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2023年02月04日 イイね!

LINK 燃料制御(充填温度補正編)

LINK 燃料制御(充填温度補正編) ドノーマルのS2000に乗った若い子が「サーキット走るのにどのパットが良いですかねッ!?」と目をキラキラさせながらショップで聞いている姿を見て,「若いっていいなぁ~」と思ったおっさんのOXです.

さて,失火対策の一環として「吸気温センサの位置戻し」をしたのですが,それによってセッティングがズレてしまい,前回の走行ではs氏さんにご心配頂く事態になってしまったので,反省の意味も込めてLINK ECUの温度補正をおさらいしておきます.

詳細に入って行く前に,まずは温度補正のセッティングがズレるとどんな事態になるか?というと,こんな感じです(↓).



私のEF8は油圧計が付いているので,エンストすると油圧がゼロになり,アラームがピーーーッ!と鳴るので分かり易いと思います.上の動画の流れとしてはこんな感じです(↓).

 ①スタートラインギリギリまでクルマを前に進めた瞬間にエンスト(1回目)
 ↓
 ②そこからキーを捻って,再始動 
 ↓
 ③しかし,回転数がアイドリング領域まで落ちてくると再びエンスト(2回目)
 ↓
 ④再びキーを捻って再始動を試みるも,今度はエンジンが掛からず・・・
 ↓
 ⑤少し間を置いて,再びキーを捻ったら始動成功
 ↓
 ⑥このままだとまたエンストするので,アクセル煽って無理やり2000rpmキープ
 ↓
 ⑦コースインのメロディーに合わせて,クラッチミートして前進するとまたエンスト(3回目)
 ↓
 ⑧キーを捻って,再始動成功
 ↓
 ⑨アクセルを開けて,そのまま強引に前に出ようとすると今度は失火し,ガクン!とショック
 ↓
 ⑩ただ幸いにしてエンストまではしなかったので,そのままアクセル煽ってコースイン!

一度走り出してエンジンルーム内の熱気が取れれば,この症状は出ないので,以降は問題なく走れます.なんせ相手が温度なので,寒い時期だとセッティングが難しく,トライ&エラーで直していくしかないのですが,こういう酷いヤツに遭遇すると毎回焦りますね.
(今回は再始動出来ているのでまだマシな方.ワーストだと始動すらしなくなります・・・)


・・・で,こうなる原因が燃料制御の温度補正です.

コースイン待ちの隊列で停車アイドル状態になると,エンジンルーム内の温度はどんどん上がっていきます.それを吸気温として拾ったLINK ECUは「吸気温が上がって吸える空気が減ってるんだから,その分燃料も減らすよ!」と補正します.トルクがあるエンジンなら多少燃料が減っても影響はないのですが,失火症状を抱えて青息吐息な今のB16Aだと,それに耐えられません・・・.結果,始動→即エンストとなる訳です.従って,対策としては「吸気温が上がっても燃料を絞りにくいセッティング」にすれば良い訳で,それを司っているのが「充填温度補正」になります.


「充填温度」とは,「エンジンのシリンダーに充填される空気の温度」の事です.

「それってまんま吸気温じゃね?」と思いたくなりますが,厳密には異なります.「吸気温度」は吸ってる空気の温度そのままで,ほぼ外気温とイコールです.一方,「充填温度」は先述の通り「シリンダーに充填される空気の温度」なので,外気温とイコールになりません.なぜか?



インテークマニホールド(インマニ)を通るからです.インマニはエンジンの熱(≒水温)で温められますので,当然外気温よりも高温です.このため,外から吸った空気はシリンダーに向かう途中,インマニに触れる事で温められ,外気温よりも上がります.LINK ECUではこの水温の影響を受けた後の吸気温として「充填温度」というパラメータを用いて燃料噴射量の補正を行っています.

この「充填温度」は,エンジンの発熱量はもとより,吸気温センサの位置,インマニのサイズ等によって異なりますので一義的に決まりません.このため,LINK ECUではセッティング要素となっており,具体的にはエンジン回転数と負圧(MGP:Manifold Gauge Pressure)を軸としたマップに値を入れる形となっています.



このマップの値は%表記となっており,0%だと「充填温度」=「吸気温」,100%だと「充填温度」=「水温」となります.
・・・と文字で言われもイメージしづらいと思いますので,図にするとこんな感じです(↓).



