
2023年に入って間もないくらいから,EF8を車庫から出す時にブレーキペダルの初期タッチが柔らかい気がしていました.
最初「エア噛みかな?」と思ったのですが,車庫から出す時しかその柔らかい感じがせず,一般道を走行している時は当然の事,サーキット走行でも感じなかったので,「さすがにこれだけサーキットを走ってエア噛みって事はないよな? 気のせいかな・・・??」と心の中に留める程度にしていました.
それから時は流れ今年の5月.筑波のジムカーナ場で
スライドトレーニングをしている真っ最中に,ブレーキペダルがスコッ!と奥に入る症状が出ました.
40km/hも出てない低速であり,スコッ!と奥に入った先で強くペダルを踏み込むと,ちゃんとブレーキが効いたので事なきを得たのですが,この後インストラクターにも乗ってもらうのに症状が出たらマズイと,エア抜きの要領でブレーキペダルをガン!ガン!ガン!と何度も力強く踏んだら症状が治まりました.
この時点でブレーキフルードは前回の交換から9ヵ月経過していたので,「やっぱりエア噛みかなぁ~?」と思い,ショップでフルード交換を実施.
その後,チェックのために再び
サーキット走行をしたのですが,
3本走っても症状は出ず,「やはりエア噛みだったか~」と安心していました.
その翌日,
サンブレフェスタを見学しに行った際,
駐車場での出し入れで,再びブレーキペダルがスコッ!と奥に入る症状が発生・・・.「コリャ,ダメだ」と思い,そのままショップへ向かって工場長に細かく症状を伝えると,「ブレーキを普通に踏んだ時に問題がなく,ブレーキをソォ~っとゆっくり踏んだ時に問題が起こるのならば,恐らくマスターシリンダー」との事.「シリンダーのシール部分が劣化して隙間が出来てしまい,ゆっくり踏むとその隙間からフルードが漏れるので油圧が掛からず,ペダルが奥に入ってしまうのではないか?(強く踏む時は一気にシリンダーが動くので油圧漏れは起こらない)」と診断頂きました.
となると,部品交換・・・となるのですが,当然の事ながらEF8用のマスターシリンダーなんて出るはずがない(泣).
調べてみたら,マスターシリンダーのオーバーホールキットがオークションに出ていたので「ダメ元で,コレはどう?」と店長に聞いてみたところ,「シリンダー本体側も摩耗している可能性があるから,単なるオーバーホールでは完全に直らない可能性がある」と言われ,他車種流用の路線に・・・.
他車種流用と言っても,B型世代は軒並み「ゴソーダンブヒン」という呪文を唱えられるだけなので,近い世代で手に入るモノは何だ?と探してもらったところ,ビート(PP1) or NSX(NA1)と出ました.
「極端だな,オイ!」ヾ(ー ー ) ォィ
と突っ込みを入れつつ詳しく見てみると,PP1用は「6インチ」,NA1用は「7インチ+8インチ」と書かれています.このインチが何のサイズを示しているのか分かりませんが,EF8用は「9インチ」だったので,両者共にEF8用よりはサイズ的に小さく収まりそう.だったら,ブレーキ容量が小さい軽自動車用(PP1)より3Lオーバーの大排気量車用(NA1)だよな・・・?という事で,そちらの方向性に.
シリンダーとバックはセットでないと付かないと思うから~との事で,
NA1用のマスターシリンダーとマスターバックをオーダーしました.
いざ部品が届くと,予想通りEF8用に比べてNA1用のマスターバックは径は小さかったのですが,長さ方向はEF8用よりも大きく,手前側に出っ張るような感じとなりました.
これにより,今まで付けていた
マスターシリンダーストッパー(↓)はサイズが合わなくなったので撤去.
また,マスターバックと共締めされていた,クラッチワイヤークランプASSY(↓)も位置が合わないので撤去.
更にマスターシリンダーの位置が変わるので,配管も引き直し・・・となりましたが,私のEF8は
ブレーキバランサー(↓)取付けのために配管を既にイジってあったので,
小改修で済みました(工場長曰く「これがあったから,何とかなった・・・」との事).
そんなこんなで,配線もこんな感じ(↓)のギリギリ回避だったりしますが,
無事,NA1用のマスターシリンダー&マスターバックがEF8に付きました.
(工場長,本当に有難う御座います!<(_ _)>)
早速,ショップからの帰り道に感触を確かめてみたところ,
・ペダルの踏み始めのタッチが固い ⇒ 今まで抜けて柔らかかったのが元に戻っただけ??
・ブレーキの効きは変わらず ⇒ 街乗りレベルでは違いは表れない?
・・・という感じでした.一先ず違和感はなさそうですが,ブレーキロックのし易さや微妙な踏力コントロールに対するレスポンス等はサーキットで試してみないと分からないので,後日TC1000に行ってチェックしてみようと思います.
以上,「ブレーキペダルが奥にスコッ!と入る」の対策でした.
ちなみに,NA1用のマスターバックのサイズを表していた「7インチ+8インチ」はどういう意味なんだろう?と調べてみたところ,どうやら両者のマスターバックは構造からして違うようです.
EF8用のマスターバック(ホンダの呼称では「マスターパワー」,一般的には「ブレーキブースター」と呼ばれるモノ)は,こういう構造(↓)をしており,

(出典:全国自動車整備専門学校著 山海堂発行,自動車教科書「シャシ構造 2-3訂」より)
EF8用の「9インチ」というのは,上記の「ダイアフラム」のサイズを示すそうです.
「ダイアフラム」は,下記(↓)のブースター原理における「パワーピストン」に相当するもので,

(出典:全国自動車整備専門学校著 山海堂発行,自動車教科書「シャシ構造 2-3訂」より)
そもそも「ブレーキブースター」は,ペダルの踏力をロッドを介して「バルブプランジャ」に伝え,「バルブプランジャ」が動く事によって「パワーシリンダ」内の大気室Bに大気が流入し,大気室Bと負圧室Aに圧力差が生じる事で「パワーピストン」にアシスト力を発生させる機構となっています.
つまり,「パワーピストン(=ダイアフラム)」が大きい程,ブレーキのアシスト力も大きくなり,「ダイアフラム」が小さい程,アシスト力も小さくなるという事です.
・・・となると,ダイアフラムのサイズが小さいNA1用の方がアシスト力が小さい!?と考えたくなりますが,こちらは「タンデムブレーキブースター(↓)」という構造になっています.

(出典:全国自動車整備専門学校著 山海堂発行,自動車教科書「シャシ構造 2-3訂」より)
「タンデム」の名の通り,「パワーピストン(=ダイアフラム)」が2つ付いた構造となっており,パワーピストンを直列に2段で設ける事で,ブレーキブースターの外径を小さくしたまま大きなアシスト力を得る事が出来るのだそうです.言い替えると,径方向の大きさでアシスト力を稼ぐのが通常の「シングルブレーキブースター」であるのに対し,径が小さくとも2個付ける事によって(長さ方向に大きくなる事によって)アシスト力を稼ぐのが「タンデムブレーキブースター」といったところでしょうか.
はてさて,径方向と長さ方向,この差がどういう違いを生むのか分かりませんが,アシスト力が強過ぎてブレーキロックに苦しまされる・・・なんて事態にならない事を願いたいものです.