先日のTC1000は,今のタイヤを潰すために走り回ったのですが,「どうせ潰すなら~」という事で,今までやった事ない低内圧を試してタイヤを積極的に潰してみたらどうだろう?というテストをやってみました.
これは,
フロントダンパーの縮み側の問題(減衰力は弱めて,荷重をのせ易くしたい)を,ダンパーではなくタイヤのバネ成分で解消出来ないか?という狙いと,伸び側の問題(減衰力は強めて,荷重を抜けにくくしたい)もタイヤの変形代で時間を稼いで遅らせられないか?という試みでもあります.
内圧を下げた際の効果に関しては
以前調べたので,おさらいするとこんな感じになります(↓).
①タイヤのウォームアップが遅くなる ← 面圧が下がり,タイヤの表面温度が上がらない
②OUT側のタイヤの剛性が下がる ← サイドウォールが柔らかくなるので,タイヤが変形し易くなる
③ストレート区間でタイムが遅くなる ← タイヤの接地面積が増えて,走行抵抗が増える
④ブレーキング区間でタイムが縮まる ← タイヤの接地面積が増えて,グリップが上がる
この中で今回の狙いは②(↓)になりますかね.

(横浜ゴム:タイヤの点検・整備
空気圧管理より)
では,いつもの通りロガーデータを使って効果を確認してみます.
まずはフロントタイヤの内圧を0.1キロ(10kPa)下げた場合(赤:基準値 青:0.1キロ下げ).
最高速(1つ目の緑丸)に関しては,予想に反して0.1キロ下げた方(青)が1km/h伸びていました.これはどちらかというと「基準値(赤)の方が最後に車速が一伸びしていない結果生まれた差」という感じなので,内圧を下げて接地面積を稼いだ結果,例の箇所(↓)でトラクションを失わずに済んだという事なのかもしれません.
更に,1コーナーのボトムスピード(2つ目の緑丸)を見ると,こちらも1km/h上げられているのですが,乗っていた時のフィーリングを思い返すとブレーキングで荷重掛け易く・キープし易かった印象があるので,狙い通りの効果が得られたのかな?と思います.また,これはヘアピン(3つ目の緑丸)でも同様の事が言えて,基準値(赤)よりもV字のラインを描き易くなっていました.
ただ,前述の②(タイヤの剛性が下がる)のネガがインフィールドの立ち上がり(4つ目の緑丸)で強く出ていて,60km/h付近で0.1キロ下げ(青)の方が加速が停滞しているのが見てとれます.ラップタイム的には0.1キロ下げ(青)の方が0.09秒遅かったのですが,遅れの原因がまさしくこの部分でした.
なお,最終の複合(最後の緑丸)に関しては,0.1キロ下げ(青)の方が高めのボトムスピードで旋回出来ていますが,これも荷重を掛け易くなった効果かな?と思います.
0.1キロ下げ(青)で結果は出ませんでしたが,走行枠が違うのでコンディション変化(気温:+4℃,路面温度:+10℃)の影響を受けている可能性もあり,今度は同じ走行枠の中(=同一条件下)で更に0.1キロ下げてみます(トータル0.2キロ下げ:赤).
ラップタイム的には,この0.2キロ下げ(赤)の時が基準値を0.05秒上回ってこの日のベストタイムとなった訳なのですが,ロガーデータを見ると0.1キロ下げ(青)の特徴そのままに,ドライビングを合わせ込んで稼いだ0.05秒だったのかな?という気がします.
最高速(1つ目の緑丸)は制動力の高さ(前述の④)を活かしてブレーキングの開始をギリギリまで遅らせていますし,ヘアピン(2つ目の緑丸)も制動力の高さを活かしてよりV字のラインで攻めています.最終複合(最後の緑丸)も曲げ易い事から逆算して進入の速度を上げる走らせ方をしてロスを最小限にしているのが見てとれます.これらを言い替えると「タイヤのピークを上手く引き出せた(=ドライビングの難易度を下げられた)からこそ削り取れたタイム」とも言えるので,やはりダンパーの問題は早く解消しないとダメなんだろうなぁ~と改めて思いました.
次に,ここまでの結果から0.2キロ下げ(赤)の方がバランスが良い事が分かったので,この状態でタイヤを冷やしたらどうなるか?と試したのが3本目.
温間時のターゲット内圧は一緒で,タイヤが温まった状態が赤,冷えた状態が青です.コンディション差は気温で+3℃,路面温度で+7℃.加えて左フロントタイヤが摩耗限界に達したので左右ローテーションして臨みました.
結果は温まった状態(赤)に対して0.26秒後れ.ロガーデータを見ると全体的にボトムが下がっているので,タイヤが限界だったのかなぁ~?という気がします.ここではタイム云々よりも,0.2キロ下げた状態の,更に冷間時のフィーリングはどうなるか?という事を確認したかったのですが,路面温度が高かったせいか意外とフィーリングは変わりませんでした.内圧が低過ぎて,荷重を掛けていった時に腰砕けにならないか?という事を一番懸念していたのですが,そんな事もありませんでした.これはタイヤが摩耗してハイトが下がり,相対的にブロック剛性が上がった事が起因しているのかもしれません.
最後に仕上げとして,同じ枠内で更に0.1キロ下げ(トータル0.3キロ下げ:青)もテスト.
ロガーデータ的には,この日のベストだった0.2キロ下げ(赤)と大差ない感じですが,全体的に満遍なく遅く0.23秒後れで終わりました.さすがにここまで下げるとフィーリング的にも違和感があり,
例えば1コーナーの進入では,右リアがインリフトしているのに加えて,右フロントも接地感が薄かったです.1コーナーは右フロントを縁石にのせてクリアしているのですが,縁石にのっても「のったなぁ~」という手応えがなく,「アレ? もしかして浮いてる??」と思うほどでした.
また,最終の複合でも,ブレーキング後の抵抗感が物凄く「前に進まない~(転がせない~)」といった感じで,さすがにここまで下げるとやり過ぎだったようです
以上,タイヤを潰すテストでした.纏めると,
①タイヤのウォームアップが遅くなる ⇒ ○(前後バランスが取り易い)
②OUT側のタイヤの剛性が下がる ⇒ ×(インフィールドの立ち上がりでロスが大きい)
③ストレート区間でタイムが遅くなる ⇒ ○(むしろトラクションが良くなる)
④ブレーキング区間でタイムが縮まる ⇒ △(0.2キロ下げまで○,0.3キロ下げで×)
・・・といった感じでした.コントロールのし易さで言うと「基準値の0.2キロ下げ」くらいが良いですが,タイム的にはやはり基準値の方が出るかなぁ~という感じ(新品タイヤだとハイトが高いので特に).付け焼刃で0.2キロ下げくらいまでは現地セッティングとしてアリな気もしますが,やはり根本的にはダンパーの問題だと思うので,そっちを何とかしないとダメですね.「考えていた方向性は間違っていない」という裏取りが取れたのを収穫としたいと思います.
さて,次回は新品タイヤの投入.新品の一撃を上手く決めて結果を残したいところですが,12月からファミ走は8時のタイムアタック枠がなくなるため,狙ったタイミングでクリアがとれるかどうかが勝負のカギ.運要素が強くなる点だけが気掛かりですね・・・.
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セッティング(タイヤ) | 日記
Posted at
2024/12/04 07:02:07