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OX3832のブログ一覧

2025年05月16日 イイね!

低反発スプリングを紐解く

低反発スプリングを紐解くEF8の先輩に遊んでもらった先日のTC1000ですが,そろそろフロントタイヤを使い切るという事で,次に向けてのセッティングデータ集めも行っていました.

最優先で考えないといけないのは「低反発スプリングを続投するか否か」.低反発のフィーリングがかなり良くないのは明らかですが,その一方で良い部分もあるのは間違いなく,トータルで考えた時にメリットがデメリットを上回るか?が焦点でした.

まずはデメリットの確認から.

これは「フィーリングが良くない(気持ち悪い)」という事なのですが,この表現では何が・どう悪いのか分からないので,今回テストしてここを明確にしました.その結果分かったのは「ブレーキリリース時にフロントの持ち上がり方が一定の速度ではない事」を私は気持ち悪いと感じていたようでした.

一番顕著だったのはTC1000の1コーナーで,130km/h台の車速からフルブレーキングしてフロントのスプリングを縮めた後(↓),



ブレーキをリリースしてフロントの荷重を抜きつつ(スプリングを伸ばしつつ),ステアリングを切ってタイヤのグリップを縦→横に移すシーンで問題が生じます(↓).



このシーンでは,一度力を加えて縮めたスプリングから力を抜き,スプリング自身の力で元の長さに戻ろうとする場面な訳なのですが(↓),



ダンパーの減衰を使って,元の長さに戻ろうとするスピードを遅らせています.
そうする事で,ブレーキペダルのリリース量と連動する形で(↓),



フロントが持ち上がるスピードをコントロールし,タイヤのグリップを縦→横へ移す量とタイミングを,ドライバーの思い通りにコントロールしている訳です.

しかし,低反発スプリングの場合は,ブレーキペダルの位置を一定にしているつもり(フロントが持ち上がる量を抑えているつもり)なのに,勝手にフロントが持ち上がったり・沈んだりするんです・・・.つまり,ドライバーの意思や操作と関係なく,クルマが勝手に動くので「気持ち悪い」「フラフラする」「コントロールが難しい」と感じた訳です.


では,なぜこんな事が起きるのか?というと,低反発スプリングの構造がそういう構造になっているためと思われます(↓).



低反発スプリングには「オープンエンド」と「バレルタイプ」という2つの特徴があります.
「オープンエンド」はスプリングの先端が浮いている事です(↓).



浮いているという事は,この部分が接触するまで(スプリングが縮むまで)規定のレートが出ない(=バネレートが変化する)という事を意味します.

もう1つの「バレルタイプ」というのは,スプリングの中間部分の内径が大きくなる(全体を見ると樽のように見える)形状の事です(↓).



スプリングは径が変わるとバネレートも変わりますので,こちらもスプリングが縮むとレートが変化する訳です.従って,低反発スプリングは縮む→伸びる過程でバネレートがコロコロと変わるため,ドライバーがスプリングに同じ力を掛けているつもりでも,スプリングの反力がコロコロと変わり,ドライバーの意思に反して,フロントが勝手に持ち上がったり・沈んだりしているのだと思われます.


「ドライバーの意思に反して動くスプリングなんて,使い物にならないじゃん!」と思われるかもしれませんが,それは地面が動かない(=ターマック)を前提にしているからで,ダートのように絶えず地面側が変化する状況では,ドライバーの意思に反してスプリングの方で勝手に動いてくれた方が,姿勢が安定してドライビングが楽なのだと思われます.

ここから察するに,低反発スプリングを活かす方法が「反発力(伸び側の過渡特性)」である事は間違いないと思うのですが,ここで言う「伸び」とは「2G→1G」みたいな強い力で地面に押しつけて戻すシーンではなく,「1G→0G」みたいな弱い力で地面からタイヤが離れるシーンを指すのではないかな?と思いました(↓).




だとすると,コーナリング中の外輪側はともかく,内輪側であれば低反発スプリングのメリットが何かしら得られそうな気がするのですが(↓),



私としては逆にデメリットの方を感じました.これはフロントのスプリングを同じレートのまま中反発→低反発に変更した時に起きた現象なのですが,低反発だと内輪側が浮くんですよね・・・(荷重が抜けた後,スプリングが伸びるのが遅い).