水温=80℃,吸気温=20℃くらいのイメージで見て下さい.この図だと「充填温度」は「水温」と「吸気温」のちょうど真ん中(50%)にいる感じです.水温:吸気温=50:50となるので,(80℃ × 0.5) + (20℃ × 0.5) = 50℃って感じでしょうか.


ここから「充填温度」マップの値を50%→20%に下げていくと,「吸気温」に近づいていきます(↓).



水温:吸気温=20:80となるので,(80℃ × 0.2) + (20℃ × 0.8) = 32℃となり,「充填温度」は下がります.
(吸気温に近い値になる)


反対に,「充填温度」マップの値を50%→80%に上げていくと,今度は「水温」に近づいていきます(↓).



水温:吸気温=80:20となるので,(80℃ × 0.8) + (20℃ × 0.2) = 68℃となり,「充填温度」は上がります.
(水温に近い値になる)


図にするとこんな感じなのですが,最初,私はこれで1つ勘違いをしました.

「吸気温が上がった時に燃料が減って薄くなってエンストするなら,吸気温変化に対する反応を鈍くすればいい」→「充填温度マップの値を水温側に寄せれば(=値を大きくすれば),吸気温の動きを無視して水温の動きに連動するようになるはず・・・」と.確かに過渡変化に対してはその通りなのですが,これだと「充填温度」の絶対値は上がります.



LINK ECU内の燃料制御は「充填温度が上がったら燃料を減らす」「充填温度が下がったら燃料を増やす」という考え方なので,「充填温度」の絶対値が上がると燃料が減って,余計薄くなっちゃうんですよね・・・.

なので,「吸気温が上がった時に燃料が減らないようにしたい!」なら,「充填温度マップの値は小さくする」方向にセッティングする必要がありました.過渡特性と絶対値の動きは正反対なのに,最初これを勘違いして「アレッ? 対策して良くなったはずなのに,余計エンストし易くなった・・・」と混乱しました.


では次に,「吸気温センサの位置戻し」をしたら,なんでセッティングが変わるか?です.

B16Aは元々インマニのところに吸気温センサが付いています.これをダイレクトイグニッション化する際,ショップの判断で吸気温の影響を減らすために,インマニ→エアクリーナー(エアクリ)直後に配置変更をしてくれました(↓).



インマニよりもエアクリの方がエンジンの輻射熱の影響が小さいので,吸気温の変化も小さくなり,制御も安定するだろうという考え方です.イメージにするとこんな感じですね(↓).



これによって,確かにエンジンルーム内の温度上昇の影響は小さくなり,空燃比は安定したのですが,今度は水温・吸気温共に何も変化していないのに,突然空燃比が乱れる現象が起きるようになりました.考えてみるとそりゃそうで,エアクリのところで拾った吸気温と,インマニのところの温度は10~20℃違うので,「充填温度」として考えた場合には温度補正が合わなくなる訳です.実際のエンジンの燃焼に用いる温度は「充填温度」な訳ですから,青息吐息な私のB16Aでこのズレは痛いだろうと考えました.

そこで吸気温センサの位置をB16A本来のインマニ側に戻した訳なのですが,「充填温度補正」のセッティングが同じまま位置を変えるとどうなるか?というと,こうなってしまいます・・・(↓).



「吸気温」として見た場合,エアクリ側よりもインマニ側の方が温度が高くなるのですから,絶対値が上がって,LINK ECUとしては燃料噴射量を減らしにいってしまいました.こうして再びトルク不足に陥り,最初の動画のようなエンスト病が発症します・・・.

対策としては「充填温度」の絶対値が上がった分,マップの値を小さくして辻褄を合わせに行けば良いので,今回の結果を踏まえて後日セッティングし直しました.今の時期であれば多分これで大丈夫なはず・・・.
(カンカン照りの日だとエンジンルーム内の温度がもっと上がるので心配ですが)

なお,「エンストし易いならひたすら濃くすれば良いじゃん!」と考える人もいるかもしれませんが,濃くし過ぎると今度は始動出来なくなります.始動・アイドリング両方のバランスを踏まえつつ,水温・吸気温・エンジンルーム内の状況(日射の具合等)を踏まえてセッティングをしないといけないので,温度補正の適合はホント面倒です・・・.


