ショップからキャスター角の変更を提案されたのですが,その際のメリット・デメリットをきちんと理解しておらず,判断出来なかったのでいつもの如く調べてみます.
まず,「キャスター角」というのは,「前輪の操舵回転の中心軸と垂直線との傾き」の事です.こんなの言葉で言われても分からないので,図で見てみると,こんな感じです(↓).

(小学生でも分かるホイールアライメントの話:
4. キャスター角の効果より)
タイヤの中心点に対して,サスペンション(2輪で言うところのフロントフォーク)が傾いている量が「キャスター角」ですね.この角度が大きい事を「寝ている(≒ハイキャスター)」,小さい事を「立っている」と表現したりもしますね.
それぞれの効果は,
寝かせた場合 ・・・ ステアリング操作に対する抵抗が増える(クルマを真っ直ぐ進ませようとする力が強い)
立てた場合 ・・・ ステアリング操作に対する抵抗が減る(クルマを真っ直ぐ進ませようとする力が弱い)
という感じです.つまり,「キャスター角を寝かせると直進安定性が向上する」という事のようです.これだけであれば話は至極単純なのですが,もう1つキャスター角を寝かせる事によって生じる「キャスタートレイル」というものが絡んでくると話がややこしくなります.
「キャスタートレイル」は,先程の「キャスター角」の延長線とタイヤの中心点の延長線をそれぞれ伸ばして,路面で測った場合の距離です(上の図でご確認下さい).この距離が長くなると,ステアリングを切った時に前輪が並行ではなく,斜めに捻った動きをするので,キャンバー角・トー角も同時に変化し,話がややこしくなります・・・.
あまりにも話がややこし過ぎて,理解するのを放棄したくなったので,一旦動画に逃げてみます.
タイヤの温度目線(=タイヤの負荷)で結果だけを勝手に抜き取って纏めると,以下だそうです.
キャスターを寝かせた場合 ・・・ タイヤの内側は温度が高いが,外側は低い
ノーマルキャスター ・・・ 寝かせた場合に対し,タイヤの外側の温度が上がっている
キャスターを立てた場合 ・・・ ノーマルキャスターより,更にタイヤの外側の温度が上がっている
画像で見ると,こんな感じ(↓).

(REVSPEED 2019年6月号より)
【タイヤの内側の温度】
キャスターを寝かせた場合 ・・・ MAX:42.4℃ MIN:13.5℃ (+28.9℃)
ノーマルキャスター ・・・ MAX:57.8℃ MIN:17.3℃ (+40.5℃)
キャスターを立てた場合 ・・・ MAX:62.5℃ MIN:15.2℃ (+47.3℃)
【タイヤの外側の温度】
キャスターを寝かせた場合 ・・・ MAX:37.0℃ MIN:29.7℃ (+ 7.3℃)
ノーマルキャスター ・・・ MAX:52.9℃ MIN:44.2℃ (+ 8.7℃)
キャスターを立てた場合 ・・・ MAX:59.5℃ MIN:47.9℃ (+11.6℃)
キャスターを立ててれば立てるほど,タイヤの外側の温度が上がっていっているので,よりタイヤのグリップを引き出せていそうです.それでいて,内側の温度も上がっていっている事からタイヤが倒れ込んでいる訳でもなく,タイヤの全面を均等に使えるようになっていそうですね.
ドライバーのコメントも見てみると,こんな感じ(↓).
キャスターを寝かせた場合 ・・・ ヘアピンで舵角を増やすとフロントが外側に逃げる
ノーマルキャスター ・・・ 舵角を増やしてもフロントが逃げなくなったが,リアがインリフトし易くなった
キャスターを立てた場合 ・・・ 更にフロントが曲がり易くなったが,リアのインリフトが更に気になる
なるほど,キャスターが寝ていると大舵の時にタイヤの外側を使う事が出来ず,グリップレベルとしては低いようですね.キャスターを立てるに従ってタイヤの外側を使いこなせるようになっていき,グリップレベルが上がっていく様子が窺えます.リアのインリフトが増えていっているのは,フロントの喰いつきが良くなった事の現れ,もしくは大舵の時に操舵抵抗が増えて一本背負い状態に近づいていっているせいでしょうね.
・・・とすると,負荷が高い方(TC1000だと左側)のタイヤの外側と内側の温度を測って,外側の温度が低めの時はキャスターを立てる,高めの時はキャスターを寝かせるという方向になりそうです.
私のEF8の場合は,ここのところ慢性的にタイヤの外側の温度が高くなっているので,キャスターを寝かせる方向が良さ・・・
¢( ・_・) ン?
アレッ? そういえば
3月にテンションロッドを交換した際,キャスター角をちょっと立て気味にしてもらったような・・・?
この直後にマイナーチェンジ版のA052を投入したので,タイヤの外側がオーバーヒート気味なのはタイヤのせいかと思っていたのですが,もしかしてその時の僅かなキャスター調整のせいだったり・・・
アッ━━━━━━━(゜Д゜;)━━━━━━━!!
色々辻褄が合った.そうか,そういう事だったのか・・・.ようやく去年から今年にかけて,クルマに何が起きているのか理解出来た.けど,一体コレどうやって対策すれば良いんだろう・・・?
対策方法まではよく分かんないので,もう少しキャスター角について調べてみますか.
極端な例で考えてみます.キャスター角がゼロの場合,こんなイメージでしょうか(↓).
こんなクルマがあったとして,ステアリングを右に切ると,こうなります(↓).
ま,当たり前の動きですね.
では次に,キャスター角がとんでもなく付いている場合をイメージしてみます(↓).
この状態でステアリングを右に切ると,こうなります(↓).
左右方向にタイヤの向きは変わらず,切った方向にタイヤが寝る(キャンバーが変化する)だけなんですね.これが先程「キャスタートレイル」によって,キャンバー角・トー角が同時に変化すると言った理由です.トー角はバンプアウト・バンプインの特性があるので,ここでは一旦横に置いておくとして,要約すると「キャスターは寝かせた方がキャンバー角が変化する」という事になりますかね.
・・・で,ここからが面白いところなのですが,話が大分長くなってしまったので続きは
後編へ.