反発力が低いのだから,伸びが遅いのは理屈としては合っているのですが,あまりにも内輪側が接地するのが遅過ぎて,トラクションが掛かっていない気がするんですよねぇ.昨シーズン,コーナーの立ち上がりでタイムロスが大きかったり,最高速が伸び悩んだりした原因は,このフロントタイヤの接地性の悪さが原因なんじゃないか?と訝しんでいます.


という事で,ここまでデメリットばかり述べてきた訳なのですが,「じゃあ,低反発スプリングのメリットは何なの?」と考えると,やはり「反発力の弱さ」になると思われます.

ダンパーの力を借りずにスプリングの力だけで縮む→伸びるのスピードを抑えられるため,フロント荷重をコーナーの出口までキープするのが容易では?と考えていました(↓).



しかし,今回テストしてみたところ(ヘアピンで何度か試して1回しか成功しなかった),フロントが沈んでいる時間の長さを活かして,エイペックス通過後までフロント荷重をキープし,そこからノーズが持ち上がる直前で意図的にアクセルを開けてみたのですが,アンダーステアが出て曲がりませんでした・・・.



ここから察するに,外輪側の伸びを遅くする事で荷重をキープする事は出来ているものの,内輪側の伸びがそれ以上に遅過ぎて実質片輪走行となり,左右両輪のトータルのグリップで考えると,落ちているという事なんじゃないかな?と思いました.

これらのテスト結果から,狙っていたメリットは得られず,逆にデメリットの方が多々ある事から,今回は「低反発スプリングはデメリットの方が大きい」という結論に至りました.なお,これはあくまで現在使っているダンパーを基準とした場合の話で,低反発スプリングに合わせた仕様にすれば,また違った見解になるとは思います(「低反発スプリング」という製品自体が悪い訳ではないです.スプリングというのはあくまでダンパーとの組合せなので・・・).


では,次どうするの?という話になるのですが,現在のレート(14キロ)のまま低反発→中反発に戻すと,プロに指摘頂いた「転がし気味に入ると,戻り(反発)が強く,フロントが抜け気味になる」という症状が戻ってくる事になります.



これを回避するためには,「レートを落として反発そのものを弱める」という策を取る事になるのですが,そうすると今度は日光でプロに指摘頂いた「フロントの限界が低い」という話が戻ってきます.



なので,レートを戻すならこの件をどうするか?を考えないといけませんね・・・.


まさに「アチラを立てれば,コチラが立たず」のセッティングのドツボにハマった状況な訳なのですが(苦笑),別な視点で考えると,14キロのハイレートにはいくつかデメリットがある気もしています.

1つ目が「乗り心地が悪い」.ま,当たり前の話ですね(笑).ただ,これは単純な街乗りの話だけでなく,路面の起伏に対する追従性という点でも結構悪化している気がしています.その証拠にEF8の先輩に追いかけられた際の車載を見ると(↓),



ストレートをただ真っ直ぐ走っているだけなのに,結構クルマがヒョコヒョコと上下動しています.これではトラクションがしっかり掛からないので,最高速の伸びも鈍るかなぁ~?という感じです.


2つ目は「タイヤの摩耗」.実はレートを14キロに上げて以降,タイヤの摩耗速度がかなり上がっています.



上の図は,A052のコース上での走行距離とタイムの推移を表したものです.レートが12キロだった頃は,概ね240km(TC1000だとまんま240周)前後くらいは走行可能だったのですが,レートを14キロに上げて以降は長くて200km前後,今回のセットが特に酷くて150kmで使い切る事態となってしまいました・・・.明らかにタイヤに厳しい側に進んでいる気がするので,14キロだとタイヤを上手く使いこなせないのでは?とも思っています.

なお,摩耗が早い直接の理由としては,タイヤの表面温度が高いせいな気がしていて,1回タイヤがタレると2度と戻って来ず(42秒台を切れなくなる),これはタイヤのピークグリップを超えた温度域が維持されているためではないか?と思っています.グリップレベルの低い状態が維持されるため,アベレージが落ちて「平均0.3秒落ち」となっていたりしないか?と考えています.

それ以外にも,「冬場のダンパーとのマッチングが悪い(オイルが固くなった時に減衰が合わない)」「フロントタイヤのウォームアップが遅い(タイヤを潰せず,表面で走っているせい?)」「フロントの制動力が低い(そのせいでリアがロックし易い)」等々,14キロのネガは結構あるので,一度12キロに戻して状況をリセットしてみた方が良いかな?と考えています.