以上,「充填温度補正」のおさらいでした.
Posted at 2023/02/06 20:33:04 | コメント(1) | トラックバック(0) | セッティング(ECU) | 日記
2022年02月09日 イイね!

ドエルタイムのリミッター

ドエルタイムのリミッタードエルタイムの考え方に反した動きをするB16Aダイレクトイグニッション仕様.

「理屈に合わなくとも,それでエンストしなくなるなら良い」と妥協して適合を進めているのですが,何度も繰返し確認していく中で,ようやく問題の片鱗を掴む事が出来ました.まだ完全に解き明かせていませんが,備忘録も兼ねて情報を纏めておきます.

まずはそのデータから.



通常通り,キーをLOCK→ACC→ON→STARTと捻っていって,スターターに電源が供給されるのが2段目の「スターターON」の箇所です.そこからバッテリーからスターターへ電流が流れて「電圧降下」が発生し,バッテリー電源は10Vを切るくらいまで下がります.スターターに電流が流れたのでモーターが回転し始め,エンジン回転数が上がり,「クランキング開始」となります.

ここまでは極々当たり前の動きなのですが,問題はこの後.このデータを計測する際,ドエルタイムの下限値を「2.0ms」に設定して,バッテリー電圧が何Vになろうが,エンジン回転数が何rpmになろうが,「2.0ms」を絶対下回らないように設定しておいたにも関わらず,赤丸の箇所で「1.5ms」付近まで落ちています.

「やっぱり勝手にリミッター掛けてるじゃん!」
\(゚ロ゚ ) ヤッパリオマエカ!



・・・という事で,LINK ECUの制御が原因である事が分かったため,マニュアルをひっくり返して,もう一度リミッターを匂わす文言がないか探したところ,こんな一文を見つけました(↓).



この一文を読み,「これかー!」と一瞬思ったのですが,「回転スピードが急激に変化すると」の部分が引っ掛かります・・・.

例えば,回転数が上がると点火時期が早まる設定の場合,ECUは低い回転数の時の点火時期でイグニッションコイルに通電を開始したものの,その途中で急激に回転数が跳ね上がり,ECUが「まだチャージの途中なんだけど,次の指示が来ちゃったからここでチャージを止めちゃうね・・・」なんて判断するケースは確かに考えられます.でも今回は1000rpm以下のドエルタイムを2msに固定してテストしているので,回転数が急激に変化したからといって,「途中で止めるね!」なんて判断をするはずがありません.
(チャージの限界時間は前回試算したように,この倍以上のマージンがあります)


「これじゃない気がするなー」と思い,裏取りのために急激に回転数が変化したデータが他にないか漁ってみたところ,先程のケースよりも変化量が大きいデータを見つけました(↓).



先程のドエルタイムが勝手に変化した場合は回転数変化量は200rpm程度だったのですが,このデータでは同じ時間でその倍の400rpm変化しているにも関わらず,ドエルタイムは変化していません.


「やっぱり違ったかー」と思い,もう一度マニュアルを読み返してみると,



どうもこの「値が短くなる」のは,「ベーシックなトリガーパターンのエンジンの場合」に限定されるようにも読み取れます.句点で区切られた2つの文章が繋がっているのか? 別の事を指しているのか? 国語の成績が悪かった私には判断がつきませんが,ベーシックなトリガーパターンを使っていない私のエンジンの場合,これは当てはまらないんじゃないかなぁ~?と思いました.


残念ながら現時点では,「この制御が原因だ!」というところまでは辿り着けていませんが,少なくともLINK ECUが原因である事は特定出来ました.どういう条件でこのリミッターが作動するのか? なぜリミッター値が「1.5ms」付近なのか? 依然として分からない事だらけですが,少なくとも一歩前進出来たかなぁ~と思っています.
Posted at 2022/02/10 01:34:21 | コメント(0) | トラックバック(0) | セッティング(ECU) | 日記
2022年02月07日 イイね!

LINK 点火制御(ドエルタイム編)

LINK 点火制御(ドエルタイム編)ダイレクトイグニッション化して,火花が強くなったと思ったのですが,実際に乗ってみると1000rpm以下の極低回転で以前よりもトルクが減ったように感じました.

