
リアのグリップ不足の対策として,
先日のTC1000ではリアに
5mmのホイールスペーサーを追加して左右トータル10mmのトレッド拡大を図ってみました.
たかが10mm,されど10mmで,何かしらの違いは出るだろうと思っていましたが,結果は新品タイヤの僅か0.034秒落ちとなかなかの好タイムを記録する事が出来ました.ただ,このタイムも一か八かの一発勝負で出したもので,絶対値的には自己ベストの0.5秒落ちというのを踏まえると,まだまだ先は遠いですね・・・.
という事で,いつものようにロガーデータを使った反省会(回)です.まずはサンプルデータから.
【新品使用時(41.306)】
気圧:1016.8hPa 気温:7.6℃ 路面温度:9.3℃
【今回(41.340)】
気圧:1020.2hPa 気温:11.2℃ 路面温度:15.9℃
コンディション的には,今回の方が気圧が高いのですが,午後の走行なので気温も高く,絶対値的に見ると両者で帳消し,もしくは今回の方が若干不利といった感じです.
続けてロガーデータ.今回はなぜだかデジスパイスのデータがぶっ飛んでいたので,LAP+で補正したデータで比較します(赤:新品時 青:今回).
ホームストレートエンド
今回(青)の方が新品時(赤)と比べて,112km/hを超えた辺りで一伸びしており,エンジンパワーが回復しているのが分かります.ただ,今回(青)のラップはアタックラインの使い方が足りず,若干初速が足りなかった事もあり,終端速度的には新品時(赤)と違いはありませんでした.他のラップを見ると133km台をマークしていたりもするので,確実に良くなってはいるのですがそれを結果に繋げられていないですね・・・.
1コーナー
リアのトレッド拡大の効果が早速出ています.新品時(赤)と比べて今回(青)の方がボトムが4km/h上がっており,トレッド拡大によりリアの支えが増えたおかげで,ブレーキ→アクセルに踏み替えた直後の不安定な"待ち"の時間が減って,ロスが減ったという事なんだと思われます.加えて興味深い事に,通常リアのグリップが増えたらアンダーステア方向になるはずなのですが,ライン取りを比較すると,今回(青)の方が新品時(赤)よりもIN側に切り込めているのが分かります(↓).
これは左リアの支えが増えたおかげで,対角線上の右フロントの荷重抜けも減り,フロントのトータルグリップが増えてより小回りが出来たという事なんだと思われます.
ヘアピン
過去のデータと見比べても新品時(赤)のブレーキングの遅らせ方は頭1つ抜けているのでこれは例外と見なすとして,今回(青)のブレーキング開始のポイントもそれほど悪くはありません.これ以上ブレーキングを遅らせるとリアのフラフラを抑え切れず,こういう目(↓)に遭うので,今の状態ではこれが限界ですかね.
従って,ヘアピンで改善出来るとすれば,ブレーキングの開始ではなく終了の方(↓).
前回に続き今回(青)もボトムスピードが高いのですが,今回走らせて分かったのは,この高い進入速度の原因がリアのインリフトによるものである事.ヘアピンの進入で,止めるブレーキを終えてステアを切り込んだ際に,インリフトして想定以上にクルマがIN側に切り込んでいくため,それを打ち消すために早めにブレーキをリリースしてフロントの荷重を抜いている事が分かりました.
この結果,狙いよりも高い速度でターンインしてしまい,ブレーキを完全にリリースしてしまっている事もあって,エイペックス付近でフロントの荷重が足りず,そこからアクセルを開け始めても(↓),
フロントの荷重不足でタイヤが横に滑ってクルマを前に進められない,というのが一連のカラクリのようです.LSDのイニシャルトルクを下げたおかげでオーバースピード気味に突っ込んでも強烈なアンダーステアが出るような事はなく,それなりに曲がろうとはしてくれるため,ドライバーがアンダーステアに気づきにくい事も遠因となっているようですが,これの根本的な原因は進入時のインリフトにある訳で,やはりココを何とかしないとタイムは詰められそうにないですね・・・.
インフィールド
ヘアピンの立ち上がりで失速しているので,インフィールドの進入速度は今回(青)の方が低め(左側の緑丸).そこからブレーキング→ターンインとなるのですが,2段ブレーキの1個目で今回(青)は少しブレーキロックしています.新品時(赤)に比べればタイヤの絶対的なグリップが低いので,同じような突っ込み方をしたら今回(青)の方がその負荷に耐えられないのは当然なのですが,もう1つ別の要因として,フロントの減衰を上げたせいで若干突っ張り気味になっている事もあるように感じました.インフィールドくらいの負荷領域だとこの減衰は固過ぎなんでしょうね.ロール方向に合わせるとピッチ方向が合わず,ピッチ方向に合わせるとロール方向が合わない.ホント,ダンパーって難しい・・・(泣).
なお,そんな失敗をしたインフィールドですが,今回(青)の方が立ち上がりはスムースです(右側の緑丸).バックストレッチでの車速の伸びも今回(青)の方が良いですし,リアのグリップを上げてトラクションを稼ぐ効果はここでも確実に得られているようです.
最終複合
バックストレッチで車速が伸びたおかげで,洗濯板の進入速度は今回(青)の方が2km/hアップ(左側の緑丸).ただ,乗っている時はそこから先がひたすらアンダーステアで「曲がらないなぁ~」という印象でした.車速のプロフィールを見るとそこまでアンダーな雰囲気はしないのですが,ライン取りの方を見てみると(↓),
今回(青)の方がメッチャ遠回り・・・.やはりアンダーステアは出ていたようですね.ここは1本目でオーバーステア気味だったのを抑制する意味合いで減衰を上げたのですが,この上げた状態だと今度は一転してアンダーステア.アチラを立てればコチラが立たず,前後バランスの取り方がホント難しい(泣).
なお,最終コーナー(右側の緑丸)を見ると,ここも若干アンダーステアを出して失速しているので,フロントの減衰を下げてもう少し手前で向きが変わるようにしつつ,リアのグリップを上げてオーバーステアになり過ぎないようにバランスを取らないとダメですかね.
以上,リアトレッド拡大の効果でした.
トレッド拡大の狙い通り,リアのグリップが増強されてトラクションがしっかりと掛かるようになりました.ただ,それによる想定外の効果として今まで抜けていたフロント内輪側のグリップが増え,「アクセルONでオーバーステア」というFFらしからぬ挙動が顔を出すようにもなりました.一か八かの綱渡りドライビングで,このオーバーステアを捻じ伏せて走れば新品タイヤと同等のタイムを刻む事も出来るのですが,スィートスポットが狭いので,ミスれば即スピンとピーキーですね.
前後の減衰を上げてそのピーキーさを消そうとすると,ロール方向は狙い通り安定するのですが,ピッチ方向はよりコントロールが難しくなり,リアはリバウンドストローク不足から過剰なインリフトが起きますし,フロントは突っ張って低・中速域で曲がらないという,アチラを立てればコチラが立たずな状態.前回よりは高い妥協点のセットになったとは思いますが,自己ベストの0.5秒落ちという惨状を踏まえるとまだまだ低い妥協点ですね.引続きリアのグリップの増強を図りつつ,ピーキーな挙動を打ち消す策も並行して考えたいと思います.
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セッティング(ホイール) | 日記
Posted at
2025/01/14 12:26:11