以上,低反発スプリングの特性を紐解いて,導き出した結論でした.
2025年05月04日 イイね!

インリフト時の荷重変化のお勉強

インリフト時の荷重変化のお勉強先日,「BICライブラリ」へ行って一番知りたかった「アップスイープ」のお勉強をした訳なのですが,その過程でインリフトの効果に関して新しい知見が得られたので,こちらに関しても纏めておこうと思います.

「インリフト」というのは,タイトル画像の通りコーナリング中に内側(イン側)のタイヤが浮く(リフトする)現象の事です.FF車だとリアタイヤで起こる事が多いですね.


見た目が派手なのでよく注目されますが,FF車は基本アンダーステア傾向なので,多少リアが浮いたところでどうという事もなく,「無視すればいい」なんて言う人もいるくらいです.実際,私のEF8みたいにリアのブレーキがロックし易いと,リフトする/しないで動きがかなり変わるので手を焼きますが,ロックしなれば気になりませんでした.



「インリフト」で良く言われるデメリットは,「タイヤ2個で支えている荷重が,リフトするとタイヤ1個に減る訳なのだから,トータルのグリップとしては落ちる(=遅い)」という説ですね.これはその通りだと思うので,私も出来る事ならインリフトはさせたくないです(特に高速コーナーでは).

その一方で,積極的にインリフトさせたい時もあります.例えば,ジムカーナでの180°ターンのように短時間で一気に向きを変えたい時(↓).



その場でクルッとクルマを回したいので,意図的にインリフトさせてリアを破綻させ,スピンモードに持ち込む事でこれを実現したりもします.こんな風に「リアの限界を下げるため」にインリフトを用いるのだと私は理解していたのですが,今回調べて知ったのは,インリフトさせる事で「フロントの限界を上げる」というお話.

どういうメカニズムか?というと,まずインリフトしていない場合,タイヤに掛かっている力(≒後軸の車重)は路面が支えており,ダンパーにも下方向に力が加わっています(↓).



ここからクルマがロールしてタイヤを持ち上げる力が働いた時,インリフトしなければ,タイヤに掛かっている力は変わらず路面が支えてくれるので,ダンパーだけが引っ張られるような形で上方向に力が生じます(↓).



この状態から更にロールして,タイヤが完全に路面から離れて宙に浮くと,タイヤ(≒後軸の車重)を支えていてくれた力がなくなるので,ダンパーに掛かる力は反転し,下方向に力が生じる事になります(↓).



そうするとどうなるか?というと,



リアのイン側はロールして伸びようとしていたものが途中で止められて,逆にロールを元に戻そうとする力が生じる事になります.すると,対角となるフロントのアウト側に掛かっている荷重が減る事になるのだそうです.つまり,コーナリング中にインリフトさせる事で,フロントの荷重が減って限界が上がる訳です.

言われてみればなるほどなぁ~と思いますが,今までインリフトは「リアの引っ掛かりをなくすもの」という認識だったので,「(テールスライドしない限り)フロントには影響しない」と思い込んでいたので目から鱗でした.
(プロが「インリフトさせてフロントの負担を減らす」と言っていた意味はこういう意味だったのか・・・)

なるほど,この理屈であれば,以前日光の6コーナーで経験した左フロントのバウンシングもそりゃ起きるよなぁ~と納得しました(↓).



  ①右のリアタイヤが浮くまでは左フロントは沈み込む
  ↓
  ②右リアが浮いた瞬間,右リアを下げる力が生じて左フロントが持ち上げられる
  ↓
  ③左フロントが持ち上げられたため,右リアが再び接地する
  ↓
  ④右リアが接地したため,再び左フロントが沈み込もうとする
  ↓
  以下繰り返し・・・

当時は左フロントが持ち上げられるのは,スプリングの反発力が強いせいだと思っていたのですが,コース形状のせいでもなく,物理的に起こるべくして起きていた現象だったのですね・・・.


話を戻して,インリフトする事で「フロントの限界が上がる」のだとすると,リバウンドストロークを増やしてインリフトを抑制すると,逆にフロントの限界が下がる事になります.このため,狙ったポイントでリフトするようにテザーを使ってリバウンドストロークを規制するクルマもあったそうです.テザーで規制するなんて聞いた事がなかったので,どういう代物なんだ?と写真を探してみたのですが,海外のレーシングカーという事もあり,残念ながら見つけられませんでした・・・.