燃調が合ってないのかなぁ~?と思って空燃比をチェックしてみたのですが,従来よりも濃い目となっており,点火時期もディストリビューターの頃より進角しているのですが,時折急にトルクを失ったかのようにエンストします.やむなくアイドル時の回転数を100rpm程引き上げたのですが,それでも弱弱しい感じでエンストしかかります.

なんとなく症状的に失火しているような印象を受けたので,燃料を濃くしてみたり,点火時期を進角させてみたりしたのですが,一向に解消されず,

「これはまさか火花が弱くなってる・・・?」

と思うようになりました.折角ダイレクトイグニッション化したのに火花が弱くなるというのは意味不明なので,原因は何だろう?と追いかけるうちにLINK ECUの「ドエルタイム」の設定に行きつきました.


「ドエルタイム(dwell time:滞留時間)」とは,イグニッションコイルの1次コイルに通電している時間の事です.


(NGK:イグニッションコイルの役割より)

そもそもイグニッションコイルがどういう原理で火花を飛ばしているのか?に関してはNGKのサイトを見て頂くとして,「ドエルタイム」を端的に表すのであれば,「点火コイルにエネルギーをチャージする時間」とでも言えば良いでしょうか.チャージする時間が長ければエネルギーも大きくなりますし,エネルギーが大きくなれば火花も強い・・・みたいなイメージです.

このエネルギーを決める要因には,前述の「コイルに通電している時間(通電時間)」の他に「バッテリー電圧」があり,共に大きくなればなるほど点火エネルギーも大きくなります(↓).



ならば,「通電時間を永遠に延ばし続ければ最強の点火になるじゃないか!」と思いたくなりますが,そんな事をしたらコイルに貯まった強大なエネルギーにコイル自身が耐えられなくなり,壊れます(パンクします).

このため,コイルには貯められるエネルギーの上限が設定されており,「バッテリー電圧」が高いほど「通電時間」は短く,「バッテリー電圧」が低いほど「通電時間」は長く設定する必要があります(↓).



「バッテリー電圧」はオルタネータで発電した値となりますので,基本的には回転数が上がれば値は大きくなりますし(14V前後),回転数が下がれば値は小さくなります(12V前後).この関係性から上図を表現するとこんな感じ(↓)になります.



つまり,これが「ドエルタイム」の設定値(ドエルマップ)になります.
(LINK ECUに入力する際は縦軸が上下逆になりますが・・・)


さて,話を最初に戻して,今回は「1000rpm以下の極低回転で火花が弱いのでは?」と疑っているので,火花を強くしたいのなら「ドエルタイム」の値を大きく(通電時間を長く)すれば良い訳です.「よ~し!」と思ってコイルをパンクさせないように注意しつつ値を大きくしてみると,

余計エンストするようになりました・・・.
_| ̄|○ ガクッ


おかしい.理屈と合わない.なぜ?なぜ?と頭を捻りつつ,試しに「ドエルタイム」の値を小さくしてみると,

エンストしなくなった・・・. (・∀・)??

さっぱり意味が分かりません.ドウイウコト・・・??


物理現象と合わない時は制御を疑うのが近道なので,まずは何か「ドエルタイム」のリミッターみたいなものが存在していないか調べてみます.

点火コイルにエネルギーを貯めるための時間は,エンジンが回転している中で行われるので,回転数が上がるとチャージ出来る時間も少なくなります.もしかしたら回転数を上回る長時間設定になってしまったのかも・・・?と思い,試しに9000rpmの時を試算してみると,

 9000 [rpm] = 9000 [rev/min] = 150 [rev/sec] = 0.15 [rev/ms] → 6.67 [ms/rev]

つまり,9000rpmの時はエンジンが1回転するのに6.67msの時間が掛かる,という事です.
一方,ダイレクトイグニッションは「独立点火」ですので(↓の左側),



4サイクルエンジンの場合,2回転する間に各気筒で1回点火するだけ済む訳ですから,1回のチャージに使える時間は2回転分あるという事になります.

 6.67 [ms/rev] × 2 [rev] = 13.33 [ms]

以上より,B16Aにおける設定可能な最長のドエルタイムは「13.33ms」で,これ以下の値を設定しないといけない訳なのですが,

今,設定してる値はこれの半分以下だよ・・・.
_| ̄|○ ガクッ



という事で回転数リミッターではなさそうです.他に要因がないか調べてみたのですが,LINK ECUのマニュアルを読む限りリミッターっぽいものは見当たらない.ECU側が原因でないとすると,コイル側か・・・?と思い,私の使っているイグニッションコイルがK20A用である点から調べてみると・・・,



海外のサイトで,以下のように書かれたものを見つけました(↓).

