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ピッチング方向とロール方向を分けてセットする手立てが必要となってきそう」という事で,ダンパーの伸び側と縮み側を別々にセッティングしたくなってきたので,2wayダンパーに関してお勉強してみる事にしました.
まず,「2way」とはなんぞや?というとダンパーの減衰力の調整代が2つある,という意味だそうです.ダンパーは伸びたり・縮んだりする代物なのはイメージ出来ると思いますが,この「伸び」と「縮み」のそれぞれで2つという事ですね.
プロユース(レーシングカー用)ともなると,更に「低速」「高速」の2段階に分かれるそうで,調整可能な部分を纏めるとこんな感じだそうです(↓).
1way ・・・ 伸び側のみ
2way ・・・ 伸び側 + 縮み側
3way ・・・ 伸び側 + 縮み側 + 縮み側(低速)
4way ・・・ 伸び側(高速/低速)+ 伸び側(高速/低速)
大半のダンパーは「1way」ですが,減衰調整といっても実は「伸び側」の減衰しか調整出来ないそうです.
(一部「縮み側」も若干変わる製品もあるそうですが)
なお,ここで言っている「低速」「高速」はダンパー内のピストンスピードの事を指しており,こんなイメージ(↓)になるのだそうです.

(Motor Fan illustrated Vol.12:ダンパーのテクノロジーより)
コース上で実際に使っているのは0.1~0.3m/sくらいの低速領域で,1.0m/sくらいの高速領域は縁石にガツン!と乗り上げるようなシーンしかないそうです.このため,サーキットユースでは「低速」「高速」というより,「低速」「微低速」くらいの棲み分けで,本当の意味で「高速」が必要となるのはジャンプ後の着地(↓)の衝撃を吸収しないといけないラリーユースのようです.
ちなみに,この着地みたいな急激な動きを吸収するために,減衰力を一気に弱めるる機構を「ブローオフ(Blow off)」と言うそうで,特性としてはこんな感じ(↓)だそうです.

(ダンパー講座:
第74回 ブローオフより)
さて,「2way」の概念が理解出来たところで,次は構造です.

(ダンパー講座:
第7回 ダンパーとしての最小構成要素より)
一般的な「1way(図の左側)」ダンパーの構造は,最上部に「ロッド(灰色の棒)」があり,「ロッド」の先に「ピストン(Piston)」が付いていて,この「ピストン」がオイル(水色)で満たされた「シェルケース」内を上下します.この「ピストン」には穴が空いていており,オイル内を上下しようとするとこの穴で抵抗が生じるため,これが「減衰力」となります.なお,オイルで満たされた「シェルケース」内に「ロッド」が侵入すると,「ロッド」の体積の分だけオイルが押し出さないといけませんが,そのオイルが押された圧力は一番下の「ガス(Gas)室」に伝わり,この「ガス室」内は気体なので圧縮して縮む事が出来るため,「ガス室」の容積が小さくなる事でオイルの逃げ場を作り,辻褄を合わせる構造となっているそうです.
一方,「2way(図の右側)」は,最後に出てきた「ガス室」が「シェルケース」の外(別体タンク)に追いやられているのが特徴です.「シェルケース」と「別体タンク」は繋がっているので,「1way」と同じようにオイルの行き来があるのですが,ご覧の通りU字に折れ曲がったような形となるため,「1way」と比べるとダンパー本体の長さは短くなります.これは言い替えると「1wayのガス室があったスペースの分だけロッドを長く出来る」という事でもあるので,決められた長さの中でダンパーストロークを稼ぎたい場合に「2way(厳密には別体タンク式)」は効果的という話になります.そして,この「ロッド」とは別の位置に「別体タンク」があるおかげで「2way」が実現出来ているようです.
「1way」の場合は,「ロッド」の中に「ニードル(Needle)」という調整機構があり,この「ニードル」の高さを変える事によってオイルが通る穴の大きさを変えて,減衰力を変更しています(↓).

(ダンパー講座:
第21回 低速減衰力アジャスターより)
「2way」の場合は,この「1way」の機構に加えて,「別体タンク」側にも「ピストン」を設け,ここにも同様のニードルによる調整機構を設ける事で,縮み側の減衰力を調整出来るようになっているそうです(↓).

(ダンパー講座:
第22回 低速減衰力アジャスター、バンプより)
ちなみに「3way」の場合は,オイルの流路が上下に別れるような複雑な形状をしているようですね(↓).

(ダンパー講座:
第24回 高速域減衰力アジャスター、 バンプより)
なお,Aragostaの3wayである「TYPE-SS」は,どこにこの調整ノブがあるのかな?と思い調べてみたら,こんな感じでの2段階調整ノブでした(↓).
以上,2wayダンパーのお勉強でした.
「やれる事が広がる」という事は,それだけ「迷路に迷い込む」という事でもあるので,「2way」のデメリットとしてはそれが挙げられそうですね.また,物理的に「別体タンク」という物体が増える事になるので,重量増を懸念される方もいるそうですが,ショップで聞いてみたところ「気にするほど重くない」との事.それよりもブレーキ等の熱源から「ガス室」とオイルを引き離す事が出来るメリットの方が大きいとの事でした.
あと最大の問題点は価格ですかね(苦笑).これだけ複雑な構造をしているので当然と言えば当然なのですが「1way」の倍近い値段・・・.「そこまでの金額を投資してレートを上げる意味があったのか?」と後悔しないように投入の是非は慎重に考えようと思います.
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セッティング(ダンパー) | 日記
Posted at
2024/07/05 12:45:16