いずれにせよ,やはりインリフトするギリギリのところを上手くコントロールして使う事が,速いコーナリングを実現する上で大事なんだなぁ~と改めて思った訳なのですが,



先述の「フロントの限界を上げる」要素として出てくる「バネ下の重さ」を見て,コレ,リアホイールの重さを変えて調整出来たりしないかな~?とも思いました.



しかし,以前調べた「非駆動輪を軽くしても無意味?」のブログを見返して,即座に「意味ないな・・・」と撤回しました(笑).ダンパーを自重で引っ張るためには数kg単位で重くしないとダメで,仮に重くする事でジャイロ効果が得られるとしても,キロ単位となるとデメリットの方が大きくなりそうです・・・.


以上,インリフト時の荷重変化のお勉強でした.
2025年03月09日 イイね!

アシストスプリング考察

アシストスプリング考察先日,「フロントにヘルパースプリングを入れるなら1Gで線間密着するものを使え!」というのを学びました.

この手法は,接地性を高めるためにハイレート(20キロ)のヘルパースプリングを使って積極的に伸びの力をアシストさせるのが狙いな訳なのですが,1Gちょうどで線間密着をさせる必要があり,なかなかセッティングするのが難しそうです・・・.となると,一先ずはリアと同様にほぼレートがないヘルパースプリングを使って手っ取り早くリバウンドストロークを稼ぐのが良いか?と思い調べてみる事にしました.

まずは,完全に潰す前提でヘルパースプリングを使う場合の注意点を確認すると(↓),


(HYPERCO:ヘルパースプリング と HYPERCO テンダースプリング の違いについてより)

  ヘルパースプリングの密着高 >(アッパーシートの凸部分 + スペーサーの凸部分)

という関係にしないと,アッパーシート⇔スペーサーが接触して異音がするそうです.これはごもっともな話.1キロ以下のヘルパースプリングは密着高が10mm前後でしょうから,ほとんどのヘルパースプリングが接触するでしょうね.


となると,HYPERCOで言うところの「ヘルパースプリング」ではなく「テンダースプリング」を使うべきか?と思っていると,再び「角断面形状」の話が出てきました.


(HYPERCO:HYPERCO TENDER SPRINGより)

やはり完全に潰して使う前提であれば,変形が少なそうな「角断面形状」だよなぁ~.
「角断面形状」でないスプリングは除外するかと思い,調べているとこんな情報を見つけました(↓).


(ENDLESS:バッファーチューブより)

  線間密着による異音の防止,線間密着箇所の保護に効果的なポリウレタン素材のバッファーチューブ.

あ~,なるほど.「丸断面形状」であってもこういったバッファーチューブで覆う事によって線間密着時の対応をしているのか.でも,全部保護しようとすると一体何個このチューブがいるんだ??と思ってしまったので,やはり無難に「角断面形状」を前提に探す事にしました.


さて,実際に探すとなると色んなメーカーのアシストスプリングが引っ掛かるのですが,さすがにこの長さでは反発力の違い云々はない気もするので,どこのメーカー製でも良いのかなぁ~?と思いつつ,一応,角断面スプリングの特性を調べてみたところ,以下のような感じ(↓).

  丸断面と比較した場合,自由長・外径・巻数・密着長が同じであれば,角断面の方がバネ定数が大きい.

このバネ定数の高さを活かして,その分だけ小型化する(外径を小さくする等)のが,「角断面形状」の特徴のようですね.となると,注目すべきは自由長か?と思い,主だったところのアシストスプリングの自由長を調べてみると,こんな感じ(↓).

  HYPERCO ・・・ 88.9mm
  Swift     ・・・ 68.0mm
  MAQs    ・・・ 50.0mm
  ENDLESS ・・・ 60~75mm

現状のフロントダンパーはこんな感じなので(↓),



リアと同様にメインスプリングを7インチ(178mm)→5インチ(127mm)に縮めて,出来た51mmの空間にアシストスプリングを入れる事を想定すると,MAQsのものがサイズ的にぴったりですね.


という事で,MAQsのID65を詳しく見てみると(↓),




(MAQs:ヘルパースプリングより)

密着荷重が53kgなので,1Gで十分密着させられそうですね.
ただ,これで増えるリバウンドストロークは26mm.果たしてこれで足りるのか・・・?