「K20AのGoodなセットアップ値はこれだぜ!」
(b≧∀) Good♪


 バッテリー電圧  ドエルタイム
     8V    ・・・  4.8ms
     9V    ・・・  3.5ms
    10V    ・・・  3.0ms
    11V    ・・・  2.5ms
    12V    ・・・  2.1ms
    13V    ・・・  1.8ms
    14V    ・・・  1.7ms
    15V    ・・・  1.5ms

この値とショップで適合されたLINK ECUの値を比較すると,高回転域はこれに近い値となっていました.

高回転域がこれで合っているならば,現在問題を抱えている1000rpmくらいの低回転域はどう設定すりゃいいんだ?と思い,その後もアチコチ見渡してみますが,回転数の軸がないデータばかりでした.

「これはもしや,回転数(横軸)の設定って要らないのか・・・?」

と思い,LINK ECUのデフォルトデータで,ダイレクトイグニッション仕様のL15Bの値を調べてみると,
(ちなみに,K20A用のデフォルトデータはありません)



「回転数軸使ってないじゃ~ん」
(横軸が全部同じ値になっている)


・・・という事で,「ドエルタイム」の値を増やすとエンストする原因はよく分かりませんでしたが,海外のサイトで見つけたK20A用のドエルタイムを設定して,回転数(横軸)は無効化する方法が良さそうです.
(これだと,結果的に「ドエルタイム」の設定値は現状より小さくなる)

「ドエルタイム」は値が小さい方がコイルへの負荷も小さく,寿命も延びる方向なので,この値に設定してエンスト耐力を確認してみたいと思います.
Posted at 2022/02/07 20:49:36 | コメント(2) | トラックバック(0) | セッティング(ECU) | 日記
2022年02月06日 イイね!

LINK 始動制御(始動前噴射編)

LINK 始動制御(始動前噴射編)ダイレクトイグニッション化によって,点火系が一新されてしまったので,それに伴い始動関係のECU適合もやり直しとなりました.

当初,ショップでは「始動前噴射(Pre-Crank Prime)」を使わずに,「クランキング補正(Crank Enrichment)」と「始動後増量(Post Start Enrichment)」と「暖機増量補正(Warm Up Enrichment)」で何とか実現しようと,2Dテーブルを駆使した非常に高度な適合が行われていたのですが,それでもやはり冷態時(水温20℃以下)の始動性に苦労しているようでした.

一応,私も3年間LINK ECUをイジってきて多少勘所があるので,「始動前噴射を使わずに冷態始動を実現するのは,私には無理だなぁ~」と思い,クルマが戻ってきた翌々日にデジタル入力の設定を変更する許可をショップに得て,「始動前噴射(Pre-Crank Prime)」を再び使わせてもらう事にしました.



「始動前噴射」が使えるようになったおかげで,水温14℃の状態では10回クランキングしないと始動出来なかったものが,2回のクランキングで始動するところまできたのですが,もうちょっと何とかしたいので,今回は「始動前噴射」に関して一度整理しておこうと思います.


まず,LINK ECUの始動制御の燃料系部分に関しては,以前に一度纏めているのでコチラを参照下さい.

適合の仕方としては,最初にエンジンが完全暖気した状態(水温:80℃以上)で,「始動前噴射」の設定を0msにし,「始動前噴射」を使わずに「クランキング補正」と「始動後増量」だけで始動~アイドリング出来るようにします.



こうしておけば,「始動前噴射」を増やしていった時に燃料が濃過ぎてカブってしまった時は,「始動前噴射」を減らせば必ず始動出来るようになるので安心です.


下準備が終わったところで,そもそも「始動前噴射」とは何ぞや?ですが,LINK ECUのヘルプにこう書かれています(↓).



LINKのマニュアルでは「燃料がシリンダーに届くまで時間がかかる」と表現されていますが,これは「気化した燃料」の話です.「始動前噴射」の役割はクランキングを始める前に吸気ポートに燃料を付着させて燃料の気化をアシストする事です.燃料の付着と言われるとイメージが湧かないかもしれませんが,こんな感じです(↓).



