我が心の師匠たる、J・タクマロッティー氏(←誰?)はこのような言葉を残しています。
「未知のコースへ何の策もなく全開で向かうのは、勇気でも挑戦でも無く、ただ無謀な行為である」と。
氏ほどの卓越したテクニックを持つラリーストであっても、ショートコースを全開走行する時ですら、コドライバーとペースノートを共にすると聞きます。
私が挑む普通二輪教習という名のコースにおいては、教官がコドライバーでありペースノート。
そして栄光のゴールは、卒業検定合格。
もっとも私の場合、ペースノート通りのつもりがコースアウトするのでありますが(笑)。
と、そんな前置きはさておき(^^;、2段階の3時間目にあたる前編ではカーブの走行体験を行ない、4時間目の今回は、ついに緊急回避と急制動が登場します。
この栄光のゴールへと突き進む物語の目撃者になるのは、画面の前の貴方だ!。
(基本的にノンフィクションですが、筆者の妄想が時々含まれております(笑))
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2段階の3時間目が終わり、10分休憩で水分補給したあと、次は4時間目の実技教習へ。
この時間は、1段階のAT車教習で担当になった幾分お若い感じの教官で、3時間目の教官が予告していたとおり、緊急回避と急制動の実技教習を行なうことになります。
教習時間が始まり、最初に「先ほどの時間は黄色い教習車に乗られたようですが、普段のシルバーの教習車と比べてどうでしたか?」と尋ねられ、「もし黄色の方が扱い易いと感じたのであれば、卒検まで黄色の教習車に変更しても良いですが?」と続ける教官。
そしてその言葉に、シルバーの教習車に視線を送る私・・。
「どうせアナタも若いコが良いのよね」
なんては言っていないと思いますが(笑)、「いくらかでも乗り慣れている方が良いと思いますので、今まで通りシルバーの方で行きます」と伝えると、「そうですね、その方が良いでしょう」と頷く教官。
実は前の時間、やはりアクセルレスポンスの差の影響なのか、思ったより加速してパイロンに突っ込みそうなった場面があったんですよね(^_^;)。
そしてこの会話に、本当に卒検が近づいているんだなあ・・と実感する私。
それにしても、シルバーのCBって呼びにくいし、なんか他人行儀だな。
・・・。
そうだ、シルバーのCBで、今日から君をシルビーちゃんと名付けよう!。
そう、某学会(←どこ?)の発表によると、名前を付けると愛着度が増すとか、運気が上昇するとかお金が(以下略。
CB:えっ、なんかヤダ・・。
「お前は雑誌の裏の怪しい広告か!」というツッコミはさておき(^^;。
本題に戻りまして、この時間は緊急回避の教習からスタートします。
まずは教官より説明があり、「直線で40km/hまで加速し、2本のパイロンの間を通過。その瞬間に教官が手を上げて(←ここ重要)合図を出すので、合図したほうに旋回し、黄色の線の外側に回避して停止。両手を上げた場合はそのまま直進して停止」とのこと。
説明内容を画像にすると、こんな感じになります。

(体験に基づく再現CG(笑)。イラストは、「いらすとや」さんからお借りしました)
私と教官は正対していますから、上の図のように教官が左手を上げると、私の視点では右になりますので、この場合は右に回避の合図ということですね。
教官より「私は安全な距離まで下がりますので、思い切って突っ込んできて下さい」とは言われたものの、普段人に向かって走るなんてシチュエーションは無いだけに緊張します。
まずは一本目。教官がコースクリアーの合図を出したと同時に発進して、40km/hまで加速。合図は左。
40km/hと聞くとさほど速いように感じませんが、狭いパイロン間に突入するという状況も相まってか、バイクの体感速度は車の7〜80km/h位はあるような気が。
1本目を何とか左に避けて教官に視線を送ると、「今の感じで良いですよ。では2本目行きましょう」。
そして、2本目は・・両手が上がり、直進。
いよいよ最後の3本目。
「ヴォン、ヴィ~ン、ヴィ~ン」
「ん?、左手(右の合図)が動いたような。よし右だっ!」
と、右に避けて速度を落としつつ教官を見ると・・あれっ、右手(左の合図)が上がってる???。
しかし私が完全に方向を間違ったのに、教官はなぜか笑顔のような・・。
停止した私に駆け寄ってきて、「最初は左、2回目は真ん中、最後は右が来ると考えませんでしたか?」という教官に、「確かにちょっと思いました」と答えると・・。
「実は私、フェイントをかけました」
どうやら、左手を上げるフリをして、すかさず右手を上げた・・ということらしく。
私は心のどこかで、次は右が来るんじゃないかと思っていたので、手が動いたように見えた瞬間、そちらに回避してしまった・・という訳でありました。
私的には失敗ながら、教官にしてみれば思惑に引っかかってくれて成功・・という表情だったのでありましょう。うーむ、やられた・・。
あ、いや、フェイントって反応が良いから引っかかるんですよ。
私の動体視力もまだ捨てたもんじゃありませんなあ、フフフ・・。
「お前のはただの山勘だろ!」というツッコミが聞こえて来そうでありますが(^^;。
でも確かに、例えば道路脇から飛び出してきた動物がいて、そのまま走り去ると思っていたところが、急に反対に引き返すなんていう場面も経験がありますしね。
その後教官より、「バイクは小回りが利いて急に曲がれそうに思われがちですが、ハンドルを切ってもいきなり曲がれる訳ではないので、むしろ車よりも緊急回避は苦手と言えます」といった、バイクの挙動について補足説明があり、緊急回避についてはこれで終了。
「次は急制動に移りますが、私の準備が出来るまで、琢麻呂さんはコースを自由に走っていて下さい」との事だったので、地味ながら1速→2速、2速→1速と、走りながらのシフトチェンジの練習を。
走行中って、実はあまりこういう練習をする機会がないのですよね。
傍目には「何をしているんだろう?」という感じでヨロヨロと走っていると、程なくしてバイクに乗車した教官が追いついてきたので、いよいよ急制動の教習場所に移動します。
さて、私は無事クリアー出来るのでありましょうか・・。
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最後の教習項目として迫りくる急制動。しかし、本当の敵は急制動ではなかった。
焦りの色を隠せない、オッサンライダー見習の琢麻呂。
「本当の敵は己の中にある」
果たしてこの言葉の意味や、いかに。
(後編へ続く・・はず)