以上,フロント用アシストスプリング考察でした.
2025年03月05日 イイね!

メインよりハイレートなヘルパー

メインよりハイレートなヘルパー先月のTC1000で,リアにヘルパースプリングを再投入し,狙い通りヘアピンでのスピン挙動(リバウンドストローク不足)の対策を出来た訳なのですが,その延長線上でフロントの減衰力を上げてみたところ,低反発スプリングの特性と相まって内輪が浮く(リバウンドストロークが不足している)症状が出ました.

「リアの次はフロントかい・・・」と溜め息が出ましたが,リアの場合と違ってピーキーな動きではないので,ドライビングでアジャストすればまだ何とかなる範疇ではあります.

ただ,片輪が浮くとトラクションの面でマイナスなのは明らかですし,ここのところコーナーの立ち上がりが遅かったり,トップスピードの伸びがイマイチだったりするのもコレが原因なんじゃないか?とも思い始めていて,対策方法が何かないかな~?と考え始めました.

一番手っ取り早いのは,リアと同じくヘルパースプリングを投入する方法なのですが(↓),



リアと違ってフロントはコーナリングのきっかけを作る(リアよりも大きな力が掛かる)部分ですし,何かしらの弊害が出そうだなぁ~と思い調べてみると,ブレーキング時などの高荷重領域(ヘルパースプリングが完全に潰れる領域)では問題ないが,アクセルOFFだけで抜けていくような低荷重領域(ヘルパースプリングが完全に潰れ切らない領域)では,フワフワとした感触となってフィーリングが相当悪いみたいです.

「やっぱりそうだよなぁ~.フロントにヘルパースプリングは有り得ないよなぁ~」と思っていたら,「ヘルパースプリングを20キロのハイレート品にすれば良い」なんて話を目にしました.

( ・◇・) ハ???

「ナニヲイッテルンダ??」としばし思考がフリーズしたのですが,先日のジムカーナ練習会でも見かけたお店だったので,いい加減な話ではなさそう.中身を読む限り,ちゃんとトラクションを得つつフィーリングの悪化も抑えているようなのですが,これらが両立出来る理由として述べられている部分(↓)が今一つ理解出来ない・・・.

  ・14キロのメインスプリングに,20キロのヘルパースプリングを組合せた
  ・この組合せだとヘルパースプリングが縮まる前に,先にメインスプリングが縮まるのでは?と思っていた
  ・だが,計算してみたところ,ヘルパースプリングは1Gで線間密着する事に気づいた
  ・しかも,1Gギリギリのところで線間密着するので,1G以下の領域で素早く伸びてくれる
  ・1G以下→1Gに戻ったら密着するので,縮み側ではヘルパースプリングは影響しない
  ・故に,フィーリング的にはメインスプリングのみだった時と変わらない


ん~.ツインスプリングなんだから2本のスプリングの合成レートでしょ? 確かに両方とも固いスプリングだから縮み代は少ないかもしれないけど,やっぱり柔らかいスプリング(今回だとメインスプリング)の方から先に縮まるのでは・・・?


(HYPERCO:ヘルパースプリング/テンダースプリング の必要性①より)

(-ω-;) ウーン

と唸っていたのですが,唸っているだけでは答えは出ないので更に調べてみると,別のところでこんな文言を見つけました(↓).

  ・ハイレートアシストスプリングなら,1G以上ではメインスプリングレートに影響を与えない
  ・アシストスプリングは絶妙の設定となっており,加重がかかってる時の不安定さは一切ない
  ・スプリングレートという考え方ではなく,1輪加重の何キロでアシストスプリングが密着するかで設計している
  ・この設計が絶妙のバネレート特性を実現している
  ・自動車向けのスプリングメーカーでは対応出来ない設計理論/構造となっている
  ・人工衛星向けのスプリングメーカーと何ヶ月も協議し,シュミレーションを重ねて完成した
  ・ツインスプリングの合成レートだけで判断出来ない
  ・単純に繋げるだけでは固有振動によってお互いの力を打ち消し合い,望んだ効果は得られない


ん~,よく分からないけど,特殊な材料でも使ってるってコトなのかなぁ~? だったら真似出来ないし,専門家にやってもらわないと数値が決められないし,スルーするか・・・と閉じようとした時に,ツインスプリングの絵が再び目に入って(↓),


(HYPERCO:ヘルパースプリング/テンダースプリング の必要性①より)

Σ(゚Д゚) アッ!