インジェクタから吹かれた燃料が,閉じられたバルブに当たって跳ね返り,吸気ポート周辺に撒き散らかされている様子が分かると思います.この巻き散らかしで吸気ポート周辺についた燃料の事を付着と言っています.

では,「なんで付着させる必要があるの?」というと,そもそも燃料(ガソリン)は常温だと液体な訳ですが,液体のままでは火は点きません.燃料が温められて気体に変化して,空気と混ざって初めて火が点きます.燃料を気体に変化させるためには,燃料を霧状にして細かくする(霧化させる)と共に,空気やエンジンの熱を利用して霧→気体に変化させる(気化させる)必要があります.これにはエンジン本体の温度(≒水温)が重要で,水温が高ければ高い程すぐに気化して火がつく訳なのですが,反対に水温が低いとなかなか気化せず,火がつきにくくなる訳です.冷態時に始動性が悪くなるのはこのためです.

じゃあ,どうするか?というと,「1回の噴射で気化する量が減ってんなら,その分噴射量を増やして,数の力で気化量を維持すればいいんだろ!」という手段に打って出れば良い訳です.この数の暴力(笑)が「始動前噴射」という事になります.

・・・という事で,完全暖気状態(水温80℃以上)では,燃料がすぐに気化するので「始動前噴射」は要りませんし(0ms設定),反対に冷態状態(水温20℃以下)の時には「始動前噴射」が必要,というのが私の考え方になります.
(20℃~80℃の間は,必要な数値が分からないので一次線形で補間して設定しています)


では,その「始動前噴射」の設定方法ですが,私は「キーStart Position」の方を使っています(↓).



キーのポジションには,LOCK・ACC・ON・STARTの4つがあります(↓).



キーは順々にしか捻れないので,LOCK→ACC(①),ACC→ON(②),ON→START(③),START→ON(④)という段階がある訳ですが,「キーStart Position」は③の時のみ作動します.もう1つの「キーOn」の方は②の時に作動するのだと思いますが,こちらだと,始動させず,キーONして電源だけ入れて何かをチェックしようと思った時にも燃料を噴いてしまう事になるので,私は使っていません.
(こちらだとキーをガチャガチャやると,吸気ポートが燃料まみれになるはず・・・)


この状態で値を決めていく訳なのですが,ここから先はトライ&エラーです.始動させた時に,燃料が濃過ぎ(リッチ)だったのか? 薄過ぎ(リーン)だったのか?を目と耳で(笑)判断します.

リッチの時は,初爆(火がついた1回目の爆発)が来た後,ボフッ,ボフッ・・・と咳き込むような音がして,急にエンジンの回転が止まります.一方,リーンの時は,初爆が来ず,キーを離す(START→ON)と,力なくエンジンの回転が落ちていく感じです.感覚的な部分なので表現が難しいですが,キーを捻った手に伝わってくる感触が,重いとリッチ,軽いとリーンみたいな感じですかね・・・.
(実際のキーは単純なバネなので,実際に重くなったり,軽くなったりする訳ではありませんよ?)

あんまり感覚的過ぎてもアレなので,データで示すと,リッチの時はこんな回転波形です(↓).



上が回転数,下が空燃比(ラムダ)です.スタータの回転数は大体250rpmくらいなので最初の一定回転数がそれです.それよりピョコン!と回転数跳ね上がっている部分が初爆が来ている部分です.火が点いたのでラムダの値が徐々に小さくなり,いい感じなのですが,その後,リッチ失火して回転数が落ちています.
(シリンダー内の燃焼と空燃比センサがある排気管の状態は違うので,瞬間的なリッチはこの波形には表れません)

一方,リーンの時はこんな回転波形です(↓).



スタータの回転数分だけ上がっているだけで,それより全く上に行きませんね.一度も火が点いていない(初爆が来てない)のだから当然です.ラムダもスタータを捻っている時だけ値が大きくなっていると思いますが,これはシリンダー内が掃気され,リーンになっているためです.

エラーパターンだけだと正常なイメージが湧かないと思いますので,最後にちゃんと始動出来た時の回転波形も示します(↓).



「スタータを捻っている部分はどこ?」と思うくらい急激に回転数が上昇して,「アイドル目標」を超えているのが分かると思います.


