
先日の「富士モータースポーツミュージアム」の話で,「
右側のサイドミラーがないですね~」って話を書いたら,EF8の先輩から「何言ってんだ.CR-Xだって右側はミラーないだろ?」と画像が送られてきました(タイトル画像参照).ザッと調べたところ1980年代までは確かに海外では片側にミラーがなくても許されていたようで,勉強不足を思い知らされたOXです.
さて,そんな年代のクルマは当然「ダイレクトイグニッション」ではありませんが,
前回に続き「コイル」のお勉強です.
「点火を強くする」というのは,もう少し正確に言うと「イグニッションコイルの2次コイルの電圧を高くする」という事を前回学びました(「スパークプラグ」は変えない前提の話です).
「2次コイル」の電圧は以下の関係性(↓)を持っていますので,
[2次コイルの電圧] = [1次コイルの電圧] × [2次コイルの巻き数] / [1次コイルの巻き数]
「点火を強くする」ための方法としては以下の3つが考えられます.
①「1次コイルの電圧」を上げる
②「2次コイルの巻き数」を増やす
③「1次コイルの巻き数」を減らす
①「1次コイルの電圧」を上げる
「1次コイル」の元電源はバッテリー(or オルタネータ)であり,これらの定格出力は決まっているので,電圧の絶対値を上げる事は出来ません.
となると,前回お話した「コイルの天邪鬼な特性」を用いて「1次コイル」を昇圧するしかありませんので,「1次コイル」への通電時間を制御している「ドエルタイム」を延ばす事によって,この昇圧を強める方法が考えられます.
ならば,「ドエルタイム」をどんどん延ばしていけばいいじゃないか!というと,そんな事はなく,「1次コイル」の電圧を上げていくと「イグニッションコイル」上部に付いている「イグナイタ(↓)」が音を上げます.
音の上げ方の詳細までは専門家ではないので分かりませんが,ご覧の通り電子機器ですので,恐らく「熱」的な要因でしょう.従って,延ばせる「ドエルタイム」にも限界がある事が分かります.
②「2次コイルの巻き数」を増やす
これが一番単純で分かり易い方法だと思います.一例を挙げると以下のような感じ(↓).
K20A用の「イグニッションコイル」に比べて,F20C用の方が「2次コイル」部分の長さが長いのが分かると思います.この両者の「イグナイタ」と「1次コイル」が同じ仕様であるかどうかは,ホンダの人間ではないので分かりませんが,このDENSO製「イグニッションコイル」の相当品として出ているNGK製は,K20A用とF20C用が同一部番になっているので,恐らく一緒でしょうね.
という事で純正品(DENSO製)を使うなら,K20A用よりもF20C用を使った方が点火が強いという事になるのですが(所謂,純正チューンってヤツですね),ここで1点引っ掛かっています.
K20Aが初搭載されたのは2000年に発売されたストリームです.ハイチューン仕様の所謂R-Specが出たのはその翌年の2001年のインテグラ(DC5).一方,F20Cが搭載されたのは1999年に発売されたS2000(AP1)です.そう,性能の良いF20C用の方がK20A用よりも先に市場に出ているんですよね・・・.
確かにK型エンジンはTYPE-R以外にも使われていますし,それらと共用する事でコストダウンが図れるのも事実です.同じエンジンで「イグニッションコイル」如きに仕様を分けたくないというのもあるでしょう.でも,ホンダじゃないですか? TYPE-Rじゃないですか? 手近により性能が出せる部品があるなら,それを使いそうなもんじゃないですか? なのにそれを使わない.なんか引っ掛かるなーと思いました.
最初に思いついたのが,「これだけ見た目が違っても,実はイグニッションコイルの性能としては大差がない」という説.実際「K20A用→F20C用に替えてみても体感は出来なかった」という話を聞いた事はありますし,NGKが部番を統合している点(仕様を一緒にしても保証出来る点)からも「大差ない」の可能性は高い気がします.
ただ,それじゃ面白くないので(笑),もうちょっと捻り出してみたいと思います.
まずは昔懐かし,オームの法則.

(atenai:
オームの法則ってどんな法則?より)
いや,私は普通に「ブイ,イコール,アイ・アール」と覚えましたが,最近はこういう覚え方をするんですかね・・・?
ま,それはともかく,「電圧」を上げるためには「電流を増やす」or 「抵抗を増やす」という法則です.
先述のF20C用コイルの場合,K20A用に比べて「2次コイルの巻き数」が多いので「電圧」が高くなるはずですが,「巻き数」が多い分「抵抗」は増えるので「電流」は減ります.どれくらい増えたり・減ったりするのかな?と思い調べてみたところ,

(Pepper License:
電気回路 その4より)
「抵抗」は巻き数の2乗で増え,「電流」は巻き数に反比例して減るのだそうです.「抵抗」はコイルの物理的なモノなので良いとして,「電流」がこんなに減ったら,点火という観点では弱くなんないの?と思い調べてみましたが,そこはよく分かりませんでした(点火エネルギーという意味では変わらないかなぁ~?とも思いましたが).
ただ,2乗で「抵抗」値が増えたら,過渡特性は確実に変わりますよね?
例えば,通電開始時の立ち上がりは遅くなり,レスポンスが悪化する気がします・・・.
(・_・)… ン?
アレッ? おかしいですね?? K20Aのレブリミットは大体8600rpm,F20Cのレブリミットは9000rpmくらいですから,F20Cの方が高回転型で点火の時間が短く,レスポンスが必要になりそうですよね.でもF20Cの方がレスポンス面では不利になりそうな高抵抗型のコイル.F20Cは過渡よりも絶対値を優先したとも解釈出来そうですが,他に要因がありそう・・・.
他の要因として「熱」というのを考えてみました.
電気が流れると熱を持ちますので,「電流」が大きいほど発熱量も大きくなります.先述の通り,「2次コイルの巻き数」を増やすと「抵抗」が増えますので,オームの法則から「電流」が減ります.つまり,F20C用の方がレスポンスは悪いが発熱量は小さい,という説が思い浮かびます.なるほど,高回転型の方が「熱」の条件は厳しいですので,これだと納得出来ますね.
という事で纏めると,
F20C用のイグニッションコイル ・・・ 点火のレスポンスは悪いが,耐熱性が高い
K20A用のイグニッションコイル ・・・ 点火のレスポンスは良いが,耐熱性が低い
そして,点火の力自体は両者に大差はない,なんて特性だったりすると面白いんだけどなぁ~と思った「コイル」のお勉強でした(あ,③の話をし忘れたので,
次回おまけ編として書きます).