,ジムカーナのドライ路面用として「SS」コンパウンドを更にソフト化して発熱を高め,グリップ性能を向上させた「G2/S」が発売されます.発売当初のサイズは以下の通りだったそうです(↓).
「G/S」より先に「G2/S」が発売されたとは知りませんでした・・・.
その僅か2か月後,2008年4月に「G/2S」コンパウンドよりも高温域での使用を目的とした,お馴染みの「G/S」コンパウンドが発表されます.この際のサイズは以下の通り(↓).
「G/S」コンパウンドの発表と同時に,従来の「S」コンパウンドの仕様も変更され,「G2/S」「G/S」「S」で温度レンジによって使い分ける形となったようです.
そして,その翌年となる2009年春,本題の「A050A」が全日本ジムカーナに投入されたそうです."~そうです"というのは公式のニュースリリースが見つからなかったため.競技専用タイヤという事で表立って発表しなかったのかもしれませんが,公式のリリースがないと「A050」と「A050A」の技術的な違いが分かりません.他に解説も見当たらなかったのですが,「
ADVAN FAN」という横浜ゴムの古いサイトに開発エンジニアへのインタビュー記事が残っていました.
そちらの内容を要約すると以下のような感じです.
・2008年の春過ぎ頃から「A050」の更なる進化に取り組み,「A050A」という形になった
・「A050A」はタイヤの幅を拡げてワイドトレッド化を図り,構造のチューニングも行った
・コーナリング時のグリップやブレーキング時の安定感を高めるため,接地面積,特に接地幅を増やした
・接地幅を増やす事で路面とタイヤのコンタクトエリアを拡大し,路面からタイヤが剥がれにくい感じにしてある
・接地面積が増加した事で,タイヤからのインフォメーションが高まり,安心感も増している
・特にコーナーへの進入スピードが圧倒的に高められている
「A050」と「A050A」は見た目上は違いが分からないのですが,どうやら幅が広がっているようですね.なるほど,これで,はやぶぅさんが仰っていた「Mコン(A050)よりG/Sコン(A050A)の方が太い」という話に合点がいきました.

(はやぶぅさん,画像お借りしました.<(_ _)>)
ただ,YOKOHAMAのサイトを見ると,「A050(Mコン)」も「A050A(G/Sコン)」もタイヤ幅は一緒です(↓).
同じ「225/45R16」のサイズで,同じタイヤ総幅「225mm」なのに,「タイヤ幅を広げた」というのはどういう事なんでしょう・・・?
σ(´・ω・`) ???
こういう時は規格の抜け穴を突いているのかもしれないので,そもそもの基本に立ち返ってタイヤの規格が言っている「タイヤ総幅」がどこを指しているのか調べてみます(↓).

(横浜タイヤ:
表示の見方より)
タイヤ総幅 ・・・ タイヤの一番外~外の幅を指す
サイズ表記 ・・・ タイヤ総幅からタイヤ側面の模様/文字等を除いた幅(リムプロテクトバーは含まない)
えっ? やっぱり同じタイヤサイズで,同じタイヤ総幅だったら,タイヤ幅は変わらないじゃん.
( ˘•ω•˘ ) ウーム…
でも,実際に幅は異なっている訳なのだから,どこかに抜け穴があるんだよなぁ~と思い,もう一度インタビュー記事を読み返してみたところ,「接地幅を増やした」と書いてある・・・.
(*゚ロ゚) アッ!!
そうか.タイヤの総幅を変えずに接地幅を広げる方法が1つある.タイヤの角を立てれば良いんだ!
そう思って調べてみると,こんな絵を見つけました(↓).
「A048」→「A050」→「A052」と新しくなるにつれて,どんどんタイヤの角が立っているのが分かります.こうすればタイヤの総幅は変えずに接地幅は広げられます.なるほど,これが俗に言う「タイヤ幅詐欺」のトリックだったのですね.後継の「A052」がこんな形状なんだから,恐らく「A050A」もそういった理屈なんでしょう.
なるほど~なるほど~と思いましたが,いや,待てよ.「タイヤ幅詐欺」でよく示されるのは,同じサイズのタイヤを横倒しして積み上げた時に高さが違う事からだよな? 如何に角を立てても,タイヤの総幅が変わらないのであれば高さは変わらないのでは・・・?
( ´~`) ン---
「タイヤの角」以外にも,もう1つトリックがありそうだなぁ~と考えて思いつきました.
タイヤの横剛性が上がれば,タイヤの高さも変わるのでは?
タイヤを横倒しした時,以下のようなイメージになると思うのですが(↓),
この状態でタイヤを積み重ねると,タイヤのサイドウォール同士が接触する事になります.つまり,双方のサイドウォールを凹ませようとする力が働く訳なのですが,この時,サイドウォールが硬ければ凹みにくくなります.凹みにくければタイヤ総幅が維持されて高さも維持される事になります.一方,サイドウォールが柔らかい場合は凹んでしまうため,高さは低くなります.
つまり,同じサイズでタイヤを積み上げた時に高さに違いが出るのは,サイドウォールの硬さが違うためで,積み上げた際に高くなった方がサイドウォールが硬く,低くなった方はそれに比べてサイドウォールが柔らかい,という事なんでしょう.
という事で話を戻して,「A050」より「A050A」の方が高い(太い)という事は(↓),
「A050」より「A050A」の方がサイドウォールが構造的に硬いという事になります.前述のインタビュー記事にも「構造のチューニングを行った」とありますし,タイヤ重量を確認すると(↓),
「A050」は9.3kgであるのに対し,「A050A」は9.9kgと重くなっています.同じ溝深さで重量が増えているとなると,「A050」→「A050A」でサイドウォールが補強されている可能性は高そうです.
ここまでの考察結果から,
・「A050」→「A050A」で,タイヤの接地幅が増えている
・「A050」→「A050A」で,タイヤの剛性が上がっている
という事が推測出来た訳なのですが,幅が増えて,硬くなったらフィーリングは全然違うのでは?と思い,先述の「ADVAN FAN」に載っていた全日本ジムカーナのドライバーが「A050」と「A050A」を比較した際のコメントを読んでみると,
・4WD車で「A050」を使用した場合,舵を切り足した時のフィーリングに物足りなさがあった
・「A050A」は,ステアリングを切り足して行った時の反応が良くなっている
・ステアリングを多く切った時のタイヤのヨレが全くない
・ブレーキング時の安定性が高く,ステアリングを切り込んでいった際にも無理が効く
やはりサイドウォールが強化されているのは間違いなさそうですね.重量級のクルマでもマッチしている事から,「A050A」は「A050」に比べて高荷重に耐えられるんだと思います.故にコーナリング初期のステアリングレスポンスが高い.しかし,このレスポンスはゴムのグリップで出している訳ではなく,構造で荷重に耐えられるようにしているだけなので,初期のステアリングレスポンスの良さがコーナリング終盤(立ち上がり)まで続くか?というと,そうでもない.
この辺り,
「A050A」をフロントに履いた,はやぶぅさんのドライビング結果と一致する部分もあるので,やっぱりそうだったのか・・・と思いました.「A050Aはコーナーへの進入スピードが圧倒的に高められている」と開発者の方はコメントされていますが,「進入速度が高い事」と「高い速度でコーナーを脱出出来る事」は別問題なので,剛性の高いタイヤを使う時はフィーリングに惑わされないようにする必要がありそうです.
(最近,A052→RE-71RSに変えて,この辺りをたっぷりと味わいました)
以上,A050Aのお勉強でした.
