
という事で,
富士モータースポーツミュージアムへ行って新たに見学してきた車両の第1弾です.
まずはお目当てだった1998年のJTCC仕様であるトヨタ「エクシブ」.JTCCも既に30年前のカテゴリーとか言われると気絶しそうになりますが,こちらはホンダ・日産が撤退して実質トヨタのワンメイクとなり,「JTCC(Japan Touring Car Championship)」ならぬ「TTCC(Toyota Touring Car Championship)」と揶揄された時代のクルマになります.
コチラは現存している唯一のJTCC・エクシヴだそうで,ワークスチームであったTOM'Sではなく,土屋エンジニアリングが走らせた「ADVAN EXIV」の方.早速エンジンルーム内を覗いてみると,
リバースヘッド化された「3S-G」が見えます.「リバースヘッド」というのはFF車の横置きエンジンにおいて,前方から吸気して後方から排気する方式のエンジンの事で,当時の一般的なFF車はこの逆(前方排気・後方吸気)なので(↓),
「シリンダーヘッドを前後逆にした(リバースさせた)」という事で「リバースヘッド」と呼ばれています.そもそもなんで横置きのエンジンは吸気側が奥だったのか?というと,エンジン正面(クランクプーリー側)から見て,時計回りにエンジンを回転させる場合「吸気が左側」というのが縦置きエンジンのセオリーとなっており(↓),

(Motor-Fan:
トヨタ2代目S型エンジン【3S-GE】WRC王座も手中にしたエンジンより)
これを回転方向を維持したまま横置きにすると,吸気が奥となるためだからだそうです(↓).

(Motor-Fan:
トヨタ2代目S型エンジン【3S-GE】WRC王座も手中にしたエンジンより)
縦置き→横置きとなったエンジンの歴史を感じるお話ですね.では,その前方排気・後方吸気をわざわざリバースさせて,なぜ前方吸気・後方排気の形にさせたのか?というと,理由は2つあるそうです.1つは吸気側を前に持ってくる事で走行風を使って加給出来る事(↓).
もう1つは,排気系を後ろに持ってくる事でエンジンの下に排気管を通す必要がなくなるので,搭載位置を下げられる事だそうです(↓).
JTCCは「2.0LのNAエンジン」「最高回転数:8500rpm」という規定であったため,限られた排気量・回転数の中で出力を上げるために加給という手段が必要であり,運動性能を引き上げるために重心の低下も必要だったという事で「リバースヘッド」が採用されたそうです.
ちなみに,フロントグリル全部を使って空気を吸い込んでやろう!という,この巨大なエアダクトですが,コアサポートの上部を切って実現しているようです(↓).
確かに開口面積を稼ぐためには邪魔なんだろうとは思いますが,コアサポート分の剛性よりエンジンパワーの方が大事という事なんでしょうね.そして,そのエンジンの搭載位置ですが,ドライサンプ化と合わさって高さこそ低いですが,エクシヴは意外と後方に配置していないんだなぁ~と思いました.例えば,同年代のホンダ・アコードはバルクヘッドギリギリまでエンジンを後ろに下げていますが(↓),

(Honda Racing Gallery:
JACCS ACCORDより)
エクシヴの方は,排気管が見えるくらい空間が空いています(↓).
アコードなんかだと「フロントミッドシップ」を謳っても良いくらいですが,エクシヴの方はFFの範疇といった感じ.排気管を通すためにバルクヘッドが加工されていますし,素人目にはもう少し下げられるようにも見えるのですが,何か制約があったんでしょうね.
ついでなので,そのままエンジン後方を覗くと,金属の削り出しのような部品でエンジンが固定されています(↓).
当然ですが,可動部はブッシュではなくピロボールです.ボディ左右の連結はレーシングカーなので,タワーバーなんぞではなくパイプで直結されていますが(↓),
意外と細い・・・? まぁ,ホイールハウス自体はぶっとい2本のパイプでバルクヘッド側と連結されているので(↓),
そこまでの太さは要らなかったのかもしれませんね.
あと,ダンパーのアッパー部分には物凄くゴツイ部品がついてました(↓).
見ただけで固そうなのが伝わってきます(笑).その部品の手前にあるネジの上に乗っかっているネジ(?)は何なのか分かりませんでしたが,わざわざ固定しているので何かしらの役目があるんでしょうね.また,部材の上部から伸びたケーブルを追い掛けていくと(↓),
その先にはタンクが.ダンパーのサブタンクがこんな位置にあるんですね.
当然,反対側にもタンクがあるのですが,こちらは横向きではなく,縦向きに固定(↓).
その隣には点火コイルと思わしき物体がありますが,何でこの順番??
オイルクーラーは正面から見て右側のエンジンとホイールハウスの隙間に(↓).
その後方にはミッションのシフトリンケージと思わしき部品が(↓).
アレ? という事はミッションは助手席側なのか?? ちなみに,JTCCの車両はシーケンシャルミッションですが,こちらの土屋エンジニアリング製の車両には「アシフト(アシでシフト)」というアップシフト操作のみ左足で行える機構が取り付けられているそうです.残念ながら展示位置の都合上,運転席側から中を覗けなかったので「アシフト」のペダルは確認出来なかったのですが,
多分,このリンケージの先にあるんじゃないのかなぁ~?と思いました.
という事でエンジンルーム内の見学はこれくらいにして,ボディ関係を観ていきます.
これぞJTCC!って感じで,タイヤにフェンダーが被っているのがイイですね♪
なお,よく見てみるとブレーキキャリパーの表面が削られていました(↓).
ブレーキメーカーのロゴを消したかったのか?と思いましたが(↓),
リアにはちゃんと「brembo」と書いてある・・・.前後共に4ポッドだそうですが,フロントはホイールとのクリアランスが厳しかったという事なんですかね? そして,そのブレーキの冷却ダクトは多分コレ(↓)かな?
冷却と言えば,アコードにはミラー前に室内換気用の導入口がありましたが(↓),
エクシヴにはない(↓).
・・・と思いきや,運転席側にはありました(↓).
こちらは右側という事もあってか,ミラーの位置もオフセットされていました.
リアは,1997年のレギュレーション改定でウイングをルーフと同じ高さまで上げられるようになったので,かなり目立ちます(↓).
当然,トランクを貫通してフロアに直結しているんだろう~と思ったら(↓),
スリットに見えた黒い線は影でトランク固定でした・・・.
その代わり,前側からテザー(というかロッド?)で支えてもいるみたいです(↓).
あ,あと最後に,このレベルのレーシングカーでもウェザーストリップはちゃんと付いているんですね(↓).
ウェットも走るとはいえ,レーシングカーなら外すのかな?とも思いましたが,そのままである事が確認出来たのは1つ勉強になりました.
以上,大分長くなりましたがリバースヘッド見学のADVAN EXIV編でした.
更にマニアックな,コチラ(↓)のエンジン展示に関しては
次回.
