前回触れた「A052の下位互換」の話には,シバタイヤ(TW200)とZⅢの比較の話も出てました.その中で興味深かったのが「横がある」という表現.舵に対してタイヤが反応する事を「横がある」と表現されているので,タイヤ剛性の事を指しているんですかね?
曰く「ZⅢはシバタイヤに比べてフィーリングが良い.ストレスなくライントレースが出来る」「だが,それ故にセットアップが改善しない」「A052に繋がらない」との事でした.頷ける部分も多い話なのですが,アレ?と思う部分もあるので別途考察してみようと思ったOXです.
さて,失火対策が完了してからエンジン自体は非常に快調なのですが,アイドリング時のハンチングが酷く,
クローズドループ制御同士がケンカしている可能性があったので一度整理を行いました.これと並行してもう1つ「始動時の回転落ち」という現象も起きていて,こちらの対策も並行で進めています.
まず,エンジンの始動時の挙動は,こんな感じになっています(↓).
①キーを捻ってスタータをONにする(スタータを捻る)
↓
②バッテリー電圧が10V前後まで落ちる
↓
③スタータによってエンジンが回り出し,着火して一気に燃焼する
↓
④一気に燃焼したので,回転数が1500rpmオーバーまで吹け上がる
↓
⑤回転数が上がったのでオルタネータが発電を開始し,バッテリー電圧が元に戻る
↓
⑥状態が安定したので勢いを失い,回転数が落ちる
↓
⑦これらをブルン!という音で判断して,ドライバーはキーを放す(スタータを放す)
今回「回転落ち」と言っているのは上記⑥の部分で,ここが「目標回転数」を下回る場合がありました.
基本的に,この吹け上がり時の回転数の高さ(山の高さ)は空気量で制御するので,「アイドル回転数制御」の「始動step」を増やしていけば自然と山も高くなり,「目標回転数」を下回る事もなくなるのですが,その後にグワン!グワン!とハンチングが起きてしまいました.この始動直後の領域は「オープンループ制御」なので,空気と燃料の制御タイミングが合っていないんだろうと思い,調整する事にしました.
まずは空気.
以前纏めたものを見返しながら状況を確認します.
EACVのstep数で空気量を制御する訳ですが,スタータを捻った直後はまず強制的に全開(80%)にされます.LINK ECUは回転数が400rpmを越えた瞬間に「始動」と判定するので,そこでこの強制全開が終了します.これが終了したところから「始動step」の制御が始まる訳なのですが,マニュアルにはこう書いてありました(↓).
「始動step」はずっと入っている訳ではなく,「3秒」のタイマーで効果が切れる(フェードアウトする)のですが,確かに追加のstep数は「3秒」で完全になくなっているものの,その後2秒間クローズドループが開始されないんですよね・・・.この2秒のディレイはどこから来たんだ?という気もしますが,ここではトータル「5秒」始動制御が続いていると考えます.
あともう1つ.「フェードアウトする」と言われると,時間が経つ毎にstep数が少しずつ値が減るのかなぁ~?と思いたくなるのですが,これも実際のデータでは"少しずつ"ではなく"一気に"減っているんですよね・・・.これだと回転数が急変するんで困ります.
次は燃料.こちらも
以前纏めたものを見返しながら合わせ込みを行います.
スタータを捻ってクランキングが始まると最初は「クランキング補正」が作動します.私はこの「クランキング補正」の作動時間を「1秒」に設定しているのですが,大体始動直後の山が落ちてきた辺りで補正が切れる感じになっているので,タイミングとしては問題なさそうですね.
問題はこの先.空気側の制御で出てきた先述の「5秒」を踏まえると,5-1=4秒間クローズドループ制御が作動しないので,この間を「始動後増量」を使って空燃比を安定させる必要があるのですが,「始動step」の動きが急だわ,2秒間空気側で何も補正しないわ,で不安定な状態になるので,「始動後増量」の「ホールド時間」を「4秒」に設定して燃料側は状態を変えない方が安定しそうです.「4秒」経過した後は,空気側がクローズドループ制御を始めるので,それに合わせて「始動後増量」を少しずつフェードアウトさせれば(減衰させれば)目標値に軟着陸(ソフトランディング)出来そうですね.
では,そのフェードアウトさせる時間をどう設定するか?ですが,ラムダのクローズドループ制御が作動するタイミングが良さそうです.ラムダのクローズドループは始動直後から一定時間は使う事が出来ず,この時間が「タイマー停止条件」で設定されています(↓).
この「タイマー停止条件」にちょうど合うように「始動後補正」の「減衰時間」を設定してあげれば良さそうです.これで燃料系のタイミングは合わせ込めたと思うのですが,ここでエンスト対策で新たに追加された「
アイドル目標回転数 3Dテーブル化」が顔を出してきます.
この機能は始動時に少しアイドリング回転数を上げて,「エンジン作動時間」が経過する毎にそれを減らしていく機能なのですが,コイツが急変すると空気量が変わるので,コイツもソフトランディングさせてやる必要があります.
そこで最初のアイドル回転数制御のクローズドループが始まるまでの「5秒」間は,目標値を変えないように設定し,そこからラムダのクローズドループが始まる時間に合わせて,少しずつ目標回転数が下がるように設定してみました.これによって,大分ハンチングが弱まり,回転数が安定するようになりました.
以上,始動制御のタイミング合わせでした.
ちなみに,暖機を促進するために始動直後のアイドリング回転数を引き上げる事を「ファストアイドル」と言いますが,純正のECUはこれが1000~1800rpmに設定されているようなので(タイトル画像参照),この数値に合うように値を調整してみました.これで失火対策で追加された新機能の微調整が概ね完了したので,今後は地道にハンチングの解消をはかっていこうと思います.
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セッティング(ECU) | 日記
Posted at
2023/04/04 12:20:20