もしかして,このハイレートヘルパースプリングのポイントはヘルパースプリングの自由長にあるのかも?

ならば,試算してみるか~という事で,古いデータを引っぱり出して,私のEF8のフロント軸重は644kgだとすると,片輪では,

  644 / 2 = 322 [kg]

フロントのレバー比を1.5と仮定すると,

  322 × 1.5 = 483 [kg]

例えば,メインスプリングが14キロ,ヘルパースプリングが0.2キロ(自由長:101mm,密着高:11mm),両スプリング間に挟まるスペーサーの厚みが9mmだとすると,

  メイン   ・・・ 483 / 14 ≒ 35 [mm]
  ヘルパー ・・・ 483 / 0.2 = 2415 [mm] ⇒ 101mmを超えているので線間密着し,11 [mm]

つまり,ダンパーとしての縮み代は以下となります.

  35 + 9 + 11 = 55mm

これは1G状態では55mm車高が下がり,ヘルパースプリングは完全に潰れている(=スペーサー状態となっている)事を示している訳で,ここからクルマが浮いて1G→0Gとなった場合,メインスプリングの縮み代分(35mm)にヘルパースプリングの自由長分(101mm)が加わるので,

  35 + 101 =136mm

という,とんでもなく長いリバウンドストロークになります.ただ実際のダンパーはこんなに長いストロークは確保出来ないので,ヘルパースプリングにプリロードが掛けて,強制的に長さを短くして入れる事になります.

という事は,現実のダンパーに入る長さまでヘルパースプリングの長さを短くし,ちょうど1Gの荷重で線径密着が起こるようなレートを設定すれば,1G状態ではスペーサー化しているが,1G→0Gとなった時には反力が発生して素早く伸びる,リバウンドストロークとステアリングレスポンスを両立したヘルパースプリングを生み出せる事になります.


試しに計算してみましょうか.今使っているAragostaの「TYPE-S」のフロントは以下のような設計となっています(↓).



メインスプリングの自由長を5インチ(127mm)とすると以下となり,

  176 - 127 = 49 [mm]

入れられる最長のヘルパースプリングは49mmである事が分かります.仮にこのヘルパースプリングの密着高が11mmだとして,これを1G状態でぴったり潰すためには,

  483 / (49 - 11)= 12.7 [kgf/mm]

というハイレートなヘルパースプリングが必要になる事が分かります.なお,バネレートが12キロともなると,スプリングの線径を太くする必要があり,その厚みで密着高が倍になると仮定すれば,

  483 / (49 - 22)= 17.8 [kgf/mm]

となり,なるほど「メインスプリングよりもハイレートなヘルパースプリング」という話はこういう事だったのですね.


そういえば,近年,HAL springsに70mmのショートスプリングがラインナップされていたのですが(↓),



密着荷重が書いてありますし,これはそういう用途用のスプリングなんですかね?
(密着荷重:500kgf,許容ストローク:25mmの20キロがラインナップにある・・・)

ただ,密着前提で使おうとした場合は,スプリングは角断面形状(↓)じゃないとマズイ気もしますけど,


(HYPERCO:HYPERCO TENDER SPRINGより)

HALのショートスプリングはそうなってないっぽいし,違うのかなぁ~? 先述の「ESAアシストスプリング」の方を見ると「拘りの丸材」なんて書かれているので,丸断面でも問題ないのかなぁ~?


以上,メインスプリングよりもハイレートなヘルパースプリングはアリなのか?というお話でした.
2025年02月14日 イイね!

スピンの原因はどこに?

スピンの原因はどこに?狙い通りの効果が得られた先日のTC1000ですが,最後の最後で不可解なスピンを喫しました.

ブレーキバランスを色々イジっている過程だったので,リアがロックしたのかなぁ~?とも思いましたが,その後も周回を続けた際には同様のテールスライドは起きなかったので(ドライバーに多少ビビリが入って手緩かった可能性はありますが),ピットアウト直後でリアタイヤが冷えていた可能性も拭い切れないかなぁ~?と思いました.

そうであれば次に引き摺る事もないので気が楽なのですが,気になる事は気になるのでアレコレ調べてみました.


まずは起きた事の再確認(↓).



車載を見る限り特に変な操作をしている感じはありませんね.記憶を呼び起こしてみると,このスピンした周の前の周回でも若干リアが流れている感触があった事を覚えています.


