ハンデ戦の報告ノルマも果たしたので(笑),今回の走行会のメインディッシュであったプロ(蘇武さん)との比較に入りたいと思います.
パッと見の雑感を
先日のブログで触れましたが,走行後に蘇武さんから頂いたコメントを踏まえて,車載を何度も見返すうちに「コレ,私のEF8が蘇武さんの要求に応えられていないんじゃないか・・・?」と思うようになりました.このまま感じた事を語り始めると,抽象的・概念的な話になりそうなので,ここは私らしく(笑),比較・分析の結果を示してからその点に触れたいと思います.
まずはサンプルにしたデータから.
【蘇武さん】
気温:27.3℃ 湿度:68% 路温:35.9℃ 気圧:1010.1hPa
【私】
気温:27.2℃ 湿度:69% 路温:33.3℃ 気圧:1009.3hPa
気温・湿度はほぼ同じ.私の方が路面温度が2.6℃低くタイヤ的には有利ですが,気圧は0.8hPa低いのでエンジンパワー的には不利.トータルではほぼイーブンな条件ですかね.
続けて,GPSロガーでの比較結果(緑:蘇武さん 青:私).
車載を見比べれば操作が違うのは一目瞭然なので,ロガーのデータもそれを示すかのように部分部分で波形が異なります.クルマのセットアップは内圧含めて全くイジっておらず,前述の通りコンディションもほぼ同等なので,この違いは100%ドライビングの差.各コーナーの違いがホント興味深いです.1つ1つ細かく見ていきたいと思います.
1コーナー進入
進入速度は126km/hでほぼ同じなのですが,1コーナーからいきなり蘇武さんのテクニックが披露されます.通常ここはブレーキ→ステアリングの順に操作を行うのですが,蘇武さんの場合,ステアリング→ブレーキの順に操作されています.車載を見てみると(上:蘇武さん 下:私),
私(下)はステアリングをニュートラル状態で保持したままブレーキングを開始しているので,左下のフリクションサークルでボールが真っ直ぐ上に移動しているのが分かります.一方,同じ位置で蘇武さん(上)は既に少し右にステアリングを切っており,左下のボールは上ではなく左に移動しています.
ここから蘇武さん(上)は,ヨーが発生している状態でブレーキングを開始するのでクルマが軽くイン巻き状態となり,カウンターを当てて姿勢をコントロールしています.対する私(下)はようやくここからステアリングを右に切り始めるような状態です.外から見ていたらクルマの姿勢が全く違っているでしょうね.
1~2コーナー間
ここから考え方の違いが出てきます.蘇武さん(緑)の方はヨーが発生させてからブレーキングしているので,私(青)よりもワンテンポ奥まで突っ込めている上に,ロール量が最大となるまでの時間も短く,ボトムスピードが4.2km/hも高いです.これぞプロのコーナリングテクニック!という感じで,1コーナーのエイペックスまでに0.18秒も引き離されます.一方の私(青)はブレーキングの開始が早く・ボトムも低いですが,その分,ブレーキングを早く終わらせてアクセルを踏んでいる時間が長いため,1コーナーを抜けて以降はスムースに加速し,1ヘアの進入までに蘇武さん(緑)を捉えています.
なんだかプロとアマが逆のような波形ですが,これは恐らく私のEF8の癖をドライバーが知っているかどうかの違いだと思われます.蘇武さんのコメントの中に「1コーナーの立ち上がりでVTEC落ちする」というものがあったかと思いますが,そこから察するに「1~2コーナー間でクルマが前に進まない感触」を蘇武さんは感じられたのだと思われます.実際それは合っていて,このボトムスピードで,あの舵角のまま2コーナーに進入したら,私のEF8は操舵抵抗に負けて失速する(加速が鈍る)んです.オーナーなんで当たり前ですが,私はその癖を知っているので,2コーナーの縁石付近ではなるべく舵角を減らして抵抗を減らし,尚且つ,少しでも手前から回転数を上げてトルクを引き出し,失速を防ぐようにしています.もし,この癖を蘇武さんがご存じであれば,1コーナー進入時のテクニックと合わさって,圧倒的な差をつけられていたのでしょうね・・・.
その一方で,蘇武さんからすると,このボトムスピードで,この舵角というのが経験則上『正解』であるはずで,それに応えていないクルマ側にやはり問題があるのかな?と思いました.
ヘアピン
まだコーナー2個なのに既にかなり長くなっていますが(苦笑),ここから先も語る事がいっぱいです.
