
先月
フロントのブレーキローターとパットを交換してリフレッシュしたのですが,慣らし旅の間も「新品の割にはフィーリングが良くないなぁ~」と思っていました.
「熱が入ってないからかなぁ~」とも思ったのですが,サーキット×2回+ジムカーナをこなしてもフィーリングは変わらず,ちょっと不満に思えてきました.23-24シーズンのタイムアタックではフロントのブレーキロックで何度かチャンスをフイにしましたし,次はここに手を入れてみようかな?と思い,調べ始めました.
ブレーキの「フィーリング」は,その名の通り「感触」=「触った感じ」なので,客観的に捉えるのが難しいよなぁ~と思い,まずはその辺りをADVICSの「ブレーキ雑学講座」でお勉強.

(ADVICS:
ブレーキ雑学講座 86.ペダルストローク その1より)
上の図は,縦軸がペダルストローク,横軸がマスターシリンダーの液圧です.一般的には,液圧が高くなるのに従ってストローク量も増えていくのですが,この液圧-ストロークの特性の中には,「マスターシリンダーの液圧とは無関係な部分(IS)」と「マスターシリンダーの液圧と比例する部分(RS)」があるそうです.
一般的には,「無関係な部分(IS)」が短く・「比例する部分(RS)」が長いと「ブレーキフィーリングが良い」と感じるそうですが,この「無関係な部分(IS)」が短過ぎるとペダルに足を乗せたくらいの感覚でもブレーキが効いてしまうため扱いにくく,逆に長過ぎると床に当たるくらいペダルを踏んでも油圧が上がり切らず「ブレーキが効かない!」となるのだそうです.従って,この「無関係な部分(IS)」がフィーリングにとっては重要なポイントとなります.
…で,この重要な「無関係な部分(IS:Idle Stroke)」は,以下の式で表されるそうです.
[アイドルストローク] = ([ペダル比] / [マスターシリンダー面積]) × [アイドル液量]
このうち「ペダル比」「マスターシリンダー面積」は構造的に決まった値ですので,ここでは横に置いておくとして,最後の「アイドル液量」に着目してみると,この「アイドル液量」はブレーキ部品間の「遊び」や「隙間」で決まるそうです.
「遊び」はブレーキペダルそのものの遊びで,ペダルとマスターシリンダーの接続部の摩耗等が考えられるそうですが,私のEF8の場合,この辺りはリフレッシュしたばかり(
アレとか
コレとか).一方,「隙間」の方はパッドとローターの隙間が挙げられるのだそうで,この両者を新品にしたのにフィーリングが良くならないとなると,残るは「隙間」を生み出している存在=「キャリパー」となりそうですね・・・.
ここでもう一度,先程の図に戻ってみると,

(ADVICS:
ブレーキ雑学講座 87.ペダルストローク その2より)
ブレーキペダルのストローク量から「アイドルストローク」分を引き,そこから先のマスターシリンダー液圧に対して比例関係となる線を引いた時に出来る角度「α」を「ペダルストローク剛性」と呼ぶのだそうです.この「ペダルストローク剛性」は,この剛性ほマスターシリンダー液圧に対してブレーキ部品がどの程度膨らむか?で評価されるのだそうで,膨らみが少なければ少ないほど=「α」が小さいほど「剛性が高い」となります.
また,「ペダルストローク剛性」に影響を及ぼす部品の内訳は,
キャリパー ・・・ 40%
パッド ・・・ 30%
ホース ・・・ 10%
その他 ・・・ 20%
となっており,やはり「キャリパー」が最も影響を及ぼす部品のようです.この「キャリパー」の剛性は,液圧を加えた時のキャリパー本体のたわみ量で評価されるそうで,キャリパーの剛性を出すための方法は色々あるようです.
まず,「浮動型」と「対向型」の話(↓).
「浮動型」というのは,キャリパーの片側だけにピストンが付いていて,ピストンがパッドをローターに押しつける力を利用して,キャリパー自体を動かし,反対側のパッドもローターに押しつける構造です(↓).
これに対し,「対向型」はその名の通り,キャリパーの両側に対向でピストンが付いていて,左右同時にパッドを押しつける方式となります.一目瞭然だとは思いますが,片側から押しつけるより両側から押しつけた方が力の伝わり方がダイレクトですし,キャリパー自体が動く「遊び」もなくなるので剛性感も増します.更に細かい事を言えば,キャリパーが動いて反対側のパッドをローターに押しつけるまでのタイムラグが,左右のキャリパーでピッタリ揃う事はないので,サーキット走行ではこれが瞬間的に片効き状態となって表れる事もあるそうで,「対向型」にすればそれもなくせます.
それだけメリットがあるなら,「対向型」にすれば良いんじゃないの?と思いたくなりますが,キャリパーに内蔵されるピストンが片側1個から左右2個に変わるため,当然キャリパー本体の横幅も大きくなる事から,ホイールとのクリアランスに頭を悩まされる事になります.加えて,横幅が大きくなるという事は単純に重量も増えるため,特にバネ下重量という意味で影響も出てきます.
次に,ピストン数.

(ADVICS:
ブレーキ雑学講座 82.2ピストンキャリパと4ピストンキャリパより)
こちらはイメージするのが容易だと思いますが,1個のピストンで押すより2個で押した方が,2個で押すより4個で押した方がより力を伝え易いという話です.式で書くとこんな感じですね(↓).
[ブレーキ力] = [係数] × [制動半径] × [ピストン面積] × [ピストン数] × [ブレーキ圧力]
「キャリパー剛性」という意味合いでも,ピストンシリンダーの直径が小さければ小さいほど,穴のサイズも小さくなって剛性が増しますし,パッドをローターに対して押しつける際,中央1点より,左右2点の方が均一に押せるというのもイメージし易いですよね.
以上,キャリパーのお勉強(基礎編)でした.
「ペダルストローク剛性」「キャリパーの寄与度」「対向型」「ピストン数」とキーワードが出揃ったので,次はこれを踏まえた考察です(
続く).
ブログ一覧 |
セッティング(ブレーキ) | 日記
Posted at
2024/03/23 19:29:30