となると,もしかしてオーバースピードか?と思ったので,このセッションでのベストタイムとスピンした周のロガーデータを確認してみると(赤:ベストラップ 青:スピンしたラップ),



あらら,スピンしたラップ(青)の方が全域で速度が高いですね・・・.これは攻め過ぎてリアタイヤの限界を超えた可能性が高いかな?と思い,フリクションサークルを確認してみると(↓),



ベストラップ時(赤)に比べ,スピンしたラップ(青)は左上の領域にいる時間が長い事が読み取れます.つまり,ベストラップ時(赤)と同等の横Gを掛けつつ,更に前傾姿勢がより強かったという事ですね(↓).



前傾姿勢が強いという事はリアの内輪側の荷重が抜け易くなっている訳で,(外から見た訳ではないので厳密には分かりませんが)インリフトしてリアの外輪側に大きな負担が掛かり,それに耐え切れなくなってスライドが止まらなかった~というのは考えられそうです.もし,そうだとすると「今のクルマの限界を超えたスピードでコーナリングしようとしたからスピンした(=ドライビングミス)」という事なので,次はもう少し抑えて走れば大丈夫そうです.


ただ,これは言い替えると「これ以上高い速度でコーナリングは出来ない」という事も示している訳で,イコール「タイムの縮め代はもうない」という話にもなります.それはちょっと悲しいので,なんとかリアの限界を上げる方法を考えないといけない訳なのですが,仮に限界を超えた原因がインリフトにあるのだとしたら,「今回の対策は不十分だったのか?」という話にもなるので,まずはダンパーの状況を再度確認してみます.

リアのジャッキを使って模擬的にリフト状態を再現しつつ,この際の車高を測ってみます(↓).





  1G ・・・ 150.0mm
  0G ・・・ 200.2mm

つまり,現状のリバウンドストロークは50.2mmあるという事ですね.今回の対策ではメインスプリングを2インチ(50.8mm)短くしたので,その短くした分がそっくりそのままリバウンドストローク量となって増えているようです.狙い通りと言えば狙い通りですが,ここまでぴったりの数字が出ると結構嬉しいですね(笑).


さて,以前ナリモの画像から皮算用したインリフト量は約38mmだったので(↓),



50mmリバウンドストロークが増えているのなら十分賄えているはず・・・.これでもインリフトしているというのはどういう事だ?と考えて,上記の見積り時の横Gと,今回のスピン時の横Gを調べてみると,

  見積り時 ・・・ 1.1G (コーナー進入時の速度: 90km/h)
  スピン時 ・・・ 1.3G (コーナー進入時の速度:131km/h)

ああ,こりゃ,TC1000の1コーナーでは38mm以上インリフトしている可能性がありますね・・・.となると,「もっとリバウンドストロークが欲しい」という話になるのですが,そんなの出来るのか?と思いダンパーを確認してみると,



シェルケースの上面からバンプラバーまでの距離が50mmしかありませんでした.

ン? 50mm・・・ (¯~¯;)??

0G→1Gでダンパーがストロークする量が50mmで,バンプラバーまでの距離も50mmという事は・・・,

1G状態でバンプタッチしてんじゃん!
∑(゚д゚lll)


という事は,試走時にリアの沈み込みが減ったように感じたのはバンプタッチして実効レートが上がっていたせいか.まぁ,そりゃそうだよなぁ~.ヘルパースプリングのレートは0.2キロだし,バンプラバーで支えなければ車高は維持出来ないかぁ・・・.


そうするとリアの限界が低いのは,バンプタッチしてダンパーがそれ以上ストロークせず,タイヤのグリップに依存してリアの荷重を支えているせいもありそうだなぁ~.



「バンプタッチすると唐突にリアのグリップが抜ける」という話はよく効きますが,今回走ってそういった印象を受けなかったのは,1G状態で既にバンプタッチしていたせいなんですかねぇ~? ここから先思いつく対策としては,

  ①バンプラバーを変更する
  ②メインスプリングのレートを上げる
  ③リアタイヤの幅を増やす

といった辺りですかね? ①はノウハウが必要なので更にドツボにハマりそうですし,②をやるならフロントもセットだよなぁ~.となると手っ取り早いのは③か? 色々やり方は考えられるけど,いずれにせよ,また金が掛かるな(笑).


以上,スピンの原因はどこに?と妄想してみた結果でした.

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