以上,始動前噴射のお話でした.

LINK ECUを触ってない人には小難しくて,何が何だか分からないと思いますが,こんだけ小難しいくて時間の掛かる事を,純正のECUって難なくこなしていると思って頂ければ・・・.寒かろうが,暑かろうが,高地だろうが,平地だろうが,いつでも・どこでもエンジンが掛かってユーザーが何の苦労もしないのは,それだけメーカーが時間を掛けて純正ECUを仕上げているからです.そんな純正ECUの偉大さみたいなものを感じ取って頂ければと思います.
Posted at 2022/02/06 16:42:57 | コメント(0) | トラックバック(0) | セッティング(ECU) | 日記
2021年10月24日 イイね!

オイル交換後のエンジン不調

オイル交換後のエンジン不調フルコン(LINK ECU)に変えてからそろそろ2年が経過し,セッティングも出てきて始動~サーキット走行まで安定して出来るようになってきたので安心していたのですが,最近,エンジンオイルの交換直後の走行で毎回燃調が不安定になります・・・.

当たり前ですが,これまでは反対の傾向で,サーキット走行でオイルが劣化してサラサラになるとフリクションが少なくなって調子が狂う傾向があったのですが,ここ2~3回はオイルを新しくすると調子が狂います.

フルコンだと市販車のECUより諸々の補正項が少ないので,急激な温度変化に弱い事もあり,そのせいかなぁ~?とも思っていたのですが,この間,遂に街乗りでもエンストするようになったので,ちょっと見過ごせなくなってきました.

今回はショップからの帰り道に2回エンストしたので,「また燃調が狂ったのかなぁ~?」と思い,データを見てみると,1回目はこんな感じでした(↓).



白丸のところで,実回転数(緑線)がアイドル設定値(黄色線)を下回り,エンストしているのですが,その1つ下の空燃比(ラムダ)を見ると,徐々に薄くはなっているものの,アイドル時の空燃比よりは濃く,燃料が足りなくなって(リーンになって)エンストした訳ではなさそうです.

「なんだ? コレ・・・??」 ( ´・д・)ン?

アイドル制御を行っている「EACV(Electric Air Control Valve)」がちゃんと動いてないのか?と思い,指示値(一番下の「アイドルPosn」)を確認してみたところ(↓),



エンスト直前に開度が40%に張り付いています(制御が動いてない).
動いてなきゃエンストするわな・・・と思い,その1つ上の制御モード(アイドルステータス)を確認したところ,



「Hold - Speed」になっていました.一番上の車速(駆動輪速)を見ると,28.4km/hなので,「車速停止条件(車速が高い時はアイドル制御をしない)にハマっていたからか~」と現象が理解出来たところで,

「いやいや・・・」 ヾノ´゚д゚`)ナイナイ

28km/h出た状態からクラッチ切ったくらいでエンストするって,どんだけエンジンはトルク出てないんだよ!
これでリーンならトルク出ないのは理解するけど,空燃比崩れてない状態ではおかしいでしょ・・・.


原因がよく分からないので,もう1つのエンスト部分のデータを確認.



こちらは,30km/hくらいからアクセルを離して惰性で進んでいる状態の時に,アイドル回転数で制御されている状態で,突然白丸の箇所でエンストしています.車速が5km/hくらいまで落ちているので,恐らく止まろうとしてクラッチを切ったタイミングでエンストしたんでしょうね・・・.

こちらはエンスト直前までアイドル制御が作動している状態で暫く回転数が維持出来ているので,EACVの調子が悪い訳ではないようです.空燃比も崩れてないし,やっぱり,ここもクラッチ切ってタイヤ側からエンジンが回されなくなった瞬間にエンストしたのか?? どんだけエンジンのトルク落ちてるんだよ・・・.


今回のデータからでは原因が掴めませんが,エンジンが弱り始めているのは確かなようです.エンジンのオーバーホールをしてから既に14年経ちますし,ここ数年はサーキットで8000rpmオーバーでブチ回しているので,そろそろ限界が近いのかも・・・.コース上でブローさせたらエライ事になるので,エンジンの調子には引続き細心の注意を払い,小まめに点検していこうと思います.
Posted at 2021/10/25 23:14:22 | コメント(1) | トラックバック(0) | セッティング(ECU) | 日記

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