ブレーキングの開始ポイントは蘇武さん(緑)と私(青)で大差がないですが,アプローチの仕方が異なります.
ほんの少しですがステアリングの切り始めは私(下)の方が早いようです.これはターンイン時の位置取りが関係していて,鉄塔の位置で比較して頂くと分かり易いかと思いますが,私(下)の方が若干インに寄っています.
そこから蘇武さん(上)もステアリングを切り込む訳ですが,私と同じ量までスパッと切っています.
そして,蘇武さん(上)はそのままステアリングをどんどん切り込んでいく訳なのですが,私(下)は最初の切込み量で止めています.
その後の切込み量はほぼ一緒ですが・・・,
最終的には私(下)の方が舵角が多いです.
このラインの違い・操作の違いは,実はサーキットアドバイザーの先導走行で蘇武さんの後ろを走った時にいつも感じていました.私はヘアピンの進入からエイペックスに少しずつ寄せて行って斜めに進入し,クリップ付近でタイトに曲げて立ち上がるようなラインを取るのですが,蘇武さんはヘアピンの進入を真っ直ぐ行って,奥でグイッと一気に曲げて立ち上がるようなラインを取られています.
これのどちらが正解か?というと,どうやら蘇武さん(緑)の方で,ヘアピンのクリッピングポイントまでは私(青)の方が最短距離を通る分0.2秒速いのですが,その分ボトムを落とす必要があり(蘇武さんより3.3km/hも低い),ボトムが低くても,その分早くアクセルを踏めれば帳消しに出来るかなぁ~?と思っていたのですが(実際,蘇武さんより踏むタイミング自体は早い),速度を殺し切らず,ボトムを上げて,立ち上がりで外に上手く逃がしながら立ち上がった方がインフィールドまでの速度の伸びは良いようです.これは勉強になりました.

(立ち上がりで私[下]はステアリングを大分戻しているのに,蘇武さん[上]はまだ切り続けている↑)
これによってヘアピンの進入で私が稼いだ私の0.2秒は,インフィールド進入までの加速で蘇武さんに取り返されてしまい,両者の差はありません.
ところで,この一連の操作の中でも私のEF8の癖が見てとれます.走行後の蘇武さんのコメントの中に「接地の薄い領域がある」というのがあったかと思いますが,蘇武さんの操作と比較してみると,私の操作はこの癖に合わせたものになっている事に気づきました.一連の操作を纏めると,
①蘇武さんより早く切り始める
②早く切り始めたのに,途中で止める
③その後,蘇武さんの切り込み量に追いつく
④最終的な切込み量は蘇武さんを上回る
というものですが,これってつまり・・・,
①接地の薄い領域(反応が鈍い領域)がある事に気づいているので,それを見越して早めに切り始めている
②切り込み始めた後,接地の薄い領域に達したら,反応しないので一旦操作を止めている
③操作を止めて待っている間に接地感が戻ってきたら(反応し始めたら),操作を再開している
④反応する領域を過ぎた後,再び接地感が鈍ったら,最後は舵角を増やして操舵抵抗で減速し,帳尻を合わせる
蘇武さんに指摘されてから見返して,なんで自分の操作がこうなっていたのか?をようやく理解出来ました.私はクルマの癖に合わせて操作してしまっていたのですね・・・・.だとすると,その操作を止めている領域・辻褄を合わせている領域は本来『間違い』なはずで,蘇武さんがされている『正解』なステアリングワークに対し,反応するクルマになっていない(クルマが蘇武さんの要求に応えられていない)という事なのでしょうね・・・.
さて,まだコースの半分くらいのところですが,既に大分長くなっているので,今回はここまでにしたいと思います.
ここまでを総じて見ると,私の操作は「自分のクルマの癖を理解して操作している」と書けば聞こえは良いのですが,実際のところは「クルマが苦手とする領域を避けて運転している」というだけのようですね.蘇武さんのように,このコースにおける『正解』を熟知している方が走らせたデータと比較してみると,私のクルマの間違っている部分・弱点を克服していない部分が炙り出されて,今後何をすべきか?が見えてきたような気がします.
同じコースを何十周・何百周と走っていると,どうしても『慣れ』でクルマを走らせてしまい,こういった弱点に目を向けられていないですね.やはり『正解』となるお手本の走行を蘇武さんにして頂けて良かったなぁ~と思う前編でした.